細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『囚われ人』で体感する誘拐テロの迷走恐怖。

2013年05月16日 | Weblog

●5月14日(火)13−00 六本木<シネマートB1試写室>
M−058『囚われ人』Captive (2012) idier costet / swift productions / arte france cinema 仏
監督/ブリランテ・M・メンドーサ 主演/イザベル・ユペール <120分> 提供/彩プロ ★★★☆
2001年、あのビン・ラディーンとのイスラム関係組織がフィリピンのリゾート、パラワン島で起こした21人もの観光客誘拐事件。
あまりにも長期にわたる犯行の逃亡時間だったせいでか、9−11の陰に隠れていた事実の再現作品だ。
まったく詳報が知られなかった真相は、ここでも明確にされないが、それは政治目的ではなく、身代金要求の団体誘拐だったせいだろう。
どうも、よく目的や作品の狙いが明快でないのは、事件そのものが流動的な組織犯罪のせいだろうか。
困ったのは、事件をリアルに再現したために、どうも闇のなかの行軍のようで、こちらの感覚も迷走を続けるので疲れる。
事実を映画化する作品は非常に多いが、みなそれぞれにエンターテイメント性を強調してテンションを操る。
「欲望のバージニア」も、「ゼロ・ダーク・サーティ」も、「アルゴ」も真実を雄弁にアレンジした。
しかしこの作品は、誘拐された被害者と同様に、何が起こって、どうなるのかが、まったく読めない苛立ちが募るのだ。
それにしては、主演のイザベル・ユペールは災難のわりには気丈でタフである。
結局は身代金が支払われた者が解放されるが、他のものは病死したり殺害されたり、徐々にメンバーは少なくなる。
そして事件は1年以上もの間、未開の密林を迷走し、軍隊との銃撃戦の末に、彼女は解放されるが、事件の実態はいまだに未解決なのだという。
「インポッシブル」の津波災害も、ある意味ではリゾート地での不運だが、何か似たような計り知れない焦燥が残った。
それは、この作品が、事実に拘りすぎたドキュメント感覚のせいだろうか。
むかし、ゲイリー・クーパーが主演した「暁の討伐隊」では、フィリピンの蛮族を颯爽とやっつけたが、あの爽快感は遠いむかしだ。

■ライト線へのヒットを、野手がそらしたのでセカンドを狙い、返球で刺される。
●7月6日より、シネマート新宿ほかでロードショー


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