学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

萩原朔太郎『秋と漫歩』

2008-08-18 09:51:01 | 読書感想
私が大学生の時分、「この教室の窓から」というタイトルで随筆を書けと試験問題が出た。講義のメモをしっかりと頭に叩き込んでいた私は、やや面食らった覚えがある。その頃はあまり読書もしていなかったから、私は随分適当に答案用紙を書いた気がする。

皆さんは四季を通じて、最も好きな季節はいつだろうか。私は夏が好きである。しかし、私が夏を好きな理由をここに書いてもしょうがない。主役は萩原である。萩原は散歩に適する秋が好きだという。なぜか。私なぞは紅葉を見たり、虫の音が美しいためかと思ってしまうが、萩原はそうではない。歩きながら、瞑想にふけり、停車場のベンチに腰掛けて人間観察をするためである。当然のことだが、小説家にしろ、詩人にしろ家に閉じこもり、机に向かって創造してばかりいると思ったら大間違いなわけである。そんなことをしていれば、でたらめで、生活のない文章になるに決まっている。

この姿勢は学芸員にも言えることだろう。私のように家に閉じこもっていては何も書けないし、ひらめきもしない。今日はどの美術館も閉まっている。けれどもギャラリーの門は開いている。これからグループ展を見に出かけよう。先日、私の夏も終わったことであるし。

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