ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

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富める者は、海を越える・・・大西洋をまたいだ不動産取引。

2010-11-30 21:02:05 | 社会
バブルの頃、日本人でもアメリカに不動産を購入した人や、パリのアパルトマンを手に入れた人たちがいました。今はどうしているのでしょう。まだ持っているのでしょうか、うまいタイミングで売り抜けたのでしょうか・・・時は過ぎ、今やオーストラリアや中国などの個人、企業が日本の不動産を買い漁っています。北海道など、国家安全保障上の問題になるのではないかというくらいに買われてしまっています。水源を買い占められた自治体が高い値で買い戻さざるを得ない状況も生まれています。♫ まわるまわるよ 時代はまわる 喜び悲しみくり返し・・・『時代』のメロディが浮かんできてしまいます。

外国不動産の購入。国際化した今日の富裕層にとっては、当たり前のことになっているようです。大西洋をはさんで、アメリカの金持ちがヨーロッパの不動産を購入し、逆にヨーロッパの富裕層がアメリカに不動産を持つ。そうした実態を23日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

社会学者のモニク・パンソン=シャルロ、ミシェル・パンソン夫婦(Monique et Michel Pinçon-Charlot)がその共著“Le Ghetto du gotha ___Comment la bourgeoisie défend ses espaces”(名士のゲットー・・・ブルジョワはいかにその生活圏を守るのか)で紹介しているように、国境を越えた富裕層の姿をマンハッタンに見ることができる。ニューヨークは、ロンドン、パリ、ジュネーブなどとともに世界の富裕層にとって不動産購入先として人気のある都市になっている。もちろん、その不動産は、3軒分の広さがあったり、建物の屋根全てがテラスになっているような、庶民からは溜息しか出ないような物件だ・・・モニク・パンソン=シャルロ、ミシェル・パンソン夫妻は、パリの歩き方ガイドとも言える『パリの万華鏡』で日本でも知られていますね。

200万ユーロ(約2億2,000万円)以上の高級物件が今、爆発的に売買されており、供給が限られているため、ここ数カ月、いっそう高騰している。パリの不動産会社“Barnes”(バルヌ社)によると、不動産取引は国際化しており、アパルトマンの購入希望者はレマン湖畔の物件(ジュネーブ)、シャン・ド・マルスの物件(パリ)、セントラル・パークの物件(ニューヨーク)というように、国にこだわらず比較検討している。そこで、バルヌ社もアメリカの物件をフランスの富裕層に斡旋し始めた。今年だけでも、ニューヨーク15軒、マイアミ20軒の契約を成立させている。アメリカに不動産を探すフランス人がいれば、その逆にフランスの不動産を求めるアメリカ人がいる。バルヌ社では、パリ、ドーヴィル、ビアリッツ、プロヴァンス、コート・ダジュールなどの物件をアメリカ人に紹介している・・・ガーシュウィンの交響詩『パリのアメリカ人』やヴィンセント・ミネリ監督の『巴里のアメリカ人』というミュージカル映画があるように、ヨーロッパ、特にパリに憧れを抱くアメリカ人は多いようです。作家でも、ヘミングウェイとF・スコット・フィッツジェラルドなどが有名ですね。

フランスの不動産をアメリカ人が買い、逆にアメリカの物件をフランス人が買う。その結果、大西洋をはさんで不動産価格がほぼ均一になってきた。1㎡あたり15,000~20,000ユーロ(約165万~220万円)がパリ、ニューヨークの高級物件の相場で、ロンドンの相場はさらに20%ほど高くなっている。リーマン・ショックの後、12~16%も下げた不動産価格が、今年の第3四半期になっても2%しか上昇していないため、対ドルでのユーロ高も相俟って、フランス人にとっては今が買い時になっている。

例えば、マンハッタンの最南端、自由の女神像、ハドソン・リバー、バッテリー・パークが見下ろせる、息をのむ眺望の250㎡の物件が330万ユーロ(約3億6,300万円)。富裕層にとっては、わずか330万ユーロであり、ちょっとしたプレゼント程度でしかない。同じ建物内にある55㎡のステュディオ・タイプのものは、502,000ユーロ(約5,500万円)。

物件自体はお買い得だが、たまにしか滞在しないフランス人にとって高いと思われるのが毎月の管理費だ。市、州、国に納める税金が1,052ユーロ。それ以外にコンシエルジュ、プール、応接間、フィットネス・センターなどの共益費があり、毎月4,500ユーロ(約50万円)の管理費が必要だ・・・3億円以上の購入費がプレゼント程度でしかないなら、50万円なんか塵か埃ではないかと思うのですが、金持ちほど吝嗇とも言いますから。住んでもいないのに50万円も払うのは馬鹿らしいと思うフランス人が多いのかもしれません。何しろ、しっかりしていますからね。

