ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

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AAAからAA+へ・・・フランスは、EUは、ユーロは?

2012-01-15 23:17:46 | 経済・ビジネス
14日の『ル・モンド』(電子版)です。

フランスの長期国債は、その格付けを最上位のAAAからAA+へと1段階引き下げられ、見通しはネガティブとなった。13日夜、格付け会社(agence de notation または agence d’evaluation)のStandard & Poor’s(S&P)が発表した。その影響は・・・

●フランスはいつからAAAを保っていたのか?

フランスの格付けは、S&Pが30年以上の中断を経て国債格付けを再開し1975年6月25日以降、常に最高位のAAAを保ってきた。この1975年は、偶然にもそれ以降フランスの財政が均衡を保てなくなった年に当たる。

アメリカが2011年8月5日にそのAAAを失って以降、フランスはS&Pの格付けで最も長く最上位を保っていることを自慢してきた。しかしその地位は、フランスの格下げにより、1975年7月9日からAAAを維持しているノルウェーに移った。

他の二つの主要格付け会社の評価では、フランスは依然として最初の格付け以降、現在でも最上位のAAAをキープしている。ムーディーズ(Moody’s)では1979年から、フィッチ(Fitch)では1994年からだ。これら二つの格付け会社はフランスの格付けを最上位で継続しているものの、フランスへ圧力を強めている。ムーディーズは、フランスのAAAにネガティブな見通しを加える可能性があり、その場合、2年以内に50%の確率で格付けが引き下げられることになる。フィッチはすでにフランスをネガティブな見通しとしているが、2012年に引き下げが行われることはないだろうと見ている。

●格付け会社による評価はどうしてこれほど重要視されるのだろう?

格付けは金融界の要求に答えるものだ。つまり、どこの債券が他と比べてリスクがあるのか、あるいは銀行、保険会社、ファンドといった投資機関が最も安心して購入できる債券はどこのものか、リスクが高いのはどこのものなのかを知りたいというリクエストだ。

巨大な投資機関は、信用リスクの評価を格付け会社に委ねており、その結果、格付け会社はあたかも公的な機関であるかのようになっていると、EUも認めている。法律や規制の担当者は、格付け会社による格付けを銀行の自己資本や、金融機関が中央銀行から融資を受ける際の信用度を測るのに利用してきた。

●格下げは金利の上昇を意味するのか?

理論的には、ことは至ってシンプルだ。つまり、格付け会社がある国の国債の信用度についての判断を公表する。投資家が国債を購入する際に、その格付けによって金利が上昇したり下降する、ということだ。

20点満点の試験で20点を取るようなものであるAAAを得ていることは、低い金利で資金を調達する絶対的な保証になるはずである。しかし、実際には、必ずしもそうなるものではない。例えば、アメリカのケースだ。S&Pがアメリカの格付けを2011年8月5日にAAAからAA+(22段階の上から2番目)に引き下げたが、アメリカはそれ以降、格下げ以前よりも低い金利で資金を借り入れている。

国債の格下げは金融市場に動揺を与え、投資家をインフレヘッジとなる金融商品へと走らせる。それがアメリカの国債というわけだ。問題は、ユーロはまだドルと同じような外貨準備通貨としての地位を獲得していないことだ。

他のケースとしては、日本がある。財政赤字はGDP(仏語では、PIB=Produit intérieur brut)の233%にも達しており、S&Pの格付けもAA-(22段階の上から4番目)でしかない。しかるに、日本の国債金利は非常に低い。それは、国債の90%が国内投資家によって保持されているからだ。一方、フランスでは逆で、国債の65%が外国の投資家によって購入されている。

また、金融市場は格付け会社よりも判断や行動が早い。それは、市場は毎日変動しており、新たなニュースに反応しているからであり、格付け会社の判断を読もうとしているからでもある。それゆえ、同じユーロ圏でAAAを持っていた国々でも、最近の金利が大きく異なっていたのだ。

●格下げは、フランスの財政、国民の生活にどのような影響を及ぼすのか?

フランスは2012年に、発行済み国債の償還、それもGDPの4.5%に達する額の返済に際し、市場で1,780億ユーロ(約17億4,500億円)の調達を見込んでいた。

ここ数カ月、フランス国債の金利がドイツやオランダ、フィンランドといったユーロ圏の他のAAAの国々のそれとかなり乖離してきた。それは同じAAAの国でも、市場が格下げ以前にすでに差別化を行っていることを物語っている。フランスとドイツの10年もの国債の金利の違い、つまり金融界が専門用語で「スプレッド」(spread)と呼ぶものだが、それが昨年11月中旬には2ポイントに開いた。その後は1.3ポイント前後になっているが、昨年5月の0.3ポイントに比べれば大きな差になっている。

市場の大きな不安にも関わらず、昨年のフランス国債の平均金利は2.8%でしかなく、2010年の2.5%に次いで過去2番目の低さだった。このパラドクスは、より危険だと見做される株やその他金融商品ではなく、最も確かだと判断される金融商品、つまり国債への投資額の多さによって説明される。2011年、転売市場における10年ものフランス国債金利は3.3%に達した。10年もの国債が金利のバロメーターの役割を果たしているのだが、2012年予算に見積もっている3.7%を辛うじて下回っている。

フランス国債はAA+に引き下げられたが、それは昨年11月末までのベルギーと同じランクだ。しかるに、ベルギーの10年もの国債の平均金利は平均4.24%だった。フランス国債より1ポイントも高かったことになる。アセット・マネジメント会社“Amundi”(アムンディ:欧州2位、世界9位の金融資産管理会社)の分析によれば、金利が1ポイント上がると、フランスは初年度に追加費用として30億ユーロ(約2,950億円)必要になる。国民への影響は、国が資金調達するための金利を上げれば、不動産金利や消費者物価を押し上げることになるということだ。それは、国債金利が他の融資の金利を決めるベースになるからだ。

●企業、自治体、欧州金融安定基金への影響は?

「さまざまな組織をその存在している国の影響を無視して評価することはできない」と、格付け会社の元役員は述べている。それゆえにこそ、マイクロソフトやエクソン・モービルなどアメリカ企業4社のまれなケースが起きるわけだ。それらの企業の社債格付けはアメリカ国債よりも良いが、その格付けを活用できないでいる。国債金利の影響は特にサブ・ソブリン債発行者へ大きく現れる。つまり、自治体や公共事業体は国の保証を暗黙のうちに享受しているのだ。

フランス国債に格下げにより、多くの債券発行機関のAAAも引き下げられることになるだろう。例えば、預金供託金庫(CDC:la Caisse des dépôts et consignations)、社会保障負債償還金庫(Cades)、Unedic(union nationale interprofessionnelle pour l’emploi dans l’industrie et le commerce:全国商工業雇用協会連合)、フランス鉄道線路事業公社(RFF:Réseau ferré de France)、パリ病院公共援護会(Assistance publique – Hôpitaux de Paris:AP-HP)、パリ市、全国高速道路金庫(la Caisse nationale des autoroutes)などだ。フランス国鉄(Société Nationale des Chemins de fer français:SNCF)もAA+から引き下げられるだろう。国が株を保有している企業もまたその社債格下げになるだろう。例えば、フランス郵政公社(La Poste)、EDF(フランス電力公社)、フランス・テレコム、パリ空港公団などだ。

国際機関では、市場で資金を調達して金融危機にあるユーロ圏諸国に融資する欧州金融安定ファシリティ(EFSF:仏語では、le Fonds européen de stabilité financière=FESF)がAAAを失う恐れがある。この組織はユーロ圏でAAAを保有する6カ国の保証の上にのみ立脚している。その6カ国とは、フランス、ルクセンブルク、ドイツ、オーストリア、オランダ、フィンランドだ。しかるに、フランスとオーストラリアの国債が格下げされ、4カ国になってしまった。しかも経済力の大きさから、フランスはこの組織を支える主要二カ国の一つだった。

S&Pはしかし、欧州金融安定ファシリティは最高位の格付けを維持するだろうと述べている。そのためには、AAAを維持している4カ国のさらなる金融支援が求められるだろう。

●AAAを取り戻した国はあるのだろうか?

AAAを失えば、それでおしまい、ということではない。しかし、それを取り戻すには、長い年月が必要となる。デンマークは1983年にS&PからのAAAを失ったが、取り戻したのは2001年だった。オランダがその後AAAを維持している秘訣は、2011年においても財政赤字を対GDP比44.33%という低いレベルに保っていることであり、その結果、10年もの国債金利は2%以下に抑えられている。S&Pの格付けでは、4カ国がAAAを失った後に回復している。カナダ(1989年に失い2002年に回復)、フィンランド(1992年、2002年)、スウェーデン(1993年、2004年)、そしてオーストラリア(1986年、2003年)。いずれも回復後、そのAAAを維持している。

逆に、アメリカ、アイルランド、日本、ニュージーランド、スペインはAAAを失った後、取り戻すことはできずにいる。アメリカはAAAを長期にわたって保有していたが、他の国々がキープしていたのは数年だった。アイルランド、スペイン、日本にとっては、取り戻すことなど願うべくもない状況だ。

●AAAを維持している国はいくつあるのか?

S&Pは格付け対象の127カ国・地域のうち18カ国・地域にAAAを認めていた。そのうち6カ国がユーロ圏内だ。しかし、今や16カ国・地域になり、ユーロ圏内はルクセンブルク、ドイツ、オランダ、フィンランドの4カ国となった。

ユーロ圏以外では、シンガポール、カナダ、イギリス、ノルウェー、スイス、デンマーク、スウェーデン、オーストラリア、マン島(イギリスとアイルランドの間にある島)、ゲルンジー(英仏海峡にある島々)、香港、そしてリヒテンシュタインだ。これらの国々のうち、シンガポールの財政赤字はGDPの98%に達しており、唯一、フランスの86.67%を上回っている。

●格付けをしてもらうために、フランスはS&Pに支払っているのか?

