学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

ハウフ『盗賊の森の一夜』1

2018-10-21 19:35:14 | 読書感想
どういうわけか、子供のころ、押入れのなかに豆電球を持ち込み、薄暗い明かりの中で漫画を読むという行為が好きでした(笑)それはたぶん、『ドラえもん』の影響があったのかもしれない(ドラえもんは押入れで寝てますからね)けれど、暗い空間のなかに独りいることがなぜか冒険のように感ぜられて、胸がわくわくしたのです。

ハウフの『メルヒェン集 盗賊の森の一夜』は、19世紀初頭のドイツを舞台とした物語。シュペッサルトの森のなかの旅籠(ネットでシュペッサルトを検索すると、今でも深い森が残っているみたい。昔はもっと暗くて怖いところだったでしょうね)で、盗賊の影におびえる鍛冶職人、錺職人、馬方、学生が寝首をかかれまいと、朝までめずらしい話を語り合うというメルヒェン集です。テーブルの上に置かれた、ろうそくの小さな明かりの周りに大の大人が4人が集まって細々と語る…そんな場面に私自身の子供時代がふいに思い出されたのです(笑)

話は二重構造。旅籠に泊まる男たちが襲われるのではないかというスリル、その彼らが交代で語る世にも不思議なメルヒェン。それがらせん状のようにからみあって、とても深みのある小説になっているのです。構成について、私は読んだことはありませんが、デカメロンの『ボッカチオ』と似ている?

今はようやく「鹿の銀貨」を読んだところ。メルヒェンはハッピーエンド、というわけでもなさそうで…もやもやする終わりではありましたが、軽るみのある優しい話に引き込まれます。

さて、明日以降は続きを読んで楽しみます。


・『メルヒェン集 盗賊の森の一夜』ハウフ作、池田香代子訳、岩波書店、1998年

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