購入手続きに関しては、公証人が素早く対応してくれるフランス、弁護士が時間をかけて処理するアメリカ、しかもそれぞれに費用が大きく異なるなど、違いがあるが、ローンで購入するなら、利息がフランスでは3.5%で、アメリカの7%より低利であり、管理費もフランスの方が十分の一で済む。フランスの物件を購入するアメリカ人が増えるのではないか・・・

ということで、欧米の富裕層は、大西洋をまたいで不動産の購入を進めている。しかも、金に糸目を付けず・・・慈善団体の炊き出しや生活必需品配布に多くの貧困者が列をなすという現実がある一方で、数億円の不動産物件を年に数度行くためだけに簡単に購入する層がいる。二極分化。その格差は広がる一方です。どこまで広がるのでしょうか。どこかで、不満が爆発することはないのでしょうか。「パンがないなら、お菓子を食べればよい」・・マリー・アントワネットの言葉ではないということは定説となっていますが、そんな気持ちが富裕層の間に垣間見えるようになると、どうなるでしょうか。蜂起になるでしょうか。なるとして、21世紀、その形は? しかも、3世紀、中国・西普の恵帝は「米がないのならどうして肉を食べないのか」と本当に言ったとか。格差の伝統は欧米だけの話ではないようです。
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国救われ、民困窮す・・・アイルランドの窮状。

2010-11-29 21:21:03 | 社会
「国破れて山河在り」・・・杜甫の有名な詩の一節ですね。唐の都・長安は滅んでも、山河はそこにいつまでも残るっている。今、逆に、国は救われても、そこに住む国民が奈落の底へと突き落とされようとしている国があります。国救われて民困窮す・・・EUとIMFからの金融支援を受けざるを得なくなったアイルランドがその国です。

1990年代後半には、IT革命と金融の自由化により、二桁の高度成長を達成し、ポーランドなど東欧から多くの移住者を受け入れていたアイルランド。2008年ですら、国民一人当たりのGDPが42,539ドルと、世界のトップ・クラスにいました。それがリーマン・ショック以降、一転。深刻な財政・金融危機に直面。ついには、IMFの支援・指導を受けざるを得ない状態に。その支援で当面の財政破綻、金融危機は回避できるものの、緊縮財政をさらに徹底せざるを得なくなりました。社会保障が大幅に削減される。公務員数も削減される。その結果、多くの国民が貧困状態へと追いやられる・・・そうした現状を、27日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

最大850億ユーロ(約9兆4,000億円)の支援。といっても、2国間融資も含めてEUが450億ユーロ、IMFが225億ユーロ拠出しますが、残りの175億ユーロはアイルランドが自助努力で捻出することになる・・・自国分も支援の総額に含まれるという、素人目にはちょっと変な支援策ですが、そういうことになったようです。

リーマン・ショック以降の緊縮財政で、すでにかなり苦しい生活を余儀なくされている国民に、さらなる緊縮財政が追い打ちをかける。慈善団体は、今まで以上に救済を求めてくる人が増えるだろうと予想している。支援を求めて慈善団体のドアをたたく人々が、すでに首都ダブリンで40%、主要都市のコークでは50%も増えている。

先週水曜日に公表された新たな緊縮策によると、GDPの9%に相当する150億ユーロ(約1兆6,000億円)もの政府支出を削減することになり、その一環として失業保険や家族手当、公務員年金、最低賃金などが引き下げられ、公務員25,000人が削減されることになる。

社会保障によって何とか生計を立てていた家庭に著しい影響を与えることになるだろうが、同時に、ワーキング・プアという新しい貧困層を生み出そうとしている。4万人、つまり労働人口の4%が最低賃金で暮らしているが、その最低賃金が12%も引き下げられる。ぎりぎりのところで社会保障を受けずやってきた勤労世帯に、大きな打撃になる。食べていけるのだろうか。彼らが何をしたというのだ。まじめに働いてきたというのに、一方的に犠牲を強いられてしまう。

2009年にはGDPが7%減少し、失業率は14%近くになっている。2008年の貧困率4.2%が、2009年には5.5%に上昇。社会保障に頼る生活から抜け出したものの、再び社会保障を受けざるを得ない状態に逆戻り、そのように這い上がっても、這い上がっても貧困の泥沼から抜け出せずにいる人々も増えている。

慈善団体は次のように憂えている。31%もの社会保障費削減は、貧困層を急増させ、社会に壊滅的な影響を与えるだろう。景気回復策としての減税、その恩恵に浴するのは最も富裕な層だけであり、金融機関を救済するために苦労を強いられるのは貧困層だ。支援の必須条件として財政削減を求めるEUとIMFの責任は大きい。

