WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

マデリン・ペルーのケアレス・ラブ

2006年07月13日 | 今日の一枚(M-N)

●今日の一枚 3●

Madeleine Peyroux      careless love

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 マデリン・ペルー。最近聞いた女性シンガーの中ではピカ一だ。なんというか、翳りを感じるフィーリングがとても良い。アメリカ生まれだが、母親とともにフランスに移住。15歳で家をでてパリの街角で歌い、ついでバンドに加わりヨーロッパ各地を旅して歌ったという放浪の歌手だ。声量があるわけでも、テクニック的にすごいというわけでもないが、なんともいえない陰影のある歌い方をする。『Swing journal』2005.4月号は、「ビリー・ホリデイがシャンソンを歌ったらどうなるか。エデット・ピアフがジャズを歌ったらどんな風になるか---という興味に対する確かな答えがある」などとわけのわからぬ大絶賛をした(脱帽マークだった)。わたしは『Swing journal』誌のようには全然思わないが、まったくちがう意味において絶賛したい。

 ⑤between the barsがとても気に入っている。シンプルで暗い曲だが何か人生の悲しみを思わせる曲である。今、たまたま⑤が流れている。後ろで控えめに聞こえるオルガンの響きがたまらない。どうしようもない人生の悲しみを考えさせられてしまう。ああまずい、涙が出てきそうだ。

 8年前に発表した前作dreamlandもなかなか評判がよく、購入してみたが、私としては断然このcareless loveがお勧めである。先ほどの『Swing journal』誌ではないが、彼女に是非シャンソンの名曲を歌わせてみたい。『これからの人生』とか……。

 たまにではあるが、こういう歌手がでてくるからジャズ聞きはやめられない。


イ・ジュンシクのイン・ニューヨーク

2006年07月13日 | 今日の一枚(K-L)

●今日の一枚 2●

Lee Jung Sik         In New York

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 しばらくぶりに取り出して聞きました。なかなかいい。僕は好きです。韓国のSAXプレーヤー Lee Jung Sikの作品。数年前、仙台の「新星堂」ジャズフロアーでお勧め版として宣伝していたので、信じて買いました。よく見ると、パーソネルも

   Lee Jung Sik (ss,ts)

      Ron carter(b)

       Kenny Barron(p)

       Lewis Nash(ds)   

       Hino Terumasa(tp)

と、有名どころです。気負いのない、ストレートな演奏、溢れ出る歌心、繊細な表現。こういうのがいいんだよね。買ってよかった。以来、時々ターンテーブル(トレイ)にのるようになりました。いろいろ難しくなったジャズの世界だけれど、たまにはこういう作品を聞いて原点に返りたい。そういう意味では韓国ドラマの流行と通じるものがあるのかもしれない。

 ちょっと、私の感覚とはちがうんだなあという解釈の演奏もあるのだけれど、全体的な印象はGood。気に入っているのは、④My One And Only Love そもそも原曲が好きなのだけれど、はれものに触るように吹く繊細なSaxに感じてしまう。John coltrane & johnny hartmanの演奏にはちょっと及ばないけれど、十分お勧めできる聞く価値のある一枚だと思います。

 今日は帰りが遅かったのですが、疲れた体を癒し、自分を取り戻すのに十分に貢献してくれました。

                                              平泉澄