私がまだ仙台に居た時分、駅前にジュンク堂という大型の本屋があって、そこのある文庫本の棚が妙にきらきらとしていたことを思い出します。その棚こそが講談社学芸文庫の集まりで、様々な彩のある背表紙が、本を美しくしていたのでした。
それは手に取ると、とても優しい手触りのカバーがしてあり、表紙を見れば、グラデーションが上から下にかけられ、そしてタイトル文字の箔押しが目に留まります。とてもシンプルだけど、それがとても素敵。こうした装幀を手掛けたのが、菊地信義氏であって、1988(昭和63)年に創刊した同文庫の装幀を35年間にわたって手掛けられた方です。『装幀百花』は、昨年亡くなられた菊地氏の仕事を振り返るというもの。その性質上、この文庫にはほとんどないカラー写真がふんだんに盛り込まれています。
私が菊地氏の装幀で好きなのは、図像のタイプで、例えば森茉莉の『父の帽子』、坂口謹一郎の『愛酒樂酔』、幸田文の『ちぎれ雲』などが洒落ていて好きです。装幀を仕事にする人には、実際に本を読むタイプと、そうでないタイプがいるようで、菊池氏はどうだったのかは文章中に明記されていませんが、こういう装幀ができるのだから、やはり前者のタイプだったのでしょう。文字だけで表紙を構成する仕事は非常に難儀なところもあったと思いますが、かえって制限があるからこそ、これだけの仕事ができるのだから、プロの技というものに唸らされます。
ちなみに、この本の後半には1988年から2022(令和4)年5月まで、菊地氏が一手に担った講談社文芸文庫の目録が掲載されていて、このラインナップを眺めるだけでも楽しく、こんな本が出版されていたんだ、今度は何を買おうか、などと本が好きな人にとっては幸せな記録になっています。これから、どんな本が講談社文芸文庫で出版されるのか、私にとっては楽しみなことの一つです。
それは手に取ると、とても優しい手触りのカバーがしてあり、表紙を見れば、グラデーションが上から下にかけられ、そしてタイトル文字の箔押しが目に留まります。とてもシンプルだけど、それがとても素敵。こうした装幀を手掛けたのが、菊地信義氏であって、1988(昭和63)年に創刊した同文庫の装幀を35年間にわたって手掛けられた方です。『装幀百花』は、昨年亡くなられた菊地氏の仕事を振り返るというもの。その性質上、この文庫にはほとんどないカラー写真がふんだんに盛り込まれています。
私が菊地氏の装幀で好きなのは、図像のタイプで、例えば森茉莉の『父の帽子』、坂口謹一郎の『愛酒樂酔』、幸田文の『ちぎれ雲』などが洒落ていて好きです。装幀を仕事にする人には、実際に本を読むタイプと、そうでないタイプがいるようで、菊池氏はどうだったのかは文章中に明記されていませんが、こういう装幀ができるのだから、やはり前者のタイプだったのでしょう。文字だけで表紙を構成する仕事は非常に難儀なところもあったと思いますが、かえって制限があるからこそ、これだけの仕事ができるのだから、プロの技というものに唸らされます。
ちなみに、この本の後半には1988年から2022(令和4)年5月まで、菊地氏が一手に担った講談社文芸文庫の目録が掲載されていて、このラインナップを眺めるだけでも楽しく、こんな本が出版されていたんだ、今度は何を買おうか、などと本が好きな人にとっては幸せな記録になっています。これから、どんな本が講談社文芸文庫で出版されるのか、私にとっては楽しみなことの一つです。
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