労働組合は、27日に緊縮策に反対するデモを予定している。1916年に共和制を宣言した場所であり、アイルランド共和国独立のシンボルでとなっているダブリン中央郵便局へ向けての行進であり、数万人の参加を期待している。昨年初めに行われた、やはり緊縮策に反対する抗議デモには、10万人が加わった・・・27日、実際には5万人が抗議デモに加わりました。

決して豊かではない国土。イギリスに征服され、差別を受けてきた歴史。多くのアイルランド人が移民として新天地・アメリカへと海を渡りました。今では、3,600万人ものアイリッシュ・アメリカンがいます。ケネディ家が最も有名かもしれませんが、他にもロナルド・レーガン、ビル・クリントンという大統領経験者、作家のF・S・フィッツジェラルド、レイモンド・チャンドラー、俳優のジョン・ウェイン、グレース・ケリー、クリント・イーストウッド、ハリソン・フォード、そしてあのウォルト・デズニーなど、枚挙に遑がないほどの著名人を輩出しています。

アイルランドの守護聖人、聖パトリックの命日、3月17日は聖パトリック・デー(St. Patrick’s Day)。世界各地に散らばったアイルランド人たちにとって、自らのアイデンティティを再確認する日でもあります。ナショナル・カラーの緑の服をまとってのパレード。ニューヨークのものが有名ですが、上海駐在時には、租界時代の洋館を改装したアイリッシュ・パブに、上海にこんなにアイルランド人がいたのかと驚かされるほどの多人数が集まり、飲んで、歌って、踊って、楽しそうに祝っているのを目にしました。フィドルやイリアン・パイプスの音色がとても印象的だったと記憶しています。

こうしたアイルランドの人たちの故郷が今、窮状を呈しています。貧しさゆえにアメリカへ移住し、成功を収めた多くのアイルランド人。そのアメリカの影響下、IT革命、金融の自由化で、大いなる発展を遂げた数年前までのアイルランド。それが、アメリカ発の金融危機で、一瞬にして暗転。再び貧困への道を転げ落ちている。禍福は糾える縄のごとし、そんな言葉が脳裏に浮かんでくるアイルランドの窮状です。
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ランバンをH&Mのプライスで。ショッピング狂騒曲。

2010-11-28 19:46:36 | 社会
今までにも、カール・ラガーフェルトなどとのコラボを行ってきたスウェーデンのH&M。今回パートナーになったのは、フランスのファッション・ブランド、ランバン(Lanvin)。女性用はもちろん紳士用も含めて、多くのファッション・コラボレーション・ライン、“Lanvin pour H&M”が勢揃い。23日に、世界各国でファッショニスタたちにお目見えしました。

扉の開いた23日の朝、パリの9区、オスマン大通りにあるH&Mの店舗ではどのような状況になっていたのか、23日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

何しろ、ランバンのデザイナー、アルベール・エルバス(Alber Elbaz)が担当したコレクション“capsule”が、H&Mの価格で買える! ドレスが149ユーロ(約17,000円)、口紅が9.95ユーロ(約1,120円)、タキシードが199ユーロ(約22,000円)。他にも、ボレロ、ベルト、コート・・・

ファッション大好き人間が、見逃すはずはありません。早朝から、長蛇の列。通常は10時開店のところを8時にはドアを開けることにしていましたが、待ちきれない客は、早朝の3時から列を作り始めました。通行の邪魔にならないように、柵に区切られた内側に並んで、オープンを待つ客たち。臨時雇いの警備員も整理にあたっています。

しかし、騒ぎが起きることはありません。携帯電話でおしゃべりに夢中な客たち。その客たちに、ランバンの新しい香水“Marry me !”のサンプルを配って歩くアルバイト女性。

そして、ついにH&Mの店員が、並んだ客たちに、ブレスレットを配り始めました。もちろん商品のブレスレットではなく、入店時間を記したブレスレット。一気に入場させると大混乱になりますから、時間を区切っての入店になります。その時間ごとに色分けされたブレスレットを渡され、手首にはめて店内に入ることになります。例えば、ある女性客が受け取ったブレスレットには、「これは女性用コレクションを購入するためのチケットで、あなたのショッピング時間は11時45分からの15分間」と記されています。

ショッピング時間は、わずかに15分! 「オレンジのブレスレットのお客様、店内へどうぞ」というアナウンスがあると、オレンジ色のブレスレットを手にした客たちは、みな一目散に店内へ。店員が、「押さないでください、押さないでください」と連呼するほどの殺到ぶり。その中、乳母車を押しながら我先に進んでいく女性客もいます・・・母になっても、おしゃれは忘れず。そして、母は強し。

多くの客が、事前にネット上でお目当ての商品を見つけていたようで、右往左往することなく、お目当ての売り場へ一直線。例えば、ネット上でお気に入りの商品を3点見つけてやってきた女性。しかし、手渡されたブレスレットには、入店時間が9時30分とあり、それまでその商品が残っているか心配になっています。