格付会社のビジネスモデルは、「支払者格付け」に反する原則だ。「支払者格付け」の場合なら、借り手側が企業経営に透明性をもたらし、投資家を安心させ、資金を有利な条件で借りるために自ら評価を提供するものだが、フランスのような大きな国は例外的ケースになる。ドイツ、イタリア、イギリス、アメリカと同じように、フランスは1サンチームたりともS&Pに支払ってはいない。S&Pは対象の国々に資金援助を頼まず格付けを行っている。

格付け会社にとって、大国を格付けすることは避けて通れない。それはイメージの問題だけでなく、投資家にとって格付けが投資の目安になるため、費用を支払ってでも評価を得たいからだ。「ソブリン債の格付けは売り上げの10%以下だ」と、三大格付会社の一社はこっそりと情報を与えてくれた。しかし、だからと言って収益が悪いわけではない。昨年度の9か月間のS&Pの営業利益は42.99%に達しており、ムーディーズは41.8%になっている。

●格付会社の重要度を削ぐにはどうしたら良いのか?

欧州と同じようにアメリカでは、金融危機以降、かなりの見直しが行われ、格付け会社に多くの非難が浴びせられている。アメリカでサブプライム・ローンという劇薬を含んだ金融商品にAAAを与えてバブルを膨らませたとか、突然の格下げでソブリン債の信用危機を深刻化させているとか、さんざんに糾弾されている。アメリカでもヨーロッパ同様、当局は格付けへの言及を削減、あるいは廃止できないものか検討している。EUも三大格付会社が90%のシェアを持っている現状に競争原理を導入し、より多くの物差しを用意することによって、格下げによる衝撃を弱めようとしている。

欧州委員会は、困難な状況にある国の場合は、動揺を大きくしないためにも、その格付けを延期できないか検討してきた。しかし、こうした対策は悪い情報を隠すためのものだと市場が結論付けてしまうことを恐れるあまり、対策を実施に移せずにいる。

・・・ということで、私企業である格付会社の判断に、世界金融が振り回されているようです。特に、中華意識の強いフランスにとっては、最上位から格下げされたことは、いかんともしがたい侮辱のように思えるのではないでしょうか。

バロワン財務相は、格下げによる影響は小さいと、火消しに躍起になっていますが、サルコジ大統領は昨年、「トリプルAを失えば自分はおしまいだ」と漏らしていたといいますから、そのショックはいかばかりでしょうか。ただでさえ、世論調査で社会党のオランド候補の後塵を拝しているわけですから。第1回投票まであと3カ月ちょっとの時点での、格下げ。もうこれまで、アウト!、でしょうか。

 「大統領選に立候補している中道派のフランソワ・バイル氏はテレビ番組で『わが国の評価に悪影響を及ぼす国家主権の格下げであり、ドイツと比較した格下げでもある。欧州におけるわれわれの状況は象徴的にも政治的にも悪化することになる』と語った。」
(1月14日:ロイター)

というのが、フランス国民の感情に最も近いのではないでしょうか。欧州の中心を任じてきたフランス、それが今ではライン川の向こう側(ドイツ)や海峡の向こう側(イギリス)がAAAを保っているのに、どうしてフランスが・・・どうやって、この現実を受け入れるのでしょうか。格付け会社を批判して溜飲を下げ、それでおしまいでしょうか。格下げされたフランス、特にその政治への影響、そしてフランスの反応が楽しみです、たかがAA-の国の国民が何をほざくと、叱られそうですが・・・
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3年で900の工場が閉鎖された・・・フランスは、沈みゆく?

2012-01-07 21:26:17 | 経済・ビジネス
経済人の年頭のあいさつでも、円高、シュリンクする国内市場、電力供給の不安定、高い法人税率、新興国の安い人件費と需要の高まりなど、さまざまな理由が指摘され、結果として、より積極的な海外展開を行うという意見が多く聞かれました。

より積極的な海外展開・・・販売網の構築などはもちろんですが、工場の海外移転も、さらに加速されることでしょう。工場が移転してしまえば、雇用が減る。雇用が減れば、国内市場は、さらに冷え込む。従って、さらに海外へとビジネスが逃げていく・・・“cercle vicieux”、悪循環ですね。

日本よ、どこへ行く、といったところですが、こうした状況に追い込まれているのは、もちろん、日本だけでなく、程度の差こそあれ、先進国共通のようです。フランスでも・・・

12月28日の『ル・モンド』(電子版)が、“Près de 900 usines françaises ont fermé en trois ans”(フランスではここ3年で900ほどの工場が閉鎖された)という見出しの記事を掲載していました。フランスは、どのような状況になっているのでしょうか・・・

日刊経済紙“Les Echos”(『レ・ゼコー』:1908年創刊、発行部数12万のフランス最有力経済紙です)の依頼で研究機関“Trendeo”が調査した結果、ここ3年の間に、フランスではおよそ900の工場が閉鎖され(près de 900 usines ont été fermées)、10万人ほどの雇用が失われた。そして、2012年も厳しい状況が続くようだ。

『レ・ゼコー』によれば、過去3年で880の工場が閉鎖されたが、そのうち400が2009年に、200が2011年に閉められている。同じ3年間に、494の新しい工場が操業を開始した。その収支は・・・現在フランスで操業している工場は、2009年の年頭と比べ385ほども減少している(880-494=386ですが、数字にはアバウトなフランス。数字の正確さよりも、論点の斬新さ、これがフランス。日本とは正反対のようにも思えますが、もちろん、違いがあるということで、どちらかを非難するというものではありません)。

また、同じ3年間で、870の工場新設が決定されたものの、1,170の工場が人員削減を発表しており、『レ・ゼコー』は「増えるポストから削減されたポストを差し引くと、フランスはここ3年間で10万人分の雇用を喪失したことになる」と説明している。

『レ・ゼコー』はまた、「2012年は困難な1年になるだろう。2010年の夏以降、再開が確認されたプロジェクトや雇用が、数ヶ月前からストップしてしまっている」と現状を紹介し、2008-2009年の経済危機が、1973年の第一次オイル・ショック(le premier choc pétrolier)とともに始まったフランス産業界の衰退に拍車をかけたと強調している。

航空、食品加工、高級ブランドといった分野で雇用が増えたが、3年間で3万人の雇用を削減した自動車をはじめ、製薬、ハイテク、化学、金属などの業界で雇用が減少した。

・・・ということで、3年で900近い工場が閉鎖され、10万もの雇用が失われました。10%近い失業率、記録的な求職者数がそうした状況を裏付けています。

しかし、それにしても、長い衰退期ですね。1973年に始まったフランス産業の衰退。もうすぐ40年です。失われた10年とか、失われた20年と言われる我らが日本など、フランスの足元にも及びません。恐れ入りました、と言うしかありませんね。

こうしたデータが公表されれば、日本でフランスに関心を抱く人が、さらに減ってしまうのではないかと思われる、というか、心配されます。ユーロ安で、今がチャンスとばかりに、観光で出かける人は増えるかもしれませんが・・・

 (欧州は)輸出先としては最早何の期待も出来ず、金融に就いてはロンドンのシティーは別格として余り御付き合いしたくない相手と言う所ではないか。
 但し、名所旧跡が多く、今後EURO安が更に進むとなれば、宿泊、食事、移動そして買い物が安上がりとなり、今迄以上に素晴らしい観光地になると確信する。
 従って、日本に取っての今後の欧州とは、コスパの良い観光地に過ぎないと言う事である。
 各国首脳が偉そうな顔して訪日する必要は全くなく、観光担当の大臣が揉み手でやって来れば事足りるという話である。
 山口巌氏(ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役)
(1月2日:アゴラ)

というご意見も出てくるわけです。なお、コスパとは、コスト・パフォーマンスですね、念のため。

ジャック・アタリ(Jacques Attali)の言を待つまでもなく、世界の中心は西周り。日本が中心の座をつかもうとせず、みすみすそのチャンスを逃したため、長らくアメリカ西海岸で留まっていましたが、ようやく太平洋を渡り、中国、あるいは、中国・インドに世界の中心軸が移りそうです。その意味では金融の世界でも、中心は上海やシンガポール、ムンバイに移るのではないでしょうか。アメリカは「世界の保安官」の座から自ら降りようとしていますが、金融の世界だけはいつまでもウォール街がその中心だ、というわけにはいかないのではないかと、門外漢は思ってしまったりするわけです。

いよいよ、アジアの時代、かと思ってしまいますが、アジアと言ってもいささか広うござんす、というわけで、我らが日本は相変わらず、中国やインドの、内田樹氏言うところの「辺境」であり続けるのでしょうか。かつてのような、学び上手な辺境国家ならまだいいのですが、単に陽の沈んでゆく辺境国家では、立つ瀬がありません。

ここはひとつ、フランスと協力し、東西の知恵を合わせて新たな価値を模索できないものでしょうか。「敗者連合」などと言わずに。金融ではお荷物になりつつあるヨーロッパですが、古代ギリシャ・ローマから連綿と続く文化の歴史は、そう捨てたものではないと思います。

 日本のTPP論争で、アメリカ企業に病院が買収されるとか農業が破壊されるといった被害妄想がまかり通っているのも将来を暗示している。いま起きているのは、政治の崩壊だけではない。メディアを含めた社会全体の合理的思考や知性の崩壊だ。その責めを負うのは誰か。政治家だけではない。われわれ全員だ。
(ニューズウィーク日本版:11月23日号掲載:電子版)

フランスの知恵と日本の知恵、その合体がなにがしかのエネルギーを産み出せないものでしょうか。そんなことを思っているのですが、新年早々、フランスかぶれの単なる妄想と言われるかもしれないですね・・・
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国際分業の時代に、「バイ・フレンチ」は効果があるのか?

