細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『ペーパーボーイ/真夏の引力』で異様な臭気を放つスワンプ・ノワール。

2013年05月18日 | Weblog

●5月16日(木)13−00 六本木<アスミック・エース試写室>
M−059『ペーパーボーイ/真夏の引力』The Paper boy (2012) millennium film / a nu image
監督/リー・ダニエルズ 主演/ザック・エフロン <107分> 配給/日活 ★★★☆☆☆
久しぶりに悪臭の漂うようなサザーン・ノワールだ。この辛口の不味さが久々にいい。
大都会のガソリン臭い本格ノワールと違って、アメリカ南部のスワンプを背景にした欲情のノワールは強烈な異臭があるのだ。
「夜の大捜査線」「ナイト・ムーブス」「ワイルド・シングス」などよりも、もっと爬虫類のような静かな毒気に満ちていて気味が悪い。
ザックは小心の青年だが、兄の新聞記者マシュー・マコノヒーの事件と情事が絡むおとなの異常な情愛に翻弄される。
ちょっとエルモア・レナードの小説のタッチがある毒味な人物描写も、これはもっとグロテスクだ。
それは「プレシャス」で、見事な人間描写を見せた監督の、あの執拗な人間洞察が異様なほどに細部に迫るからだろう。
やはり見るべきは、殺人容疑で逮捕されたジョン・キューザックの、初めての凶悪なキャラクターの醜悪さ。
いままでは、どちらかというと善良な美男だった彼が、がらりと変貌した異常さを見せる。
同様に中年バンプを演じるニコール・キッドマンも、かなりアクドクて不気味に醜悪。
アカデミー女優だからこそ許される悪のりだ。
この全体に悪趣味な狂気は、B級映画の下品さに慣れてないとたまらなく、試写室を逃げ出した上品な奴もいたほどだ。
あの銀座シネパトスが、もし健在だったら、これぞぴったりの異色欲情ノワールの怪作である。
「真夏の引力」というサブタイトルが判る人は、どうぞ。

■左中間へのライナーが風で流されてセンターがグラブに当てて後逸、スリーベース。
●7月27日より、新宿武蔵野館などでロードショー


コメントを投稿