ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

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若さは、武器か・・・フランス政界の場合。

2012-03-07 22:20:13 | 政治
今やアメリカでは共和党の予備選挙真っ只中ですが、オバマ大統領が当選した前回の大統領選挙で、バラク・オバマ(Barack Hussein Obama Jr.)の首席スピーチライターを務めたのは、当時27歳のジョン・ファヴローでした(Jon Favreau:1981年6月6日生まれ。私と同じふたご座、まったく関係ありませんが)。史上2番目に若い首席スピーチライター(最も若かったのは、カーター大統領の首席ライターだったジェームズ・ファローズ)であるということとともに、その原稿のほとんどをスターバックスの店内でパソコンに向かって書いたということで話題になりました。若さが力になる。

しかし、魑魅魍魎が跋扈する政治の世界。一寸先は闇と言われますから、若さだけでは不安だという声も、当然あるのではないでしょうか。若さ、あるいは若々しさが重視されるアメリカでは、若さが大きなパワーを持つことになるのでしょうが、はたして、歴史のある国々では、どうなのでしょうか。日本で、二十代が永田町で主要な役割を担うことを想像できますか?

では、フランスでは、どうなのでしょうか。再選を目指すサルコジ陣営が格好の例を提供してくれています。紹介しているのは、週刊誌“l’Express”(『エクスプレス』誌)の電子版(5日)の記事です。“De vives tensions apparaissent dans l’équipe de campagne de Sarkozy”(サルコジ陣営で大きな緊張関係が生じている)・・・

サルコジ大統領は、選挙戦序盤で苦しい展開を強いられてきた。与党・UMP(国民運動連合)内からも、大統領側近たちの責任を問う声が上がっている。

「大統領周辺にはちょっと経験の足りない人たちがいる」・・・このようにUMP所属で院内会派“Droite populaire”(人民右派:フランスのアイデンティティ、治安、移民を主要テーマに、2010年6月に旗揚げされたグループで、現在42人の議員が所属しています)に加わっているリオネル・リュカ(Lionnel Luca:Alpes-Maritimes県選出)は批判している。サルコジ大統領の側近たち、特に“spin doctors”(報道機関に対し、依頼者にとって好都合な解釈で情報を提供する担当者、といった意味で使われる英語です)と呼ばれる人たちの経験不足が、リュカ議員によれば、キャンペーンが始まって以来繰り返される失敗の原因になっている。

失敗のリストはすでに連綿と続いている。ジャン=ルイ・ボルロー(Jean-louis Borloo:中道の急進党・Parti radical党首、下院議員、サルコジ政権で環境相、経済・財務・雇用相などを歴任)をVéolia(ヴェオリア:水事業、公共交通、エネルギー、環境などの分野に展開するコングロマリット)のトップに据えようと大統領府が画策しているという噂、サルコジ大統領がバイヨンヌ(Bayonne)で野次られた事件、民族浄化を連想させる“épuration”という言葉を使ったサルコジ大統領、外国人参政権に対するゲアン内相(Claude Guéan)の罵詈雑言、ハラール(halale:イスラム法に則って加工・処理された肉食品)に関する論争・・・

リオネル・リュカは、「サルコジ大統領は自らの選対本部にちょっと籠り過ぎで、しかもその側近たちは必ずしも選挙に精通しているわけではない」と語っている。では、船長は船を進めるのに誤った副官を選んでしまったのだろうか。リュカが語るように、選対本部のトップたちは選挙の現実をよくは知らないのだろうか。

チーム・サルコジ(team Sarkozy)の表看板である、報道官のナタリー・コシュースコ・モリゼ(Nathalie Kosciusko-Morizet:1973年生まれ、今年2月22日にサルコジ陣営の報道官に就任するまで、環境・持続開発・交通・住宅相でした)はそのポストに就任以来、党内から手厳しい非難にさらされている。「NKM(ナタリー・コシュースコ・モリゼ、長いので略してNKMと言われているようです)、彼女が身を隠している間、他の人たちが与党の立場を守るために先頭に立っていた。しかし、最後においしい所を独り占めしたのは彼女だった」と、リュカは批判している。

