ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

フランス発、地熱を有効利用しよう!

2011-06-30 21:12:03 | 社会
被災者の皆さんのご苦労は今でも多くのメディアが伝えていますが、福島原発については、若干、報道も減ってきているようです。収束へ向けて、順調に進捗しているのでしょうか。想定外の状況に立ち至らなければ良いのですが・・・

福島原発の事故は、技術力のある日本でも防げなかったと、多くの国々で、反原発運動に加勢する結果となりました。スイス、ドイツ、イタリアで、脱原発の方向になっています。しかし、原子力複合企業・アレバ(Areva)を擁するフランスは、サルコジ大統領自ら、原発の推進を表明しています。

しかし、一枚岩とはならないのが、個性の国・フランス。さまざまな環境団体があるように、反原発、脱原発の動きもそれなりに活発です。ただし、原発の後を考えずに、反原発のお題目を唱えれば良いとは思わないのが、理性の国・フランス。原発を止めるのであれば、代替エネルギーは・・・・

6月27日の『ル・モンド』(電子版)が、地熱の有効利用を呼び掛けています。

チェルノブイリや福島のような重大な事故は、我が国の産業界の将来に想いを馳せるすべての人々にとって、大きな衝撃となっている。原子力エネルギーの利用に伴い、多くの出来事や事故が後を絶たない。しかしチェルノブイリや福島は、その事故の重大性以上に、原発はもはや制御できないということを語っている。最も深刻な問題は、地域全体の放射能汚染だ。正常に機能している場合でも、原発は回収すべき廃棄物を発散させている。

例えば、プルトニウム239は、その放射能を半減するには24,000年必要だと言われている。24,000年前、人類はまだ旧石器時代を生きていたのだ。廃棄物を注意深く監視することが必要であるとともに、長期にわたって監視することが欠かせない。

イギリスのBrennilis原発は停止して26年になるが、汚染物質をどうやって処理すべきか、未だ方法を見いだせないでいる。将来の世代へ重荷として引き渡すことになるばかりだ。こうしたネガティブな面は、原発を盲目的に支持する人々によって否定、あるいは無視されている。

原子力の民間利用は、裏側に巨大な別の一面を併せ持っている。それは原子力の軍事利用だ。民生原子力と同じ原料、同じ技術で造ることができる。軍用原子力が我々の将来に大きな影響を及ぼすという考えは、より根本的な脅威となる。何しろ、この問題は人類の生存そのものに関わってくるのだから。廃棄される予定の核抑止力は、広島型原発4,000個分に相当すると言われている。アメリカとロシアが保有しているそれぞれの核兵器は、数回にわたって地上のものすべてを破壊し、取り壊し、焼き尽くすことができるという。核大国という意識はアメリカ、ロシアから重大な責任を担っているという意識を失わせてしまう恐れがあることを認めざるを得ない。

また、シェールガス(le gaz de schiste)に関しては、岩盤を破壊するために有害物質を使い続けることにより、アメリカの地下にある自由地下水に途方もない量の廃棄物を混入させているという問題が指摘されている。汚染は飲料に供されるべき水にまで広がっており、ニューヨークやバッファローでは市内でのシェールガスのための掘削を禁止しているほどだ。しかも、シェールガスは化石燃料の中で最もひどい汚染を引き起こしている。

こうして危険を伴う原子力やシェールガスがエネルギー源として利用されている中で、豊富にあるにもかかわらず、地熱エネルギーはすべての利用可能なエネルギーの中で今でも冷遇される存在になっている。フランスで地熱エネルギーが開発されているのはアルザス地方北部だ。5kmほどボーリングで掘り進むと、200℃の高温水に達することができる。300バールという気圧のため、この温度でも水分は沸騰しておらず、地表に近づいてはじめて沸騰する。沸騰した水の力で発電所のタービンを回して発電ができるのだ。

断層の上に位置するアルザス北部は、高温の水を容易に見つけることができる地域に属しており、この地域は火山地帯と一致する。アイスランドや他の国々が火山による地下の熱を活用して地熱発電所を作動させているのにはアルザス北部と同じ地理的背景がある。カリブ海にあるフランスの海外県、グアドループでは、火山が町の近くにあるため1kmも掘れば豊富な高温水が得られ、島で必要なエネルギーのかなりの部分をまかなうことができている。

火山から離れた地域では、地殻を1km掘るごとに温度は平均して25℃上昇する。5km掘り進めば温度は125℃になり、この温度の水ならタービンを回すことができる。

しかし、125℃の水も地表近くへ汲み上げられると数十度温度が下がってしまう。そのため、2~3km余分に掘り、200℃ほどの水温に届けば、地表に汲み上げてもタービンを回すことができる温度を保つことができる。こうして、無制限のエネルギーの海に達することができるのだ。しかも地熱エネルギーはあまりコストがかからない。掘削が済んでしまえば、U字型の大きな鋼鉄製チューブを敷設するだけで、腐食の心配のない高温の水と蒸気を地表まで汲み上げることができる。特に蒸気はそのままでタービンを動かすことができ、またチューブに断熱材を巻き付けることで、水温の低下を少なくすることもできる。

ロシアのコラ半島沖にある島では、ロシアの技術者たちが12kmまで掘り進むことができた。しかし、地熱発電所を稼働させるためにこれほど深く掘る必要はない。現在のボーリング技術を少しだけ向上させれば済む話だ。

とは言うものの、技術者たちが急ぎ解決すべく取り組んでいる技術上の課題はまさにこの点にある。人類はすでに航空宇宙における技術的難問に打ち勝ってきている。だがその分野では政治的意思が発揮されていた。一方、地熱利用には政治的決断がまだなされていないが、地熱用ボーリングは、海底でボーリングするほどには難問に囲まれているわけでないことは間違いない。

地熱発電は、環境汚染の心配がより少ないという利点も併せ持っている。地熱発電所は都市や産業集積地などエネルギー消費地域のすぐそばに立地でき、ロスをもたらす長距離送電を避けることができる。安全性は、ほとんど問題を起こしていない現行の火力発電所と同じレベルだ。

地熱エネルギーは、化石燃料の消費を抑えることにより地球温暖化という難問にうまく対応できるというも希望を与えてくれる。地熱など再生可能エネルギーの普及と現在のエネルギー大量消費システムに制限を設けることにより、より安定した経済を創り出すことができる。そして、投機家への依存度が低くなるため、危機に陥りにくい経済を実現することができるのだ。

・・・ということで、原発の代替エネルギーとして地熱に注目しようという提案です。地震の少ないことでも分かる通り、フランスには火山はあまりありません。それでも、地下の地熱を利用しようとしています。

その点、日本は、地熱天国。至る所に火山、温泉があります。こうしたエネルギー源を活用しない手はありません。

温泉を地熱エネルギーとして活用しようとすると、温泉で成り立っている地域、産業から反対が出ることが予想されます。しかし、鉱泉でなくとも、高温水なら出る地域がまだ多く手つかずの状態で残っているのではないでしょうか。温泉でなくとも、エネルギー消費地の近くで、高温水を汲み上げることができないものでしょうか。

火山国・日本には地熱がある。そして、島国・日本には波がある。波による発電も可能です。太陽光、風力・・・克服するべき課題はあるものの、日本は自然エネルギーの宝庫。国策として一時期太陽光発電を推進したように、国と企業が同じ目標を持てば、意外と早く実現できるのではないでしょうか。欧米の後塵を拝することもなくなるはずです。

原子力発電に投じた資金を回収しようとする電力会社、原発団体への天下りを当てにする官僚、原発絡みの利権に群がる政治家・・・技術的問題より、日本ではこうしたことが難問として立ちふさがっているのかもしれないですが、それでも、日本の将来、地球の未来を考えれば、自然エネルギーへ一日も早くシフトしていくべきなのではないでしょうか。
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「立つ鳥跡を濁さず」となるか・・・IMFトップに就任のクリスティーヌ・ラガルド。