2011-12-22 22:38:18 | 経済・ビジネス
フランス語ですから、もちろん“achetez Français”になるのですが、「“Made in France”を買おう」という掛け声が、大統領選が近付くにつれ、左、中道、右、それぞれの候補者から合唱よろしく聞こえて来ています。

背景は言うまでもなく、高止まりする失業率、工場の海外移転、低迷する経済成長、そして欧州債務危機。先進国に共通する問題で、リーマン・ショックの後、アメリカでは「Buy americans」という掛け声が響きました。日本では、聞こえてきませんね。外国ブランドがお好きな方々が多いのでしょうか。あるいは、安いのが一番と、中国や東南アジアからの輸入品に飛びついているからでしょうか。

いずれにせよ、欧米からは自国製の製品を買おうという声が聞こえてきます。しかし、21世紀の今、そうした運動が自国の雇用を増やし、経済を後押しすることに繋がるのでしょうか。

懐疑的な意見を、フランスのあるシンクタンク(cercle de réflexion)が発表しています。“Fondapol”と呼ばれるシンクタンクで、正式名称は“Fondation pour l’innovation politique”(政治改革財団)。2004年4月に、現与党・UMPの支援で設立された財団で、政治的立ち位置は中道右派。特にシラク(Jacques Chirac)前大統領に近く、自由主義を標榜しています。このシンクタンクの研究員、アレクシス・ブノワ(Alexis Benoist)氏の文章が、16日の『ル・モンド』(電子版)に掲載されていました。どのように、語っているのでしょうか・・・

フランソワ・バイルー(François Bayrou:中道政党・MoDemの大統領選候補)の“achetez Français”(フランス製を買おう)から、サルコジ(Nicolas Sarkozy)大統領の“produire en France”(フランス国内で生産しよう)、そしてフランソワ・オランド(François Hollande:社会党の大統領選候補)の“patriotisme industriel”(愛国心ある産業)まで、“Made in France”を擁護することが選挙の争点になっているが、はたしてそのことが脱工業化の時代において効力のある対策なのかどうか自問するだけの価値はありそうだ。

“produit en France”(メイド・イン・フランス)は、12月4日にフランソワ・バイルーがフランスの再工業化を強調して以降、大統領選挙の一つの旗となった。しかし、もううんざり、といった気分だ。なぜなら、ジョルジュ・マルシェ(Georges Marchais:フランス共産党の書記長を1972年から94年まで務めた政治家)がすでに1981年の大統領選の際、“Produison français !”(フランス製を作ろう)を選挙運動のスローガンにしていたからであり、1990年代には、極右の国民戦線(FN)がそれをすっかり真似て、“produire français avec des Français”(フランス人の手でフランス製品を作ろう)と提唱していた。しかも、同時期、幾分トーンダウンした形で、商工会議所が広告で“Nos emplettes sont nos emplois”(フランス製を買うことは雇用に繋がる)と、消費者、そして市民としての務めを訴えかけていた。国産品を買おうという訴えはどうしてこうも周期的に大きな声になるのだろうか。そうした運動は、フランスの産業界を覆っている危機を解消することができるのだろうか。

最近提唱されている市場における愛国心は、労働者階級の困窮に対する政治的対応だ。フランス国内の脱工業化によって引き起こされる問題を無視することは、不可能に近い。工場閉鎖や工場の海外移転、そしてそれらにまつわる悲劇・・・こうした事柄は、多くの人々が主張する通り、夜8時のニュースの視聴者を感動させるために繰り返し持ち出される単なる話題ではない。フランス産業界の雇用者数は1980年の530万人から2010年には300万人に減少している。30年間で40%以上も激減したことになる。こうした労働者数の減少は、選挙戦の状況を変化させ、国民戦線が伝統的な工業地域で支持を広げる結果となっている。従って、大統領選の候補者たちが政治に不信を抱く労働者たちの周りに次々と集まり、少なくとも言葉では、国産品を守ろうと声を張り上げているのも、不思議ではない。

労働者の票だけでなく、“Made in France”は激変する世界の中で、フランスの将来に不安を募らせている多くの声なきフランス人に、サブリミナルなメッセージを送ることになる。グローバル化が古い経済構造を揺るがし、EUが根幹からぐらつき、共和国的政策が共同体の崩壊により試練にさらされている今、国民的感情を刺激することが選挙民を突き動かすのに効率的なエンジンとなっているのだ。

また、フランス製品を支援しようという提唱がクリスマスの数週間前に行われているのは、偶然というわけではない。カトリックの伝統的義務として、クリスマスを前に連帯に心を砕くのがフランス人にとっての習わしとなっている。その意味で、“Made in France”購入の呼びかけは、再工業化や経済的愛国心、深刻な危機に直面しての国民的連帯心などを見込みのあるテーマとして持ち出すうまい方法だと見做すことができる。

見逃されていた産業を取り巻く現状へのこうした訴えかけは、提唱者の本気度にもよるが、幻想、あるいは手品の類と見ることもできる。アダム・スミス(Adam Smith:1723~90、イギリス人の経済学者、『富国論』はとくに有名、「経済学の父」とも呼ばれています)以降、商売と思いやりがお互い相容れないものであることは広く知られている。フランスの消費者が慈悲的気持ちを高揚させることができるにせよ、その消費行動は生産国がどこであろうと、品質と価格の関係(コスト・パフォーマンス)で商品を選ぶということになっている。コスト・パフォーマンスを良くすることにより、製造の国際分業はフランス人の購買力を向上させるのに役立っている。フランス人は喜んで購買力を“Made in France”の祭壇に捧げることはしないと断言できる。働いていた工場の閉鎖を嘆くフランス人が、限られた購買力のせいで、近くのスーパーで中国製品を買っている。一人の個人の中に、こうして利害の反する消費者と生産者とが同居しているのだ。

産業界での雇用の減少という実際の問題に対し、国産品を買おうという呼びかけは、誤った処方箋による間違った対応ということにもなる。実際、フランス国内で生産された製品は雇用の維持につながると考えるような、偏った見方は欺瞞だ。コルベール(Jean-Baptiste Colbert:1619-83、ルイ14世の財務総監、重商主義や保護主義を採用し、ゴブラン工場などの製造業を設立・保護しました)によるマニュファクチュアの時代に帰るのならいざ知らず、今日の競争を生き抜くためには、フランス企業も生産性を常に向上させねばならないということを認めざるを得ない。生産性の向上のためには、機械化や生産方法の効率化が必要となる。Schumpeter(ヨーゼフ=アーロイス・シュンペーター:1883-1950、オーストリアの経済学者、起業家の行う不断のイノベーションが経済を変動させるという理論を構築しました)によって分析されたように、創造的破壊(destruction créatrice)という残酷な名のプロセスは、避けようもなく最も非生産的な職場を削減させることに繋がる。こうした国内の生産手段の変化がフランス国内の労働者数減少の第一の原因であり、国際競争よりも大きな影響を与えている。こうしたデータを前に、フランス製の商品を買おうという運動は何もできないのだ。製造の国際分業により、ほとんどすべての製品が生産国がバラバラの部品を組み立てることになっているだけに、いっそう“Made in France”を買おうという提唱は効き目がないことになる。結局、フランス製の製品(produit français)とは、何を指すのだろうか。

・・・ということで、高失業率、経済の停滞、購買力の低下という背景もあり、国民の愛国心をくすぐることは、選挙戦で有利に働くのではないかという判断があるようです。そこで、“Made in France”を買おうという提唱が陣営の左右を問わず聞こえてくるわけですが、では、そのフランス製の製品とは何なのか、という疑問を持ちざるを得ないのが今日の現状です。

国際分業。数カ国にまたがるサプライ・チェーンを構築し、最終的にどこかの国で製品を組み立てる。この場合、その製品はどこの国で作られたものと断言できるのでしょうか。例えば、部品を、ハンガリー、トルコ、アイルランドで製造し、最終的組み立てだけをフランスで行った場合、どこの国の製品になるのでしょうか。そして、最終的組み立てがフランスだからと言って、その製品をより多く買うことが、国内雇用の増加にどれだけ役立つのでしょうか。最終組み立てほど機械化が進んでいる場合が多く、部品メーカーのある国の雇用増にはつながっても、フランスの雇用を増やすことには、あまり大きな影響を及ぼさないのではないか・・・なるほど、という指摘ですね。

では、日本で「バイ・ジャパニーズ」が叫ばれないのは、国民がこうしたことを良く理解しているからなのでしょうか・・・それなら、素晴らしいことです! 連帯心がないから、とは思いたくないものです。
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EU首脳会議の前哨戦、欧州人民党大会でも、対立は深まる。

2011-12-09 22:20:07 | 経済・ビジネス
「欧州人民党」・・・ご存知ですか。浅学の身にはなじみがなかったのですが、1976年に創設された、欧州の保守主義政党と中道政党、キリスト教民主主義政党からなる政党組織だそうです。ヨーロッパ39カ国の73政党が所属。欧州議会では欧州人民党グループという会派を作り、265議席を有しています。

主な所属政党は、フランスのUMP(国民運動連合)、ドイツのキリスト教民主同盟(メルケル党首)、イタリアのフォルツァ・イタリア(ベルルスコーニ党首)、スペインの国民党(ラホイ党首)、ポルトガルの社会民主党(バローゾ欧州委員会委員長がかつて党首)、ベルギーのキリスト教民主フラームス(ファン・ロンパウ欧州理事会議長が所属)などで、ドーバー海峡を渡るせいか、イギリスの政党は加わっていません。大陸側とは共同歩調を取らないことが多いイギリスですが、ここでもまた、孤高を保っています。

さて、この欧州人民党、フランス語ではPPE(le Parti populaire européen)となりますが、その党大会が4年ぶりにマルセイユで開催されました。それも、ユーロ危機を協議するEU首脳会議の直前。まるでEU首脳会議の事前打ち合わせのような会議ですが、そこでもやはり、さまざまな意見の対立があったようです。どのような対立で、誰がどのような発言をしたのでしょうか・・・8日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

8日夜から9日にかけてブリュッセルで行われるEU首脳会議で各国は一致点を見出すことができるのだろうか。マルセイユで行われたやり取りを信じるにせよ、8日(木)の時点ではゴールにたどり着けてはいない。

EU加盟27カ国の首脳が一堂に会する夕食会を前に、ほとんど同じ顔触れだが、EU諸国の保守主義政党出身の首脳たちが、サルコジ大統領の招きで、欧州人民党(PPE)の4年ぶりの党大会に集った。右派の首脳の中では、イギリスのキャメロン首相だけがそこにいなかったが、それはイギリスの保守党がPPEのメンバーでないからだ。

午前中に行われた非公開の会議、そして欧州議会議員を前にした公開討論で、いくつかの国の首脳たちの立ち位置がどのように異なっているかを推し測ることができた。アンゲラ・メルケルとニコラ・サルコジが妥協策を月曜に発表した後、各国の対立は2点に絞られた。まず、仏独首脳が強力に提唱する改革案は、もしイギリスなどが実質的な条約改定に反対した場合には、ユーロ加盟諸国だけで実施するのだろうか。たとえユーロ加盟17カ国と加盟していない10カ国との間に深刻な亀裂が生じようと。もう一点は、フランスとドイツは、他のEU諸国や欧州のさまざまな機関を出し抜いても、危機を乗り切る主導的な立場を占有しようとするのだろうか、という点だ。

