学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

ピーター・フォーブズ『ヤモリの指』を読む

2020-04-28 18:15:27 | 読書感想
学生時代の私は、科学館が大好きでした。地元の仙台市科学館には友達とよく通いましたし、夏休みに上京したら、必ず連れてってもらうのは上野の国立科学博物館。自分の背丈の何倍もある大きな恐竜の化石に胸をときめかせたものです。残念ながら、学校の科学の授業が肌に合わなくて、私はその道に進まなかったけれど、科学の道に進んだら、どんな人生を歩んでいたのか、今でも時々考えることがあります。

さて、ピーター・フォーブズさんの著書『ヤモリの指』(吉田三知世訳、早川書房、2007年)を読みました。これは生物の生態を解き明かすことで、新たな技術革新を起こす「バイオ・インスピレーション」について書かれています。ハスの撥水性、クモの柔らかく強靭な糸、ヤモリの指の接着性、ハエやガが持つ羽のメカニズムなどの分析はとても面白いもの。ただ、それを解き明かしたところで、新たな技術革新へすぐに結び付けるのはなかなか難しいよう。かろうじて、ハスの撥水性を活かす商品は開発されたようですが、技術的に困難な現状もしっかりと書かれています(近年、山形県鶴岡市のベンチャー企業、Spiber株式会社がクモの糸に注目した合成クモ糸繊維を開発しましたので、確実のその道は進んでいるといえましょう)。

この本にも書かれていることですが、私も今まで何気なく見ていた生き物たちへの見方がとても変わりました。これから暖かくなると、我が家の庭先にもいろいろな生き物がやってきます。彼らが何を食べ、どんな風に飛び、どんな生きているのか。自分と生き物たちとの新しい付き合いが楽しめそうです。

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