WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

ジョージ・ケイブルス

2006年10月31日 | 今日の一枚(G-H)

●今日の一枚 78●

George Cables     New York Concerto

5550003 ジョージ・ケイブルスを知ったのは、アート・ペッパーの最晩年のピアニストとしてだ。ペッパー最後の作品『ゴーイング・ホーム』は、ケイブルスとのデュオ作であり、ペッパーがいかにケイブルスを信頼していたかがわかる。実際、このアルバムにおけるケイブルスの演奏は素晴らしかった。ペッパーより目立っているといっても良い。ケイブルスは、私のフェイバリット・ピアニストの一人になり、以来注目するようになった。

 さて、そのジョージ・ケイブルスの2000年録音盤『ニューヨーク・コンチェルト』である。しばらくぶりのリーダーアルバムである。スタンダードの他、バート・バカラックの曲やバッハ、モーツアルト、ショパンなどのクラシック曲にまで手をだしたアルバムだ。ジャズ演奏家がクラシック曲に手を出すのはあまり好きではない。オイゲン・キケロなどを思い出していまい、拒否反応を起こしてしまうのだが、このアルバムについては別だ。一聴して大好きになってしまった。

 最近の録音ということで、音がいい。ジョージ・ムラーツのベースの躍動感がよくわかる。ケーブルスのピアノは、クラシック曲を弾いても、スウィングすることを忘れず、しかも旋律の美しさを美しいままに、繊細なタッチで奏でる。一緒に口ずさみ小躍りしたくなるようなサウンドだ。叙情ス的なもの、スウィング感を前面に出したもの、やや攻撃的なサウンドなど、どの曲もいい仕上がりだが、最後の曲⑩がトロイメライだというのがいい。原曲のもっている叙情性が生かされており、聴き終わった後、穏やかな余韻に浸ることができる。