WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

世界史未履修問題

2006年10月27日 | つまらない雑談

 世界史未履修問題が話題になっている。もちろん良い事であるわけはないが、なぜ今頃になってという感じだ。地方ではこれまでにも報道されたことはあったが、大した大きな問題にはならなかった。今回、問題化したことについては、やや政治的な意図があるのでは、とかんぐることができないでもない。

 これまで報道されても大問題化しなかったので、学校側としても「公然の秘密」という面があったのではないか。実際、現在の学校は県教委や校長会から進学率のアップを強く求められ、校長以下先生方は大変だ。土日の課外授業や0時限目、7,8時限目は当たり前という感じだ。先生方の労働条件など論外。まさに何でもありの状況なのだ。今回の状況もそのような土壌があることを忘れてはならない。

 今回、世界史未履修が問題になっているが、世界史だけではないだろう(保健や家庭科、音楽・美術そして情報などで単位不足の問題も指摘されているようだ)。実際、数年前、山形県のある学校を視察した際、数学の時間に、受験科目として数学を使わない私大文系の志望者は別室で英語の授業をやっていると担当の先生が得意げに説明してくれた。帳簿上はもちろん、「数学」扱いだ。そんなことやっていいんですか、という私の愚かな質問に彼は、「まあね、いろいろね」などと微笑みながら語ってくれたのを思い出す。

 今回、岩手県で多くの高校の未履修問題が報道されている。データ的には岩手県の進学率の全国ランキングは下位だが、これは地理的要因や経済的要因による部分が大きく、実際は近年進学にかなり力を入れている。私の住む宮城県などよりはるかにだ。実際、県境近くに住む宮城の優秀な中学生は岩手県の高校に進学するものが多いのだ。

  報道によれば、私の住む宮城県でも未履修問題があることがわかった。仙台一高をはじめ、仙台三高、佐沼高校、古川高校、石巻好文館高校など最近きちがいじみた進学指導に躍起になっている高校ばかりだ。多くは「情報」の授業に他の教科の授業をやっている場合が多いようだ。学習指導要領はそれなりの(一方的で独善的な面は否めないと私は思うが)理念に基づいているわけだが、「進学」という「現実」に直面した時、保健や家庭科・音楽・美術・情報などは、はっきりいって邪魔な科目なのであろう。特に、新しくできた「情報」は邪魔な科目である。「情報」をいれることによって、他の科目の時間を削減しなければならないという「現実」に直面するからだ。文部科学省はIT時代に対応するという名目で「情報」を導入したわけだが、実際に授業で行われている内容は非常に低レベルなパソコンの操作方法なのだ。受験に必要な科目を削って、「情報」の授業をやることが現実的にはあまりに無駄で意味のないことだと教師たちのほとんどは考えているはずである。近年、教育界では上意下達の傾向が非常に強まり(それはあまりに従順な先生方に責任があるが……)、文部科学省も県教委も現場の実情からあまりに(本当にあまりにだ)乖離した理念や方策を押し付けてくる。今回の世界史未履修問題が学校側に原因があることは否定できないが、そろそろ文部科学省のあまりに現実と乖離した意味のない理念についしても批判する声があがるべきだろう。

 しかし、教員にそれは期待できない。組合も瀕死の状態で、教職員自身も牙を抜かれたイエスマンなのから。

 とさころで、学校が常軌を逸していることが否定すべくもないとしても、そういったことを要求・要望する生徒や父兄もどうかしている。最近、少し騒ぎたてれば゜学校は引き下がると思っている父兄が増えてきたが(実際すぐに引き下がる学校があるのはこまったことだ)、そういう土壌もあるのだろう。

 つづく