2011-06-29 21:08:47 | 政治
Christine Lagarde・・・1956年1月1日、パリ9区で、Lallouette家の長女として誕生。後に弟3人。中学・高校時代は、シンクロナイズド・スイミングに熱中し、国内大会で3位入賞を果たし、代表チーム入り。17歳のとき、大学教授だった父親が死去。奨学金を得て、アメリカへ留学。高校を卒業後、キャピトル・ヒルへ。後にクリントン政権で国防長官となったウィリアム・コーエン(William S. Cohen)のオフィスで研修生として働く。

帰国後、シアンスポ・エクス(Scien Po Aix:エクス・アン・プロヴァンス政治学院)で学び、ENAを目指すが、2度受験して2度とも失敗。パリ第十大学で公法を修め、1981年、弁護士登録。国際ビジネスを中心に扱う法律事務所、ベーカー&マッケンジー(Baker&MaKenzie:41カ国に69のオフィス、3,750人の弁護士)のパリ・オフィスで働き始める。1995年からはアメリカの本部オフィス勤務。1999年から2004年まで、ベーカー&マッケンジーの会長(女性初)。

2005年にフランスに戻り、政界ではまったく無名だったが、ラファラン元首相(Jean-Pierre Raffarin)の引きで、貿易担当閣外相として政界デビュー。2007年には農水相、同年から経済・財務・雇用相としてフランス経済の舵取りを担う。2009年にはForbesによる「世界で最も影響力のある女性」の17位に。また同年のFinancial Timesによる「ユーロ圏で最も優れた財務相」にも選ばれる。

Lagardeは前夫の姓。息子二人を得るが離婚。2006年からは企業経営者(Xavier Giocanti)がパートナー。

女性初のIMF専務理事に就任するクリスティーヌ・ラガルド。前任のDSK(ドミニク・ストロス=カン)が大統領を目指して今年の夏から秋には辞任するだろうという読みで、早くからその後任を目指した働きかけを加盟各国に対して、特にヨーロッパで行っていたようで、それが功を奏したという側面もあるようです。DSKの逮捕・訴追でスケジュールは早まりましたが、フランス人が再びIMFのトップに座ることができ、サルコジ大統領は、フランスの勝利だと述べています。自尊心の強い中華思想の国の人々の喜ぶさまが目に浮かびます。

しかし、ラガルド新専務理事の前途には、いくつもの難問が待ち受けています。決して、ハッピー、ハッピーと浮かれてばかりはいられないようです。具体的にはどのような課題や問題なのでしょうか・・・28日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

IMF理事会は、6月28日、予想通り、クリスティーヌ・ラガルドを新しい専務理事に指名した。任期は5年で、女性初の専務理事の誕生だ。

中国、ロシア、ブラジル、アメリカの支持を得て、彼女の指名はすでに決まっていたようなものだ。残すは、6月末までに発表するという理事会(24人で、うち女性は1人だけ)の最終決定がいつなされるかだけだった。

IMFのコミュニケによると、クリスティーヌ・ラガルド(55歳)は理事会による合意の上で、対立候補であったカルステンス・メキシコ中銀総裁(53歳)を斥けて専務理事に指名された。任期は7月5日からの5年間であり、指名を受けて彼女は自分のツイッターに名誉でありと喜びであるとさっそく書き込んだ。
“Chers Amis, c’est un honneur et une joie de vous annoncer que le Conseil d’administration du FMI vient de me désigner Directrice générale !”
(IMF理事会が先ほど私を専務理事に指名したと親愛なる皆様にお伝えすることができることは名誉でもあり喜びでもあります)

就任するやまずクリスティーヌ・ラガルドを待ち構えているのは、債務危機にあるヨーロッパの国々にどう対処するかという問題だ。指名直後、テレビ局・TF1のインタビューに答えて、彼女はギリシャ危機にIMFが介入すべきだと述べるとともに、新たな緊縮財政措置に関して国民的理解を得るようギリシャ政府に呼び掛けた。

クリスティーヌ・ラガルドは続けて、「ギリシャのユーロ圏脱退は最悪のシナリオであり、全力で、いかなる手段に訴えても阻止すべきだ。すべての債務者がギリシャ問題に協力すべきであるが、同時にギリシャが責任ある対応をすべきだ」と述べた。調整の仕方、資本の供給、通貨システムなどに関しては、IMFとG20はほぼ同じ考えを持っている。

クリスティーヌ・ラガルドが取り組むべき二つ目の課題は、IMFの組織の再建だ。特に存在感を増している新興国がその力に見合った待遇を求めている。彼女は立候補声明で、大きな変革を行うとは述べなかったが、新興国の待遇改善、IMFの効率性向上、世界的不均衡の監視強化、加盟国の必要に応える体制づくりにより、IMFの正当性を強化したいと表明している。

フランス国内では、彼女の転出により、内閣改造が行われることになる。サルコジ大統領とフィヨン首相は28日夕、ラガルド新専務理事の発表直後、20分ほど会談を行っている。しかし、彼女は29日朝10時からの閣議には出席予定であり、内閣改造の発表はその後になる。

現在3人の名前が後任の候補として取りあげられている。バロワン予算相(François Baroin)、ペクレス高等教育相(Valérie Pécresse)、ルメール農水相(Bruno Le Maire)の3人だが、大統領側近のルメール農水相は大統領選へむけて選対本部の立ち上げを要請されており、財務相の後任にはならない見込みだ。与党・UMPの関係筋によると、ペクレス高等教育相が優位だったが、ここにきてバロワン予算相が巻き返し、指名されることになるのではないかとみられている。

財務相の後任指名に合わせて、昨年11月の内閣改造以降空席になっている旧軍人担当相、およびセクハラ疑惑で5月に辞任したトロン公務員担当相の後任も指名されることになる。フィヨン首相がカンボジアとインドネシアへ向けて水曜の夜に出発するので、それらの発表は水曜の午前中には行われるはずだ。

フランス国内には、クリスティーヌ・ラガルド個人を待ち構えている問題もある。IMFトップに就いても、司法との戦いが終わるわけではないのだ。閣僚の在任中の犯罪を扱う共和国法院(CJR:Cour de justice de la République)は、1993年に銀行大手クレディ・リヨネがアディダス社の買収に動いた際の争いに、彼女が2007年に介入。財務相の職権を乱用して、サルコジ大統領の支持者であるベルナール・タピ(Bernard Tapie:実業家、俳優、歌手、政治家、サッカーチーム、オリンピック・マルセイユの元会長)に有利な調停に持ち込んだとして追及しようとしている。共和国法院に彼女が召喚されるとなると、その公判は長引き、数年はかかる見込みで、その間この問題に悩まされることになる。また、ベルナール・タピに有利になるように働きかけた政府高官に対する公判にも巻き込まれる可能性もある。

・・・ということで、クリスティーヌ・ラガルドを待ち構えているのは、ギリシャをはじめとするユーロ圏の債務危機、IMFの組織としての改革と再建、そしてフランス国内での職権乱用を問われる裁判。はじめの2点は、まだ前向きに取り組める課題ですが、3点目は財務相当時の職権乱用を問われる裁判で、いかに潔白を証明するかという後ろ向きなものになってしまいます。

上手く無罪を勝ち取ることができるでしょうか。もし訴追されてしまうと、DSKと同じような状況になってしまう。ただ、サルコジ大統領の支援者に有利になるよう働きかけた、つまりサルコジ大統領の意を酌んで行ったことかもしれませんから、もし来年サルコジ大統領が再選されれば、一気に解決かもしれません。いくら三権分立の法治国家と言えども、大統領の影響力を完全には排除できないのではないでしょうか。

立つ鳥跡を濁さず、とばかり、フランス国内の問題から上手に逃れて、IMFの課題にだけ集中することができるでしょうか。

日本では、政治評論家の田崎史郎氏が、「管直人 立つ鳥 跡を濁す」と歴史に刻み込め、と現政権を批判しています(6月20日『現代ビジネス』・電子版)。退いた後、その足跡が濁っているかどうかで、その政治家の評価が確定できるのかもしれないですね。いや、政治家に限らず、人間すべてに言えることなのかもしれません。
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フランスが、40度の暑さにゆだっている!

