ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

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フランスの国債、保有しているのは誰だ?

2011-08-31 21:45:16 | 経済・ビジネス
EUの財政問題は、なかなかすっきりと解決しません。ギリシャ支援にしても、返済を保証する担保をフィンランドが求めたり、デフォルトの恐れが消えないと囁かれたり・・・ギリシャ問題は、さらにポルトガル、スペイン、イタリアへも波及する危険性がくすぶり続け・・・

しかし、EUの問題は決して対岸の火事ではありません。日本の債務残高は、EU加盟国の比どころではありません。何しろ、財務省が策定した平成21年度末での国債発行残高は692兆円で、地方債も含めると891兆円。赤字時計によると、8月31日時点ですでに国の長期債務残高が約678兆円、地方分を合わせると約878兆円。毎秒、かなりの勢いで額が増えています。また、借入金や政府短期証券を含めるとおよそ1,144兆円に達しています。

これだけの借金ですが、日本の国債は国内の貯蓄だけで賄ってもお釣りがくると言われ、長期国債金利も1.2%台。すぐにEUと同じような財政危機に陥ることはないとも言われています。

では、EU加盟国の国債はどのような状況になっているのでしょうか。フランス国債を例に見てみましょう。10日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

フランスの国債を誰が購入し、誰が所有しているのだろうか。この質問は一見簡単そうだが、実は複雑だ。しかし、フランスの債務残高が、GDP比(仏語では、PIB:Produit intérieur brut)85%の1兆6,461億ユーロ(約181兆円)に達し、過去最高を記録。対前年で1,100億ユーロ(約12兆1,000億円)も増えている今、誰が所有しているかは戦略的にも重要なことだ。

国の債務残高は、3タイプに分けられる。中央政府が発行する国債、自治体が発行する地方債、行政法人などが発行する債券だ。

Insee(Institut national de la statistique et des études économiques:国立統計経済研究所)によれば、1兆6,461億ユーロの内訳は、大部分の1兆2,860億ユーロが国債で、地域圏(régions)、県(départements)、市町村(communes)の発行する地方債は1,560億ユーロ、社会保障関連の団体のものが1,910億ユーロ、そして中央官庁の外郭団体などが発行した債権が116億ユーロとなっている。

財政赤字が30年も積み重なり、現在フランス国債を所有しているのはさまざま機関になっている。外国政府、企業、大手銀行・・・こうしたところがフランスの長期国債の買い手となっている。フランスの誇る“AAA”という格付けのお陰で金利は低く抑えられている。国債を発行するフランス国債庁(AFT:Agence France Trésor)の最新の月例報告によると、償還期間によって1%から4%となっている。

国債は2種類に分類される。まずは長期国債。OAT(Obligatoires assimilables au trésor)で、発行済み国債のかなりの部分を占める。7年から50年までの償還期間で、固定金利、変動金利ともにある。次は、短期国債。償還期間が2年から5年のBTAN(Bonds du Trésor à intérêt annuel)と、5週から7週のBTF(Bonds du Trésor à taux fixe et à intérêt précomptés)の2タイプがある。

フランス国債のおよそ三分の一は国内の銀行やその他金融機関が購入している。特徴としては、銀行よりも、投資先として国債を購入する保険会社が全体の20%と多くを占めていることだ。他のEU諸国と異なり、フランスの銀行は自国国債の14%以下しか保有していない。

フランスの国債は65%以上が外国資本によって保有されている。2010年末ころには、70%ほどだったので、この数字は減少しているように見えるが、それ以前は、右肩上がりに増え続けていた。1993年には、わずか32%が外国資本に握られているだけだった。

EU内でフランスの立場は特徴的だ。シンク・タンク“Fondapol”(Fondation pour l’innovation politique:2004年4月に与党・UMPの支援で設立された財団で、経済成長、環境、価値観などについての研究、発表を行っています。名誉総裁は、ジャック・シラクの側近、Jérôme Monod)が4月に公表したデータによると、外国資本によって保有される国債の割合ランキングでは、フランスの65%は、ポルトガルの75%、ギリシャの71%に次いでEU加盟国では3番目に高くなっている。この点が、日本などの国との大きな違いとなっている。日本の債務残高はGDP比200%もあるが、その国債は基本的には国内の預金者によって保有されている。アメリカの場合は、債務残高の約三分の一が外国資本によって保有されている。

外国資本と一口に言っても、その形態はいくつかに分けられる。年金基金、大手銀行、保険会社、政府系ファンドなどだ。ではどの国がフランス国債を最も多く保有しているのだろうか。残念ながら、それを知ることは不可能だ。なぜなら、そうした情報を売り主以外に公表することは法律で禁じられているからだ。しかし、この点が問題なのだ。国債保有者がどこの誰なのかを知ることがいっそう重要になっているからだ。

国債の多くが外国資本によって保有されているという事実は、強みでもあり、弱みでもある。強みだというのは、それだけフランス国債に投資先としての魅力があり、市場が信を置いているということの表れだからだ。一方、弱みだというのは、世界の市場で売買されているだけに、フランス国債はいっそう世界の景気に左右されやすいということだ。フランスと同じように外国資本に多くの国債を依存しているギリシャとポルトガルはご存知のような状況になっている。

ユーロ圏の債務残高は、ユーロ圏内の国々によってお互いの持合いになっていることが多い。2010年には、外国資本によって保有されているフランスとドイツの国債の52%がユーロ加盟国によって保有されていた。従って、ユーロ建てによる決済が可能だ。また60%がユーロ圏にノルウェーやスイスなどを含めた広い意味でのヨーロッパ諸国によって保有されている。

このことは、財政危機が循環しないような対策を取ることができるという点で、安全だと言える。フランスは、7月21日の協定に従って、ギリシャ国債を買い足した。しかし、同時に、不安材料だとも言える。なぜなら、ユーロ圏のある国がデフォルトに陥ると、加盟各国と通貨ユーロが不安定な状態に追い込まれてしまうからだ。

外国資本によって保有されているフランス国債のうち、ヨーロッパ以外の国に保有されている、つまり国際市場に委ねられているのが40~48%になる。この部分が、景気のリスクや金融の変動に最も影響を受けやすい。

・・・ということで、日本でも報道されているように、日本の国債はほとんどが日本人や日本企業によって買われているので、市場で金利が急激に上昇したりする心配はないようです。一方、フランス国債は、その三分の二が外国資本によって保有されています。それだけ、いくら長期国債の格付けがトリプルAだと言っても、不安定になる可能性を否定できないようです。ひとたび、格付けが引き下げられれば、ギリシャの二の舞になってしまいかねない・・・

日本の国債をめぐる状況は、未だ鎖国状態とも言えるのかもしれません。だからこそ太平の眠りを楽しんでいられるのでしょうが、ひとたび黒船がやってくると・・・現状では、何も外国資本に日本の国債を保有してもらう必要もないのでしょうが、もしそうせざるを得ないような状況に立ち至った場合を想定して、対策を講じておくことは必要なのではないでしょうか。根拠のない楽観主義の上で惰眠を貪っていては、いざ事が起きた時に、効率的な対応ができないことは、今までの歴史が物語っています。

あまりに多い債務残高。瓦解する前に、どう解決するのか、国民的コンセンサスを得ることが急務なのではないでしょうか。政治の独断ではなく、国民との対話を通して、ぜひ新内閣には、解決の糸口を示してほしいと思います。
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論点の見えない、フランスの社会党予備選挙。

2011-08-29 22:13:44 | 政治
フランスでは、来年の大統領選挙へ向けて、社会党の公認候補を選ぶ予備選挙まで一月半となりました。世論調査では、6人の立候補者の中で、フランソワ・オランド(François Hollande)前第一書記が先行し、マルティーヌ・オブリー(Martine Aubry)現第一書記が追う形勢になっています。

フランス人、それも政治家が6人も集まれば、それこそ喧々諤々、口角泡を飛ばさんばかりの論戦が行われているに違いないと思ってしまいますが、あにはからんや、静かなスピーチが繰り返されているようです。従って、明確な主張の違い、政策の差が見えてこない・・・

国会議員はお互いの政策や、候補者の人柄もよく知っているからいいでしょうが、投票権を持っている多くの党員は困ってしまうのではないでしょうか。マスコミなどを通しての、漠としたイメージはそれぞれの候補者に持ってはいるものの、社会党候補有利という世論調査ですから、新たな大統領を選ぶ選挙となるかもしれない、今回の予備選挙。しっかり、その政策を聞いて投票したいものですが、論戦がヒートアップして来ません。

欧米が日本化してきている、と一部報道で言われています。政策論争がない社会党予備選もその一端ではないか、と思われてしまうほどですが、実際はどのような状況なのでしょうか。27日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

