細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『NO(ノー)』の政治的な逆転キャンペーンの限界。

2014年06月13日 | Weblog

6月10日(火)13-00 京橋<テアトル試写室>

M-062『NO(ノー)』(2012) participant media no holdings llc./ funny balloons tabula チリ

監督・パブロ・ラライン 主演・ガエル・ガルシア・ベルナル <118分> 配給・マジックアワー ★★★

南米チリで、1988年に起こった長期ピノチェト独裁政権に対して、『NO』という反対派が企画した広報キャンペーンの実話映画化。

その経緯を、どこかのんびりとしたユーモア感覚も加味して再現したという、ポリティカル風刺映画で、これが各国で評価を得たという。

パブロ監督は、チリの独裁政権打倒に関係した作品を3部作にして制作していて、この作品が最終編ということだ。

今でも世界各国で経済恐慌による政治不信や宗教的格差問題で、悲しい武力抗争が続いているが、このチリで起こったという政権交代には、無血で学ぶべきヒントがあった。

それで一種の再現ドキュメンタリー風仕立ての作品なのだが、実際の選挙戦からは時間が経ちすぎているせいもあってか、どうも<ことの重大さ>が伝わらない。

これは、どうしても歴史的な事実を、忠実に真摯に再現しようとしたプロヂューサーの狙いが底辺にあるのか、あのコスタ・ガブラスの政治サスペンスのようにはならない。

独裁政府への反発は、多くの映画のテーマになっていて、とくに中南米での関心は強く、「チェ」や「ハバナ」のように、娯楽的にディフォルムした作品は面白かった。

残念ながら、この作品はエンターテイメント狙いではなくて、一種の<再現ドラマ>なので、当然、事実を過大に面白くは見せられないのだろう。

この映画的矛盾が、選挙結果が出ているドラマの展開としては、どうしても平板になっていて、しかも主役の広告マンを演じた俳優にも、特別な魅力もない。 

たしかに、政治不信は、このようにして平和的に国民選挙で民意を決めた方が早いに決まっているが、実際には陰謀も多くて簡単ではない筈。

だからかもしれないが、これが事実とは知っていても、どうも実感とか感動のない作品に見えてしまったのだろうか。

 

■ヒット性のレフトへのフライだが、勢いなく失速。

●8月30日より、ヒューマントラストシネマ有楽町などでロードショー 


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