2011-06-28 21:47:56 | 社会
なでしこジャパンは、初戦のニュージーランド戦、ちょっと苦戦気味でしたが、なんとか2-1で勝利しました。苦戦の原因の一つが、思わぬ暑さと言われています。ドイツで30度を超えている。ロンドン・オリンピックを目指すU-22が先日クウェートでの試合で負けてしまいましたが、その時は40度近い暑さ。それに比べれば30度ちょっとなら、それほどでもないと思えてしまいますが、準備をしていなかったところへの思わぬ暑さですから、その影響も大きかったのでしょうね。

このドイツの暑さ、他のヨーロッパの国々をも襲っていたようです。西隣のフランスも暑かった。週末から暑くなり、27日には、40度を超えた地点も。どんなに暑かったのか、その原因は、そして対策は・・・27日の『ル・フィガロ』(電子版)が伝えています。

27日、フランスのほぼ全土が強烈な熱波に見舞われた。ほとんどの地方が午後までに33~37度を記録し、37~40度まで上昇した地域も。特に、中央部からアキテーヌ地方が記録的な高温を記録した。パリとナントで36度、トゥールーズで35度、ボルドーでは38度(夕方までに40度に上ったというテレビ報道もあります)。先月は1900年以降で最も暑い5月となったが、その傾向がまだ続いているようだ。

例外的に地中海沿岸と北西部は26~31度とそれほどの高温にはならなかった。だが、夜にはロワール地方やベルギー国境に近いフランドル地方などは、激しい雷雨に襲われそうだ。雷、突風、雹に注意が必要で、北西部の広い範囲でにわか雨が予想されている。

火曜の朝には北西部の雷雨も徐々に収まりそうだが、ノール・パ・レ・カレ(Nord Pas-de-Calais)地方では若干長引く予想が出ている。雷雨はその後、火曜の午後にパリ周辺や中央部でも発生する模様だ。

今後の予想によれば、火曜以降、気温はほぼ平年並みに落ち着きそうで、中央部、特にトゥールでは月曜と火曜の最高気温の差が12度ほどにもなる予想だ。水曜からは、東部の一部を除いて、夏の暑さから解放されるだろう。

「この暑さの原因は、アフリカ北部から南風に乗って吹き込んできた熱波で、日曜日から居座り、月曜日に暑さのピークを迎えた」と、“Météo Consult”(1988年に設立された、ヨーロッパで最初の民間気象予報会社)の予報責任者、パスカル・スカヴィネール(Pascal Scaviner)は説明している。くもり空のため朝の放射冷却が少なく、空気も乾燥しているため、気温が一層上昇したようだ。

火曜にはアイスランド方面から寒気が北西部地方まで下がってくる予想で、その後フランス全土を覆うことになる。暖気と寒気がぶつかれば、激しい嵐が発生することになる。

「熱波に襲われると、人間の身体は急激な気温の上昇にすぐには対応できない。熱帯など暑い地域に到着した旅行者のような感じになる。非常に暑い気候に慣れるには、一般的に一週間必要だと言われている」と、一般医組合(Syndicat des Médecins Générakistes)の委員長を務めているレシェール(Claude Leicher)医師は語っている。

対処法としては、暑い時間帯には雨戸と窓、特に南に面した開口部を閉めることが大切で、またその熱い時間帯に屋外で働く人や出歩かなければならない人は、水分と扇子を持ち歩くことで、少しは暑さから逃れることができる。

レシェール医師はまた、高齢者に身体の水分を減らしてしまう利尿剤の服用を減らすように、そして水分をやや多めに摂るようアドバイスをしている。ただし、水分の摂り過ぎはいけない。高齢者は水分の排泄量が少ないので、取り過ぎてはかえって身体に良くないそうだ。

赤ちゃんに関しては、閉め切った部屋に放置しないことが大切だ。レシェール医師は、クルマの中のような閉め切った場所では、その気温の急激な変化に赤ちゃんは対応しきれないからだ、と説明している。赤ちゃんを直射日光にさらさせないこと、特に午前10時から午後4時までの暑い時間帯には避けることが大切だ。そして水分をいつもより多めに与えることが必要だそうだ。

・・・ということで、フランスは100年ぶりとも言われる暑い春に続いて、40度前後の高温に見舞われました。TF2のニュースによると、27日の最高気温が41,1度まで上がった地点もあったそうです。

噴水や川に飛び込む人も続出。パリの観光名所、トロカデロでは、観光客が噴水の両側にぎっしりと並んで、足湯ならぬ、足プール。ただし、デファンス地区など、ビジネス街では、ネクタイを締めたサラリーマンも多く見受けられました。オフィスの中は、冷房がしっかり効いているのでしょうね。

原発大国、しかもサルコジ大統領が原発の開発や安全対策に巨額の予算を組むと語っていますから、電力制限などとは無縁のようです。片や日本は、先のG8サミットで原発継続を表明してきた(少なくとも他のG8参加国はそう理解している)首相が、思いつきのように脱原発を宣言。自然エネルギーへ移行すると言っています。自然エネルギーには賛成ですが、突然そうできるものではない筈です。移行期間をどうするのか・・・思いつき、その場しのぎのポピュリズム政治の危なさが暗雲となって日本全体を覆っているような気がしてなりません。

女子ワールドカップ、U-17ワールドカップ、オリンピック最終予選、ワールドカップ予選、8月に始まるヨーロッパ各国の新シーズン・・・日本選手の活躍に、せめてもの一服の清涼剤を期待してしまう今日この頃ではあります。
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ゲイ・プライドも政治の季節・・・すべては2012年だ!

2011-06-26 20:25:45 | 社会
ニューヨーク州で同性婚を認める法律が24日、上院で可決され、30日後に施行されることになりました。同性婚を認めた6番目の州で、人口の多い州だけに、他に州への影響も指摘されています。社会的マイノリティーの平等を示す指標の一つもと言われる同性婚。アメリカではニューヨーク州にまで、拡大したことになります。

自由・平等・友愛の国で、連帯を呼び掛けることにかけては人後に落ちないフランス。しかし、北欧諸国などとは異なり、カトリックの影響が残っているのか、同性婚はまだ認められていません。Pacs(Pacte civil de solidarité:連帯市民協約:1999年に成立した、同性カップルにも法的婚姻関係にあるカップルと同等の権利を認める法律)があるから、それで十分なのではないか、という意見もエクスキューズとしてあるようです。

こうしたフランスでも行われているのが、ゲイ・プライド(Gay Pride)。性的指向、性自認に誇りを持とうという運動で、発端は1969年、ニューヨークのゲイバー“Stonewall Inn”で警官の手入れに対して反抗した客たちの行動が大規模な暴動となった「ストーンウォールの反乱」。翌年の1970年から、7月にゲイを中心に自らの誇りを示すパレードを行うようになりました。フランスでは1983年にはじめて開催された、示威行進です。

今年、フランスでは25日にパレードが行われましたが、ニューヨーク州での同性婚を認める法律の成立翌日であること、そしてフランスの大統領選を来春に控えていることから、例年以上に政治的メッセージが多くなったようです。25日の『ル・フィガロ』(電子版)が伝えています。

1万人を超える人たちが25日、パリで行われたゲイ・プライドに参加した。ニューヨーク州の上院に倣って同性婚を認めるよう、2012年のフランス大統領選の候補者たちに訴えるメッセージが目立った。

“Même famille, même droits”(同じ家族、同じ権利)、“Pour l’égalité,en 2011 je marche, en 2012 je vote”(平等を目指して、2011年、私は歩く。2012年、私は投票する)・・・こうしたプラカードに掲げられたコトバやシュプレヒコールが、例年以上に政治色を強めた今年の要求を端的に示している。こう述べているのは、フランスでのゲイ・プライドを主催する主要団体、Inter-LGBT(lesbiennes, gays, bisexuels et transgenres:レスビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の広報担当、ニコラ・グガン(Nicolas Gougain)だ。まだ投票方針を決める段階ではないが、政治家には我々が同性婚を要求していることを今から明確にしておきたい、ともニコラ・グガンは語っている。

