学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

鬼頭宏氏『文明としての江戸システム』

2010-02-02 21:06:38 | その他
眠い目をこすりながらカーテンを開けると、外はまさに銀世界でした。私が住む地域は、ほとんど雪が降らないため、銀世界になるのは珍しいこと。今日は徒歩で出勤しましたが、いつもとは違う景色に見とれてしまいました。雪もあまり積もらなければいいものですね(笑)

講談社学術文庫から出版されている「日本の歴史シリーズ」、これは最新版の日本史研究書なのでとても面白く読めます。自分が学生時代に習ったことが旧説になっていたり、当時は関心の全く無かったところが今は興味深く読めたりと、研究が進み、歴史が動いていることを改めて感じました。

今日ご紹介するのは『文明としての江戸システム』、シリーズ第19巻目です。近頃、「エコ」という視点で江戸時代が見直されていますね。江戸には何百万人と住んでいたのに、街はとても綺麗だった。いわゆる「もったいない」の精神を持っていた人々の意識は高く、ほとんどのものをリサイクルして活用し、それをまわすだけの職業もあった。よく同時代のパリやロンドンと比較され、いかに江戸が素晴らしかったのかが語られることがあります。しかし、それが行き過ぎて、江戸時代をあまりに理想化しすぎているんじゃないか、という話しも出てきています。本当のところはどうなんだろうか?と知りたくて、読み進めてみました。

結論から言うと、江戸時代にも環境問題があったということがわかりました。たとえば江戸の何百万人の生活に必要な木炭を確保するために森林伐採は行われましたし、中国地方の山陰ではタタラ製鉄のために森林伐採はもちろん、水質汚染なども確認され、農民が不満を訴えるエピソードなども紹介されています。江戸時代にも環境破壊があった、何となくあの頃の人々は自然と上手く共存していて…というイメージを抱きますが、少なくともそうした事例はいくつかあったいうことなのです。もちろん、今の環境破壊の問題から比べれば、微々たるものなのでしょうが…。

このシリーズ、日本の歴史をもう一度学びたい方にぜひオススメです。かなり専門的なところまで触れられていますが、大人になってから歴史を学ぼうとすると、学生時代とはまた違った切り口で読めると思います!

●鬼頭宏氏『文明としての江戸システム』 講談社学術文庫 2010年
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