党大会の会場となったマルセイユの会議場で、一部の首脳たちは曖昧な態度に終始したが、他の首脳たちは歯に衣着せぬ物言いをした。壇上に登る首脳が替わるたびに、バックのスクリーンに登壇者の国の首都の風景が映し出され、多くの国旗が空を埋め尽くした。

まずはニコラ・サルコジが登壇した。前夜、フィヨン首相が行ったように、サルコジ大統領も、状況を大仰に語った。「EUが今ほど解体の危機に瀕したことはない。もし金曜日、合意を得られなければ、二度とチャンスはない」と、攻撃的な口調で語った。

サルコジ大統領は、続いて、欧州大陸の平和と安定に果たすべきフランスとドイツの役割を強調し、「仏独両国は、他の国々よりも大きな義務を負っている」と述べた。さらに、仏独首脳の提案、就中、EUの条約を改定することに反対する首脳たちに、「変革が必要なのだ」と忠告を発した。合意がなされれば27カ国、合意に至らない場合は17カ国で行うことになる。サルコジ大統領の決意は固く、「ユーロ圏では反対する国はない」と語った。

サルコジ大統領の後、大きな拍手と共に登壇したメルケル首相のトーンはかなり協調的なものだった。首相は、ユーロ圏のうち、規定の成立に加わりながら、財政規律を厳格に適応して来なかった国々の首脳の放任主義を指摘した。そして、今回に決定は、間違いなく数年にわたりしっかりと遂行していかなければならないものになるだろうと述べ、「発言は必ずしも守られてこなかったわけであり、コトバだけでは不十分だ」と付け加えた。

想定されている改革がユーロ圏内に限定されることに反対する人がいるとすれば、それはユーロ圏に加わっていない国々の首脳だ。例えば、ポーランドのドナルド・トゥスク(Donald Tusk)首相は、聖書の表現を使いながらその点に言及した。「神が我々の言葉に混ぜ物をしたという印象を持っている。数ヶ月前から、波長を合わせることはいっそう難しくなっているのだ」と、バベルの塔に関する神話を持ち出して語った。

トゥスク首相は、過去数カ月、重要だという首脳会議が続いたことを指摘した上で、「結局、なにも解決しなかった。先ほどの会議でも、もし我々が目覚めなければ、金曜日に決定に至るチャンスはもうないと言っていたが」と、述べた。そして、ポーランドにとって、最も危険なことは、ユーロ加盟国だけで対応しようとする試みだと認め、「27カ国の結束をより強固にすべきだ。他の選択をすれば、取り返しのつかないことになる。27カ国のヨーロッパを壊してしまえば、今回の危機は我々の棺を用意することになるかもしれない」と語った。

ルーマニアのトライアン・バセスク(Traian Basescu)大統領は、現実的な議論に賛意を表した。「ユーロ加盟国ではないとはいえ、ルーマニア経済はユーロ圏で起きていることに大きく影響されている。危機の解決策が決まらない間に、利回りは5%から8%に上昇した。ルーマニアは、二つのカテゴリーに分かれたEUを受け入れることはできない。ルーマニアもユーロ圏の決定に参画することを望む。なぜなら、その決定はユーロ圏の外にも影響を及ぼすからだ」と述べた。

出席者たちは、11月20日のスペイン総選挙で勝利し、EUの会議で初めて演説を行うマリアノ・ラホイ(Mariano Rajoy)首相をあまり積極的にではないが一応拍手で出迎えた。ラホイ首相は、直前にサルコジ大統領と一対一で会談したのだが、会場の演説では、社会党のサパテロ前内閣と同意した、憲法に記載された予算案の財政均衡化目標(la règle d’or)を可及的速やかに実施すること、労働市場を改革すること、不動産バブルの崩壊以降、困難に直面している銀行のリストラを進めることなどを約束した。そして、EUが支援してくれるのであれば、EUの改革すべてに対応する用意があると述べた。

木曜の夜、今度はキャメロン首相がブリュッセルの舞台に登場する番だ。しかし、EUの歯車に油を点す役割は、彼が担っているのではない。

・・・ということで、債務過剰に端を発するヨーロッパの信用不安は、今が、山場。どう動いているのでしょうか。

「欧州単一通貨ユーロ圏17カ国と非ユーロ圏6カ国で政府間協定を結び、財政規律を強化することで合意した。EU新基本条約の制定は英国の反対で断念した。国際通貨基金(IMF)の支援を仰ぐため、ユーロ圏を中心にまず最大2千億ユーロ(約21兆円)をIMFに拠出する方針だ。」(12月8日;産経・電子版)

と報道されていますが、10日朝には、EU首脳会議のさらに詳しい結果が伝えられることでしょう。

ユーロをめぐる混乱は、首脳たちが指摘しているように、ユーロに加盟していない国々にも影響します。しかも、それはヨーロッパに限らず、世界的に影響を及ぼします。ここは、ぜひとも「ヨーロッパの知恵」を結集して、危機を乗り切ってほしいものです。「ヨーロッパの知恵」は、まだ油を点すほどには錆びついていないはずです。そして、もう一点。フランスだけではなく、全ヨーロッパの知恵を結集してほしい・・・フランスの国威発揚の手段としないことを願っています。
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『ル・モンド』の託宣・・・ユーロ崩壊の予測はもはや信じ難いことではない!

2011-12-08 21:10:35 | 経済・ビジネス
「ユーロは、崩壊する。銀行へ、急げ!」では、イエロー・ペーパーの見出しになってしまいますので、ここは、冷静に、『ル・モンド』の記事“Prédire la fin de l’euro n’est plus inconcevable”を読み進めることにしましょう。出典は7日の電子版です。

誰も敢えて信じようとはしないが、みんなその事態に備えている。パズルをはめ込むように、ユーロ圏が崩壊していく・・・ユーロ圏が南北に分裂する、あるいは一部の国が離脱する。こうした事態は専門家が考える経済の近未来に関するシナリオからもはや排除できなくなっている。しかし、信じ難くはないとはいえ、実際に対応するのは容易ではない。

金融グループUBS(Union Bank of Switzerland:本部はスイス)ロンドンオフィスのエコノミストたちが上記のようなユーロ圏崩壊のシナリオを語っている。その際、規模や完成度は異なるものの、ユーロと同じような統一通貨で、20世紀において挫折した4つのケースを例としてあげている。いずれも、経済、社会、政治のお粗末な状況の結果としてもたらされた挫折事例だ。

1919年のオーストリア=ハンガリー帝国の崩壊(皇帝カール1世の退位は実際には1918年11月11日です)、世界大恐慌の1932年から33年におけるアメリカの封鎖的経済(経済のブロック化)、1992年から93年におけるソビエト連邦の解体(正確には1991年12月26日をもって解体しています)、1993年のチェコとスロバキアの分離(1993年1月に平和的に分離し、ビロード離婚とも言われました)がその4例だ。これに、2002年1月にアルゼンチンが1ドル=1ペソというドルペッグ制から離脱したことを加えることができよう(1月に公定レートと実勢レートの二重相場制を実施し、2月に変動相場制に移行しました)。

しかし、こうした参照事例がどれほど的確であろうと、専門家たちの意見は次のように一致している。ユーロ圏の崩壊は「カオス」と同義語だ・・・UBSのチームも、「疑いようのない大災害になる」と述べている。

専門家のシナリオは、闇から闇へと進む、連鎖的破綻を描いている。パニックを起こした預金者たちは、1919年の大恐慌時にアメリカで起きた、預金を引き出すために預金者が銀行の窓口に殺到する、いわゆる“bank run”を再現し、それをきっかけに銀行は倒産。誰もが困窮化し、国ごとに程度の差はあれ、リセッション入りする。つまり、簡単に一掃することのできないカタストロフィとなる。このようにブリュッセルにあるシンクタンク(un cercle de réflexion)、ブリューゲル(Bruegel:2004年に設立され、イタリア首相になったマリオ・モンティが2005年から08年に会長を務め、現在は名誉会長になっているシンクタンクです)のジャン・ピザニ=フェリー(社長)は語っている。

カタストロフィにはどのようなプロセスで至るのだろうか。いくつかのネガティブな要素が重なる必要があるようだ。投資銀行・ナティクシス(Natixis:貯蓄銀行・Caisse d’ épargneと国民銀行・Banque populaireの傘下にあります)のエコノミスト、シルヴァン・ブロワイエ(Sylvain Broyer)は、欧州の政治指導者たちが危機解消のための行動を長期にわたり躊躇うこと、経済規律をなおざりにする国々を救済するのに嫌気がさしたECB(欧州中央銀行:仏語ではBCE=la Banque centrale européenne)が、支援を止めること、イタリアの国債が投機筋の激しい攻撃にさらされることを、例としてあげている。イタリア10年債の利回りが9%に留まるようだと、状況はイタリアにとって耐えがたいものとなり、1兆9,000億ユーロ(約200兆円)に上る国債の金利を払うことは不可能になると、ブロワイエは見ている。

その次の段階は? 未知の領域に入ることになる。しかし、各国が元の通貨に戻ることを想像することはできる、リラ、マルク、フラン、と。シルヴァン・ブロワイエは、理論上、このことは南欧の主要な国々が、北欧の国々に対する競争力を取り戻すために、自国通貨を30~40%引き下げることを意味すると、述べている。輸出品の価格が引き下げられ、輸入品の価格は急騰するということだ。

しかし、家計はすぐさま直撃を受ける。購買力は大幅に目減りするからだ。実質給与は30~40%減少するが、一方輸入品は今まで通り流通する。南欧や他の国々の預金者は、資産が大幅に目減りすることを目撃することになる。その変動がどれほどのものになるかを示すため、ジャン・ピザニ=フェリーは自著“Le Réveil des démons. La Crise de l’euro et comment nous en sortir”(悪魔の眼醒め。ユーロの危機とそこからの脱出)の中で、2010年末時点で、フランスの個人、企業、銀行は1兆2,000億ユーロ(約125兆円)もの投資をユーロ圏の他の国々で行っている、というデータを提示している。

自国通貨に戻ることにより、借金が収入を得ている通貨よりも強い通貨建てではないという条件をクリアしていれば、債務者は困難からより容易に抜け出すことができる。しかし、強い通貨での債務があれば、最終的には個人、産業、企業の破産という可能性を抱えることになる。

