学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

高橋由一

2009-02-23 08:39:03 | 仕事
休日、とりたてて何の用事もないため、朝から高橋由一の画集を眺めています。

高橋由一といえば《鮭》、《美人(花魁)》(共に東京藝術大学蔵)。教科書にも出てきますし、日本美術史でも近代を扱ったテーマとなると、必ずといっていいほどふれられます。

由一が描いた最初の油絵《丁髷姿の自画像》は慶応2、3年の頃の作と考えられており、すでに40歳近い年齢です。今の尺度で考えるとまだ働き盛りですが、この頃は人生50年の時代ですから、かなり高い年齢になります。画集を眺めていると、ふわふわせず、しっかり落ち着いた感じがするのは、年を重ねているせいなのかもしれません。

《鮭》(明治10)が描かれた頃は、《豆腐》や《鱈梅花》(共に金刀比羅宮博物館蔵)など、力のある静物を描き続けています。この時代の作品は、モチーフの選び方も面白いと思いますし、真に迫ろうとする由一の目が画面を通して強く伝わってくるので、私はとても興味があります。翌年にはパリ万博にも作品を出品しています。高橋由一とパリ万博、なんだかうまくつなげ難いイメージですが、これもまた面白いことですね。

ところが、少し時代を経た明治14年頃になると、どこかおかしくなってくる。同年、山形県令三島通庸の委嘱で制作した風景画数点は《鮭》を描いた人とは思えないほど何だか力のない絵になってしまっています。立体感が消え、平面的な絵になっているのは一目でわかります。由一54歳、年齢的なこともあったのか、委嘱による制約が彼の画力を閉じ込めてしまったのか。明治27年に高橋由一は67歳で生涯を終えます。

高橋由一が残した数多くの作品は、現在香川県の金刀比羅宮に保存、展示されています。私も一度行ってみたいとは思うのですが、何分遠いため、いつになったら行けるのやら。ただ香川県まで行って見る価値が十分にある、と私はそう思うのです。近いうちに、ぜひ行ってみたいですね。