WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

ウルトラセブン最終回(前編)

2022年02月27日 | 今日の一枚(G-H)
◎今日の一枚 568◎
Harold Mabern Trio
Kiss Of Fire
 今日の朝、NHK BSPでウルトラセブンの最終回「史上最大の侵略」(全編)が放映された。4Kリマスター版である。後編は来週日曜の3月6日に放映される。
 ウルトラセブンの最終回といえば、伝説として語り継がれる感動の名編である。番組終了後、日本中の子どもたちが戸外に飛び出して空を見上げた、といわれるいわくつきのものだ。かくいう私もその一人だった。今考えると、ダンは「明けの明星が輝くころ」といっているので、番組終了後すぐに戸外に飛び出しても仕方なかったのだが・・・。
 今日の前編では、これまでの数々の戦いに疲弊して満身創痍のモロボシダン(ウルトラセブン)の姿が描かれた。これ以上戦うことは生命にかかわると告げられM78星雲に帰還することが勧告されるが、責任感の強いダンはそれでも地球のために戦い続けようとする。そして、バンドンとの戦いで重傷を負うのである。
 来週はいよいよ美しい映像と音楽、そして感動のあのセリフが登場する後編である。楽しみだ。

 今、聴いているのは、ハロルド・メイバーン・トリオの2001年録音盤『キス・オブ・ファイヤー』である。テナー・サックスにエリック・アレキサンダーを迎えた作品である。寺島靖国氏はその推薦文で、「ハロルド・メイバーンが65年の生涯で噴出させた最高の傑作」であるといい、「ハロルド・メイバーンらしさが最も著しく強くでている」「メイバーンらしさとはなにか。《のり》である」まで記している。
 悪い作品ではない。《のり》もいい。机上のブックシェルではなく、メインのスピーカーで聴くとなおいい。だが、今一つサウンドに同化できない私がる。エリック・アレキサンダーのテナーが流麗すぎるのだ。流麗だが強烈な個性のようなものを感じない。何かよどみのようなものが欲しいと思ってしまう。個性というものは、ある種の欠点のようなところから生じているのかもしれない。

ジョン・レノンのコード・フォーム

2022年02月26日 | 今日の一枚(A-B)
◎今日の一枚 567◎
The Beatles
Help
 ジョン・レノンのコード・フォーム(コードの押さえ方)が独特のものであることはファンの間では有名だ。最近、エレガットでビートルズ・ナンバーをソロ演奏をするとき、そのことをいつも思い出す。『ギターマガジン』のwebページによれば、それらのコードフォームの中には、ジョージ・ハリスンやポール・マッカートニーにも共通するものもあるらしい。少年時代からの付き合いの中で、押さえ方を共有してきたのかもしれない。これらのコード・フォームは、3度や5度の音を強調し、あるいは6thや7th、テンションノートを強調することで、ビートルズのサウンドに独特の響きをもたらしている。エレガットでソロのアレンジをする場合も、そのことを頭に入れておくと絶妙のニュアンスを再現できることが多く、うれしい。

 今日の一枚は、ザ・ビートルズの1965年作品『ヘルプ』である。ビートルズボックスで通して聴くと、ダンスバンドとして出発したビートルズが一作ごとに成長し、この『ヘルプ』からは秀逸なポップバンドの風貌を呈するようになることがよくわかる。
 名曲"Yesterday"のアコースティック・ギターは、すべての弦を一音下げて演奏されるが、例えばイントロのGコードは普通のものではなく、上記のGコードから1弦をミュートしたフォームで奏でられる。2弦の、ルートの5度の音が独特の響きとニュアンスをもたらし、普通のGでは表すことのできない、不安定で揺れる感じを表出する。それが心の震えを表現しているのだ。

がんばれ町田瑠唯

2022年02月20日 | 今日の一枚(I-J)
◎今日の一枚 566◎
Jeff Beck Group
 バスケットボールの話である。女子バスケットボール富士通レッドウェーヴの町田瑠偉選手がWNBAに挑戦するらしい。ワシントン・ミスティクスと契約したというのだ。頑張ってほしい。
 町田選手はいいガードだ。ビジョンが広く、パスセンスがいい。最近では積極的に自ら得点を取るようにもなった。東京オリンピックで歴代最多の18アシストを記録したのは記憶に新しいところだ。
 ただちょっと心配している。身長162cm。サイズがないのが気にかかる。日本代表では、スリーポイントやバックカットを多用し、積極的に速攻を仕掛けるチームのシステムの中で機能していた。パワー勝負のWNBAで、町田選手の長所が輝き、同じように機能するかどうかは未知数だ。
 心配が杞憂に終わればいいと思う。

 今聴いているのは、第二期ジェフ・ベック・グループの1972年作品、通称『(オレンジ)』である。ブルース・ロック路線だった第一期ジェフ・ベック・グループから、ファンク・ミュージックの影響を受けたサウンドにシフトしたところがすごい。多くのロック・グループがブルース・ロック一色だった時代、ジェフ・ベックの選択した道は、特筆すべきものだ。今考えると、この延長線上に後のクロスオーバー作品が生まれることが理解できる。
 高校生の頃、かっこいいなと思って聴いていた。

