WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

トニー・ベネット

2014年07月27日 | 今日の一枚(A-B)

●今日の一枚 368●

Tony Bennett & Bill Evans

The Tony Bennett Bill Evans Album

 

 先日、wowowでトニー・ベネットのドキュメンタリーをみた。途中からの視聴だったが、トニー・ベネットが自らの音楽に対する思いや、人生観を語る部分などもあり、なかなか興味深いものだった。

 wikipediaは、トニー・ベネットを「アメリカ合衆国において最高の男性ボーカリスト、エンターテイナーと称される存在」と記し、フランク・シナトラが「おれの考えでは、トニー・ベネットは音楽業界最高の歌手だ」と語ったことを紹介している。音楽活動への意欲は高齢になっても衰えず、近年は大御所から若手まで様々なジャンルの歌手とのデュエットアルバムを立て続けに発表し、2011年には85歳にしてBillboard200で自身初の初登場1位の記録を樹立したという。歌を歌い続けるために、喉を酷使しないように発声や生活習慣に常々配慮し、第一線で歌えるだけの性質を維持しているのだという。

 1975年録音の『ザ・トニー・ベネット・ビル・エヴァンス・アルバム』を取り出してみた。私のもっているトニー・ベネットは、現在のところこの一枚のみである。随分前に購入したのだが、数度聴いたきりで放置されていたCDだった。きっと、若い頃のわたしにはしっくりこなかったのだろう。wowowのドキュメンタリー番組がきっかけでもう一度聴いてみると、そこには素晴らしい歌たちが詰まっていた。ビル・エヴァンスのピアノもさることながら、トニー・ベネットののびやかな声が印象的である。声量のコントロールやスウィングの感覚もいい。どうしてもっと早く気づかなかったのだろうと悔やむばかりである。

 それなりに膨れ上がってしまったLPやCDの中にはあまり聴かずに放置してしまったものも結構あると思う。年齢を重ね、新たな耳で聴きなおすべき作品もまだまだあるに違いない。ジャズを聴くことの楽しみのひとつである。

 「人生は贈りものだ」・・・・。そう語ったトニー・ベネットの言葉は、彼が成功者であり大きな富を手にした人間であるということを差し引いても、含蓄のあるものではなかろうか。