調査会社Ifopの行った調査によると、同性婚に同意するフランス人は63%と半数を超えており、同性カップルによる養子縁組にも58%が賛成している。

ベルギー、スペイン、オランダなど近隣諸国と異なり、フランスでは同性婚が認められていない。しかし、1999年に成立したPacsが同性カップルにも認められている。

1983年以降、ゲイ・プライドに毎年参加している社会党のジャック・ラング(Jack Lang:下院議員、元国民教育相、元文化相)によれば、同性婚や同性カップルが子どもを養育することを認めることは、もはや避けられないことだ。同じく社会党のアルラン・デジール(Harlem Désir:欧州議会議員、党幹部)は、来年の大統領選挙で左派陣営が勝利すれば、2012年から完全なる平等が認められることになるだろう、と語っている。

国民議会(下院)は6月半ば、同性婚を認めることを目指した社会党案を、与党UMPと連立政権に加わっている新中道(Nouveau Centre)所属の大部分の議員の反対により、否決した。

UMPの党内で、同性愛に関わる問題を扱う委員会・“Gaylib”の委員長、エマニュエル・ブラン(Emmanuel Blanc)は、「与党議員はカップルすべての権利の平等に関してフランス社会と全くずれた認識を持っている。なかなか厳しい戦いだが、我々は2012年に期待を寄せている。というのも、結婚に関しても、養子縁組に関しても、すべてのカップルの権利の平等をニコラ・サルコジが提案することになっているからだ」と述べている。

同性婚を認めたニューヨーク州上院の決定は、同性カップルの権利を擁護する人々を元気づけてくれた。フランスでは足踏み状態だが、他の国々では状況が改善されていることを物語っている。このように、前出Inter-LGBTの広報担当、ニコラ・グガンは語っている。

25日のゲイ・プライドへの参加者数は、野次馬はカウントしなかったというパリ警視庁によれば36,000人、主催者発表では80万人だった。

・・・ということで、同性カップルの結婚や子ども養育の権利も政争の具となっているようです。すべては、2012年。

しかし、社会党だけでなく、サルコジ大統領も同性カップルの権利を認めようとしている。ということは、選挙の争点にはなりにくいですね。争点つぶしのために、本気で実行する気もないのに、容認するとサルコジ大統領は述べようとしているのでしょうか。「一定のめどが立ったら」容認する・・・このような言を弄することはフランスでは許されないのではないかと思いますが。

性同一性障害など、日本社会でもようやく少しずつ容認されつつある分野もありますが、同性愛はどうでしょうか。まだまだ越えねばならないハードルは多いようです。しかも、ひとつひとつが高い。日本のハードル、その根幹をなすのは、差異を認めない、均質社会なのではないでしょうか。個性を伸ばす教育、と言いますが、性自認なども立派な個性なのだと思います。他人に迷惑をかけない個性は、積極的に認めるべきなのではないでしょうか。
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光と影が交錯する、科学とフランス人の微妙な関係。

2011-06-25 21:23:21 | 社会
科学技術の発展は日進月歩・・・以前よく言われました。「もはや戦後ではない」と言われた1956年以降の、白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫という三種の神器に始まり、1960年代中頃からのカラーテレビ、クーラー、クルマの3C、そして21世紀に入ってからのデジカメ、DVDレコーダー、薄型テレビというデジタル三種の神器。それ以外にも様々な家電製品や交通機関などが、科学技術の進歩を目に見える形で示してくれました。

それが今日では、ナノテクノロジーを始め、神経科学、遺伝子科学など、目に見えない形での進歩が報告されています。それだけに、進歩が実感できなく、逆に問題が指摘されるや不安感だけが大きく膨らんでしまったりします。21世紀、科学と人間の関係は・・・15日の『ル・モンド』(電子版)が、フランスでの状況を伝えています。

あなたは、科学者が自らの研究成果について真実を語っていると確信していますか? ・・・この質問に、肯定的な答えをしたフランス人は半分しかいなかった。この点が、調査会社Ipsosがフランス人と科学の関係について行った調査の中で最も印象的であり、かつ不安にさせる項目だ。調査結果の詳細は、16日にコレージュ・ド・フランスで行われる「科学、研究と社会」というフォーラムで発表されることになっている。

遺伝子組み換え作物(OGM:les organismes génétiquement modifiés)と原子力(le nucléaire)が、科学者の言説が最も信頼されていない分野であり、調査対象者の三分の二が不信感を抱いている。気候に関しては、信頼が辛うじて不信を上回った。これら遺伝子組み換え作物、原子力、気候がフランス人にとって特に関心のある科学分野であり、それだけに明確な反応となっている。

他の分野、例えば、ナノテクノロジー、神経科学(ニューロサイエンス)、培養細胞株などは、良く知らないということで、不信を抱く人は信頼する人を下回っているが、信頼すると回答した人も対象者の50%には達していない。列挙した項目のうち、新エネルギーのみが科学者の誠実さが信頼を得ている分野だ。

しかし、こうした科学や科学者に対する不信は自己矛盾を起こしているようだ。回答者の四分の三が、科学と技術は人間が今日直面している問題を解決するだろう、と考えているのだ。科学技術はやがてエイズ、癌、アルツハイマーといった世紀の病気の治療、自然災害の予想、飢饉や渇水の解決を実現するだろうと思っており、また半数以上の回答者が地球温暖化も解決できるだろうと考えている。

さらに、回答者たちは、研究における問題点を説明したり、国民的議論を喚起することのできる科学の世界は信頼できるものだと考えている。この点においては、研究者への期待が特に高く(92%)、政府系基礎研究機関であるCNRS(Centre national de la recherche scientifique:国立科学研究センター)への信頼も86%あり、教員(65%)、科学ジャーナリスト(64%)、環境保護団体(63%)、倫理委員会(60%)に対しても、問題点の説明、議論の喚起という面では概ね信頼を置いているようだ。

一般的には科学に対して肯定的な意見が見受けられるが、ひとたび身近な話題となると、信頼感には大きなばらつきが現れる。Ipsosの専門家によれば、問いに対して肯定的な答えがすぐには出てこなくなり、情報量と認識している危険の度合いによって回答も異なってくる。危険がよく認識されている原子力や、メリットが確立されていない遺伝子組み換え作物がそのケースに当てはまる。半数近くのフランス人(43%)は、科学と技術は人間に益するよりも損害をもたらすことの方が多い、と思っている。また、科学と技術のお陰で未来の世代はより良い生活を送ることができるだろうと考えている回答者は、過半数を辛うじて超えた(56%)程度だ。

また、政治権力や産業界からの科学者の独立性が特に求められる分野で、科学技術への信頼度が最も低くなっている。遺伝子組み換え作物や原子力が、やはりこの分野の例としてあげられる。福島原発の事故の後、政府によって要請された原発の安全性に関する監査については、72%の回答者が、科学者は独自に仕事を進めることができず、その仕事の結果は信じがたいものだと考えている。

Ipsosの専門家は、また、フランス国民と科学の間に深い亀裂があるとしても、まだ完全に袂を分かってしまったわけではない、と見ている。科学技術についてより多くのことを知りたいという国民の希望はまだまだ根強い。93%が、社会の進歩を理解するためにも研究の問題点を知ることは大切だと考えており、80%の回答者がこの点に関して十分な情報や指導が与えられていないと思っている。関心のある分野では、世界情勢に次いで科学技術が文化活動と並んで高い関心を集めている。政治や経済、スポーツよりもはるかに高い関心の的になっている。

国民の成熟度を示すものとして、地球温暖化に人間が大きく関与していると考えている人が十人のうち九人に上っていることが挙げられる。後は、微妙で議論を喚起するテーマにおける研究者たちの誠実さに対する国民からの重大な不信感をいかにして研究者たちが払拭できるかにかかっているといえるが、しかし、この課題は社会全体に向けられているものでもあるのだ。

・・・ということで、科学や技術の進歩がより良い暮らしには欠かせないとは分かっていても、それらが政治や企業の影響下に置かれた場合、人は科学技術をどこまで信頼できるのだろうか、という問いが投げかけられているようです。

科学技術の進歩は素晴らしい。しかし、自らの栄達のために政治権力に魂を売ってしまっている科学者はいないのだろうか。ビジネスに不都合なことを隠し立てしている企業内科学者ないないのだろうか。

一人の人間として出世や見返りを求める科学書や技術者の気持ちもむげに否定はできません。しかし、私たちの暮らしをより良くし、次の世代に多くの夢を与えてくれる科学技術。そこへ向けられるのは、不信よりは信頼の眼差しであってほしいものです。

『ル・モンド』の記事にも出てくる福島原発の事故。その収束へ向けての取り組みに、多くの科学者や技術者が関わっています。原発の現場で働き続けている技術者もいらっしゃることでしょう。また、現場ではなくとも、寝食を忘れて問題解決に取り組んでいる科学者の方々もいらっしゃることでしょう。そうした方々が、かつての『プロジェクトX』のように、私たちに感動を与えてくれる日、つまり事故の収束が一日も早く来ることを願っています。そして同時に、権力におもねって、いい加減な言説をばらまくような科学者や技術者が現れないことも、願ってやみません。
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バカロレアに出題された問題が、事前にネット上に公開された!