ドイツは他国よりも影響が少なくてすむだろうが、何年にもわたって築きあげてきた競争力があっという間に消滅してしまうことを目の当たりにすることになる。外国に投資した資産の目減りにより困難に陥った銀行を国家として救済する必要に迫られるだろう。

シルヴァン・ブロワイエは、今後ユーロ圏全体がマイナス3%前後の顕著なリセッションに3年ほど陥り、同時にアメリカやイギリスも2年ほどのリセッションを経験することになるかもしれないと見ている。

しかし、こうしたことは、理論上のことだ。次々と惹き起こされるパニックをどう見積もればいいのだろうか。避けられないユーロ圏からの資金流出をどう抑えることができるのだろうか。考えられているシナリオは、経済に致命的な打撃を与え、貧困を拡大する通貨の無秩序に拍車をかけることになる。

ジャン・ピザニ=フェリーは次のようなことを紹介している。アルゼンチンは2002年1月に1ドル=1.4ペソという為替平価に固定したが、6カ月後、ペソは75%もその価値を目減りさせてしまった・・・

・・・ということで、ユーロ圏の崩壊もあながち否定できない状況になって来ているようです。目下の注目は、この後(日本時間9日未明)に行われるEU首脳会議で、どのような結論が出されるかですね。EUが一致団結してユーロ危機に対処できるのでしょうか。ユーロ危機を回避するのに有効と思われる手段を構築できるのでしょうか。そして、実際実施していけるのかどうか。課題は一朝一夕に解決できるものではないだけに、ユーロ危機が解消するには、まだ長い時間がかかりそうです。その時間をどれほど短縮できるかどうか、「メルコジ」を中心とした政治指導者たちに、大いなる期待が寄せられているわけです。

今後のシナリオについては、シティ・バンクも、「向こう数年のうちにユーロ圏から離脱する国が出ることや、『無秩序なデフォルト』に追い込まれることはメインシナリオではないが、こうしたサブシナリオの実現可能性は無視できなくなりつつある。」と予測しているようです。舵取りを一つ間違えれば、ユーロ消滅という事態になりかねない・・・

持っているユーロはすずめの涙ほどという私にとって、直接的な影響は少ないのでしょうが、100万円、1,000万円単位でユーロを持っている人には、大きな心配事ですね。しかし、「バタフライ効果」(l’Effet papillon)で、誰でもがいつ影響を蒙るかもしれません。他人事ではいられませんね。何しろ、バタフライ効果などとかっこいいコトバで言わなくとも、思わぬことが、思わぬところに影響することは江戸時代から知っている日本人ですものね。「風が吹けば、桶屋が儲かる」・・・ユーロの今後、いっそう注目です。
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ピント合わせは苦手・・・フランスから見たオリンパス。

2011-11-14 21:00:51 | 経済・ビジネス
しばらく更新が飛んでしまいましたが、その間にも、『飛んでイスタンブール』ならぬ『飛んでイタリア・ローマ』、ベルルスコーニ首相の辞任など、さまざまな出来事が起きていました。

もちろん、日本国内でも。国内ニュースの双璧は、TPPとオリンパス。さらには清武発言などというものもありましたが・・・TPPはフランス語では“le Partenariat trans-Pacifique”でPTPとなりますが(カナダのフランス語系メディアの表記)、PTPでもTPPでも『ル・モンド』の検索には出てきませんでした。地球の裏側での動きなのでしょうね。因みに、APECは、“la coopération économique Asie-Pacifique”となります。

その点、“Olympus”で検索すると、いくつかの記事にヒットします。やはり、製品は、強い。プロダクトという手で触れることのできるもの、目で見ることができるものは、やはり知名度が高くなります。まして、コンパクトカメラでは、日本製品がフランスを含め、多くの国々で大きなシェアを占めているだけに、オリンパスの事件は十分ニュースになるのでしょうね。ただし、大見出しになるほどではなく、文字検索する必要がありますが。

さて、オリンパス関連のニュースの中から、8日の『ル・モンド』(電子版)が伝える内容をご紹介しましょう。フランスのメディアはこの件に関し、どのあたりまで関心を広げているのでしょうか・・・

ピント合わせに時間がかかっているが、ピンボケが緩和されるに従い、オリンパスが映し出す画像にめまいを起こしそうだ。日本のこのカメラメーカーを取り巻く財務スキャンダルの暴露は、もはや留まるところを知らない。事件発覚からわずか3週間、世界で最も知られた日本ブランドの一つであるオリンパスは、経営陣の一部が行ったでたらめな行動により、まさに危機に瀕してしまっている。

すべては、イギリス人社長、マイケル・ウッドフォード(Michael Woodford)を就任わずか6カ月で解任したことから始まった。「彼は会社経営をすべて独断で行い、しかも文化の違いを克服することができなかった」と、日本人経営陣は述べている。文化的差異とは良い口実だ。ウッドフォード氏は、オリンパスによる4社の不明朗な買収についての説明を求めたのだが、下手に口出しをしてしまったということになる。

問題となっている額や買収方法を見れば、ウッドフォード氏は当然のことをしたまでだ。投資助言会社(une société de conseils financiers)は、2007年に医療器具会社(un fabricant d’instruments chirurgicaux)の買収に絡み、巨額の報酬を得た、6億8,700万ドル(660億円)もだ! またオリンパスは、2006年から2008年の間に、健康食品会社(une entreprise de compléments alimentaires)、リサイクル会社(une société de recyclage)、調理容器製造会社(un fabricant de récipients adaptés aux micro-ondes)の買収も行った。3社の買収総額は734億円になったのだが、光学機器と内視鏡メーカーであるオリンパスにとっては、買収先はどんな会社でも良かったのだ。第三者委員会の最初の報告によれば、これらの判然としない買収の目的はただ一つ、無謀な投資により90年代に発生した含み損を解消することだった。

オリンパスがこの混乱から回復するのは容易ではない。問題が明らかになって以来、株価は70%も下落し、1995年と同じレベルになってしまった。経営陣数人の辞任では、問題の火消しには十分ではない。オリンパスには本当の意味での刷新が必要だ。しかも、そのことはオリンパスだけでなく、日本の金融関連のすべての機関に言えることだ。不正を適切に見出すことができなかったことにより、金融当局の評判は大きく傷付けられている。しかし物事が変化するには、ガイジン(un Gaijin)が日本社会にとって不具合な所に手を突っ込むのを待つことになるのだろう。ピントを合わせることは、オリンパスだけに求められているのではない。株取引を管轄する部門もその手続きの刷新を求められている。

・・・ということで、オリンパス問題は、オリンパス一社だけの問題でなく、日本の金融部門に広く見られるもので、しかも、その改革には外国からの手が必要だ、と見られているようです。臭いものには蓋で、自己浄化できない日本。変化を嫌い、恐れる日本社会。そんな指摘があるようです。

とんでもない、かたよった見方だ、偏見だ、というご意見もあるでしょう。しかし、外圧に弱い日本、外圧でないと動かない日本、ということは、以前から対米関係でよく言われてきました。自らの判断で動くことが好きではない、あるいは、できない。外圧を理由に、誰も責任を取らないで済むようにしてからでないと、一歩を踏み出せない。

誰だって、切腹などしたくはありません。一度レールを外れると、二度と戻れない、と言われる日本社会。敗者復活戦のない日本社会。だからこそ、誰も責任など取りたくないのですね。「ガイジン」の所為にすれば、誰も責任を取らないで済む。うまい知恵です。

「ガイジン」の所為にできない場合は、言いまわしを曖昧にし、どうとも取れるようにする・・・TPPに関する表明がその典型ですが、これもまた、日本人の知恵。これで日本社会はうまく治まります。しかし、問題は、「国際社会」に否応なく巻き込まれてしまっているということです。日本人同士であれば、阿吽の呼吸で分かり合えるものも、外国語に訳され、しかも文化的背景が異なる外国人が読めば、理解が異なってくることもあるでしょう。

島国に「引き籠る」のであれば何も変える必要はないのですが、国際化時代を世界の中で生きていこうとするなら、日本、そして私たちの生き方のどこにアジャストすべきところがあるのか、あるとすればどう変えていくべきなのか、また逆に、堅持すべきところ、突っ張るべきところはどこなのか、そうしたことを考えることも必要なのかもしれません。難問ですが・・・
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「フランス」対「コカコーラ」、1サンチームをめぐるバトル。

2011-09-09 21:22:41 | 経済・ビジネス
フランスの伝統的文化を守ろうとする人々と、フランス社会へ侵入するアメリカ文明。両者の、『文明の衝突』とも言えるような戦いが、フランス国内において行われてきたことは、改めて紹介するまでもないですね。

例えば、対「マクドナルド」の戦い。

「1999年8月12日、農民同盟と市民のデモが「欧州が米国のホルモン肥育牛肉の輸入を禁止したことへの報復として、米国がフランス産のロックフォールチーズに対する制裁関税を課したことへの抗議」として、マクドナルドを「多国籍企業による文化破壊の象徴」に見立てて、ミヨー(Millau)に建設中だった店舗を破壊する。」(「ウィキペディア」)

主導したのは、ジョゼ・ボヴェ(José Bové)。1953年生まれの58歳。遺伝子組み換え作物への反対運動で注目を浴びるようになり、その後、マクドナルドの店舗破壊で、世界的に有名になりました。両親は、国立農業研究センター(INRA:Institut national de la recherche agronomique)の研究員で、ジョゼが3歳の時から3年間、カリフォルニア州立大学バークレー校に研究員として招聘されたため、ジョゼもアメリカに暮らしています。その影響か、英語は今でも流暢。バカロレアに優秀な成績で合格すると、グランゼコール進学クラスへ。しかし、アナーキズムに傾倒し、良心的兵役拒否の運動にかかわり、その後、農業の道へ。そこでは、農民組合活動に加わり、アメリカの遺伝子組み換え作物(OGM:organisme génétiquement modifié)に反対するようになりました。2007年の大統領選挙に立候補し、2009年からはヨーロッパ・エコロジー所属の欧州議会議員です。

