細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『フォンターナ広場/イタリアの陰謀』の硬質な歴史リアリズムの正統ドラマ。

2013年10月12日 | Weblog

10月9日(水)10-00 六本木<シネマートB-1試写室>

M-128『フォンターナ広場/イタリアの陰謀』Piazza Fontana, The Italian Conspiracy (2012) cattleya / babe films 伊

監督・マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ 主演・ヴァレリオ・マスタンドレア <129分>配給・ムヴィオラ ★★★☆☆

1969年12月12日の夕方。ミラノ中心街フォンターナ広場にある農業銀行で爆破テロ事件があった。あのドゥオーモの近くだ。

死者17人。負傷者88人を出した大惨事で、当初はボイラーの爆発という事故説もあったが、のちの調査で複合爆破という見解が発表された。

当時のイタリアは、政治的にも不安定で、ネオ・ファシストとアナキストや学生たちの対立も激化していて、政府内務省の情報局とミラノ県警、軍警察とも摩擦があった。

その結果、事件の真相は曖昧なまま迷宮入り、その関係勢力に複雑なトラブルを生じたままに未解決になったという。

当時、その現場を目撃したジョルダーナ監督自身は、40年の日々を越えて多くの資料をもとに、その真相をここに描いて再現を試みた。

我々にはあのJFK暗殺事件の陰で、あまり大きな強い印象はなかったが、イタリアにとっては未だに謎の残る国家的な未解決事件。

かなり時代背景に忠実に、リアルな再現ドラマになっている関係で、当然、作品はエンターテイメントではなく、ドキュメント・タッチで重い。

ただでさえ複雑なヨーロッパ情勢不安定な時代、ここに検証される事件の関係者も実に複雑で難解だ。しかも厳つい中年オヤジばかりでむさ苦しい。

それでも後半はヴァレリオ警視の存在感が浮き彫りになってきて、イタリアン・ダンディズムの正義感が強くなる。かっこいいのである。

あのコスタ・ガブラス、フランチェスコ・ロージの社会映画や、デ・シーカ監督の男臭いリアリズムも久しぶりに覗かせるのだ。

ま、ハリウッド・エンタテイメントとはまったく違う、何となく地味で頑固なタッチも男っぽくて懐かしい。

意外なラストの衝撃が、この事件の複雑な社会情勢を蘇らせて、重いノワールな印象で終わり、また真実は闇の中に沈むのだ。

 

■センター前のライナーが野手の手前でイレギュラーして、フェンスに転々。

●12月21日より、シネマート新宿などで新春ロードショー 


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