WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

太陽の国に生まれた、愛しきメロディーたち

2014年07月22日 | 今日の一枚(C-D)

●今日の一枚 366●

Charlie Haden

    with Gonzalo Rubalcaba

Land of The Sun

 チャーリー・ヘイデンの2003年録音盤『ランド・オブ・ザ・サン』。メキシコ音楽集だ。ピアノは全編ゴンザロ・ルバルカバである。あの名演『ノクターン』の続編のような位置づけたったので、大きな期待を寄せて、発売されてすぐに購入した記憶がある。しかし、そのあまりに明快・明朗なトーンに圧倒されて、途中で聴くのをやめてしまい、今日までCD棚に放置されていた。自分の嗜好とあまりにかけ離れているように感じたのである。

 チャーリー・ヘイデンが亡くなってしまったのを機にもう一度聴いてみようと思い立ち、今日、10年以上の歳月をへてCDをトレイにのせてみた。なるほど、と思った。明快で明朗な中にもノルタルジックで狂おしい旋律がちりばめられ、これがチャーリー・ヘイデンがめざした音楽ではなかったのかと思った。CD帯の「太陽の国に生まれた、愛しきメロディーたち」との表現はまことに的を得たものであると思う。

 ライナーノーツの黒田恭一氏は、

本当に大切なことは、難解さなどとは無縁の、平易な言葉で語られる。音楽だって同じことで、真の奥の深い音楽は、これみよがしな尖った音の世話になどならずとも、普通の音で、柔らかい口調で奏でられる。まさにそのようなことが可能なところに、チャーリー・ヘイデンの真骨頂がある。

と記している。私自身への戒めともとれる言葉である。

 不思議なことだ。この明快・明朗なサウンドで奏でられる哀愁の旋律が、チャーリー・ヘイデンその人へのレクイエムのように聞こえてしまう。それは、彼の死に接して日が浅いからなのだろうか。やはり、自分の嗜好とはちよっと違うなと考えながらも、私は今、冷たいビールを飲みながら、チャーリー・ヘイデンを想い、このアルバムを聴いている。