オブリー陣営は、攻勢に転じることにした。世論調査では、オランド候補に離されているが、予備選挙まで6週間となり、リール市長でもあるオブリー候補は、ラ・ロシェル(La Rochelle:ボルドーとナントの間、Poitou-Charentes地域圏にある、大西洋に面した市)で始まった恒例の夏の党大会の初日をライバルであるオランド候補への本格的な攻撃の日にしようとした。

まず、朝は公共ラジオ局“France Inter”の番組で、社会党第一書記としてのオランド候補の仕事ぶりを非難。2008年に第一書記のポストを引き継いだ時、社会党は哀れを催すような状況だった、と語っている。同じタイミングで、彼女の側近の一人であるジャン=クリストフ・カンバデリ(Jean-Christophe Cambadélis)は、自らのブログで、オランド陣営が望んでいる「静かな予備選挙」を激しく非難した。

攻撃は、すでに始まったと言える。党員やジャーナリストが集まる夏の党大会初日に脚光を浴びようと、マルティーヌ・オブリーは演説を連続して行った。最初の演説は、国内各地へメッセージを届ける役割を担った地方組織の代表者を前にしたものであり、そして二つ目は、支持者の前で行われた。会場となった部屋は満員で、演説は勇ましいものとなった。オブリー候補は、サルコジ大統領を非難したが、フランソワ・オランドへの批判も忘れはしなかった。彼の名は持ち出さないものの、ニコラ・サルコジに対峙する際には、確固たる決意をもたなくてはいけない、例えば兼職など重要テーマについて語ることを躊躇してはいけない、などと語った。対立候補へのとげのある言葉だが、例として挙げたテーマは多くの社会党議員が関わってくるものだけに、深入りはしなかった。

二つの集会の後で、オブリー支持者たちはオランド候補への批判を続けた。オブリー陣営の戦略担当者であるギヨーム・バシュレイ(Guillaume Bachelay)に倣って、フランソワ・オランドの緊縮策に関する演説は、現政権の緊縮政策と大きくは変わらない、と批判したのだ。

フランソワ・オランドに対してマルティーヌ・オブリーが有利になるよう、彼女の側近たちは、予備選の投票者として社会党員だけでなく、すべての左翼支持者をも惹きつけようと画策している。ジャン=クリストフ・カンバデリは、100万人の投票者を期待しているが、実際に投票行動に移るのは最も忠実な社会党員たちであろうと予想している。公務員、教員、教授、組合などの団体活動家が目立つだろうとして、肝腎な点は、こうしたコアのターゲットに、大統領選にとらわれ過ぎずに、自らの政策を語りかけることだ、と述べている。

オブリー候補の2回目の演説は、党大会出席の全員が初めて集まった場で行われたが、そのテーマは財政危機で、オブリー候補は自らの考えをいかに現実に適応させるかについて語った。サルコジ政権の予算・財政策を批判し、右翼は事態の改善を願っているだけだと糾弾。「他に方法はないのだと言いながら、フランス国民を危機に陥れた」と語り、2012年の政権交代は単に緊縮策の上にさらに緊縮策を加えるものではなく、成長の道を再発見することであり、重要なことは変革することだと、明確に語った。

左翼の考える政策を実行しつつ、財政赤字を減らすことは可能だとマルティーヌ・オブリーは考えている。国債発行の削減に自らの足場を置いているフランソワ・オランドとの違いの一つであり、「私はかつて大臣として社会保障の再建と国民皆保険の実現を同時に行った」と実績を強調している。そして、社会党左派の中心人物、アンリ・エマニュエッリ(Henri Emmanuelli)を称賛し、欧州の保護主義の端緒を開いた彼の公正な貿易という考えを継承すると、述べている。

彼女の演説は拍手喝采だったが、外部の人間からは、どうしても主要な候補者二人の間に違いが見えてこない。社会党員同士の激しい論争があるのではないかと言われていたこの日、とうとう二人の候補者の間に対立らしい対立は起きなかった。フランソワ・オランドはライバルの意見に直接的に答えるのを注意深く回避していたし、自分のキャンペーンをよりよく遂行するために、論争には見向きもしなかった。オランド陣営支持者の一人、ミシェル・サパン(Michel Sapin)は、「焦らず遅れず、いつものリズムで行こう、これがスローガンだ。かなり大きな力になる」と語っている。

25日の夜にラ・ロシェルに到着した後、党員、ジャーナリスト、地元民と意見交換するなどしたフランソワ・オランドは、27日の夜、部屋いっぱいに詰めかけ、ボルテージも上がった支持者らを前に、ミッテラン元大統領のような口調で演説を行った。「私の唯一の関心は、勝利するために活動することです。みなさんにはお互いに戦ったりしていただきたくない。我々の間に、どのような違いがあるのでしょうか。みな同じ構想を持っているのですから」と語りかけた。しかし、ここにこそ、予備選を理解難しくしている原因の一つがある。候補者の誰かが論争を仕向けると、すぐその門は閉じられてしまうのだ。

・・・ということで、社会党は予備選による党分裂を回避すべく、ディベートを避けているようです。予備選に勝利した公認候補を、挙党体制でサポートしよう、あるいはサポートしてほしいという思いがあるのでしょうね。フランソワ・オランドの後任第一書記を選ぶ際には、かなり激しい選挙戦が行われ、党内に不協和音も出ました。そのことが一種のトラウマとなり、来年の大統領選本番へ向けて、党内対立は避けたい、という思いが強いのかもしれません。

一方、我が国の民主党は、党所属の衆参両議員の投票で、5人の候補者から野田財務相を新代表に選びました。公示から投票まで二日とちょっと。本格的論戦など、期待する方が間違いというスケジュールゆえ、論争による党内分裂は考えられませんが、今までと同じく、反小沢、親小沢という政界雀の分かりやすいレッテル貼りが解消されず、党が大きく二つに分かれ、ねじれ国会プラス党内不一致のままで、政治が停滞し続けるのでしょうか。それとも、人事に示された挙党体制により党がついに一つにまとまり、野党との協議もスムーズに進み、久々に政治が前を向いて歩き始めるのでしょうか。さて、どうなりますか。

新首相の話題、例えば家族構成、子どもの頃の素顔、思わぬ一面・・・そうしたゴシップ的プロフィール紹介で盛り上がるのも数カ月。その後は、一転、粗探し。批判の連続に支持率も下がり、来春ころには退陣はいつかが話題になる。そして来年9月の代表選へ向けての話題で再び盛り上がる。毎年首相が替われば、同じサイクルでマスコミに格好の話題を提供することになります。政局の話題で、視聴率が上がる。発行部数が伸びる。実は、マスコミがこの1年サイクルの発案者であったりして・・・そう思えてしまうほど、首相がよく替わり、政局の話題には事欠かない日本の政界ですね。
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テディ・リネール、柔道の生ける伝説となる。

2011-08-28 22:51:30 | スポーツ
時差の関係か、日本勢があまり振るわないせいか、はたまた「なでしこフィーバー」の割を食ってしまったのか、今年の柔道世界選手権に日本ではあまりスポットが当たっていないような気がします。

開催地は、パリ。会場は、スポーツ大会の会場としてお馴染みのベルシー(Palais omnisports de Paris-Bercy)。12区、セーヌに面しています。

日本勢の戦績は、団体戦を除いて、男子は金2個、銀2個、銅1個。女子は、金3個、銀4個、銅3個でした。メダル数では1位の座を守りましたが、男子の中重量級では金がゼロ。66kg以下級と、73kg以下級での2個だけでした。しかも、100kg以下級と100kg超級では、メダルゼロ。来年のロンドン・オリンピックに向けて、抜本的対策が必要になっているようです。

メダル獲得数2位の座は、フランスが占めています。男子が金1個、銅1個。女子が金3個。地元開催ということもあり、メダルの獲得は、夜8時のニュースでも大きく報じられていました。女子の63kg以下級、70kg以下級、78kg以下級と続けて金メダルを取ったのは、まさにゴールドラッシュといった感がありました。そして、女子選手の活躍以上にフランスの柔道ファンを熱狂させたのが、男子100kg超級で優勝したテディ・リネール(Teddy Riner)選手。2007年、リオデジャネイロの世界選手権で優勝して以来、多くの優勝を果たしてきている、フランス柔道界のヒーローです。

テディ・リネール・・・1989年4月7日生まれ。まだ22歳。カリブ海にあるグアドループ(Guadeloupe)出身。パリで柔道の修業を積む。204cm、138kg。2007年のリオデジャネイロ、2008年のルヴァロワ・ペレ(Levallois-Perret:パリのすぐ北西の郊外)、2009年のロッテルダム、2010年の東京、そして2011年のパリと世界選手権重量級で5度の優勝(08年のみ無差別級、他の大会は100kg超級での優勝)。今まで世界大会で負けたのは2度だけ。2008年の北京オリンピックでは銅メダルに終わり、昨年の世界選手権東京大会では、100kg超級では優勝したものの、無差別級では上川大樹選手に決勝で敗れ、銀メダル。今までのキャリアで世界の大会では2敗だけと、圧倒的強さを誇っている。