2011-06-24 21:01:14 | 社会
先日お伝えしたように、16日に哲学の試験で始まったバカロレア。始まる前には、携帯を使ったカンニングなど、時代の流れを感じさせる問題も危惧されていましたが、実際に始まってみると、新たな問題が登場しました。なんと、出題される問題が、試験前日に、ネット上で公開されてしまった・・・

科目は普通バカロレア・科学系の数学で、記述式の問題4問のうちの1問が流出してしまいました。記述式なので、問題が分かったからと言ってすぐに解けるものでもない、とは言え、教科書や数学の得意な先輩などに助けを求めれば、やはりネット上でその問題を知った受験生には有利になりますね。

試験は21日に行われました。その前日ですから、20日にネット上に公開されたことになります。その流出が確認された後、国民教育省はどのような対応を取ったのでしょうか。再試験になるのでしょうか、それとも配点を他の問題に振り分けるのでしょうか。受験生やその家族、あるいは教員たちの反応は・・・22日・23日に、『ル・モンド』(電子版)に掲出されたいくつかの記事が詳細を伝えています。

20日の夜、翌日に控えたバカロレアの数学の試験問題のコピーを写真で撮影した画像が、Jeuxvideo.comというサイトにネットユーザによって公開された。このコピーを見た受験生と見なかった受験生の間には不公平が生じてしまう。

今年、普通バカロレアの科学系に申し込み、21日に4時間にわたって数学の筆記試験と格闘したのは160,166人の受験生。数学は科学系の受験者にとっては最重要な科目で、配点指数も7と最も高くなっている。

(註)普通バカロレアの試験は、筆記・口述・実技からなり、筆記に関しては各科目20点満点。ただし、それぞれのコースの特徴に合わせて配点指数が決められており、素点にその指数をかけます。科学系では数学が7で最も高い指数になっています。指数を掛けたうえで、全科目の平均点を出し、20点満点に換算。10点以上で合格。8点から10点未満は第2群試験を受験でき、同じように20点満点で10点以上取れれば合格。再び8点から10点未満だと「中等教育修了証」が与えられますが、大学には入学できません。なお、第1群試験の合格者の中で、16点以上には「秀」、14点から16点未満には「優」、12点から14点未満には「良」という評点が付け加えられます・・・

22日、国民教育省は、問題の事前流出にもかかわらず、再試験を行わないことを発表した。国民教育相のリュック・シャテル(Luc Chatel)は、「受験生やその父兄の利害や発覚した不正が限定的であることなどを考慮し、暴露されなかった他の3問の採点を行ってもらうことにした」と記者会見で語っている。

リュック・シャテルのこうした決定、つまり科学系の数学4問のうち流出した1問を採点せず、他の3問で20点満点にするという解決策を、父兄や教員、受験生は、平均点以下でしかないと判断している。

例えば、教員組合(SE-UMsa)の総書記、クリスティアン・シュヴァリエ(Christian Chevalier)は、「受験生たちは問題ごとの配点を考慮に入れて、取り組む時間配分を決めている。暴露されてしまった問題に多くの時間を割いた受験生にとっては、その問題が採点から除外されるという決定は不利益になる」と語っている。また、「公開されてしまった問題は4問の中では最も取り組みやすい問題なので、数学があまり得意でない受験生にとっては高得点が期待されただけに、そうした受験生の得点は3~4点減ってしまうのではないか。数学は配点指数が7で最も高いだけに、結果として平均点を1点ほど押し下げることになると思われ、これは大きな問題だ」と、高校生の主要団体であるUNL(Union nationale lycéenne)の委員長、ヴィクトール・コロンバニは憤っている。

また、Sgen-CFDT(Syndicat général de l’Education nationale – Confédédarion française démocratique du travail:主要労組のひとつCFDT傘下にある国民教育一般組合)の書記長、ティエリー・カダール(Thierry Cadart)は、「受験生に知らされていた配点を変更するよりは、配点はそのままにし、削除された一問の4点を、生徒の成績簿に従って配分した方がよいのではないか。この一年、常にしっかり勉強してきた生徒には満点の4点を与えるということだ。この方法なら、教師の評価に信頼を置くことにもなり、問題が法廷に持ち込まれることもないのではないか」と述べている。

試験問題が事前にネット上に公開されてしまったというトラブル以外にも、今年はいくつかの問題点が指摘されている。QCM(Questionnaire à choix multiples:四択などの選択問題)で、正解は一つという指示のあるところで、ふたつの答えが正しいのではないかとい疑問が提示されている。また、英語と物理の試験問題のコピーが、試験前日に一部の受験生たちの手に渡っていたという情報もある。

こうした状況に、父兄の団体や高校生の団体は、今一度バカロレアの実施を担当している組織の実態を調査してみるべきではないか、また通信機器の発達により、すべての受験生に平等な受験機会が与えられているのか疑わしい状況だ、と語っている。

別の組合幹部からは、「バカロレアのシステム自体が危機に瀕している。実施にあたっている組織を完全に見直してみるべきだ。受験方法と受験を実施する組織が問題になっているのであり、バカロレアはもはや適切に行われているとは言い難い。特に試験問題作成はもっとシンプルにすべきだ。異常に閉鎖的でありながら、セキュリティ面は異常に脆弱だ。解決にあたっては、他の解決方法を見出している外国の例も参考にしてみるべきではないか」と語っている。

ところで、問題をネット上に公開したのは、どこの誰なのか。23日、パリ地検の捜査により、二人の男が拘留され、取り調べを受けている。21歳と25歳の兄弟なのだが、国民教育相の告訴に基づいて捜査が続けられており、二人が犯人であることが明らかになれば、実刑に処せられる可能性もある。

・・・ということで、日本でも時々指摘されている試験問題の不備と管理のずさんさ。それにしても、どうして一問だけ公開したのでしょうか。データでは全問を入手していたのかもしれませんが、ネット上で公開したのは一問だけ。政府がどう対応するのか、面白がって見守っていたのでしょうか。

しかし、大きな被害を蒙るのは、受験生。フランスは日本以上に資格社会だけに、バカロレアに合格して、大学に進学しないことには、スタートラインにさえ立てません。全科目の平均が、20点満点で10点にならないと不合格。わずか、0.01点でも足らなければ不合格です。その後の人生が大きく変わってしまう・・・とは言うものの、最近のバカロレア合格率は80%を超えていますので、それなりの勉強をしていれば、心配することもないのかもしれませんが。

ところで、フランスの満点は20点。ソルボンヌ文明講座の試験も、すべて20点満点でした。そして合格ラインは、10点。20進法と10進法が混在しているフランスらしい点の決め方です。一方、日本では多くの試験が100点。とにかく100点満点! 資格試験の場合の合格ラインは60%の場合が多いですね。因みにアメリカのSAT(大学進学適性試験)は各セクション200~800点で、満点が2,400点。イギリスの12進法の影響が残っているのでしょうか。

試験の満点にもそれぞれの国の歴史や特徴が反映されているようです。思わぬところに差異が登場してきます。面倒ですが、面白い!
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政治家にこそ、ユーモアが必要だ!