その結果、プレ・キャンペーンで頑張ったにも拘らず、何ら見返りのなかった議員たちの間に、不満が高まっている。また、特にジャック・シラク(Jacques Chirac)に近い40代の閣僚、ヴァレリー・ペクレス(Valérie Pécresse:1967年生まれ、予算・公会計・国家改革相、政府報道官)、フランソワ・バロワン(François Baroin:1965年生まれ、経済・財務・産業相)、ブリューノ・ルメール(Bruno Le Maire:1969年生まれ、農業・食料・漁業・農村地域・国土整備相)が、NKMと同じように、与党にとって向かい風が吹くとメディアから消えてしまうと見做されている。

「大統領はひどくがっかりしている。メトロの切符に関する失言の後は怒り狂っていた」とリュカは付け加えている。その失言とは、交通大臣であったNKMがメトロの切符1枚を、実際の1.70ユーロではなく、4ユーロちょっとと述べてしまった件だ。

NKMは報道官というポストを独り占めすることができた。彼女の周囲には、国会議員や党の執行部など80人の雄弁を持って鳴らす人々(80 orateurs nationaux chargés de porter la bonne parole de leur candidat sur le terrain)がいるが、彼らはほぼお手上げ状態だ。「ナタリーは副報道官を置かないためにできる限りのことをした」とその80人の一人は言っている。別の一人は、「彼女は、一人の天使だけをお供に天国へ行く心地良さをサルコジ大統領に売りつけたのだ」と語っている。UMP幹部にとってのNKMに対する最新の不満は、“viande halale”(ハラールの肉)に関するクロード・ゲアンの発言に対し十分な支援を行わなかったことだ。

経験不足を別の言葉でいいかえれば、若さの暴走だ。こうした非難のターゲットになっているのは、サルコジ大統領の選挙公約ライター、ジャン=バティスト・ドゥ・フロマン(Jean-Baptiste de Froment)とセバスティアン・プロト(Sébastien Proto)だ。前回2007年の公約作成者だったエマニュエル・ミニョン(Emmanuelle Mignon、la magicienneと呼ばれている)への批判は、逆に動かないこと、背後に徹し過ぎることだった。

サルコジ陣営の選対本部長、ギヨーム・ランベール(Guillaume Lambert)もやはり、非難から逃れることはできない。バイヨンヌでの出来事の後、バイヨンヌのあるピレネー・アトランティック県(Pyrénées-Atlantiques)の知事を罷免したらどうかと述べた件について、2007年の本部長に比べ経験不足だと批判されている。前回の本部長は、クロード・ゲアン(現内相)だった。

ゲアン内相は最も意欲的にメディアに登場する一人だが、リオネル・リュカによれば、他の閣僚の支援が不足している。「今やたった一人の閣僚、つまりゲアン内相と、フィヨン首相しかいなくなってしまったと思えるほどだ。全く不十分だ。決して優れた戦略ではない」とリュカは語っている。

サルコジ大統領は、きっちりと組織立てずにさまざまな方面に兵隊たちが展開する軍隊を持とうとした。今確かに多くの部隊がいるが、それぞれが自分たちのことしか考えていない。リオネル・リュカは、「国会のUMP議員たちは今、無気力になっている。指示も方向付けもなされていない。組織として動かす必要がある。たぶん、動き始めるのは3月11日(この日、5万人を動員して、パリ郊外、セーヌ・サン・ドニ県のVillepinteで大集会を行い、そこで公式な選挙公約を公表することになっています)以降になるだろう」と述べている。

・・・ということで、選対の報道官になったナタリー・コシュースコ=モリゼが38歳、そして批判されている3閣僚が40歳代。やっかみだったり、シラク前大統領に近いとか、理由はそれぞれあるのでしょうが、若くして抜擢された政治家へのバッシングが激しいようです。そういえば、サルコジ大統領誕生後、フィヨン内閣で法相を務めたラシダ・ダティ(Rachida Dati)も1965年生まれですから、今で46歳。やはり、集中砲火を浴びていました。

大統領に家父長的イメージを求めると言われるフランス人。日本ほどではないにしろ、“seniority system”があるのでしょうか。若さは武器ではなく、一歩間違うと凶器になる、といったとらえ方をされているのでしょうか。それとも、やはり、若いものに先を越された僻みなのでしょうか。フランス人、嫉妬は強そうですものね。

若さが大きな武器になるアメリカ政界。片や、経験が重視され、若いだけでは・・・という考えの強いフランスと、我らが日本。対極にあるような日本とフランスが、この点については同じような状況にあるようです。違うようで、やはり、人間。似ているところもありますね。同じようで、違う。違うようで、似ている。だから、面白い、といったところでしょうか・・・
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