この、テディ・リネール選手が地元開催の世界選手権100kg超級で優勝した時の喜びの声と関係者の興奮ぶりを27日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。誰がどのようなことを語っているのでしょうか・・・

表彰式の壇上で、テディ・リネールに金メダルをかけてあげながら、ダヴィッド・ドゥイエ(David Douillet:柔道家、後、政治家。オリンピックで金2個、銅1個、世界選手権で金4個。2009年から今年7月まで与党・UMP所属の国会議員。今年6月からは、在外フランス人担当特命大臣)は、テディ・リネールに「オリンピック、あと3回頑張れよ」とささやいた。歴史上、最強の柔道家と優勝記録保持者との間でのシンボリックなバトンの受け渡しだ。柔道界において、この二人くらいしか並び立つ者はいない。

27日、テディ・リネールは優勝回数を積み重ねる上で、大きな一歩を踏みしめた。2007年のリオ、2008年のルヴァロワ、2009年のロッテルダム、そして2010年の東京と同じように、グアドループ出身の柔道家は今本拠としているパリでの世界選手権で5度目の優勝を勝ち取った。メダルの色はいつも同じだが、彼にとって今年の大会は今までとは大きく異なっていた。2007年と今年の彼の柔道を比べれば、この柔道の巨人がいかに長足の進歩を成し遂げたかは一般観客にも一目瞭然だった。

今年の大会で、決勝まで勝ち進むのにわずか7分しか要さなかった。まったく危なげなく、テディ・リネールは観客に、そして対戦相手にさえ柔道とはなにかを見せつけたのだった。「もし自分が子どもたちに柔道を教えるなら、今日のテディの試合を見せればそれで済む」と、ダヴィッド・ドゥイエは語っている。それというのも、防御、移動、時宜を得た攻撃と、テディは完璧だった。「それは、猛烈な練習の成果だ。2010年の東京大会では、無差別級決勝で敗れたが、その敗戦以降、以前にも増して厳しい練習を自らに課すようになった。二度と繰り返したくないことは、勝負を審判の判定に委ねることだ。そのためには、文句の付けようのない一本で勝つことが必要なのだ」と、テディ・リネールは述べている。

すでに今年の2月、パリ国際でテディは技の上での成長を見せていた。ロンドン・オリンピックが近づくにつれ、新しい技を見せてくれたのだが、今日のレベルまで上手く、強くなるとは誰も思っていなかった。以前の得意技と言えば、大外刈りと払い腰だけだったが、これに内股、絞技、大内刈りを加えた。今大会の決勝でドイツのAndres Toelzerを破ったのも、この大内刈りだ。ダヴィッド・ドゥイエでさえ口をぽかんとあけたままで、「このようなレベルにまで達していたかった」とため息をついたほどだ。

テディの見事な柔道に感動して、73kg以下級で銅メダルを取ったウーゴ・ルグラン(Ugo Legrand)も、INSEP(l’Institut national du sport, de l’expertise et de l’éducation physique:国立スポーツ体育研究所)の同僚の優勝を祝福せずには居られなかった。「彼は生ける伝説だ。けた外れに強いチャンピオンがいることは、われわれの誇りであり、別次元にいる彼の存在が、我々を一歩でも上のレベルへと導いてくれる」と語っている。

・・・ということで、ダヴィッド・ドゥイエといい、テディ・リネールといい、すごい実績ですね。今や、柔道の競技人口では、日本をしのぐフランス。名選手が出てくるはずです。

日本柔道は、「本家の威信にかけて」というプレッシャーも背負いながらの戦い。勝って当たり前、という空気の中での試合ですから、たいへんなプレッシャーなのでしょうね。その中で優勝してきた選手たちは、すごいと思います。

オリンピックの時は、当然金メダル、という気持ちで勝手に応援してしまいますが、「柔道」から“Judo”になって久しく、さまざまな国から強豪が生まれています。そう簡単に勝てるわけではないのでしょうね。それでも、日本語で行われる競技だけに、どうしても期待してしまいます。

期待するなら、応援も4年に1度ではなく、毎年の世界選手権でもしっかり応援したいものですね。頑張れ、ニッポン柔道!
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親はなくとも、子は育つ。政治家はなくとも、国は復興する。

2011-08-26 21:33:58 | 社会
「親はなくとも、子は育つ」といえば、戦後の復興期、親を失ったものの、逞しく生きていく子どもたち・・・そんなイメージを勝手に思い浮かべてしまうのですが、今日では実の子を虐待する親、引き取った子を殺す里親、前妻や前夫の子どもを虐待し、殺す親たち・・・親がいるから、子は殺される、そんな時代になってしまっているような気がします。こうした時代に、政治はどうなっているのでしょうか。

首相の任期は1年と決まってしまったようで、永田町だけで生きている人たちの権力闘争が繰り広げられています。菅首相が民主党の代表を辞任し、30日には新首相が指名される予定です。3・11以降の対応を見ていても、政治家に見捨てられた国民、といった感じがしてしまいます。もはや、お上は助けてくれない・・・

そこで挫けてしまうのか、それとも、それなら自分たちだけで立ち上がろうとするのか・・・日本国民の選択はどちらなのでしょうか。日本国民が進もうとしている方向を、フランス人・ジャーナリストの視線で追った記事が、24日の『ル・モンド』(電子版)に出ていました。記者の名は、フィリップ・ポン(Philippe Pons)氏。さて、どのような日本国民が描かれているでしょうか・・・

もちろん、自慢するようなことではない。日本の国民総生産は第二四半期に0.3%減少し、どのようなものであれ、首相が何か大きな変革をもたらしてくれるとは、誰も期待していない。8月下旬にいくつかの法案が成立するや、不人気な菅首相の日々は終焉を迎える。3月11日の災害は、何年も前から政治闘争に明け暮れ、国民に明確な指針を示すこともできない日本政治の深刻な危機を、より一層明らかなものとした。

福島原発での原子力災害は、政治家、官僚、企業の共謀の上に成り立っている権力構造の誤りをドラマティックなカタチで明らかにした。その三者によるトライアングルは、怠慢によるものか、冷笑主義のなせるわざか、国民を受け入れ難い危機へと向かわせた。そして、日本は希望を失ってしまうのだろうか。3・11の大災害は、幾人かの例外はあるにせよ、政治家と国民の間に長年かかって掘られてきた溝を一層深いものとしてしまった。しかし、少しでも視点を移し、永田町を忘れてしまえば、日本の現状は、バラ色とは言えないにせよ、異なったものとして見えてくる。

クルマやエレクトロニクス関連企業など、震災地域でのサプライチェーン崩壊の影響を受けた企業は多いが、それでも日本経済は予想以上に持ちこたえている。円の為替レート急騰など世界経済の影響も輸出企業に重くのしかかっている。しかし、その影響は2008年の金融危機よりも小さい。

節電にもかかわらず、クルマやエレクトロニクス関連企業は、生産を再スタートさせた。個人消費も回復の兆しがあり、被災地への公共投資が芽生えている回復基調を後押ししている。日本の生産力には余力があり、3.11以後の要求に答えて、新たな産業構造を見出すことだろう。しかし、真の復興力は、そこではない別のところにあるようだ。

世界は、大災害に対峙した被災地の人々を、静かで、威厳を保ち、冷静だと評した。要望することへの対応が遅く、被災者は本当に大きなフラストレーションを抱えていたにもかかわらず、盗難も殆どなく、略奪や争乱となるようなデモもなかった。だからと言って、日本人は無気力だというわけではない。対応の遅さへの怒りはブログに溢れた。特に社会的な怒りの津波は、市民が抱いていた政治家への幻想のかけらを静かに一掃してしまった。

50年以上にして初めての政権交代だった民主党政権の誕生から2年、変革への期待はすっかりしぼんでしまった。菅首相の不人気はその国民の幻滅を凝縮している。しかし、その不人気は逆説的なものだ。内閣支持率は16%にも達していないが、原発なき社会という提案は多くの世論の支持を得ている。それにもかかわらず、菅首相を信頼する人は誰もいない。

被災地域の小さな町や村では、国会議員の不在感に驚きを禁じ得ない。国会議員たちは、来たかと思うと、すぐ帰ってしまう。一方、被災地の市町村長や地方議員、市民団体は苦境から脱するべく多くの作業を自発的に行っている。試練によっていっそう絆を深めた地域社会は、地域住民と全国から集まったボランティアとによって支えられている。若者を中心とした100万人ものボランティアが1日から数週間まで、期間はさまざまだが、どんな作業でも構わないから救援の輪に加わろうと集まったのだ。

