学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

岩手県立美術館

2009-02-17 21:05:09 | 展覧会感想
昨日の続きで、今日は岩手県立美術館について書きます。

盛岡駅の西、北上川にかかる橋を越えると岩手県立美術館があります。今は「岩手県所蔵美術作品選」展を開催しています。

県内の美術作品を紹介する展覧会。ビッグネームを揃えた企画展や特別展と比較すると、どうしても地味になりがちですけれども、かつてこんな作家がいた、あるいは今こういう作家が育ってきている、と提示することは、県立美術館のならではの企画であり、そうして大切な使命でもあります。岩手県は萬鉄五郎、松本竣介、舟越保武らを輩出しており、美術の土壌は豊潤ですから、県立美術館に対する県民の期待も大変大きいのではないかと思います。

岩手県立美術館が所蔵する作品のなかで、私が最も好きな作品は舟越保武の《聖セシリア》です。見る人を温かく包み込むような全体の雰囲気、知的で美しい女性の表情。アイヒェンドルフ作『大理石像』にはあまりに魅力的な像に恋をしてしまう若者の姿が描かれますが、私もその気持ちがわかるような、そういう美しさがあります。

絵を見て周りましたら、時計の針はすでに夕方4時。もっとゆっくり見ていたかったのですが、やむなく帰ることにしました。日帰りはせわしないものです。戸外へでると、いつの間にか雨は止んでいました。帰り道、再び北上川を越えました。北上川は側面をコンクリートで固められていないので、自然のままの美しい川なのです。美術館と、北上川の美しさに私はよい心持がしたのでした。