ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

エールフランスも、LCCの逆風の中に。

2010-11-19 20:06:27 | 経済・ビジネス
LCC、ロー・コスト・キャリア(Low-Cost Carrier)。ここ数年、特に民主党政権になって以来、よく耳にしますね。以前は格安航空会社とか言われていましたが、今ではLCCで通ります。フランス語でも“le low cost”と英語がそのまま使われていたりします。

このLCC、歴史は40年ほどもあるそうで、1971年に誕生したエア・フロリダ、81年に産声を上げたピープル・エキスプレス航空(共にアメリカ)がパイオニアだと言われています。雨後の筍と言ってもいいほど多くのLCCが翼を広げ始めたのは、1990年代後半から2000年代初頭。それが今では、例えば、EU域内では20%以上、イギリスでは50%のシェアを握るまでに成長しています。

身近なアジア・オセアニアでも、マレーシアのエアアジア、シンガポールのタイガー・エアウェイズ、韓国の済州航空、中国の春秋航空、オーストラリアのジェットスター・アジアなどが、国内から域内、さらには遠距離へと路線の拡大を進めています。そのお蔭で、利用者にとっては空の旅がより身近になる。マレーシア4日3万円代といったパッケージツアーもお目見えしていますね。

こうした新しいトレンドの影響を受けているのは、既存の航空会社。JAL、ANA共に格安航空ビジネスに参入すると言っていますが、どうなりますか。完全別会社にするのか、あるいは多くの国のフラッグキャリアがやっているように、子会社を設立することになるのか。特にJALは、経営再建と時を同じくしてLCCからの挑戦を受けねばならず、大変な乱気流に突入しているようです。

LCCへの対応が迫られているのは、エールフランス-KLMも同じようです。一度発表した対応策を凍結させたり・・・悩めるエールフランスについて、15日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

エールフランス-KLMは厳しい挑戦にさらされている。国内ではTGV。スピードでは負けないものの、運賃や利便性で手ごわい競争相手になっている。国外では、イギリスのイージー・ジェットやアイルランドのライアンエアといったLCC。その運賃の安さは大きな脅威になっている。

エールフランス-KLMは、すでにオランダのLCC、トランサヴィア(Transavia)と国際的な提携関係を築いているが、国内線をカバーするLCCを子会社として誕生させると9月に発表した。名前は、エールフランス・エクスプレス(Air France Express)。2011年中には初飛行を行うことになっていたが、突然、計画の凍結が発表された。

エールフランス-KLMはLCCを子会社として傘下に持つよりも、既存組織の改編を優先させることにしたようだ。目的は言うまでもなく、コストの削減と中近距離フライトでの競争力向上。名付けて“plan Bases”(複数ベース・プラン)。その詳細が10月13日に発表された。マルセイユ、ニース、トゥールーズ、ボルドーの4都市をベース(基地)として、パイロットや乗員などを再編成する。実施に移される際には、パリ・オルリー空港も、もう一つのベースになることだろう。

それぞれの都市の空港をベースとするパイロットや客室乗務員たちは、1日6時間の乗務を行うことになる。つまり4~5フライトだ。そして夜にはそれぞれのベースの都市にある自宅に戻る。つまり、フライト先で宿泊することはなくなる。飛行機は1日12時間飛ばすことにしているので、2チームが引き継いで乗務することになる。

1日6時間乗務を月に15日行い、残りの15日は休暇になる。しかし、実質乗務時間は、月間で今までの569時間から740時間に増える。それに対し、会社側は5%の賃上げを提案している。こうした再編計画案は、今月末ないし12月初めまでには社員の同意を得たいということだが、もしベースを置く4都市への配転を受け入れる社員が少ない場合は、新たに4都市で社員を募集することになる・・・

ということで、乗務時間は伸びる、収入はスズメの涙ほどのアップ、住みなれたパリを離れ他の都市への異動。受け入れない社員も多いのではないでしょうか。何しろ、既得権は絶対に手放さない労働者が多いフランス。しかも、組合が非常に強い。繰り返されるストやデモでおなじみですね。拒否された場合、どうするのでしょうか。

4か所のベースで新たに採用される社員は、まったく別の賃金体系での採用になるのかもしれないですね。現在の社員は、別の部門への配転でしょうか。彼らが定年で辞めていくのを待つ。当然それまで新規の採用は減りますね。若年層の失業率への影響も考えられます。

JALでも、予定の早期退職者数に達しないため、整理解雇まで行われようとしています。憧れの職種、花形だった航空業界も、規制緩和、激化する競争、コスト削減といった乱気流に翻弄されているようです。しかし、ビジネスも大切ですが、それ以上に安全が大切。ぜひとも安全運航には、細心の注意を払ってほしいものです。落ちたイメージは回復することもできますが、機体が落ちては、失われた人命は戻ってこないのですから。

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
LCC (クラ)
2018-11-28 23:09:25
最近は自分もLCC利用が主流になってます。たまにはレガシーキャリア!と思ってもネットで運賃の比較をするとやっぱりLCCなんですね!
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。