彼らの行動は多様で細分化されているため、どう評価していいか、難しいものがある。しかし、現地では彼らの行動はやはり突出して目立っている。後は、中央省庁が復興計画を決定したのち、そのプランと彼らの行動をどうコーディネートしていくかだ。県知事や市町村長、地方議員たちはそれぞれに働いているが、予算の地方配分が不十分なため、十分な財政をもって自主的に行動することができずにいる。

アメリカ人の日本政治学者、ジェラード・カーティス(Gerald Curtis)によれば、近い将来、強力で効率的な政府が日本に誕生するとは予想し難いことだそうだ。しかし、今回のような市民の活動がロビイストによって牛耳られていた民主主義を市民の手に取り戻す原動力になるかもしれない。市民の参加が一地方に留まらないだけに、より一層その可能性がある。企業の支援もボランティを後押しした。日本企業はもちろんだが、フランス企業など外国企業も、現地で活動するNGOを通してボランティ活動に参加する社員を支援した。大きな人道的組織も被災地支援を旗揚げしたが、現地の必要性とはかけ離れ、官僚的作業の遅さにより支援予算は部分的にしか配分されていない。

目下のところ政治の力によるものではないが、今回示された国民的連帯によって地域社会の絆はいっそう強固なものになっている。日常生活を一日でも早く取り戻そうと頑張っている人々の活動を、政治家たちは永田町という外界の見えない壺に閉じこもったままでいつまで見えない振りをすることができるのだろうか。

・・・ということで、3・11の災害に対して発揮された国民の連帯感は、政治を家業とする人々やその周辺に巣食う政治のプロが取り仕切ってきた民主主義を市民の手に取り戻すきっかけになるのではないか、という希望が語られています。そうあってほしいと思います。

国民不在、選挙の時だけのリップサービス、献金者など直接的支援者だけへの利益誘導・・・そうした政治から、国民が主役の政治へ。そのためには、はたして政治家は必要なのかどうか。そこから議論を始めたほうがいいような気さえしてきます。

国民は自らにふさわしい政治しか持てない、と言います。政治を変える第一歩は、国民が踏み出すべき。今回の大震災に対して示された連帯感が、その一歩になるのかもしれません。企業も、自らの生き残りのために、お上の判断を待たずに、自ら行動を始めています。国民も、お上頼みを諦めて、自主的に行動をし始めているのかもしれません。

東日本大震災が最も大きな、決定的な亀裂を入れたのは、実は国民と政治の間だったのかもしれません。そして、戦後体制に別れを告げ、21世紀型の社会体制へと移行する第一歩になるのではないでしょうか。そうなってほしいと思っています。
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テレビ局“France 3”は、フランソワ・オランドに賭けた!

2011-08-25 21:54:44 | 社会
民主党の代表選挙は、短期決戦。しかも、乱立模様。一方、同じ乱立でも、フランス大統領選挙は、長丁場。来年春の本番へ向けて、各党の公認選候補を選ぶ予備選が行われています。野党第一党・社会党の予備選はこの秋ですが、現第一書記のマルティーヌ・オブリー(Martine Aubry)と、前第一書記のフランソワ・オランド(Hrançois Hollande)、この二人のいずれが社会党候補となっても、現職のサルコジ大統領より優勢だと、ヴァカンス前の世論調査は伝えていました。この夏の財政危機・金融危機の後で、どのように変わっているでしょうか。

ところで、テレビ局が、再選された大統領か、新たに選出された新大統領の選挙戦に密着取材し、ドキュメンタリー番組として、選挙後に放送することがよくあります。日本では、NHKがよくやっていますね。NHKのように予算があれば有力候補、数人に密着取材できるのでしょうが、それが無理な場合は、誰か一人の候補者に賭けるしかない。当たれば見事なドキュメンタリー番組になりますが、外れた場合は・・・

来年の大統領選挙へ向けて、“France 3”が賭けたのは、フランソワ・オランド。どのような背景で、社会党前第一書記が有力と判断したのでしょうか。22日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

大統領選挙まで一年を切って、France 3はフランソワ・オランドを選んだ。公共放送であるFrance 3は、コレーズ(Corrèze)県選出の国会議員で、社会党の予備選挙に立候補しているフランソワ・オランドの選挙戦を取材できるよう申し込んだところだ。週刊誌“Express”と出版社“les Editions du Seuil”の元社長、ドゥニ・ジャンバール(Denis Jeambar)と、ジャーナリスト・映画監督のステファニー・カイム(Stéphanie Kaïm)が企画・制作を担当し、プロデューサーは数々の話題作を手掛けてきたシリル・ヴィギエ(Cyril Viguier)が務める。

「大統領選の期間中、フランソワ・オランドに密着することになる。選挙運動の中で、外で、彼をフィルムに収めるつもりだ」と、ジャンバールは語っている。52分のドキュメンタリー番組は、来年の5月、決選投票直後に放送される予定だ。決められた予算は16万ユーロ(約1,760万円)で、その内の11万ユーロ(約1,210万円)を局が負担する。

もしフランソワ・オランドが社会党の予備選で負けた場合はどうするのだろうか。「2012年5月、フランソワ・オランドは共和国大統領に選出されるだろう。私は昨年9月、すでにそのことを上院の放送局“Public Sénat”(Canal 13を通して、下院のチャンネルLCPと交互に放送されています)で語っている」と、ジャンバールは述べている。彼は、いつも素晴らしい予想をするようだ。すでに、「1994年にジャック・シラクの当選を予想していた」と実績を語っている(ジャック・シラク<Jacques Chirac>が最終的に勝利したのは1995年5月7日。第1回投票の前までの世論調査では同じ右派の現職首相、エドゥアール・バラデュール<Edouard Balladur>がリードしていましたが、第1回投票で3位と敗れ、決選投票はジャック・シラクと社会党のリオネル・ジョスパン<Lionel Jospin>の戦いになりました。この選挙でニコラ・サルコジはバラデュールを支持し、ジャック・シラクとの間に溝ができてしまいました)。

自分の予想に自信を持つジャンバールは、選挙期間中のドキュメンタリー制作を受け入れてもらおうと、すでに昨年秋からフランソワ・オランドに張り付いていた。「当時は、誰もフランソワ・オランドの周りに寄り付いてはいなかった」と、ジャンバールは皮肉っぽく語り、「その時から、フランソワ・オランドと私は信頼関係を築いたのだ。特に、私はオランドの勝利を信じた最初の一人だったからだ」と指摘している。2人は2009年にすでに出会っている。2008年11月に第一書記は退任したものの、社会党幹部であるオランドは、対談集“Droit d’inventaires”を出すにあたって、出版社をSeuilに決めたが、当時の社長がジャンバールだった。「その時が大統領選へ向けての第一歩だった」と、ドゥニ・ジャンバールは懐かしそうに思い出している。

「ドキュメンタリーでは、共和国大統領がいかに選挙を通して鍛えられていくのかを示したい。原則はつねに身近にいることだ」と、ジャンバールは語っている。オランドも積極的に協力することに決めている。通常の撮影に加えて、「長いインタビューを行うため、毎月、定期的に時間を取ってくれることになった」そうだ。

France 3は、この提案にすぐさまゴーサインを出した。というのも、ヴィギエとジャンバールはすでにオランドと協定を結んでいたからだと、局の役員、フランソワ・ギルボー(François Guilbeau)は説明している。ヴィギエはサルコジ・シンパだと言われているが、その評判をギルボーは否定し、「ヴィギエ氏は信頼できるプロデューサーだ」と、擁護している。ヴィギエは現在のFrance 5の設立者の一人で、番組局長を務めており、その時、ジャンバールをデビューさせたのだ。決して門外漢ではない。ヴィギエは実際、アメリカ大統領を扱ったドキュメンタリーをプロデュースしてきている。2004年にドナルド・レーガンを描いた作品、2011年にジミー・カーターを取り上げた作品。また、ブッシュ親子にスポットを当てた作品は、現在撮影中だ。「France 3は目下のところ、フランソワ・オランド以外に密着取材する予定はない」と、ギルボーは強調している。マルティーヌ・オブリーについてもだ。「ただし、もし状況が彼女に有利になれば、話は別だ・・・」と、ギルボー。

・・・ということで、フランソワ・オランドが大統領に就任した暁には、選挙期間中の様子を裏から表から、様々に紹介する密着ドキュメンタリーをオンエアする計画のFrance 3。しかし、選挙は水もの。テレビ局としては、一種の賭けですね。当たれば、高視聴率が期待できるでしょうが、外れたら・・・

