WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

知らぬ間に大物になっているミュージシャン

2014年07月28日 | 今日の一枚(I-J)

●今日の一枚 369●

Joe Henderson

The State Of The Tennor

    Live At The Village Vanguard vol.1

 以前探していたアルバムを手に入れた。1985年録音の『ヴィレッジ・ヴァンガードのジョー・ヘンダーソン』である。ほぼリアルタイムで聴いた『ダブル・レインボー』(1994年録音)でジョーヘンに興味をもち、ジャズ本か何かで代表作として紹介されていたこのアルバムを探していたのだが、CDとしてはまだ発売されていなかったのだ。その後数年間、思い出すたびに調べてみたりしたのだがやはり発売されておらず、そのうち忘れてしまっていた。十数年ぶりに思いだし、たまたま発売されていたCDを購入したのはほんの数日前のことだ。

 いいなあ・・・。音色がいい。深みのある音だ。深みはあるけれど暗くない音。何かを探究するような求道的なフレーズだが、変に深刻ではない。何より、知的で汗臭くないのがいい。それにしても、ロン・カーターという人は、こういう不思議な感じのベースも弾けるのですね。

 ところで、後藤雅洋氏は『新ジャズの名演・名盤』(講談社現代新書)の中で、

知らぬ間に大物になっているミュージシャンというのがいる

とジョー・ヘンダーソンの紹介を書きおこし、現在のジョーヘンを「大物」のひとりと認めながらも、

僕らのように1960年代からジャズを聴いている者にとって、ジョーヘンは、言っちゃ悪いがその他大勢のひとりであった

と記している。確かに、またまた手元にある本だが、1986年に出版された油井正一『ジャズ・ベスト・レコード・コレクション』(新潮文庫)で紹介された597作品の中に、ジョーヘンのリーダー作は一枚も取り上げられていない。また、これまたたまたま手元にある、1993年出版の寺島靖国『辛口!JAZZ名盤1001』(講談社+α文庫)で紹介された1001作品に中にもジョーヘンのリーダー作は一枚もない。さらに、1983年刊の『ジャズの事典』(冬樹社)も手元にあるのだが、ここでもジョーヘンはまったく取り上げられていない。