ジョゼ・ボヴェ本人は反アメリカという気持ちはないのかもしれませんが、アメリカ企業がリードする遺伝子組み換え作物に反対し、アメリカ文化のシンボルの一つとも言えるマクドナルドを襲撃したことで、反米的な立場を取っているとどうしても見られてしまうことが多いようです。

他にもフランスでは、「英語」の侵略に対する戦い、アメリカ音楽や映画に対する戦いなど、さまざまな抵抗運動が行われてきました。結果は、言うまでもありませんが・・・

そして、今、「食」の分野で再び、対アメリカの戦いが行われています。

アメリカの「食」と言えば、マクドナルド以上にシンボリックな存在かもしれないのが、コカコーラ。アンディ・ウォーホル(Andy Warhol)の作品に描かれている、あの赤いカン、そしてペットボトルが世界中に行き渡っていますね。そのコカコーラとフランスの戦い・・・どのようなバトルが展開されているのでしょうか。8日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

8日、コカコーラの1,700万ユーロ(約18億5,000万円)の投資を停止するという決定に対し、労働組合のCGT、国会議員に続き、予算省が反対の声をあげた。コカコーラの決定は、フランス政府が発表した財政赤字対策の一環としての加糖飲料(boissons à sucres ajoutés)への増税に対する反発によるものだ。

8日午後、予算省は「コカコーラの決定は、経済的に残念なものであるが、加糖飲料1本当たり1サンチーム(約1.1円)の増税に伴う決定ではなく、国民の健康に資するために下されたものであろう。1サンチームの増税が飲料業界を危機に陥れるはずがない」と判断している。

フィヨン(François Fillon)首相が8月24日に発表した緊縮財政策の一環として、加糖飲料への新たな課税が含まれているが(アルコール飲料、タバコへの増税も含まれています)、その政策への反対をシンボリックに示そうと、コカコーラは8日、ブーシュ・デュ・ローヌ県(Bouches-du-Rhône:地中海に面した南仏、県庁所在地はマルセイユ)にあるコカコーラの工場における2012年の大規模投資を再検討することになったと、発表した。

1,700万ユーロの投資は、カンの生産ラインの改修に使われる予定で、ブーシュ・デュ・ローヌ県ペヌ・ミラボー(Penne-Mirabeau)市にある工場の40周年式典の行われる9月19日に公式に発表されるはずだった。「投資が取り消されたわけではない。ただ、増税によって不安定となった状況を再検討する必要がある」というコミュニケを、コカコーラは発表している。増税は、ここ数週間のうちに、社会保障の財源を確保する法改正案の一環として議会で検討されることになっている。コカコーラとしては、議会での採決結果を注意深く見守るつもりだ、と広報が語っている。

8日午後、ブーシュ・デュ・ローヌ県選出の二人の下院議員(与党・UMP所属)が、コカコーラの決定に反対する声をあげた。その一人、ヴァレリー・ボワイエ(Valérie Boyer)は、「コカコーラのまるで恫喝するかのような対応にひどいショックを受け、眉をひそめるばかりだ。その決定は、国民の健康問題と混同するべきではない。コカコーラは砂糖を含まない飲料の売り上げを伸ばす努力に集中することだってできるはずだ」と、述べている。

もう一人のベルナール・レイネス(Bernard Reynès)は、この脅しは到底受け入れ難い、と語っている。

労働組合、CGT(Confédération générale du travail)のコカコーラ支部は、不安な面持ちで状況を見つめている。「従業員たちは不安になっている。投資の再検討ということは、工場の将来にとって良いことではない。心配の種になる」と、コカコーラ組合の南仏代表は語っている。

コカコーラの決定は、7日夜、社内の会議で発表された。経営陣は、増税が正式に決定されるかどうか、議会での投票結果を待っているようであり、組合側は、その発表内容について自問自答をしている、「投資は増税案にプレッシャーをかけるために、単に延期されただけなのだろうか、それとも、本気で再検討する気なのだろうか」と。工場の40周年式典にはコカコーラ本社からジョン・ブロック(John Brock)会長が来ることになっていたが、それもキャンセルされており、従業員たちはいっそう不安に駆られている。

コカコーラの経営陣は、投資再検討という決定を次のように正当化している。「わが社を制裁し、わが社の製品を公然と非難するような税に対して象徴的に抗議したいと思っている。加糖飲料への批判、タバコなど他の製品との同一視に対する毅然とした反対を明確に表明したい。」

首相府は、太り過ぎへの戦いに必要不可欠だという理由から、今回の増税を正当化しており、1997年から2009年までに、フランス人の平均体重が3kg以上も増加したと背景を説明している。増税は2012年から実施に移される予定だが、実施されれば国庫にとって1億2,000万ユーロ(約130億円)の増収をもたらすことになるだろう。業界筋によれば、平均して1カン当たり0.01ユーロの値上がりになるだろうということだ。

第一次と第二次の両大戦間にフランスに進出したコカコーラは、フランス国内にある5か所の工場で合計3,000人の従業員を雇用している。ブーシュ・デュ・ローヌ県の工場は生産規模で第2位であり、203人を雇い、3つの生産ラインを稼働させている。コカコーラの発表したコミュニケによれば、向こう5年間で4,500万ユーロ(約49億円)の投資対象になっているとのことだ。

・・・ということで、にらみ合ったまま、フランス議会での投票結果を待つことになるものと思えたのですが、上記記事がアップされたのが、8日の17時58分。それから4時間余り、続報が掲出されました。「コカコーラ、投資の停止を否定する」・・・何があったのでしょうか。

「コミュニケーション・ミスだ」と、コカコーラは、財政緊縮案の一環としてフランス政府が計画している加糖飲料に対する増税に抗議するため、フランスにおける投資を再検討するとした8日午前発表の声明を打ち消し、それによって引き起こされた論争に慌てて終止符を打とうとした。テレビ局LCIとのインタビューで、コカコーラ・ヨーロッパのユベール・パトリコ(Hubert Patricot)会長は、コカコーラ・ヨーロッパはフランスにおける投資を計画通り実施する予定でおり、フランス市場に注力していくつもりだと、「コカコーラは社会的責任のある企業であり、フランスでは投資を引き続き行っていく」と述べた。

コカコーラのフランスにおける子会社は、8日朝、2012年にペヌ・ミラボー市の工場に予定していた1,700万ユーロの投資を再検討すると発表していた。

ユベール・パトリコ会長は、フランス政府による増税に感情的になったフランス法人が行った対応だと説明したが、かれ自身、改めて、加糖飲料に対する増税には反対だと語った。しかし、投資計画には何ら影響しないことも強調した。また、午前に発表されたコミュニケとは異なり、工場の40周年セレモニーは9月19日に予定通り行われ、コカコーラ本社のジョン・ブロック会長も出席すると、明言した。

・・・ということで、コカコーラ・フランスが引き起こした騒動は、たった1日でコカコーラ・ヨーロッパによって幕引きがなされました。コカコーラとして増税には反対であることを強調はしていますが、投資計画の再検討などは行わないと明言。企業としての経営判断なのか、裏で何らかの政治的力学が働いたのか・・・いずれにせよ、投資は行われ、工場閉鎖や工場移転といった心配は払拭されたかに見えます。

国内の雇用を守るためには、政・官・組合、一体となった反対運動を繰り広げるフランス。昨年だったでしょうか、ルノーが新工場をトルコに建設すると発表するや、なぜフランス国内ではないのかという批判の嵐。最後は、サルコジ大統領がカルロス・ゴーン会長を呼び付けて、フランス国内に建設することにさせてしまった、ということもあったと記憶しています。

個人主義でありながら、その連帯は強固であります。ここで、思い出すのは、「一に雇用、二に雇用、三に雇用」という台詞です。わずか1年ほど前に日本の首相によって発せられた言葉ですが、今や紫煙のように消えてしまったようです。
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フランスの国債、保有しているのは誰だ?

2011-08-31 21:45:16 | 経済・ビジネス
EUの財政問題は、なかなかすっきりと解決しません。ギリシャ支援にしても、返済を保証する担保をフィンランドが求めたり、デフォルトの恐れが消えないと囁かれたり・・・ギリシャ問題は、さらにポルトガル、スペイン、イタリアへも波及する危険性がくすぶり続け・・・

しかし、EUの問題は決して対岸の火事ではありません。日本の債務残高は、EU加盟国の比どころではありません。何しろ、財務省が策定した平成21年度末での国債発行残高は692兆円で、地方債も含めると891兆円。赤字時計によると、8月31日時点ですでに国の長期債務残高が約678兆円、地方分を合わせると約878兆円。毎秒、かなりの勢いで額が増えています。また、借入金や政府短期証券を含めるとおよそ1,144兆円に達しています。

これだけの借金ですが、日本の国債は国内の貯蓄だけで賄ってもお釣りがくると言われ、長期国債金利も1.2%台。すぐにEUと同じような財政危機に陥ることはないとも言われています。

では、EU加盟国の国債はどのような状況になっているのでしょうか。フランス国債を例に見てみましょう。10日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

フランスの国債を誰が購入し、誰が所有しているのだろうか。この質問は一見簡単そうだが、実は複雑だ。しかし、フランスの債務残高が、GDP比(仏語では、PIB:Produit intérieur brut)85%の1兆6,461億ユーロ(約181兆円)に達し、過去最高を記録。対前年で1,100億ユーロ(約12兆1,000億円)も増えている今、誰が所有しているかは戦略的にも重要なことだ。

国の債務残高は、3タイプに分けられる。中央政府が発行する国債、自治体が発行する地方債、行政法人などが発行する債券だ。

Insee(Institut national de la statistique et des études économiques:国立統計経済研究所)によれば、1兆6,461億ユーロの内訳は、大部分の1兆2,860億ユーロが国債で、地域圏(régions)、県(départements)、市町村(communes)の発行する地方債は1,560億ユーロ、社会保障関連の団体のものが1,910億ユーロ、そして中央官庁の外郭団体などが発行した債権が116億ユーロとなっている。

財政赤字が30年も積み重なり、現在フランス国債を所有しているのはさまざま機関になっている。外国政府、企業、大手銀行・・・こうしたところがフランスの長期国債の買い手となっている。フランスの誇る“AAA”という格付けのお陰で金利は低く抑えられている。国債を発行するフランス国債庁(AFT:Agence France Trésor)の最新の月例報告によると、償還期間によって1%から4%となっている。

