水素事始1

2023年05月15日 | 日記・エッセイ・コラム
 水素療法に関する商品は玉石混交で、宣伝文句にも未だ胡散臭い印象があることも確かです。
 一昨年には「水素水生成器」の販売・レンタル業者が消費者庁から景品表示法に基づく誤認排除措置命令を受けました。明確な根拠なく「水素水の摂取には、活性酸素除去、がん抑制、老化防止、美容効果、ダイエット、筋肉疲労軽減など、様々な効果がある」と表示して販売していたというのが、その理由です。
 私は水素を日常生活に取り入れて様々な効果を感じており、同業者の間でも水素愛好者は多いので、誤認を避けながら水素医療についてお話したいとおもいます。

Once upon a time
 かつて我々の先祖は40億年ぐらい前から海底火山の熱水噴出孔の周囲で、二酸化炭素をメタンに代謝しながら細々と生きていたと言われています。いわゆる古細菌(アーキア)です。そこから30億年くらい前に直接の祖先である核を持った真核細胞生物が現れ、25億年くらい前には、水と二酸化炭素からでんぷんを光合成し、酸素を放出する葉緑素を持ったシアノバクテリア、酸素を代謝するプロテオバクテリアが現れ、この二つのバクテリアが真核細胞生物の細胞内に共生するようになり、現在の植物の元になりました。
 かつて地球上の大気のほとんどは二酸化炭素だったのが、植物の繁栄による「大気汚染」が進み酸素が多くなり、現在の二酸化炭素濃度は4億年前の1万分のに減少しています。
 さて、ご先祖さまはプロテオバクテリアと共生することで、細胞内にミトコンドリアを得ました。ミトコンドリアが酸素を使って糖を代謝することで、メタン代謝や嫌気性呼吸とは比べ物にならないエネルギー産生が可能になり、動植物の急増、進化が始まります。現在の私たち人間の繁栄はすべてはミトコンドリアのおかげ、ということになります。

酸素は僕らの味方なのか?
 私たちの生きる源である「酸素」ですが、生物にエネルギーを与えてくれる半面、我々にとって不都合な面も持ち合わせています。例えばりんごの切り口は、放置しておくとペクチンが酸化されて茶褐色になります。鉄がさびて朽ちるのも酸素の仕業です。缶詰や真空パックの食品が長持ちするのは、酸素との接触を遮断しているからです。
 我々の細胞内でも酸素は悪さをしています。ミトコンドリア内で酸素が消費されて糖を代謝するときに数%の活性酸素が発生します。スーパーオキシド(O2-)、ヒドロキシラジカル(OH-)などの活性酸素は細胞毒性を持ち、我々の免疫能の一翼を担っており、がん細胞やウイルス感染細胞を攻撃してくれるのですが、過剰な活性酸素は我々自身の細胞も攻撃してしまいます。
 そんな諸刃の剣である活性酸素から我々自身を守るために、私たちはスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなどの抗酸化酵素を持ち、過剰な活性酸素を還元して無毒化しています。食事などで摂取するビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどの抗酸化物質も抗酸化酵素の活性を高め、活性酸素から私たちを守ってくれます。
 しかし活性酸素が増え過ぎると、こうした抗酸化防衛機構のはたらきを上回ってしまう「酸化ストレス」と呼ばれる状態になり、免疫機能の低下や動脈硬化の進行、がんの発症の可能性が高まります。また活性酸素は老化を進行させ、シワやシミの原因にもなります。
 活性酸素が増える原因として、紫外線や放射線、大気汚染、たばこやアルコール、肥満、過労や強いストレスなどが挙げられますが、それらを避けたとしても、私たちは活性酸素の害から完全に逃れることは出来ません。それは先祖が進化のクロスロードで、ミトコンドリアと手を握ったことで得た繁栄と引き換えの「身から出たさび」なのです。

そこで「水素」の出番です
 水素2分子は酸素1分子と結合し水2分子になります。
 反応性の高い活性酸素は抗酸化酵素の働きで、水素と反応して水になります。すなわち毒性の強い活性酸素が水素と結合することでH2Oとなり、無毒化されるのです。また水素がNrf2というたんぱく質の代謝経路に作用して、抗酸化酵素の活性を高めることもわかっています。
 これが水素の健康効果の根拠の基本です。
 しかしながら大気中に水素はほとんど存在しないため、人工的に取り入れるしかありません。(続く)