菖蒲沢ため池

2022年02月13日 | 今日の一枚(W-X)
◎今日の一枚 565◎
Walter Lang Trio
Romantische StraBe

 気仙沼市の階上地区に菖蒲沢ため池がある。大正5年に編纂された『階上村誌』によれば、天文16(1547)年につくられたものらしい。その後、改修・増築され、今日にいたっている。
 菖蒲沢ため池は自宅から徒歩で20分程度、散策も含めて往復90分程度のウォーキングコースである。数基ある広大なため池には、冬ともなれば白鳥やカモが飛来し、土曜日曜にはそれらにパンをちぎって餌をやる市民が断続的に訪れている。最近では、それらの餌を横取りしようとトンビやカラスが集まり、餌をやる時は注意が必要だ。今日も訪れたが、至近距離までトンビやカラスが接近し危険だった。
 近くに三陸道の岩井崎ICや大谷ICもあり、静かで雰囲気もいい。気仙沼市が駐車場や遊歩道をもう少し整備してくれれば、ウォーキングや散策の市民の憩いの場となるだろう。

 今聴いているのは、ウォルター・ラング・トリオの2007年録音盤『ロマンチック街道の彼方』である。気障なタイトルである。風貌もイケメンである。サウンドもスタイリッシュで美しい。気に入らない。そう言いたいところだが、ずっと以前に取り上げた『サウンド・オブ・レインボー』のところでも記したように(→こちら)、甘い感じはせず、硬質なリリシズムを感じさせる作品である。きれいなサウンドだが、きれい系ジャズにあらず。一聴に値する作品である。
 こういう作品は風呂場でゆっくりと寛ぎながら聴きたい。そう、ピアノトリオが流れる銭湯、「友の湯」のように(→こちら)。そういえば、最近行っていないのだが、コロナ禍の中で「友の湯」大丈夫なのだろうか。来週の休日にでも行ってみようか。

坂東武者の世をつくる

2022年02月11日 | 今日の一枚(C-D)
◎今日の一枚 564◎
Cream
Disraeli Gears
 『鎌倉殿の13人』の話題である。
 先週の放送で北条義時の兄、宗時が死んだ。石橋山の戦いで敗死したのである。宗時が死んだあと、宗時が義時に語りかける形で、その思いを吐露するシーンがあった。
平家とか源氏とか、そんなことどうでもいいんだ。俺はこの坂東を俺たちだけのものにしたいんだ。西から来た奴らの顔色をうかがって暮らすのはまっぴらだ。坂東武者の世をつくる。その天辺に北条が立つ。そのためには源氏の力がいるんだ。頼朝の力がどうしてもな。
 鎌倉幕府の本質である。鎌倉幕府は源頼朝がつくったというが、それは構造的な本質ではない。頼朝は一介の流人に過ぎず、家来などほとんどいなかった。彼が成功したのは、東国武士の協力があったからである。東国武士が頼朝に与したのは、もちろん彼らの利益のためである。西の政権の抑圧や収奪を排除し、自分たちの世界を作るためである。
 鎌倉幕府の本質は、東国武士団による連合政権なのである。事実、源氏は頼朝・頼家・実朝の三代で滅ぶが、鎌倉幕府はその後も続いていくのだ。北条氏は幕府の中で大きな権力を握ることになるが、政治の手続きとしては《合議制》の形式を続けていくことになる。こうした歴史認識は、当然の帰結として「東国国家論」を要請することになるだろう。これからの『鎌倉殿の13人』が楽しみである。

 今聴いているのは、クリームの1967年リリース盤『フレッシュ・クリーム』である。クリームは好きだ。そして、以前記したように(→こちら)、真のスーパーバンドだと考えている。あの分厚いサウンドを3人で作り上げていたこと、30分にも及ぶことのあったインタープレイ。今考えても、唯一無二ロック・バンドである。しばらくぶりに聴く『フレッシュ・クリーム』は佳曲揃いでなかなか聴きごたえがある。もう二周目になってしまった。

 多くのギター少年たちと同じように、エリック・クラプトンは、私のギター・ヒーローの一人だった。ギター小僧だった頃、『エリック・クラプトン奏法』という本でその奏法を勉強したものだ。けれども、本当にすごかったのは、仲が悪かったといわれるジャック・ブルースのベースとジンジャー・ベイカーのドラムが作りあげる、分厚くうねるようなリズムのドライブ感だったのだと、今は思う。エリック・クラプトンのギターは、もちろん悪くはないが、今という時点から見ると、ひどく凡庸なものに聞こえてしまう。もちろん、歴史性を排除して現在から過去を断罪するのはフェアなやり方ではないが、エリック・クラプトンの演奏に比して、ジャック・ブルースとジンジャー・ベイカーが織りなすサウンドは、現在という地点から見ても革新的な輝きを放っているように思える。

 youtubeで見ることができる2005年の再結成ライブは、なかなか凄いものだった。ジャック・ブルースは2014年に、ジンジャー・ベイカー2019年に亡くなっており、健在なのはエリック・クラプトンのみである。

