さいきんの流星光
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■映画のセリフを思い出す


遠い昔に見た映画で、

名もなき脇役が言ったセリフを

ある瞬間ふと思い出すことはありませんか。



僕はあります。


        ◇   ◇   ◇


映画『お葬式』に出てきた老人役者のお話です。

役者じゃないかも知れません。



うん、よくよく考えてみたらあのたたずまいは役者じゃないかも知れませんね。

なんか…、近所のおじいちゃんを引っ張ってきて

そこにいてもらった、みたいな感じの人でした。



■映画『お葬式』


『お葬式』というタイトルなので、

まあ、お葬式の映画なんですけど、

故・伊丹十三さんの映画監督デビュー作です。


それまで映画『家族ゲーム』や、

その他多数の作品に出演されていた役者さんなので、

お顔は知っていましたが、

この映画を観てブッ飛びました。


「なにこの人! 天才じゃん!」



その後、伊丹監督は、

『たんぽぽ』 『マルサの女』シリーズと、

スマッシュヒットを連発するワケですが、

その最初の1作目がこの『お葬式』でした。



■問題のシーン


お葬式のバタバタの中で、

すみっこの部屋で、

一人ソファに老人が座ってるんです。

89歳くらいでしょうかねえ。

正確な年齢は、もちろんわからないんですが、

白髪で、よぼよぼで、一日じゅうボーッとしてるような老人です。



        ◇   ◇   ◇


で、

葬式のドタバタの中でその老人の存在を完全に忘れてるんです。

シーンは昼間から夕暮れになり、夜になります。

まだ誰もその老人には気づきません。


完全に夜になって、老人のいる部屋は真っ暗に。

だけど、家じたいかなり広いので、使っていない部屋もたくさんあるのです。


お手伝いの主婦たちがどやどや入ってきて照明をつけたら

老人がじっとソファにすわていて、みんな驚くというシーンです。




主婦「あらあら、お爺ちゃんすいません。全然気づかなくて」

老人「いや、同じことだから」

観客はクスリときます。



■同じことだから


いま思うと、不思議なシーンでした。

「同じことだから」


「何が?」


当時ぼくは、

「目が悪いから暗くても灯りをつけても同じである」

くらいの意味に考えていたんですけど、

最近、変わってきました。



「同じことだから…」


「そうか。同じことなのか」

生きていても死んでいても、同じこと…

そういうことか?


いろいろな考えが頭の中でぐるぐる回ります。



■なぜ老人はボーッとしているのか?


老人といえば、ボーッとしているのが特徴です。

頭の回転も遅く、動きもゆっくりしています。

あまりシャキシャキしてる老人はみかけませんよね。

ちょっと痴ほう症入ってるのかな?

とか勝手に思ってますけど、本当にそうなのでしょうか?



■死ぬ前は無意識


これは、死ぬ直前に昏睡状態になるとか、

そういう意味じゃありません。


人は、死が近づくと、無意識に近い状態になるのではないか。

というのが僕の説です。


あらゆることを経験したご老人たちは、

ほぼ、何が起こっても動揺せず、

「どうでもいいです」

みたいな態度でやり過ごします。



なかなか出来ることではありませんが、

長い人生をいきてこられて達観されているのかも知れません。

それが進むと、普通では考えられないくらい「無意識」に片足つっこんでるような

ちょっとボーっとしてるような精神状態で、

日々、生活しているのではないか、と思います。

「意識がある」状態と「無意識」の中間くらいの精神状態にいるのではないかと僕は思っています。



■死ぬ準備


そんな老人たちに、僕はちょっと憧れをいだいてます。

僕も、死ぬ5年くらい前から、

じょじょに無意識になっていけないなかあ、とか。

最期は、ほとんど動かずに、

物質なのか生物なのかわからない状態で死を迎えたいです。

その時は、たぶん僕の周りには、誰もいないでしょう。

みんな死んでます。

両親も、兄弟も、妻も。

ユニやクジは、もうとっくの昔に死んでます。

新しい猫たちは、いるかな。



■まとめ


もっと老人を見ろ。ですね。

動かないのは、何も考えていないからではない。

もっと先を行っているからかも知れませんよ。






■流星光Twitter



Photo by Andres Salas on Unsplash

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長文におつきあいくださいまして、
ありがとうございました! <(_ _)>




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