WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

「女性ボランティアを襲う」

2011年07月10日 | 大津波の現場から

 震災以来、ネガティブな報道は自主規制され、復旧・復興に歩み出そうとする被災地の人々の思いや、被災地の人々の力になろうと力を尽くすボランティアの人々の活動が連日報道されている。中には、共感をおぼえ、思わず涙してしまうような話題も多い。それらの「美談」はそれ相応の脚色はあるだろうが、もちろん嘘ではなかろう。

 しかし、被災地の現実はそういった真摯さや誠実さや善良さだけからなっているわけではない。薄汚く、ずるがしこく、破廉恥な現実だってあるのだ。そういったネガティブな現実もやはりきちんと報道されるべきではなかろうか。醜さを捨象して築き上げた美談の王国は、やがてその醜さに復讐されるだろう。大切なのは美談の王国を建設することではなく、生身の現実から共生を紡いでいくことだ。

 数日前、新聞に載った「女性ボランティアを襲う」という見出しの事件も被災地の生身の現実のある側面を映し出している。私の住む街で会社員(38)が強姦致傷の疑いで逮捕された。この容疑者は7月3日午前4時ごろ、市内の避難所で、神奈川県からボランティアで来ていた30代の女性が就寝しているところを襲い、頭部を数回殴り、カッターナイフのようなもので頭や首を切りつけ、全治2週間程の「軽傷」を負わせたという。この会社員の容疑者は自宅で生活できるようになるまでの間、この避難所で生活しており、女性と面識があったという。

 何といっていいのかわからない。被災地の人間のひとりとして、本当に申し訳がないとしかいいようがない。

 この事件に類する、せっかく来てくれたボランティアに対するひどい仕打ちは、これまでにもいくつかあった。震災から1ヶ月ほどの頃実施された、一般市民に対する大規模な支援物資配布会において、ボランティアの方の金銭入りバックが盗まれた事件もそうだ。行政側や地元のメディアは地元紙等を通じて、「間違ってもっていったなら返してください」というメッセージをだしたが、空の支援物資と中身の詰まった重いバックを間違えるはずもなく、盗難・窃盗であることは明らかだろう。

 本当に申し訳のない事件だ。