学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

ガルシン『四日間』を読む

2007-10-21 20:30:36 | 読書感想
人間は、戦地で瀕死の状態に陥ったとき、一体何を思うのでしょうか。故郷のこと、両親のこと、兄弟姉妹のこと、フィアンセのこと…。ロシアの作家ガルシン(1855-1888)は、一兵卒からみた戦争の苦しみを描いています。

主人公は、戦場において、いつの間にか自分が足を負傷して地面に倒れていることに気が付きます。目の前には人影らしきものがある。闇夜のためよくわからないのですが、朝になると、それが敵兵の死体であることがわかります。仲間の助けが来ないかと待ちわびる主人公、目の前の敵兵の死体は徐々に腐乱して、異臭を漂わせます。主人公の思考は、初めのうちは助けを求めることで頭が一杯でしたが、次第に自分と同じような状態にあって殺された子犬のこと、母親のこと、そしてフィアンセのことを想うようになります。

「さようなら、お母さん、さようなら、わが許娘、恋しいマーシャ!」

しかし、運命は彼を殺さなかったのです。負傷して4日目に、仲間から発見され、片脚を切断するも一命を取り留めるに至ります。

私は、この主人公の姿が、太平洋戦争における日本兵の姿と重なり合って見えました。あの戦争で、故郷や両親、恋人たちを想い死んでいった人たちは大勢居るはずです。それは「きけわだつみのこえ」を読んでみても、よくわかります。国は違えど、人間が瀕死になったときに考えることは同じよう。ちなみに、本の奥付を見ると、1937年発行とのこと。昭和12年ですから、太平洋戦争で亡くなった人たちも読んでいたのかもしれません。そう思うと、何ともいたたまれない気がするのです。

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