●6月17日(火)10-00 西銀座<東映本社7F試写室>
M-064『太秦ライムライト』<Uzumasa Limelight> 2014/ イレブンアーツ、劇団・とっても便利・東映
監督・落合 賢 主演・福本清三 <104分> 配給・ティ・ジョイ・ミラクルヴォイス ★★★☆☆
京都の東映映画太秦撮影所で、ひたすたに時代劇での<切られ役>として5万回も死んだ男、福本清三さんの黄昏の心情を描いた佳作だ。
廃れ行く時代劇の制作は、最近はテレビドラマで怪獣やエイリアンをCGで登場させて制作する企画が多くて、切られ役は出演しても数秒で切り落とされる仕事も、このところ激減。
まるで小津映画の「浮草」の旅芸人のように、消え行く宿命の時代を迎えている。それでもスタジオでは見学ツアーの客の為に、剣劇実演ショーをスタジオの路地でやっている。
スタジオの黄金時代から、このエキストラの切られ役を専門に演じて来た福本さんには自負もあり、キャスティングの道具部屋でも、なるべく彼に役を振っていたが、もう時代は変わった。
ハリウッドでは、スタントマンとして生き抜いた「駅馬車」などのヤキマ・カナットさんには、アカデミー特別名誉賞が与えられたが、こちらでは、そのような温情はない。
彼は、大部屋の自分の鏡の前に、チャップリンの「ライムライト」の小さな写真を張っていたが、この映画も明らかに、年老いて消えて行く映画人の斜光を描いて行くのだ。
ま、わかりきったような人情もので、ジャズマンや野球選手などの現役引退の感動ドラマには、ごくありがちなシチュエーションものだが、この作品では、ご本人が演じているのが凄い。
しかも高齢者で、腕にも障害が出て来ている老人の終焉を描くのは、どうもパターンが見え見えとなる。でもこの映画は、そのラストシーンで、実に美しい意地を見せた。
「ライムライト」よりも「スタア誕生」の世代交代ドラマに似ているが、師匠を尊敬していた若手女優の山本千尋がラストチャンスを用意してくれたのだ。
一転して、画面はシネマスコープサイズになって、東映映画ご自慢の殺陣シーンは大舞台を迎えて、松方弘樹は凄み、音楽もそれらしく盛り上がり、こちらも座席で背を正してしまった。
たしかにウイリアム・ワイラー監督の「黄昏」にも似た悲哀はあるが、そこにホンモノの太秦撮影所と、この福本清三さんの姿がある、という映像には凄みがあった。
■平凡なライトフライと思ったがグングン伸びてフェンスへのツーベース。
●7月12日より、東映系全国ロードショー
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