2011-06-23 20:42:16 | 政治
ペテン師、詐欺、裏切り者・・・日本の政界では罵詈雑言が飛び交っていますが、荒削りな言葉は、関係や状況を一層悪化させてしまいます。ちょっと肩の力を抜いて、ユーモアのエッセンスを取り入れてみると、政治家同士、そしてそれ以上に政治家と国民の関係が近づくのではないかとも思えます。

フランスに、“le prix Press club humour et politique”という賞があります。言ってみれば、「記者クラブ政治ユーモア賞」といったところでしょうか。ジャーナリストとユーモア作家が審査委員で、現在の審査委員長は通信社・AFPの元会長であるJean Miot(ジャン・ミオ)が務めています。

毎年、政治家が発した言葉の中から、意図した、意図せずを問わず、聞くものをくすっとさせたり、ドキッとさせるユーモア・センスある発言を選んで、賞を授与しています。今年の大賞は・・・20日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

“Mitterrand est aujourd’hui adulé, mais il a été l’homme le plus détesté de France. Ce qui laisse pas mal d’espoir pour beaucoup d’entre nous.”(ミッテラン元大統領は、今日でこそとても愛されているが、権力の座にあった当時はフランスで最も嫌われていた。このことは、我々の多くに悪くない希望をもたらしてくれる。)このフレーズで、ローラン・ファビウス(Laurent Fabius:社会党の政治家。ミッテラン大統領の下、1984年から86年に首相を務めるなど、閣僚、下院議長、党の第一書記など要職を数多く務めてきた)は20日、今年の“le prix Press club humour et politique”の大賞を受賞した。2位はエヴァ・ジョリー(Eva Joly:ヨーロッパ・エコロジー所属の欧州議会議員。ノルウェー人でフランス人男性と結婚後、ノルウェーとフランスの二重国籍を所持。2012年の大統領選へ、エコロジー・グループからの立候補を目指している)の衝撃的な次の台詞だ。“Je connais bien Dominique Strauss-Kahn, je l’ai mis en examen”(私はドミニク・ストロス=カンをよく知っているの。彼を試してみたのだから。)

ローラン・ファビウスが獲得した大賞以外の賞は、次のような結果になった。審査員特別賞は、ダニエル・フィドゥラン(Daniel Fidelin:与党UMP所属、2002年から下院議員)が次の発言で受賞した。“Vu de la Chine, le port du Havre ne travaille pas.”(中国から見れば、ル・アーヴルの港などまったく動いていないようなものだ。)インターネット・ユーザー賞を受賞したのは、ジャン=ルイ・ボルロー(Jean-louis Borloo:中道右派の急進党党首、2002年から2010年まで環境相や経済・財務・雇用相など閣僚を連続して務めてきた。ヴァレンシエンヌの市長も2002年まで長く務める。2012年の大統領選への立候補を模索)の“Nous sommes tous des immigrés, seule notre date d’arrivée change.”(我々は皆、移民なんだ、ただ到着した日が異なるだけで。)というコメントだった。

また、今年は“le prix d’encouragement”(頑張りま賞)が一人に授与された。受賞したのはフレデリック・ルフェーヴル(Frédéric Lefebvre:与党・UMPの政治家で、2010年から貿易・手工業・観光・サービス・自由業・消費担当大臣)で、“Quel est votre livre de chevet ?”(あなたの愛読書は?)という質問に対する“Zadig et Voltaire”(ザディーグとヴォルテール)という答えで受賞した。“Zadig et Voltaire”では、ファッション・ブランドだ(“Zadig de Voltaire”「ヴォルテールのザディーグ」と答えたかったのでしょうが、思わず、「ザディーグ・エ・ヴォルテール」というアパレル・ブランド名を口走ってしまいました。好きなブランドなのでしょうか。因みに、「ザディーグ・エ・ヴォルテール」は、ティエリー・ジリエによって1989年に設立されたブランドで、南青山に1号店をオープンするなど日本マーケットにも進出しています)。

なお、今年、受賞は逃したものの、ノミネートされたのは次のようなフレーズだ。

“Je ne serai peut être pas élue présidente de la République, mais je ne serai pas la seule.”(私が大統領に選ばれることは多分ないだろうが、選ばれない女性は私だけではない)
~Nathalie Artaud(極左・トロツキスト政党・労働者の闘争党Lutte ouvrièreの報道官)

“Qu’on commette des erreurs en politique c’est possible : qu’on les commette toutes, c’est fou !”(政治において間違いを犯すことはあり得る。しかし、すべてが間違いだとしたら、それはバカ者だ)
~Guillaume Bachelay(社会党の産業担当全国書記:セゴレーヌ・ロワイヤルを評しての一言)

“Michèle Alliot-Marie conserve toute légitimité à Saint-Jean-de Luz.”(ミシェル・アリオ=マリはサン・ジャン・ド・リュスでならすべての正当性を保っている)
~François Baroin(予算相:MAMは今年初め、外相を実質上、解任されました。MAMはフランス南西部、バイロンヌに近いピレネー・アトランティック県にあるサン・ジャン・ド・リュス市の市長を1995年から2002年まで務め、その後も筆頭副市長の座にあります。)

“Rassembler les centristes, c’est comme conduire une brouette pleine de grenouilles : elles sautent dans tous les sens.”(中道主義者を集めること、それはカエルをいっぱいに積んだ手押し車を引いて行くようなものだ。あらゆる方向に飛び出してしまう。)
~François Bayrou(中道政党・Modem党首、2007年の大統領選で善戦)

“Dans sa forme historique, le PC est mort ; mais il a encore de l’avenir.”(共産党は、歴史的にはすでに死んでしまっている。しかしそれでも、共産党にはまだ何らかの未来がある。)
~André Chassaigne(共産党所属の下院議員)

“Il y avait tellement de gens à mon enterrement que j’ai décidé de ne pas m’y rendre.”(私の埋葬に立ち会うべくあまりに多くの人が集まっていたので、私は墓地に行くのを止めたんだ。)
~Patrick Devedjian(与党・UMP所属の下院議員で、オー・ド・セーヌ県の県議会議長。県議会議員選挙で勝利した夜のインタビュー、落選を予想した人たちへ皮肉を込めて一言)

・・・ということで、受けを狙ってのユーモアよりも、結果としてくすっとさせるコメントが多いようです。しかし、どれにも程度の差こそあれ、共通してあるのは、皮肉。あるいは、賞の授与自体が皮肉になっているものも。皮肉のスパイスをまぶさないと、フランスではユーモアとは認められないのかもしれません。さすが、皮肉屋のフランス人です。

では、日本では。政治家に限らず、建前に終始しないといけないのでしょうか。あるいは、いい人であることを印象付けないといけない。あるいは、周囲への感謝と前向きな姿勢をしっかりと感じさせなければいけない。皮肉など入れようものなら、嫌みな奴、と嫌われかねません。

日仏、両者には大きな違いがあるようですが、それぞれに差異があるということで、どちらが良い悪いというものでないことは、改めて言うまでもありません。違いの分かる日本人へ! アメリカは日本人、特に日本の政治家と官僚をナイーヴだ、つまり世間知らず、世界知らずだと評価しているようですが、そんなことはないと胸を張って言える日が早く来てほしいものです。まずは、世界にある違いを知って、その違いを認めること、からですね。
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校門の前で、14歳が13歳を殴り殺した!