他局は、他の候補者に的を絞った、同じようなプランを持っているのでしょうか。デジタル化(アナログ放送の終了が、フランスでは今年の11月29日、EUとしては来年の1月1日)に伴う多局化で、局間の競争も激しくなっているのではないでしょうか。いくら公共放送と言っても、テレビ・コマーシャルが入るわけですから、視聴率は気になるところだと思います。

フランスで、テレビと言えば、すぐ非難されるのが、広告。下劣なコマーシャルが映像文化のレベルを下げている(CMは芸術作品ではないのですが・・・)。コマーシャルが入る時間だけ、肝心の番組が短くなってしまい、残念だ。

一方、我らが日本では、1957年に発表された大宅壮一の「一億総白痴化」以来、テレビ自体への懐疑的な見方があり、テレビを見ないという方、あるいはテレビを子どもには見せないというご家庭もあります。しかし、それでも、見て良かったと思える番組は多くありました。しかし、今や、芸人の作り話によるばか騒ぎばかりで、時間の無駄としか思えません。昔の番組は、良かった・・・完全に、年寄りの台詞です。

しかし、テレビへの批判は多く出されています。その中で、思わず膝を打った一文を、以下に紹介させていただきます。

 総視聴率の低下に加え内外から寄せられる批判――テレビの凋落に歯止めがかからない。それはなぜなのか、神戸女学院大学名誉教授の内田樹氏が分析する。
 CMを流すことと引き換えにクオリティの高いコンテンツを視聴者に無料提供するという民間放送というアイディアは20世紀で最も成功したビジネスモデルである。このシステムは絶対に手放してはならないと私は思っている。だが、このすぐれたビジネスモデルを破壊しているのはテレビ業界自身である。
 草創期のテレビにかかわったのは、1960年安保闘争に敗れ、就職先もない“やさぐれた”人々だった。先行モデルもなく制約もない中でこの世代のテレビマンたちは高い創造性を発揮した。
 だが、この華やかな成功が結果的にテレビを破滅へ導くことになる。一流大学出の秀才たちがテレビ界に殺到してきたからだ。
 秀才は本質的に「イエスマン」であり、前例を墨守し、上司の命令に従うことはうまいが、クリエーション(創造)にも冒険にも興味がない。安定した組織を維持し、高給や特権を享受することには熱心だが、危機的状況への対応や新しいモデルの提示には適さない。
 草創期の冒険的なテレビマンが姿を消し、成功した先行事例を模倣することしかできないイエスマンがテレビ界を独占するに至って、テレビからは創造性も批評性も失われた。
 この先テレビが復活する可能性があるとすれば、一度どん底まで落ちて、世間から「テレビマンは薄給で不安定な職業」と見なされ、秀才たちがテレビを見限った後だろう。
(週刊ポスト2011年8月19・26日号:電子版)
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DSK、訴追を免れる・・・フランス政界の反応は、いかに。

2011-08-24 21:30:53 | 政治
日本でも報道されましたように、ドミニク・ストロス=カン(Dominique Strauss=Kahn:DSK)前IMF専務理事への訴追が取り下げられました。

DSKはソフィテル・ホテルの客室係、ナフィサト・ディアロさんへの強姦未遂・性的暴行などの罪状で拘束され、IMF専務理事の地位も失いました。しかし、DSKと有名人の裁判を多く扱ってきた敏腕弁護士は、ディアロさんとの性交渉はあったが、同意の上だったと、嫌疑を否定していました。一方、検察側は有罪にできると自信を持っていましたが、事件後の行動をはじめ、多くの点でディアロさんの説明におかしな点やウソが見られ、このままでは陪審員の信用を得られないと判断。訴追取り下げの決断を下しました。

ニューヨークの裁判所が検察からの訴追取り下げ申請を23日に認めたわけで、これでDSKはとりあえず晴れて自由の身。24日には取り上げられていたパスポートも返還されるそうで、間もなくフランスへ戻ってくるものと思われます。

あの、DSKが帰ってくる! 5月14日の逮捕以来、ダントツのトップランナーだったDSK抜きで大統領選への動きが加速していたフランス政界。このタイミングで、「DSKが戻ってくる」という情報に接し、どのような反応が示されているのでしょうか。23日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。ただし、検察の訴追取り下げが公になったものの、ニューヨーク州裁判所の決定が出される前、というタイミング(フランス時間、23日午後4時57分)で公表された記事です。

23日、DSK事件に終止符が打たれそうだという見通しに、彼の友人たちは安堵感を表明しているが、一方、アメリカの裁判所が出すであろう決定を残念だと嘆くフランスの政治家たちもいる。

例えば、セーヌ・サン・ドニ(Seine-Saint-Denis)県選出の共産党下院議員、マリー=ジョルジュ・ビュッフェ(Marie-George Buffet:1997-2002年に青年・スポーツ相、2001-2010年にフランス共産党書記長)。彼女は今回のアメリカ司法による決定を、正義にとっても、女性にとっても間違った決定だと非難。「検察の決定は、女性の権利を、強姦はその被害者に基本的には非があるとする時代、強姦が犯罪と見做されない時代へと逆戻りさせる恐れがある。今日まで、無罪となる被告にも、被害者とされる原告にとっても、真実が語られてはいない」と、さっそく用意したコミュニケの中で語っている。

与党・UMP(国民運動連合)のジャン=フランソワ・コペ(Jean-François Copé)幹事長はDSKにとって幸いな決定だと述べているが、同じUMP所属でも、ノール(Nord)県選出のフランソワーズ・オスタリエ(Françoise Hostalier)下院議員は、DSKに対する検察の訴追取り下げを驚きであり、かなりのショックだと受け止めている。そして彼女は、「民主主義を代表することにまったく値しない人間をフランス政界から放擲することができて良かった。客室係がフェラチオをDSKに強要されたことを示す物質的証拠が科学的に認められているのにも拘らず、独立した存在だと自ら語っている検察は訴追しないことに決めてしまったのだ。フランスでなら、こうした決定は、正義を否定するものと見做され、検察官は担当を外されることになる。この悲惨な事件の第一段階、その結論は、フランスの司法の方がアメリカの司法よりもすばらしい、ということだ」と、語っている。

大統領選への社会党予備選へ立候補している政治家たちの反応は、微妙に異なっている。第一書記のマルティーヌ・オブリー(Martine Aubry)は、幸いな結末に大いなる安堵感を抱いていると語り、マニュエル・ヴァル(Manuel Valls)は、DSKにとってあまりに大きな損害だったと残念がっている。一方、セゴレーヌ・ロワイヤル(Ségolène Royal)とアルノー・モントゥブール(Arnaud Montebourg)は、コメントを差し控えている。

そして、社会党所属の下院議員にして、強姦未遂でDSKを訴えている作家・ジャーナリストのトリスターヌ・バノン(Tristane Banon)の母でもある、アンヌ・マンスレ(Anne Mansouret)は、心の底から憤慨している、と語っている。

しかし、政界の大勢は、右であろうと左であろうと、アメリカの司法の決定をポジティブなものと歓迎している。DSK支持者であったが、今はフランソワ・オランド(François Hollande)の選挙コーディネーターとなっているピエール・モスコヴィチ(Pierre Moscovici)は、DSK本人に、そして彼の家族に対して愛情あふれるコメントを寄せ、「この試練によってDSKは変わるだろう。個人的に立ち直るまでの猶予を与えるべきだ」と語っている。

また、パリ市長であるベルトラン・ドラノエ(Bertrand Delanoë:社会党)は、喜びと安堵を語り、「ここ数カ月の狂騒ぶりは、噂に基づくものが大半で、当事者たちへの敬意が見られず、今日、集団的良心への検証が求められている」と述べている。パリ選出の下院議員、ジャン=マリー・ルガン(Jean-Marie Le Guen)は、DSKの輝かしい政界復帰に賭けているようで、「ご存知のようにDSKは大統領選の候補者ではないが、無罪が確定した時点からは、再び尊敬を集め、彼の発言は重要視されるだろう」と語っている。

・・・ということで、訴追の取り下げというアメリカ司法の決定については、政治的立場よりも、どちらかというと、男女の差が大きい反応のようです。女性議員からは、がっかりした、女性の権利を蹂躙してどうする気か、という憤慨の声が聞こえて来ますが、男性政治家は概ね好感をもって受け止めているようです。

テレビ局“France2”の23日夜8時のニュースでは、いきなり“La victoire de DSK”(DSKの勝利)という文字が画面に踊りました。フランス人がアメリカで無罪を勝ち取ったことは素晴らしい! アメリカにひと泡吹かせることができた! そんな感情が見え隠れしているようにも思えます。アメリカが大国であり、フランスだけでは太刀打ちできないことは頭では分かっているものの、アメリカ何するものぞ、という感情は消えない。アメリカに勝ったと言えるケースを見つけるや、喜びの感情を抑えかねるのでしょうね。フランスの司法の方が、アメリカより優れていると語る女性政治家の喜色満面とした表情も目に浮かびます。そう簡単に国民性が変わるはずがありません。

変わらない国民性。まあ、他国のことは言えませんが・・・
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フランス発、社会保障の不正受給を取り締まるべし!