ゆずるの里

2022年02月08日 | 今日の一枚(Q-R)
◎今日の一枚 563◎
Richie Beirach
No Borders
 登米市中田町浅水に「ゆずるの里」というそば処がある。《ゆずる》とは、フィギュアスケートの羽生結弦選手のことだ。羽生選手の父方のおじいさんがこの周辺の出身ということから、命名された店名のようだ。実際、羽生選手も幼少期に登米市に住んだことがあるとも聞く。羽生選手のおじいさんは、元同僚の羽生先生である。もう30年近く前に、M工業高校に勤務していた時の話だ。羽生先生は自動車科の先生で、当時、総務部長をされていた。残念ながら、羽生先生は退職後しばらくして亡くなられたとのことだ。
 先日、「ゆずるの里」をローカルのニュース番組が取り上げていた。羽生先生と同級生で元同僚という老紳士がインタビューを受けていた。一目でわかった。同じ社会科でお世話になったK先生である。おそらくはもう90歳近いと思うが、お元気そうに見えた。その穏やかで温かい語り口に、懐かしさがこみ上げ、ほっこりした気持ちになった。

 今日の一枚は、リッチー・バイラークの2002年録音盤『哀歌』である。venus盤である。リッチー・バイラークがクラシック曲を奏でるという企画盤である。リッチー・バイラークは好きなピアニストだが、この作品は今一つピンとこず、聴くことが少なかった。今朝、何気なく棚から取り出し、本当にしばらくぶりにCDデッキのトレイにのせてみた。悪くはない。気品のあるタッチである。ピアノの響きも美しい。しかし、やはり何かが違うんだよな、と思ってしまう。アドリブ演奏を展開しながらも構成的な趣の音楽に、ちょっと、考えすぎじゃないかという気がしてしまうのだ。

 私がM工業に勤務していたのは、このアルバムがリリースされるよりずっと以前のことだ。当時、羽生先生やK先生は大ベテランで、私は若手だった。
 時の流れの速さに立ち尽くすのみである。

白いあなた・・・・青春の太田裕美(29)

2022年02月05日 | 青春の太田裕美
 
 久々の、9年ぶりの《青春の太田裕美》である。
 1976年にリリースされた太田裕美4枚目のアルバム、『手作りの画集』収録の「白いあなた」である。太田裕美その人が作詞・作曲した曲だ。しかし、極私的名盤『手作りの画集』の中では影の薄い曲である。大変申し訳ないが、凡庸で退屈な曲だと思っていた。
 昨日、ギターを弾いていた。ちょっと前に購入したLagのエレガットである。和音の響きを確かめ、味わいながら、アドリブでソロ演奏をしていた。なかなかいい響きだと、自画自賛、自己満足で悦に入りながら弾いていた。ふと気づいた。聞き覚えのあるメロディーである。C△7からF△7への続くその響きは、どこかで聞いたことのあるものだった。凡庸で退屈な曲だと思っていた太田裕美の「白いあなた」だった。書斎の書棚から古い太田裕美のコード譜を引っ張り出して、コードの流れをもとにメロディーをつけ、アレンジしてみた。う~ん、なかなかいい。自画自賛と自己満足の嵐である。凡庸で退屈だと思っていた曲がソロギターで蘇った。休日の午前中にコーヒーでも飲みながら楽しむのに最適な響きである。新しい太田裕美の楽しみ方である。
 今日は、朝食後から、壊れたレコードのように、何度も「白いあなた」のソロギターを弾いて悦に浸っている有様である。

IgA腎症と私⑭

2022年02月01日 | IgA腎症と私
IgA腎症とワクチン接種
 昨日は、月一回の通院だった。
 eGFRは42.3、尿潜血+1、赤血球も安定しているということで、腎炎が治ってきているとのことだった。ステロイド(ブレトニン)の服用もこれまでの5mg×3錠から5mg×2錠となり、次の通院は2か月後でいいとのことだった。もちろん、治ってきているといっても、腎機能が下がっていないという意味であり、私の場合eGFR 40前後で安定させるのがテーマとなるのだろう。
 ところで、職場では3度目のワクチン接種が斡旋されており、すでに終えた同僚も少なからずいる。ほとんどの人が高熱で不調を訴え、仕事を休んでいるようだ。
 この3度目のワクチン接種について医師に相談すると、私の場合、できればやめておいた方がいいとのことだった。医学的には未だ解明されていないが、ワクチン接種によってIgA腎症が発病したり、悪化したりする報告がたくさんあるのだという。webを検索してみると、確かにワクチン接種によって肉眼的血尿が生じたとする記事が散見される。もっとも、これらは一過性だとする記事も見られるが、私の場合、腎臓の状態から考えて避けた方がいいということなのであろう。