国債は2種類に分類される。まずは長期国債。OAT(Obligatoires assimilables au trésor)で、発行済み国債のかなりの部分を占める。7年から50年までの償還期間で、固定金利、変動金利ともにある。次は、短期国債。償還期間が2年から5年のBTAN(Bonds du Trésor à intérêt annuel)と、5週から7週のBTF(Bonds du Trésor à taux fixe et à intérêt précomptés)の2タイプがある。

フランス国債のおよそ三分の一は国内の銀行やその他金融機関が購入している。特徴としては、銀行よりも、投資先として国債を購入する保険会社が全体の20%と多くを占めていることだ。他のEU諸国と異なり、フランスの銀行は自国国債の14%以下しか保有していない。

フランスの国債は65%以上が外国資本によって保有されている。2010年末ころには、70%ほどだったので、この数字は減少しているように見えるが、それ以前は、右肩上がりに増え続けていた。1993年には、わずか32%が外国資本に握られているだけだった。

EU内でフランスの立場は特徴的だ。シンク・タンク“Fondapol”(Fondation pour l’innovation politique:2004年4月に与党・UMPの支援で設立された財団で、経済成長、環境、価値観などについての研究、発表を行っています。名誉総裁は、ジャック・シラクの側近、Jérôme Monod)が4月に公表したデータによると、外国資本によって保有される国債の割合ランキングでは、フランスの65%は、ポルトガルの75%、ギリシャの71%に次いでEU加盟国では3番目に高くなっている。この点が、日本などの国との大きな違いとなっている。日本の債務残高はGDP比200%もあるが、その国債は基本的には国内の預金者によって保有されている。アメリカの場合は、債務残高の約三分の一が外国資本によって保有されている。

外国資本と一口に言っても、その形態はいくつかに分けられる。年金基金、大手銀行、保険会社、政府系ファンドなどだ。ではどの国がフランス国債を最も多く保有しているのだろうか。残念ながら、それを知ることは不可能だ。なぜなら、そうした情報を売り主以外に公表することは法律で禁じられているからだ。しかし、この点が問題なのだ。国債保有者がどこの誰なのかを知ることがいっそう重要になっているからだ。

国債の多くが外国資本によって保有されているという事実は、強みでもあり、弱みでもある。強みだというのは、それだけフランス国債に投資先としての魅力があり、市場が信を置いているということの表れだからだ。一方、弱みだというのは、世界の市場で売買されているだけに、フランス国債はいっそう世界の景気に左右されやすいということだ。フランスと同じように外国資本に多くの国債を依存しているギリシャとポルトガルはご存知のような状況になっている。

ユーロ圏の債務残高は、ユーロ圏内の国々によってお互いの持合いになっていることが多い。2010年には、外国資本によって保有されているフランスとドイツの国債の52%がユーロ加盟国によって保有されていた。従って、ユーロ建てによる決済が可能だ。また60%がユーロ圏にノルウェーやスイスなどを含めた広い意味でのヨーロッパ諸国によって保有されている。

このことは、財政危機が循環しないような対策を取ることができるという点で、安全だと言える。フランスは、7月21日の協定に従って、ギリシャ国債を買い足した。しかし、同時に、不安材料だとも言える。なぜなら、ユーロ圏のある国がデフォルトに陥ると、加盟各国と通貨ユーロが不安定な状態に追い込まれてしまうからだ。

外国資本によって保有されているフランス国債のうち、ヨーロッパ以外の国に保有されている、つまり国際市場に委ねられているのが40~48%になる。この部分が、景気のリスクや金融の変動に最も影響を受けやすい。

・・・ということで、日本でも報道されているように、日本の国債はほとんどが日本人や日本企業によって買われているので、市場で金利が急激に上昇したりする心配はないようです。一方、フランス国債は、その三分の二が外国資本によって保有されています。それだけ、いくら長期国債の格付けがトリプルAだと言っても、不安定になる可能性を否定できないようです。ひとたび、格付けが引き下げられれば、ギリシャの二の舞になってしまいかねない・・・

日本の国債をめぐる状況は、未だ鎖国状態とも言えるのかもしれません。だからこそ太平の眠りを楽しんでいられるのでしょうが、ひとたび黒船がやってくると・・・現状では、何も外国資本に日本の国債を保有してもらう必要もないのでしょうが、もしそうせざるを得ないような状況に立ち至った場合を想定して、対策を講じておくことは必要なのではないでしょうか。根拠のない楽観主義の上で惰眠を貪っていては、いざ事が起きた時に、効率的な対応ができないことは、今までの歴史が物語っています。

あまりに多い債務残高。瓦解する前に、どう解決するのか、国民的コンセンサスを得ることが急務なのではないでしょうか。政治の独断ではなく、国民との対話を通して、ぜひ新内閣には、解決の糸口を示してほしいと思います。
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格付け会社ってどんな会社・・・S&Pパリ・オフィス見学記。

2011-08-22 21:45:07 | 経済・ビジネス
スタンダード&プアーズがアメリカの長期国債の格付けを引き下げたことにより、ドルの独歩安(当然、円高)、株の乱高下が引き起こされています。以前から格付け会社の発表する国債格付けが下がったといっては、債券市場での利回りが上がったりしています。では、その格付け会社はどのような組織なのでしょうか。一般的にはあまりメディアに登場しないだけに、いっそう神秘的な存在として、その格付けが半ば神格化されてしまっているような気もします。その結果、一企業による格付けに国家が振り回されている・・・

「ガイトナー長官はS&Pによる米国債格下げについて『非常にひどい判断』と指摘。『彼らは基礎的な米政府予算の計算に関する知識不足を露呈した。わたしは、彼らが今回の財政計画合意から間違った結論を出したと考える』と語った。」(7日:ロイター)といった記事や、「米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は7日までに、同社の米国債格下げの判断に対し、米財務省が財政赤字の算定で2兆ドル(約157兆円)の間違いがあると反論したことについて、『格付けは主に将来3~5年(の見通し)で決めている』とした上で、『判断には影響しなかった』と強調した。」(8日:時事通信)という記事もありました。また、「米司法省、金融危機までの数年間にスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が行ったモーゲージ証券の格付けの妥当性について調査」という見出しが『ニューヨーク・タイムズ』に出ていると、ロイターが伝えていました(18日)。格下げされた国は、反論・反駁・反撃したくなるのでしょうね。

では、格付け会社(S&P、ムーディーズ、フィンチなど)とはどのような会社なのか、のぞいてみたい気がしますね・・・『ル・モンド』もそう思ったのかどうか、S&Pのパリ・オフィスを訪問したようです。社員へのインタビューも含め、社内の様子を紹介しています。20日の電子版です。さっそく、のぞいてみましょう。

8日、世界各国の証券取引所で株価が大幅に値を下げた。5日にアメリカ長期国債の格付けを格付け会社(l’agence de notation)、スタンダード&プアーズ(S&P)が引き下げたことが原因だ。いたるところがパニックに陥った。その中で、S&Pのパリ・オフィスは例外だ。そこでは皆、自信を持っているようだ。「社内的には、確かでポジティブな判断だと社員たちは受け取っている。アメリカ長期国債の格付けを引き下げたことはS&Pがどこからも影響を受けていない、独立した組織であることを物語っているからだ」と、S&Pのヨーロッパ地区責任者、Carol Sirouは自賛している。

S&Pパリ・オフィスの静けさは、証券取引所の喧騒と好対照をなしている。「ここは蜂の巣じゃないですから」と、広報担当のArmelle Sensは語っている。赤い椅子がくすんだグレーのカーペットとコントラストをなしている新しいオフィスを彼女が案内してくれた。しかし残念ながら、ドアを開けるのに必要な彼女の社員カードも、アナリストたちの部屋のドアを開けることはできなかった。しかも、その部屋の入り口には監視カメラが取り付けてある。「秘密主義というわけではなく、機密保持のためなのです」と、彼女は含みを持たせて語った。

しかし、各国のデータが閲覧できるというわけではない。パリ・オフィスでアナリストたちが行っているのは、S&Pによる分析を希望する銀行や企業の業績について検討することだ。例えば、金融担当のAurélie Thiellet。アナリストたちの部屋で会ったが、そこには特に変わったものは何もない。あるのは、コンピューター、電話、新聞くらいだ。Aurélie Thielletは、大学でマクロ経済学と金融を学んだ後、2001年にS&Pに入社。その後、定量・定性のデータを収集したり、担当する銀行の経営陣に会ったり、会議をアレンジしたりして働いてきた。

パリ・オフィスのトップはCarol Sirouなのだが、彼女をスタッフはファースト・ネームで呼び、親しみのある語法(tutoiement)で話しかけている。彼女は、「アナリストはつねに二項式(二重チェック)で作業をしている。同じ書類を異なった視点で見ることは大切なことだ。また、何年も同じスタッフが同じ企業を担当することはない。ローテーションを行っており、そのことでプレッシャーを削減することができる」と語っている。アナリストとして企業を担当すると、中小企業を経営しているようなプレッシャーを感じることがあり、利害の対立を避けるため、ローテーションなどを実施しているそうだ。彼女の下で90人のアナリストが働いているが、誰もが入社の際18ページの書類にサインをしなくてはならない。その書類に記載された規則により、アナリストやスタッフは、担当する業種の株を保有することを禁じられている。他業種の株であっても会社に申告する義務がある。そして、クライアントからいかなる利益供与も受けてはならない。

「昼食にも規制がある。クライアントに報告をしっかり行う際には、丸一日かかるのが普通だ。そこで、昼食に誘われることがよくあるのだが、その食事代は1人25ドル(17ユーロ:約1,900円)を超えてはいけない。このような規定はよくからかいの対象になる。特に食事の場でさまざまなことが決まることの多いフランスでは」と、細く黒いフレームのメガネをかけ、紺のジャケット、グレーのパンツを穿いたAurélie Thielletは語っている。

しかし、食事のテーブルで多くのことが決まるフランス文化など、S&Pはまるで気にかけていない。Aurélie Thielletの直属の上司はマドリッドにおり、その上の管理職はロンドンやフランクフルト勤務だ。共通の言語は英語で、“Financial Times”紙や“Crédit Week”誌が読まれている。七つある会議室は、それぞれパリの公園の名前が付けられているが、ある社員は“les Sept Nains”(七人の小人)の方が合っていると言っている。その七つの会議室では、ペーパーボードはスクリーンとビデオカメラに取って代わられている。格付け発表の後、テレビ会議で委員会が行われるのも、この青白い明かり下、全体的に冷たい印象のある会議室においてだ。