2011-08-23 21:26:46 | 政治
フランスと言えば、エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)が“la famille nucléaire égalitaire”(平等主義核家族)と呼ぶ、自由と平等に価値を置く家族を基盤とする社会と重なるエリアも多く、独立を大切しながら、平等、連帯もなおざりにしない社会というイメージがあります。その一方で、お金にはしっかりしており、例えば税務署にしてもどこに引っ越そうと追いかけてきたり、オーディオ・ビジュアル税の納税対象者かどうか、家庭訪問をしてテレビがあるか確認していくこともあります。手当は厚く、しかし不正は許さない・・・そのようなイメージをもっていたのですが、実際はそうでもないようです。

どのような問題があるかというと、手当の不正受給と脱税。特に、前者は低所得者層で、後者は高額所得者層で、見られるそうです。そうした現状に、与党・UMP(国民運動連合)右派の国会議員たちが異議を申し立て、不正を許さない、ということを大統領選挙で訴える政策の一つにすべきだと叫んでいます。

その中心にいるのは、運輸担当大臣のティエリー・マリアーニ(Thierry Mariani)。1958年8月8日生まれですから、53歳になったばかり。名前から分かるように、イタリア系。国際関係学院(Institut libre d’étude des relations internationales:ILERI)で学士号取得。1976年頃から、ジャック・シラク(Jacques Chirac)の近くで政治活動を始めました。1993年に下院議員に当選。以後、2010年に運輸担当閣外相に就任するまで議席を維持。移民の家族呼び寄せビザ申請の際のDNA検査の義務化、不法滞在者の緊急収容施設の利用禁止など、かなり右寄りな修正案の上梓などを行ってきました。2010年7月には、党内会派・“le collectif parlementaire de la Draite populaire”を設立し、治安と移民対策を活動の中心に据え、積極的な活動を行っています。

さて、そのマリアーニ担当大臣、社会保障の不正受給などについて、どのように叫んでいるのでしょうか。7日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

運輸担当大臣のティエリー・マリアーニは、不正受給と戦うために、全国を網羅する社会保障の受給者リストを作るべきだと、週刊紙“Journal du Dimanche”とのインタビューに答えている。与党UMPの右派40人ほどを統合する党内会派“la Droite populaire”の創設者であるマリアーニ担当大臣は、大統領選挙のキャンペーンへ向けて、グループとして雇用、社会正義を眼目に15ほどの提案を行うことになると述べている。

「提案は、社会の上層と下層で不正な利益を得ている人たちと戦うことに主眼が置かれている。不正に対応すべく、すべての社会手当受給者を網羅するリストを作成したいと思う。そうしたリストがあれば、制度の悪用を見つけることができるだろう。例えば、一人の人間がRSA(Revenu de solidarité active:積極的連帯所得手当:生活保護を受けていた失業者が就職しても手当の一部を引き続き受け取れることにより、働かずに生活保護を受けるよりも、少しでも働いた方が収入増加につながる制度で、2009年6月1日に施行されました。受給者に就職することを奨励し、受給者の社会参加・復帰を手助けすることが狙いです)をいくつかの県で受給しているケースがある。書類を相互にチェックしないから、このようなことが可能になっているのだ」と、マリアーニ議員はドミニク・ティアン(Dominique Tian)議員の最近のレポートを基に説明している。

高額所得者層については、多額の金融資産運用益への課税を提案している。「個人の運用益は企業の利益とは別物だ。企業の活動は国を発展させることに寄与しているのだから」と、マリアーニ担当大臣は語っている。しかし、国家財政赤字の責任の一端は一定の企業が負うべきものだ。

会計検査院の発表したデータによれば、個人の社会保障不正受給額は20~30億ユーロ(約2,200~3,300億円)になる。一方、不法就労による国家の損失は80~150億ユーロ(約8,800億円~1兆6,500億円)に達し、企業の10~12%が不法就労に関わっている(個人の不正受給よりも、企業による不正雇用の方が国庫に対しては大きな損失になっているようです)。

社会保障の不正受給は2007年以来、UMPのキャンペーンテーマの一つになっている。今年の4月、労働・雇用・厚生大臣のグザビエ・ベルトラン(Xavier Bertrand)がこの不正に関する対策をより厳重にするよう発表していた。「不正、それは、システムD(難問を創意工夫で克服すること)ではないのだ。まさに泥棒なのだ」とベルトラン大臣は語っているが、失業状態を正確に把握することにより数億ユーロ(数百億円)を節約することができるとも力説している。

・・・ということで、社会党の好きな社会保障の問題点を指摘し、右派の票を増やそうというのではないかと思われる、与党・UMPの不正受給問題追及です。

ただし、『ル・モンド』の記事も指摘しているように、社会保障の不正受給は個人単位ですので、額は小さい。言うまでもなく、不正は行ってはいけないことですが、額としては企業の脱税などの方がはるかに大きい。企業との関係が深いUMPが企業による不正行為をどこまで追求できるのか・・・片手落ちになれば、国民からの反対の声が大きくなるのではないでしょうか。

企業寄りのUMP、組合寄りの社会党。それぞれ異なる視点から国を、社会を良くする提案・政治を行ってほしいものですが、選挙のための足の引っ張り合いになってしまっては、国民が置いてきぼりを食ってしまいます。政界での権力闘争に熱中するあまり、国民の暮らしが見えなくなってしまう・・・国の違いを問わないのかもしれません。
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格付け会社ってどんな会社・・・S&Pパリ・オフィス見学記。

2011-08-22 21:45:07 | 経済・ビジネス
スタンダード&プアーズがアメリカの長期国債の格付けを引き下げたことにより、ドルの独歩安(当然、円高)、株の乱高下が引き起こされています。以前から格付け会社の発表する国債格付けが下がったといっては、債券市場での利回りが上がったりしています。では、その格付け会社はどのような組織なのでしょうか。一般的にはあまりメディアに登場しないだけに、いっそう神秘的な存在として、その格付けが半ば神格化されてしまっているような気もします。その結果、一企業による格付けに国家が振り回されている・・・

「ガイトナー長官はS&Pによる米国債格下げについて『非常にひどい判断』と指摘。『彼らは基礎的な米政府予算の計算に関する知識不足を露呈した。わたしは、彼らが今回の財政計画合意から間違った結論を出したと考える』と語った。」(7日:ロイター)といった記事や、「米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は7日までに、同社の米国債格下げの判断に対し、米財務省が財政赤字の算定で2兆ドル(約157兆円)の間違いがあると反論したことについて、『格付けは主に将来3~5年(の見通し)で決めている』とした上で、『判断には影響しなかった』と強調した。」(8日:時事通信)という記事もありました。また、「米司法省、金融危機までの数年間にスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が行ったモーゲージ証券の格付けの妥当性について調査」という見出しが『ニューヨーク・タイムズ』に出ていると、ロイターが伝えていました(18日)。格下げされた国は、反論・反駁・反撃したくなるのでしょうね。

では、格付け会社(S&P、ムーディーズ、フィンチなど)とはどのような会社なのか、のぞいてみたい気がしますね・・・『ル・モンド』もそう思ったのかどうか、S&Pのパリ・オフィスを訪問したようです。社員へのインタビューも含め、社内の様子を紹介しています。20日の電子版です。さっそく、のぞいてみましょう。

8日、世界各国の証券取引所で株価が大幅に値を下げた。5日にアメリカ長期国債の格付けを格付け会社(l’agence de notation)、スタンダード&プアーズ(S&P)が引き下げたことが原因だ。いたるところがパニックに陥った。その中で、S&Pのパリ・オフィスは例外だ。そこでは皆、自信を持っているようだ。「社内的には、確かでポジティブな判断だと社員たちは受け取っている。アメリカ長期国債の格付けを引き下げたことはS&Pがどこからも影響を受けていない、独立した組織であることを物語っているからだ」と、S&Pのヨーロッパ地区責任者、Carol Sirouは自賛している。

S&Pパリ・オフィスの静けさは、証券取引所の喧騒と好対照をなしている。「ここは蜂の巣じゃないですから」と、広報担当のArmelle Sensは語っている。赤い椅子がくすんだグレーのカーペットとコントラストをなしている新しいオフィスを彼女が案内してくれた。しかし残念ながら、ドアを開けるのに必要な彼女の社員カードも、アナリストたちの部屋のドアを開けることはできなかった。しかも、その部屋の入り口には監視カメラが取り付けてある。「秘密主義というわけではなく、機密保持のためなのです」と、彼女は含みを持たせて語った。