2011-06-22 20:41:05 | 社会
犯罪の低年齢化、荒れる学校・・・日本では一時ほどには話題にならなくなっていますが、解消へ向っているのでしょうか。それとも、一般化してしまって、マスコミの話題にならないだけなのでしょうか。

フランスのメディアが今週、大騒ぎしているのは、14歳の男子中学生が13歳の女子中学生を殴り殺した、それも校門の前で、という事件です。どんな事件なのでしょうか・・・20日、21日に『ル・モンド』と『ル・フィガロ』、それぞれ複数の記事が伝えています(いずれも電子版)。

事件があったのは、20日午後12時半頃。場所は、南仏、ラングドック・ルシヨン(Languedoc-Roussillon)地方のモンペリエ(Montpellier)に近いフロランサック(Florensac)という人口5,000人ほどの町(ただし、1960年代以降少しずつ人口が増え続けている町です)。

この町にあるヴォルテール校(le collège Voltaire)という中学校の校門の前で、13歳の女子中学生が男子学生に殴られ転倒。そのまま意識を失った。消防のヘリコプターでモンペリエの大学病院に搬送されたが、午後4時、死亡が確認された。

目撃証言などから、警察は14歳の男子学生を容疑者として手配していたところ、本人が母親に付き添われて出頭してきた。この男子学生は、犠牲となった女子中学生の同級生(女子)の兄で、死亡した学生とその同級生は恋敵、数週間前から激しい言い争いが絶えなかったという。

同級生は、会えば喧嘩となる被害者が怖くて、ここ1カ月ほど学校を欠席していたが、20日朝、ついに事情を母親に打ち明けた。母親は、娘を連れて警察に被害届を提出しに行った。そして、その日の昼、その兄が被害者となった13歳の女子中学生を校門前で殴って死亡させてしまった。

容疑者であるその兄は、ボクシングを習っているが、今まで問題を起こしたことはなかったという。検視結果によれば、被害者があごに受けたアッパーカットが脳内出血、脳損傷を引き起こし、心臓停止につながったとのことだ。

学校の生徒、関係者、そして地域社会は大きなショックに見舞われている。現場に居合わせた生徒たちが証人として警察の事情聴取を受けたこともあり、生徒たちの動揺は特に大きい。学校はさっそく、心理カウンセリングを受けられるよう人員やスペースを準備した。

14歳が13歳を素手で殴り殺したというショッキングな事件だけに、リュック・シャテル(Luc Chatel)国民教育相も素早く対応。大統領の指示もあり、21日に自ら事件現場に向かうこと、学区長や視学官らに教育の現場から離れず、子どもたちのケアを十分に行うようにという要請など、コミュニケとして発表した。

容疑者は、警察に拘留され、取り調べを受けているが、罪状は暴行過失致死罪になる見込みだ。殺人なので、未成年重罪裁判所(La cour d’assises pour mineurs)に送付されそうなものだが、この裁判所が裁くのは16歳から18歳までの未成年重犯罪者のみなので、7月に15歳になるというまだ14歳の容疑者の場合は、児童裁判所(le tribunal pour enfant)で裁かれることになる。

13歳から16歳の犯罪者の場合、公判は非公開で行われ、再犯でない場合は、刑が半減される。素手による過失致死の場合、最長15年の禁固刑になるが、今回の加害者の場合、再犯ではないので半減され、最長7年半の禁固刑になる可能性がある。

因みに、2009年に裁判所送りになった未成年者は73,958人で、そのうち353人が重罪を犯しており、今年5月1日現在、792人の未成年者が収監されている。

21日、現地を訪れたリュック・シャテル国民教育相は、「喧嘩が残念な結果を生んでしまった。事件の舞台となった中学校は荒れた学校ではなく、特に問題も抱えていない。静かなごく普通の学校だ。被害者と加害者の妹が情緒的な理由から言い争いとなり、当日は加害者に殴られた被害者が頭部を激しく地面に打ちつけた模様だ。補助教員が現場近くにいて、間に割って入ろうとしたが、ほとんど何もできなかった」と語っている。

また、国民教育相は、「政府と行政は、教育現場における暴力と戦うべく、荒れた学校の教員に対して学級運営や危機管理についての指導を行っている。さらには問題を抱えた学校には下校時に安全担当のチームを派遣する体制を整えている」と、政府の取り組みを説明している。

・・・ということで、フランスの犯罪の低年齢化や荒ぶ子供たちの心をはっきりと映し出す事件が起きています。今や高校での刃傷沙汰はさほど珍しくなくなっていますが、中学校での殺人、それも素手による暴力の果ての殺人事件は、地域社会のみならず、フランス社会全体に大きなショックを与えているようです。

こうした事件の背景には、何があるのでしょうか。テレビ局・France2のインタビューを受けた専門家たちによれば・・・

ひとつには、児童生徒たちの抱え込んでいるストレス。閉塞感のある社会で、その影響をもろに受けるのが、若い世代。将来に明るい夢が持てず、周囲を見回しても、失業や貧困など、暗い話題ばかり。日々の鬱々とした気分がストレスになり、ちょっとしたきっかけで暴発してしまう。

もうひとつの背景は、大人の不在。家庭で、社会で、子どもたちを教育したり、助けたりすべき大人が子どもたちの前から消えている。いわば、ほったらかし。救いの手を差し伸べてくれる大人がいない。途方に暮れる子どもたち。

子どもは動物と同じ、人間になるように躾けなければいけないと、厳しい躾を是としてきたはずのフランスでさえ、教育や躾の場から大人が消えてしまっているようです。自助努力せよ、ということなのでしょうか。しかし、目標が見えない社会で、どうやって頑張れというのでしょうか。

子どもは社会を映す鏡。フランス社会は、ストレスを抱え込み、明確な目標を見いだせないまま、漂い始めているようです。
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パリまで日帰り出張、の時代がやってくる!

2011-06-20 20:53:39 | 社会
リニア新幹線が開業すると、東京―名古屋間が40分、大阪まで延長されると東京から67分。今でも新幹線のお陰で日帰り出張は当たり前ですが、リニアが開通すると大阪までが通勤圏内になりそうな勢いです。ただし、料金と終電の時間が問題ですが。

このように高速移動の進化は留まるところを知らないようですが、ついに、東京―パリ間が日帰り出張に・・・そんな日が遠からずやってくるというニュースを、19日のフランス・メディアが大きく紹介していました。ただし紹介の仕方に若干の「?」が。テレビ局・France2のニュースでは、この話題を伝える際に、「エッフェル塔のパリ」と「鳥居の東京」の間が2時間半になると画面に表示。日本人から見ると、その鳥居は東京というより、厳島神社の鳥居に見えてしまいます。今でも日本の伝統的イメージのひとつとして鳥居がフランス人の頭の中にあるのかもしれないですね。

さて、その2時間半のフライトですが、どのようにして可能になるのでしょうか。19日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

2050年、ロケット飛行機(un avion-fusée)の乗客は東京―パリ間を2時間半で飛ぶことになり、しかも成層圏を飛ぶことなどにより大気圏を汚染する心配がない。この夢のような乗り物は、ヨーロッパ最大の航空宇宙産業企業、EADS(European Aeronautic Defence and Security company、欧州航空宇宙防衛会社:2000年7月にフランスのアエロスパシアル・マトラ、ドイツのDASA;ダイムラー・クライスラー・アエロスペース、スペインのCASA;コンスラクシオネス・アエロノーティカが合併してできた巨大企業。傘下にエアバス社などを持つ。現在のCEOはフランス人のルイ・ガロワLouis Gallois)が大胆に推し進めるプロジェクトだ。

コンコルドの残念な結果以来、超高速飛行機の計画は断念されたかのように思えていたが、航空機の技術者たちは機体をより軽くし、価格の高騰したケロシン燃料の消費が少なくて済む航空機の開発を続けていた。ブールジェ(Le Bourget、パリ北東の郊外)で開かれるパリ航空ショーのオープン前日、EADSはその“Zehst”(Zero Emission High Speed Transport)計画の概要を発表した。超音速より早いスーパー音速機で、その開発の主たる目的は二酸化炭素の排出をゼロにすることだ。

EADSの「ミスター開発」(Monsieur Innovation)とも呼ばれるジャン・ボッティ(Jean Botti)は、Zehstは未来の飛行機として想像していた通りの乗り物だと語っている。そのフォルムはコンコルドに驚くほど酷似しており、その4メートルの模型が、20日から専門家に、23日から一般に公開されるパリ航空ショーでお披露目されることになっている。エアバスA350-1000に搭載されるエンジンをより高性能なものにするために、A350の新型2機種の運用開始を2年遅らせたエアバス社を傘下に持つEADSにとって、このコンセプト飛行機は未来へ向けた新たな一歩となる。

ZehstはSF(science-fiction)の素晴らしい要素をふんだんに取り入れている。EADSの技術開発部長のボッティ氏によれば、離陸は今までの飛行機と同じだが、その際使用される燃料は海藻を原料とするバイオ燃料になる。そして、一定の高さまで上昇するとロケットエンジンに切り替えるが、そのエンジンは水素と酸素を燃料とするため水蒸気しか発散させないクリーンな動力源だ。

