ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

カネと汚職まみれのサッカー界から身を引く、スペインの選手。

2011-08-10 23:04:56 | スポーツ
今日は、ロンドン五輪アジア最終予選へ向けたU-22の強化試合・「日本vsエジプト」と、ブラジルW杯アジア三次予選へ向けたA代表の強化試合・「日本vs韓国」という2試合が行われました。

試合の結果はご存知のように、2戦とも日本代表の勝利!

A代表の試合は、これだけ楽しく見ることができた日韓戦は初めてではないかと思えるほど。何しろ、3-0。香川、本田が別次元でプレーしていましたし、遠藤、長谷部が欠かすことのできない選手であることが改めてはっきりしましたね。次のW杯までケガがないようにと、早くも願ってしまいます。

U-22の試合は、まずマッチ・メイキングの問題あり、ですね。イスラム教徒は今、ラマダン。日の出から日没まで、飲食ができません。中東勢への対策としてエジプトを選んだのでしょうが、日の出から飲食をしていない選手たちとの夕方の試合。ハンデがありますよね。それで2対1・・・ゴール前での精度、バックス同士の連携、最終ラインでの危険な横パスなど、日本サッカーにつきものの課題がありましたが、とにかく勝利したのはよかったですね。最終予選に自信をもって臨んでほしいものです。

今、日本サッカーは急成長していると、世界で注目されています。南アW杯でベスト16入り。アジア大会で男女優勝。アジア・カップで優勝。U-17W杯でベスト8進出。そして、なでしこジャパンによる世界制覇、W杯の優勝です。

選手個人としても、長友がインテルへ、宮市はついにイギリスの労働ビザを取得し、アーセナルの一員に、そして、宇佐美がバイエルン・ミュンヘン。香川はドイツ・チャンピオンのドルトムントですし、選手の所属チーム名で決して引けを取らないような状況になりつつあります。

なでしこジャパンでも、熊谷はドイツへ、鮫島がフランスへ。すでに戦いの場をヨーロッパに移している選手も安藤、永里、宇津木とおり、個人としても世界で大きな花を咲かそうとしています。

と、日本・サッカーは順風満帆なのですが、世界のサッカー界は必ずしも順調とは言えないようです。

FIFA会長選に際し、ブラッター会長の対抗馬として立候補したアジア・サッカー連盟のハマム会長(カタール)が買収により永久活動停止処分を科されました。また、八百長騒動に巻き込まれているのが、中国のスーパーリーグと韓国のKリーグ。

もちろん、アジアだけではなく、ヨーロッパでも、ドイツ、イタリア、ギリシャが八百長問題に揺れています。

その裏には、サッカーの試合が賭けの対象になっているということもありますが、それ以外に、放映権料、スポンサー・フィー、マーケティング活動による収入など、大きなおカネが動く現状があります。選手の移籍金にしても、数十億円から百億円近くまでに高騰していますし、選手の年俸も十億円を遥かに超えています。こういう世界にいると、金銭感覚も狂ってくるのかもしれません。

そこで、こんな世界にいていいのだろうか、という疑念を抱く選手も出てきています。その一人、リーガ・エスパニョーラ(スペイン)のプリメーラ・ディビシオン(1部)所属のプロ選手でありながら、24歳でチームとの契約を解除して引退した選手を9日の『ル・モンド』(電子版)が紹介しています。

サッカーの世界にうんざりした、スポルティング・ヒホン(Sporting Gijon)のディフェンダー、ハビ・ポベス(Javi Poves)が契約を一方的に解除したことを、クラブの広報が9日、発表した。スペインの日刊紙“El Pais”(エル・パイス)によれば、24歳になるプロ・サッカー選手のハビ・ポベスは、「サッカーを知れば知るほど、すべてがカネ、という腐った世界であり、幻滅するばかりであることがよく分かってくる」と、語っている。

クラブを去る前に、ポべスは変な疑惑をもたれないように、口座に給与を振り込まないよう頼んでいった。また、クラブのスポンサー企業からクルマ提供を打診されていたが、必要ないからと断っていた。ポべスは、クラブの監督や経営陣に、金銭と汚職にまみれたプロ・サッカー界を受け入れることができないので、プロの選手としてのキャリアを終えようと思うと、引退理由を説明している。「それが資本主義なのだが、しかし資本主義は死を意味している。南米やアフリカ、アジアの人々の死の上で人びとがカネを稼ぐというシステムの一部になりたくはないのだ」と、明言している。

ハビ・ポベスは、2008年以来スポルティング・ヒホンに所属し、2シーズンをリザーブ・チームで過ごした後、ようやくトップ・チームに昇格した(2010-2011シーズンの背番号は25)。彼は、銀行を燃やしに行くことに賛成すると言いながら、歴史の勉強を再開するためにスパイクを脱ぐことにしたのだと語っている。「人は私を現状の社会システムが嫌いな人間なのだと見做すが、それは私をひとつの枠にはめてしまうことになる。私は自分が何者かが分からないのだが」と、言っている。もはや元サッカー選手となったハビ・ポベスは、“Indignados”(憤慨する人々)の抗議運動と連帯していることは否定している。この抗議運動は、5月中旬にマドリッドのプエルタ・デル・ソル広場(la Puerta del Sol)に集まった若者や失業者、サラリーマン、退職者によって始められた穏健な市民運動だ(「15M(5月15日)の市民運動」とも呼ばれ、参加型の民主主義を求めています)。「この運動はメディアによって意図的に創り出されたもので、社会的不満を感じている人たちにガス抜きの場を提供し、今の社会システムにとって危険で制御不能な状況にならないようにするためのものだ」と、ハビ・ポベスは説明している。

・・・ということで、多くの人が憧れるスペイン・サッカー界からの、「さらば、カネまみれのサッカー」宣言。そして、反資本主義宣言でもあります。弱肉強食、儲けることのできる人間だけが儲けていい思いをすればいい。貧乏人は貧乏なままでいればいい。それがその人間の生きてきた人生の結果なのだ。自己責任・・・それでいいのか、社会的弱者には、それなりの理由もあるはずだ。社会的連帯が必要だ。

反資本主義の声を挙げる人が増えて来ています。「15Mの市民運動」はヨーロッパ各国に広がってきているようです。アングロ=サクソン流の弱肉強食でいいのか、それとも連帯の心を持ち続けるべきなのか。財政危機とともに、現状の社会システムに対する検討を求める声が、暴動も含め、様々なカタチで現れてきているようです。