しかし、各国のデータが閲覧できるというわけではない。パリ・オフィスでアナリストたちが行っているのは、S&Pによる分析を希望する銀行や企業の業績について検討することだ。例えば、金融担当のAurélie Thiellet。アナリストたちの部屋で会ったが、そこには特に変わったものは何もない。あるのは、コンピューター、電話、新聞くらいだ。Aurélie Thielletは、大学でマクロ経済学と金融を学んだ後、2001年にS&Pに入社。その後、定量・定性のデータを収集したり、担当する銀行の経営陣に会ったり、会議をアレンジしたりして働いてきた。

パリ・オフィスのトップはCarol Sirouなのだが、彼女をスタッフはファースト・ネームで呼び、親しみのある語法(tutoiement)で話しかけている。彼女は、「アナリストはつねに二項式(二重チェック)で作業をしている。同じ書類を異なった視点で見ることは大切なことだ。また、何年も同じスタッフが同じ企業を担当することはない。ローテーションを行っており、そのことでプレッシャーを削減することができる」と語っている。アナリストとして企業を担当すると、中小企業を経営しているようなプレッシャーを感じることがあり、利害の対立を避けるため、ローテーションなどを実施しているそうだ。彼女の下で90人のアナリストが働いているが、誰もが入社の際18ページの書類にサインをしなくてはならない。その書類に記載された規則により、アナリストやスタッフは、担当する業種の株を保有することを禁じられている。他業種の株であっても会社に申告する義務がある。そして、クライアントからいかなる利益供与も受けてはならない。

「昼食にも規制がある。クライアントに報告をしっかり行う際には、丸一日かかるのが普通だ。そこで、昼食に誘われることがよくあるのだが、その食事代は1人25ドル(17ユーロ:約1,900円)を超えてはいけない。このような規定はよくからかいの対象になる。特に食事の場でさまざまなことが決まることの多いフランスでは」と、細く黒いフレームのメガネをかけ、紺のジャケット、グレーのパンツを穿いたAurélie Thielletは語っている。

しかし、食事のテーブルで多くのことが決まるフランス文化など、S&Pはまるで気にかけていない。Aurélie Thielletの直属の上司はマドリッドにおり、その上の管理職はロンドンやフランクフルト勤務だ。共通の言語は英語で、“Financial Times”紙や“Crédit Week”誌が読まれている。七つある会議室は、それぞれパリの公園の名前が付けられているが、ある社員は“les Sept Nains”(七人の小人)の方が合っていると言っている。その七つの会議室では、ペーパーボードはスクリーンとビデオカメラに取って代わられている。格付け発表の後、テレビ会議で委員会が行われるのも、この青白い明かり下、全体的に冷たい印象のある会議室においてだ。

「格付けとは、借り手がその借金を返済する能力があるかどうかについての意見であり、それ以上の何物でもない。格付けは、その企業担当のアナリストによって選ばれ、召集された5人から7人によって行われる。つまり、毎日その企業を注視しているアナリスト・グループが格付けを行うのではなく、合議制で決められるのだ」と、Carol Sirouは一語一語区切りながら、力説した。格下げに同調できないアナリストは、その格下げに反対することもできる。格付けの決定にはエゴや利己的考えが入り込む余地はなく、そこには価値あるアイデンティティしかない。「S&Pによる決定」(C’est S&P qui décide)というアイデンティティであり、あたかもスローガンのように聞こえてくる。

「ここでは、すべてがアメリカ流だ。フレックス・タイム制を取っているが、その分結果には大きな期待がよせられる」と、Carol Sirouは述べているが、Aurélie Thielletも「子どもたちの世話をするため、週三日の勤務だが、その三日間で35時間働いている」とそのことを裏付けている。こうした労働条件と他業種より良い給与が、就職希望者を惹き付ける。履歴書(CV)が山のように届けられるのだ。Aurélie ThielletはS&Pでしか働いていないが、メディアにどんなに袋叩きに遭おうとも、履歴書の山がS&Pの競争力を物語っていると確信している。

「もしS&Pが妄想の産物であるなら、それは人々が金融経済の知識に欠けているからだ。もし格付けの原則に反対意見があるとすれば、それは人々が格付けとともに公表される分析を読んでおらず、また、格付けは相対的な評価であり、絶対的なものではないことを忘れているからだ」と、Carol Sirouは説明し、格付け会社の役割を小さなものに抑えようとしている。さらには、「格付け会社は投資家たちに投資先に関する技術的情報を提供しているのであり、一般大衆に何かを発信しているのではない」とも語っている。引き続く経済危機に伴い、スポットが当てられてきているが、S&Pはまさに黒子としての存在を好んでいるようだ。

・・・ということで、企業や投資家だけを相手に、特殊な世界で高給を取りながら生きてきた格付け会社は、突然、スポットを、それも非難の色合いの濃いスポットを浴びて、戸惑い、大樹の陰に逃げ込もうとしているようです。

格付け会社のアナリストたちは、できれば陰の世界に留まっていたいようですが、スポットを浴びたい人々も・・・今や、アナリスト、ストラテジスト、エコノミストの時代。ワイドショーやニュース番組を見れば、いつもかれらが出ています。しかも、万能の神・・・経済・金融・財政に留まらず、政治、外交、はては芸能、スポーツまで、分野を問わずコメントを発しています。

しかし、ほとんどが、金融、コンサルタント業など民間企業の社員。視聴者のためになる情報、つまり自分の働く企業の業績にマイナスになりかねないような情報を、果たして提供してくれているのでしょうか。神である前に、企業の社員であることを、私たち視聴者は、肝に銘じておく必要があるのではないかと思います。

それにしても、出る方も出る方ですが、使う方も使う方だと、思えてしまいます。製作費縮小の折、一人で何でも話せるコメンテーターがほしい・・・

なお、Carol Sirouのコメントが、ロイターの記事(18日)に出ていました。もちろん、格付けについてです。

 米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)のフランス責任者、Carole Sirou氏は18日、RTLラジオで、S&Pはフランスが最上級の「AAA」格付けと「安定的」の格付け見通しを維持すると確信している、と述べた。
 同氏は「われわれはこのAAA格付けが変わらないことに自信がある」と述べ、格付けの等級は特定の財政上のコミットメントではなく、「コミットメントの軌跡(トラジェクトリー)」に依存しているとの考えを示した。

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ジャック・ドロール曰く、ユーロとEUは危機に瀕している!

2011-08-20 21:13:06 | 政治
ジャック・ドロール(Jacques Delors)・・・1925年7月20日生まれ、86歳。キリスト教民主主義を信奉する家庭で育つ。大学再編前のソルボンヌ大学で経済学を専攻。フランス銀行(Banque de France)勤務の傍ら、組合活動に関わる。やがて政界に身を置くようになり、シャバン=デルマス(Jacques Chaban-Delmas)首相(在任期間は1969~72)の顧問として働く。1979~81年に、欧州議会議員。ミッテラン(François Mitterrand)大統領時代にモーロワ(Pierre Mauroy)内閣で1981~84年に経済・財政・予算相。そして1985~94年に、欧州委員会(Commission européenne)委員長。1996年にはシンクタンク“Notre Europe”(我らのヨーロッパ)を設立し、EUに関する提言活動などを行っている。娘は、社会党第一書記のマルティーヌ・オブリー(Martine Aubry:2001年からリール市長を兼務しているが、前任者はピエール・モーロワ)。

現在のEUの基礎となるマーストリヒト条約(traité de Maastricht)は、1992年2月7日に調印され、翌93年11月1日に発効しましたが、この期間、欧州委員会の委員長を務めていたジャック・ドロール。共通市場と欧州共同体を実現したとして日本でも有名な、この元欧州委員会委員長が、ユーロとEUへの危機感を表明しています。ヨーロッパ各国首脳の対応は、危なっかしくて見ていられない! 思い入れがあるだけに、つい見る目も厳しくなるのでしょうか、それとも、客観的に見ても危機に瀕しているのか・・・

詳しくは、18日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

86歳になるジャック・ドロールが、EUの現状について悲観的な分析を行っている。18日、元欧州委員会委員長はベルギー紙“Le Soir”とスイス紙“Le Temps”との共同インタビューに答えて、ユーロとEUは崩壊の瀬戸際にあると語った。

「目をしっかりと開けようではないか。ユーロとEUは崖っぷちに立たされている。しかし、転落しないための方策は至ってシンプルだと思われる。私が常に主張してきたように、加盟国が経済協力の強化を受け入れるか、あるいは、さらに多くの権限をEUに移管することに同意するかだ」と、ドロール氏ははっきりと述べている。