「格付けとは、借り手がその借金を返済する能力があるかどうかについての意見であり、それ以上の何物でもない。格付けは、その企業担当のアナリストによって選ばれ、召集された5人から7人によって行われる。つまり、毎日その企業を注視しているアナリスト・グループが格付けを行うのではなく、合議制で決められるのだ」と、Carol Sirouは一語一語区切りながら、力説した。格下げに同調できないアナリストは、その格下げに反対することもできる。格付けの決定にはエゴや利己的考えが入り込む余地はなく、そこには価値あるアイデンティティしかない。「S&Pによる決定」(C’est S&P qui décide)というアイデンティティであり、あたかもスローガンのように聞こえてくる。

「ここでは、すべてがアメリカ流だ。フレックス・タイム制を取っているが、その分結果には大きな期待がよせられる」と、Carol Sirouは述べているが、Aurélie Thielletも「子どもたちの世話をするため、週三日の勤務だが、その三日間で35時間働いている」とそのことを裏付けている。こうした労働条件と他業種より良い給与が、就職希望者を惹き付ける。履歴書(CV)が山のように届けられるのだ。Aurélie ThielletはS&Pでしか働いていないが、メディアにどんなに袋叩きに遭おうとも、履歴書の山がS&Pの競争力を物語っていると確信している。

「もしS&Pが妄想の産物であるなら、それは人々が金融経済の知識に欠けているからだ。もし格付けの原則に反対意見があるとすれば、それは人々が格付けとともに公表される分析を読んでおらず、また、格付けは相対的な評価であり、絶対的なものではないことを忘れているからだ」と、Carol Sirouは説明し、格付け会社の役割を小さなものに抑えようとしている。さらには、「格付け会社は投資家たちに投資先に関する技術的情報を提供しているのであり、一般大衆に何かを発信しているのではない」とも語っている。引き続く経済危機に伴い、スポットが当てられてきているが、S&Pはまさに黒子としての存在を好んでいるようだ。

・・・ということで、企業や投資家だけを相手に、特殊な世界で高給を取りながら生きてきた格付け会社は、突然、スポットを、それも非難の色合いの濃いスポットを浴びて、戸惑い、大樹の陰に逃げ込もうとしているようです。

格付け会社のアナリストたちは、できれば陰の世界に留まっていたいようですが、スポットを浴びたい人々も・・・今や、アナリスト、ストラテジスト、エコノミストの時代。ワイドショーやニュース番組を見れば、いつもかれらが出ています。しかも、万能の神・・・経済・金融・財政に留まらず、政治、外交、はては芸能、スポーツまで、分野を問わずコメントを発しています。

しかし、ほとんどが、金融、コンサルタント業など民間企業の社員。視聴者のためになる情報、つまり自分の働く企業の業績にマイナスになりかねないような情報を、果たして提供してくれているのでしょうか。神である前に、企業の社員であることを、私たち視聴者は、肝に銘じておく必要があるのではないかと思います。

それにしても、出る方も出る方ですが、使う方も使う方だと、思えてしまいます。製作費縮小の折、一人で何でも話せるコメンテーターがほしい・・・

なお、Carol Sirouのコメントが、ロイターの記事(18日)に出ていました。もちろん、格付けについてです。

 米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)のフランス責任者、Carole Sirou氏は18日、RTLラジオで、S&Pはフランスが最上級の「AAA」格付けと「安定的」の格付け見通しを維持すると確信している、と述べた。
 同氏は「われわれはこのAAA格付けが変わらないことに自信がある」と述べ、格付けの等級は特定の財政上のコミットメントではなく、「コミットメントの軌跡(トラジェクトリー)」に依存しているとの考えを示した。

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『ル・モンド』、東京電力を叱る!

2011-03-17 20:12:57 | 経済・ビジネス
東北関東大震災は、今でも多くの避難者の皆さんに大変な苦労を強いています。ガソリンがない、灯油がない、水がない、食糧がない、薬がない、着替えがない、トイレが使えない・・・避難先で亡くなる方も出始めている逼迫した状況の中で、もう一つ大きな問題が同時進行で進んでいます。言うまでもなく、福島原子力発電所での事故。

日本政府は20km以内の人には避難指示、20~30kmの範囲では屋内退避要請を出していますが、アメリカ政府は福島原発から80km以内に居住している自国民に退避を勧告。それどころか、フランス、スイス、オーストリアなど多くの国々が、日本にいる自国民に、日本から出国するか、日本国内でも南(西日本)へ退避するよう勧告しています。

こうした勧告はジャーナリストにも適応されるようで、France2もTF1も、16日夜のニュースから特派員が東京ではなく大阪から状況を伝えていました。東京も危ない!

この危機感は、日本人の一部も共有しているようで、フランスのニュース番組が、お父さんは仕事で東京を離れられないが、幼い子供たちへの放射能の影響を恐れて、お母さんと小さな子どもたちだけで大阪など西日本へ向かっている様子を紹介していました。新幹線は満席でした。

どうしてこんなに長引いているのだ、対応が遅いじゃないか、本当に大丈夫なのか・・・国民のイライラ、政府や東京電力への不満は募るばかりですが、『ル・モンド』東京特派員のPhilippe Mesmer(フィリップ・メスメール氏:NHKのフランス語ニュースを読んだり、声優などとしても活躍中)が、16日の記事(電子版)で東電への非難の声を上げています。タイトルは、“Tepco, une enterprise trop sûre d’elle-même”(東京電力、自己過信に満ちた企業)・・・

日本が直面している壊滅的な原発事故は、福島原発を管理運営している東京電力への疑いの眼差しを生じさせている。東電は世界第4位の電力会社で、電力産業の民営化に伴い1951年に誕生した。現在1都8県に電力を供給しており、ニューヨークとロンドンにもオフィスを構えている。2009年度、東電は2,860万の契約者に29万187ギガワットの電力を供給し、400億ユーロ(約4兆8,000億円)の売り上げを上げている。

この影響力の大きな会社は、その質の良いサービス、特に日本の他の電力会社9社よりも優れたサービスを提供していることをうたい文句にしている。その質は、効率性、特に停電が世界でも最も少ない電力会社のひとつであることによって裏付けられている。この信頼感は、技術者にとって大きな魅力であり、最も優れた技術者たちが東電で働くことを望んでいる。

この素晴らしい好循環が、実は欠点となっている。東電は重大な事故が起きると、対応が取れなくなってしまうのだ。今回の福島第一原発で起きている事故への対応が、残念ながらその典型的な事例となっている。東電は、先週土曜日(12日)、最初の事故が起きるや示されたアメリカと国際原子力機関(IAEA:仏語ではAIEA、l’Agence international de l’énergie atomique)からの支援の申し出を断っている。また、繰り返し起きている事故の発表も遅れたうえに、分かりにくい内容で、多くの質問に答えることさえしなかった。そのことがついに政府の直接的介入となった。

15日(火曜日)朝、菅首相は東電の本社へ赴き、経営陣とかなりぎすぎすした打ち合わせを行ったようだ。「爆発がテレビの画面に映し出されてから政府に連絡があるまで1時間以上もかかったとは何たることだ」。

菅首相はまた、原発の事故現場から社員の大部分を引き上げ、対応を子会社に任せようとした東電の対応を、次のように激しく非難したようだ。「あなたたちがこの問題に直面しているのだ。現場を離れるなど、もってのほか。起こりうることすべてに対応すべきだ。今この状況で引き上げたら、東電は最後を迎えることになる」。

菅首相の怒りに先立ち、14日(月曜日)、東電の清水正孝社長が会見を開いたが、すぐさま批判の対象となった。最初の事故から29時間も経ってからの初めての会見であり、週末の間、東電幹部たちは多くの質問に異口同音に次のように答えるだけだった。「状況について調査を続けています」。

東電にとってコミュニケーションのまずさはこれが初めてではない。習慣的であるとすら言える。2002年には、過去20年の間に200以上ものうその報告をしていたことが政府の調査で明らかになり、経営陣が辞職した。2007年には、原子力安全保安院(NISA)によって、1978年から2002年の間に97件もの火災が発生しており、そのうちの19件は非常に重大な火災であったにもかかわらず、政府に報告がなされなかったことが公表された。この件数は電力会社10社の総件数だが、東電が最も大きな非難の対象となった。

規律違反を是正するようにという繰り返しの要請にもかかわらず、東電の体質は変わらなかった。2007年11月には、柏崎刈羽原発での火災と放射能漏れに関する正確な報告が遅かったことが批判された。この透明性の欠如は、住民に大きな不安を与え、運転再開まで21カ月も要することになった。

そして今回、多くの日本人にとって受け入れがたい対応は、東電に対して残っていた僅かばかりの信用をも失わせることになるかもしれない。

・・・ということで、エリート社員、エリート企業による問題隠しが指摘されています。民間企業となって60年。とは言うものの、社会的インフラ、ライフラインを担う企業であり、公共性が強いだけに「お上的体質」が抜けず、ガラス張りの運営・対応ができなのかもしれません。

電力や原子力発電について、自分たちより詳しい人間はいない、だから少々のことは隠し立てしても明らかになることはない。つまり、臭いものに蓋。そのような体質を持つ企業なのでしょう。社員も、新入社員のときはまったく違っていたとしても、いつの間にか社風に染まるものです。人間は強い人ばかりではない。やがては立派な東電マンとなって、問題をいかに上手に隠すかということに、せっかくの才能・知識・経験を使うようになってしまう・・・ご本人にとっても、日本社会にとっても、残念なことです。

しかし、こうしたことは、なにも東電、あるいは電力企業に限った話ではないのではないでしょうか。ガス器具メーカーの件もありました。食品関連の産地偽装など、枚挙にいとまがありません。個人の倫理観よりも、企業の業績、企業の価値観が優先されてしまう社会。一糸乱れぬ集団としての行動も、復興、再興といった場合には良い結果を生み出しますが、裏目に出ると、残念な結果になってしまう。

世の中、簡単にはいきません。そして、人生も思うようにはいきません。

などと、諦観に浸っている暇があったら、被災者の皆さんへの協力支援です!
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