現在の飛行機は10,000メートルほどの高度で飛行しているが、ロケット飛行機は32,000メートルの高さを飛行することになる。乗客がジェットコースターに乗っているような不快な気分を感じないで済むように、シートが傾いて調節を行う。この水平飛行時に、ロケット飛行機の特徴が発揮される。つまり、成層圏を飛ぶため、大気圏を汚染することがない。着陸に際しては、エンジンを停止し、グライダーのように滑空。着陸直前にバイオ燃料のエンジンを始動して無事に着陸することになる。

ボッティ氏によれば、環境問題の解決は、宇宙との境界域にある。飛行機でもなく、ロケットでもない。我々が創るのは、ロケット飛行機なのだ、ということだ。50人から100人乗りのZehstは、まだ計画段階だが、EADSはすでに目標スケジュールを持っている。2020年頃までに試験飛行を、そして運行開始を2050年頃までに行うとしている。その頃には、航空宇宙の状況は大きく変化していることだろう。特に新興国の進出によって。何しろ、EADSが設立されたのはまだ10年ほど前でしかない。従って、明確なスケジュールを持つことは不可能だ。とは言うものの、EADSの広報によれば、Zehst計画は実現できる可能性を十分に持っている。必要な技術がすでに開発されているからだ。

ロケットエンジンはすでにある。EADSの子会社、Astriumが宇宙観光ビジネス用にロケットエンジンを開発しているのだ。また海藻を用いたバイオ燃料もほぼ準備ができている。しかも、Zehst計画は日本およびフランス民間航空総局(Direction générale de l’aviation civile:DGAC)との協力で進められている。しかしボッティ氏は、開発が少しずつしか進捗しないことは理解している。まずは20~25人乗りの、将来性のある環境技術を搭載した商用機を作り、続いて50~100人用、そして現在の中距離用飛行機の乗客数である200人乗りへと大型化していく考えだ。

・・・ということで、遅くとも2050年には、東京―パリ間が2時間半で結ばれることになります。午前中、東京のオフィスで働いて、午後空港へ。Zehstに乗って2時間半でパリへ。フランス時間ではまだ同じ日の朝。それから一日働いて、夜の便で東京へ。到着後そのままオフィスへ直行すれば、出発翌日の朝からまるまる一日、働けます!

これで、身体が、もちますか? こうした環境に耐えうる人だけが生き残っていけるのでしょうか。適者生存。あるいは、自然選択。私など、とても生き抜けそうにありませんが、心配無用・・・2050年にはもはや存在していませんから。と言う人に限って、長生きする、という声もありますが。

いずれにせよ、今世紀後半には、世界はいっそう狭くなりそうです。直接出会い、話すことが容易に。そのことによって、世界はいっそう平和になれるのでしょうか。平和な世界にしていくことが、私たち人間の務めなのではないかと思います。
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哲学とともに、バカロレアが始まる。

2011-06-16 21:11:47 | 社会
日本語では一般的に「大学入学資格試験」と言われる“baccalauréat”(バカロレア、通称“bac”「バック」)が、16日から始まりました。1808年にナポレオン・ボナパルトによって導入された資格試験。このバックに合格すれば、グランゼコールなどを除いて、希望の大学に入学することができます。ただし定員オーバーの場合は、バックの成績や居住地などによって決定されます。

また大学進学を目指さない場合でも、「中等教育修了資格試験」とも言えるバックに合格しておくと、その後の人生が変わってきます。バックには、
・一般バカロレア(baccalauréat général)
・工業バカロレア(baccalauréat technologique)
・職業バカロレア(baccalauréat professionnel)
の3タイプがあり、大学入学を目指すなら一般バカロレアを、就職などを目指すならそれ以外のバカロレアを受験することになります。就職するにしてもバックをもっていないと、「スーパーのレジ打ち以上の仕事にはつけない」と言われているようです。職種に貴賎はないと思うのですが、階級社会・資格社会ではこう言われるようです。因みに自己責任とアメリカン・ドリームの国では、大卒の資格がないと「マクドナルドでハンバーガーを焼き続けるしかない」と子どもの頃から言われるそうです・・・繰り返しますが、個人的には、職業に貴賎はないと思っています。

人生を左右しかねないバカロレア・・・さすがのフランス人も、ナーバスになるようです。それも本人だけではなく、家族まで。受験前から発表までは、父親も母親も、家族そろってそわそわ、ドキドキの日々を送るようです。

しかも、どうしても受かりたいという気持ちから、カンニングに走る受験者も。それも最近では、日本と同じで携帯を使ったカンニングが増えているそうで、携帯の持ち込み禁止などが実施されています。しかし、それでもカンニングをする受験者は後を絶たず、2009年には219人、2010年には272人が現場を取り押さえられ、退席処分になったとか。受験とカンニング、国の違いを問わないようです。

さて、16日に始まった今年のバック、どのような特徴があるのでしょうか・・・16日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

16日午前8時から、理系(S:scientifique)、経済社会系(ES:économique et social)、文系(L:littéraire)の3課程に分かれている一般バカロレアが、全国一斉に、伝統に従ってまず哲学の試験から始まった。今年のバカロレア受験者総数は654,548人。午後からは、工業バカロレアの受験生が哲学の試験に取り組むことになっている。職業バカロレアは来週月曜から筆記試験が始まる。

昨年出題された哲学の問題は次のようなものだった。
―L’art peut-il se passer de règles ? (芸術に規則はいらないのか)
―Dépend-il de nous d’être heureux ? (幸福とは個人によるのか)
―Faut-il oublier le passé pour se donner un avenir ? (将来を手にするには過去を忘れるべきなのか)
―Le rôle de l’historien est-il de juger ? (歴史家の役割は歴史を評価することなのか)
―Une vie heureuse est-elle une vie de plaisirs ? (幸せな人生とは楽しみに満ちた人生なのか)

2011年のバック受験者の内訳は、現役の高校生が628,708人、“candidats libres”と言われる「自主志願者」(高校を卒業していない人など)が25,840人で合計654,548人。この受験者数は前年に比べ6%増えており、特に職業バカロレアの受験者が36.4%増えたことが注目される。総受験者の50%が一般バカロレアに、24%が工業バカロレア、26%が職業バカロレアに出願している。

一般バカロレアでは、理系への出願が50%と多数を占め、経済社会系が32%、文系は17%だが、文系への志願者数の減少傾向に歯止めがかかった。最年少の志願者は12歳、一方、最高齢の受験者は71歳。およそ400万部の答案が採点されることになるが、採点者には1答案につき5ユーロ(約560円)が支払われる。

昨年のバックでは、全体の合格率が85.6%で、過去最高をマークした2009年の86.2%を若干下回った。今年の結果は、7月5日に発表されるが、ネット上でも調べることができる。

・・・ということで、フランスでもこの季節恒例のバック狂騒曲が始まりました。受験勉強の邪魔にならないようにと、家族は音を立てないように気をつけたり、試験結果発表の日には、父親も落ち着きがなく、合格の連絡をもらうや、誰かれ構わず握手をしたり、抱きついたり・・・そんな映像が毎年のように流されます。こうした光景だけをみると、人間、話すコトバは違っても、同じだね、と思えるのですが、さまざまな状況があるだけに、そう簡単には決めつけられない。世界は広く、一筋縄ではいかない、といったところです。

日本では、何となくサラリーマンになろうと思っている受験生は、経済学部や法学部などを受験することが多いですが、フランスでは、理系が多い。文系は、男女を問わず、作家、ジャーナリストなど明確な目標のある人が受けるそうです。女性だから文学部、という考えはないようで、このあたりは、日本とは異なっていますね。

ところで、哲学の試験、いかがですか。いずれか一つを選んで、先人の警句・箴言、現実社会に見られる事象の分析、そして受験までに学んださまざまな分野の知識を総動員して、弁証法でまとめる。与えられる時間は3時間。どのような文章にまとめることができるでしょうか。○✕試験や三択などで育ってしまうと、論述問題に何となく苦手意識を持ってしまいかねませんが、一度バックの哲学に挑戦してみてはいかがですか、もちろん、日本語で、ですが。
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