1985年から94年まで、欧州委員会の委員長を務めたジャック・ドロールは、インタビューで、欧州各国の首脳たちは憶病すぎると皮肉っている。その中でも筆頭に挙げられるのが、サルコジ仏大統領とメルケル独首相だ。ドロール氏によれば、16日に行われた仏独首脳会談は、現状には何ら影響を及ぼしていない。また、ユーロ圏に財務相(経済政府)を創設する案はばかげた思いつきに過ぎないと批判している。

ドロール氏は、各国の財政赤字がそれぞれの国のGDP(PIB:produit intérieur brut)の60%までに抑えられるよう、加盟国間で分散することを勧めている。「財政赤字の分散は火を消すためのポンプのようなものであり、共同体としての協力に意味をもたらすものだ。加盟国は同じタイミングで経済政策に関する6つのガイドラインに対する反対を取り下げるべきだ。そのガイドラインには、予算状況が悪化した場合、欧州議会がその国への制裁をより自動的に行えるようにするという内容も含まれている」と、詳しく語っている。

「EUが経済において成功するかどうかは、トライアングルにかかっていると私は常に言ってきた。成長を刺激する競争、EU経済を強化する協力、共同体としてまとまる連帯からなるトライアングルだ。今こそそれらを行動に移すべきだ。実施に移さなければ、市場はユーロとEUに疑いの眼差しを投げかけ続けるだろう」と、警告を発している。

「今回の危機が始まった時以来、EU各国の首脳たちは、現実から目をそらしてきた。7月21日のユーロ圏の首脳会談での公約を市場が信じると、どうして考えることができるのだろうか。9月末まで実施に移されるのを待たねばならないというのに」と、続けている。

2011年1月にベルリンで行われた、欧州議会・ドイツ緑の党が企画したEUの将来に関する講演会で、ドロール氏は、現在の欧州首脳と欧州委員会のトップたちにビジョンがないこと、彼らが火消し役ではあっても未来を設計する人間ではないことを残念がっていた。

・・・ということで、EUを造ってきた人にとっては、現在の首脳たちは頼りない、任せておけない、と映るようです。ビジョンがない、ヨーロッパの将来をどうするのかを考えていない、目先の問題を解決するので精いっぱいだ。

一方、日本では、ビジョンがない首脳というのは、特に珍しくもありません。得意な分野は権力闘争、という政治家のゴールが首相の座であったりします。しかも最近では、国家観さえもないと批判されています。目先、あるいは身の回り5mにしか関心がない。

欧州で、日本で、目先の問題への対応しかできない、あるいは目の前の問題にしか反応しない首脳がトップにいる。どうしてなのでしょうか。危機感の欠如。なんとかなるという、根拠のない楽観主義。危機を経験していないだけに、厳しさがない。戦争による廃墟、戦後の復興、新たな国家・共同体の創造・・・そうした経験がないことが背景にあるのではないか、そのような気がします。

トップが頼りないのは、平和な証拠なのでしょうか。それとも、混乱へ向う道しるべなのでしょうか。前者であってほしいと願っています。
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増税は、鬼門。されど、フランス政界は、与野党ともに増税を模索する。

2011-08-19 21:15:02 | 政治
日本政界では、消費税は鬼門。自民党時代には、消費税導入を目論んだ政権が倒れ、民主党政権になっても、昨年、菅首相の突然の消費税率アップ発言で、民主党は参院選で大敗北を喫しました。どこの国民も、増税を喜んで受け入れる人は少ないのでしょうね。

ところがフランス政界では今、財政赤字、債務問題を解消するために、支出削減よりも増収策を模索しているようです。それも、与党だけでなく、野党までも。しかし、野党と言っても、社会党ではなく、ヨーロッパ・エコロジー・緑の党ですが。与野党それぞれ、どのように考えているのでしょうか。

まず、サルコジ大統領率いる現政権ですが、

 「フランス政府は、財政赤字削減目標を達成するため、高所得者向けの増税や住宅関連税制優遇の縮小、企業向け税控除の縮小などを検討している。
(略)
 政府筋によると、フランスはスペインやイタリアと異なり、支出削減よりも増収策を重視する方針。対策の詳細は明らかにされていないが、新税の導入よりも、税制優遇措置の縮小が中心になる見込みという。」
(8月18日:ロイター)

と、高額所得者向けの増税、税制優遇措置の縮小で対応していくつもりのようです。

一方、環境対策などで、サルコジ政権と対峙してきたヨーロッパ・エコロジー・緑の党の党首で、2012年大統領選挙の党公認候補に決まったエヴァ・ジョリー(Eva Joly:ノルウェー人、フランス人と結婚後ノルウェー・フランスの二重国籍)がサルコジ大統領を批判しつつ、提案内容は上記与党案とほぼ同じという発言を『ル・モンド』とのインタビューで行っています。どう語ったのでしょうか・・・17日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

『ル・モンド』とのインタビューで、ヨーロッパ・エコロジー・緑の党の大統領選候補、エヴァ・ジョリーは、「予算均衡のための方策は、増税と財政改革だ。行動する余地がない時には、コントロールすることは難しい」と述べるとともに、サルコジ大統領がメルケル首相とともに提唱した黄金律の採用、つまり、予算案に財政均衡化目標を盛り込む規則を憲法に明文化することは否定している。

裁判官でもあったエヴァ・ジョリーは、また次のようにサルコジ大統領を激しく非難している。「ニコラ・サルコジが、我こそは国民を危機から救うことができる人間だ、というのを聞くたびに、怒りがこみ上げてくる。ニコラ・サルコジの、無為さ加減と権力の座について以降の政治判断、それこそが我々フランス国民を危機に陥れた一因なのだ。」

18日からクレルモン・フェラン(Clermont-Ferrand)で行われる夏の党大会を前に、エヴァ・ジョリーは、大統領選キャンペーンで取り上げようとしている、経済危機に対する環境党からの提言の概略を語ってくれた。まず、公務員を聖域化することから始める。退職者2名に対し1名しか新たに採用しないというばかげた公務員削減策をすぐさま廃止することだ。次いで、税の減免措置(niches)を廃止し、タックス・ヘイヴン(paradis fiscaux)や脱税と真剣に戦うことだ。

そして、彼女は、「増税を行う。しかし、この増税は国民の所得上位15%だけが対象になるもので、累進性のため、特に上位5%の富裕層に大きな負担になる増税を考えている。また、資産運用益に対する増税は金融取引税と同じようなものだ。配当や利息など資産運用益は、労働賃金への課税と同じように、当然、課税対象となるべきものだ」と、述べている。

大統領選挙での彼女のスローガンは、「公正なチェンジ」(changement juste)であり、経済危機、環境の危機、社会の危機という3局面に傾注されることになる。「ついに、現行システムのままで良いわけはないと国民に向かって言うべき時がやって来たのだ」と語り、国民には政治環境を選択するよう訴えていくそうだ。

・・・ということで、サルコジ大統領を激しく批判はしてはいますが、公務員削減を除いては、富裕層への増税、税制優遇措置の削減と、経済危機への対応策では歩調を同じくしているようです。できることは限られている、ということなのでしょうか。

一方、フランス国民は、どのような方策を支持しているのでしょうか。14日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

13日に発表された調査会社IFOPの世論調査によると、国債発行額が国内総生産(PIB:Produit intérieur brut)の85%(1兆6,461億ユーロ:約181兆710億円)に達しているという現状を前に、調査対象者の82%が財政赤字と債務問題に不安を抱いている。そして、50%が国債発行額の削減が最優先課題だと考えている。2010年のはじめには36%しかそうした考えをもっていなかっただけに、大きな変化だ。

しかし財政危機を最優先課題に上げた対象者が50%だったことは、失業(59%)、健康(59%)、教育(55%)への取り組みを期待する層よりも少なく、犯罪対策(50%)、収入増と購買力向上(51%)と同程度でしかない。

財政赤字や債務問題の解決策として対象者が挙げたのは、サルコジ大統領の看板政策を廃止せよ、ということだった。退職する公務員2名に対し1名しか新規採用しないという政策(53%)、残業料の非課税化(57%)、飲食業に認められているTVA(付加価値税)の税率低減(62%)などだ。

そして、もうひとつある対策、つまり増税に関しては、受け入れてもいいと答えたのはわずか24%だった。

・・・ということで、直接的な増税はいやだが、国家の財政危機に際し、税の減免措置の削減には応じよう、という気持ちのようです。

このあたり、与党はしっかり国民の意向を汲んでいるのかもしれないですね。何しろ、もうすぐ大統領選挙ですから。国民の受け入れる範囲で、経済危機に対処しようとしているようです。しかし、就任後これまでの4年ちょっとの間に形作られてきたサルコジ大統領のイメージは、そう簡単には修正できないようです。サルコジの看板政策を廃止すれば、危機を乗り越えられる・・・そこまで嫌われてしまっているようですが、大統領選へ向けて、さて、どんな奇策を用意しているのでしょうか。
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