また、一般的に思われている以上に男性客も多い。ネットで199ユーロのタキシードと靴を見つけてやってきた若い中国人男性グエン(Nguyen)さんもその一人・・・グエンというのは、ベトナム人によく見られる姓名です。取材した『ル・モンド』の記者にとっては、中国人もベトナム人も、同じなのかもしれません。実は、そうした混同、フランスで一般的です。パリ13区、イタリー広場(Place d’Italie)近くのチャイナ・タウン。名前はチャイナ・タウンですが、実際には、ベトナム・カンボジアなど旧仏領インドシナからの移住者が多い。有名なアジア食材スーパー“Tang Frères”(陳氏百貨商場)にしても、その経営者は、確か、ラオス出身。でも祖父が中国からタイへ渡った中国系ですが。いずれにせよ、フランス人にとって、東アジアや東南アジからやってきた人たちの総称は中国人。日本人も含まれます。

さて、意外に多いという男性客ですが、それでも男性売り場の方が、やはり静か。10時頃になると、さすがにネクタイは1本しか残っていませんが、蝶ネクタイとかスーツ、セーターなどはまだ十分に残っています。

一方の女性売り場。女性の方が多いため、同じ頃に列に並んでも、女性の方が入店できる時刻が遅くなる。これじゃシャネルのセールよりもひどい!と不満を漏らす女性客も。混雑を少しでも緩和するためか、試着は禁止。それでも、すさまじい熱気。持ち時間も残り5分になると、店員が、例えば、オレンジ色のブレスレットのお客様、レジへお急ぎください、と絶叫。まるで、お祭り騒ぎ。眺めていれば、目が回るばかりで、モードと消費の大観覧車!

また、ユニセフへ寄付するため、ランバンのマークを付けた3ユーロ(約330円)もしない小さなサックも販売されていますが、こちらに関心を示す客はほとんどいない! 慈善や連帯よりも、ファッション、ショッピング・・・

熱狂、雑踏、喚声・・・セール会場は、国の違いを超えて、どこも同じみたいですね。パリのショッピング狂騒曲でした。
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子どもたちの学力が心配だ、特に数学が!

2010-11-26 20:05:18 | 社会
小学生や中学生の学力低下が心配されているのは日本だけではなく、フランスも同じ課題を抱えているようです。鏡に映る国同士のように、相異なることの多い日仏両国ですが、子供の学力については、同じ悩みを抱えている! それも、特に数学について! 24日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

文部省の2008年の調査によると、中学校(le collège)卒業時に、数学の基礎をきちんと身につけている生徒は、56%にすぎない。残りの44%は、義務教育卒業時に必要とされる知識と技能に相当する基本的な質問ですら、しばしば間違えてしまう。

このことが今、特に心配されているのは、義務教育を修了するにあたって必ず身につけておかなければならない基本的能力が、2011年からは終了証をもらうための必須条件になっているからだ。その基本能力があることを証明できなければ義務教育修了の資格を得られなくなってしまう・・・フランスは階級社会で、階級を規定する物差しの一つが学歴ですから、コレージュの卒業の資格がもらえないとなると、その後の人生、かなり暗くなってしまいますね。

44%の子どもたちは簡単な問題しか解くことができず、時間、距離、体積といった概念を操って問いに答えることができない。特にひどい15%の生徒たちは、コレージュでの授業をほとんど理解していない。簡単な加算乗除や幾何学的な形の特徴といった直感的に答えられる質問にしか正解を出せない。しかもそうした答えがどのように導き出せるのかといったことについては、まったく理解できていない。

しかも、大きさの順位づけとか円の面積といった問いが、中学卒業を迎えようとしている生徒たちにとって、程度の差こそあれ、難問になっている。コレージュを卒業する生徒すべてが理解できているべき問題に正解を出せないでいるのが現状だ・・・日本でも、大学の教養課程で、高校とかあるいは中学で学んだ筈のことを復習させざるを得ない現状が、時々メディアによって紹介されていましたが、義務教育卒業時の学力、日仏ともに心配な状況なのですね。

数学でもう一つ懸念されているのが、暗算。電卓に取って代わられてしまったせいか、暗算力の衰えている生徒が増えている・・・これまた、日本でも同じ状況ですね。レジスターがないと釣り銭がいくらになるか分からないレジ係もいるのではないでしょうか。でも、電卓があるから安心? いやいや、電卓があっても、簡単には解決しません。仮に、1個650円のケーキを4個買って5,000円札で客が支払ったとしましょう。お釣りはいくらになるのでしょうか。電卓があっても、“5,000-650X4”ができない! そんなバイト学生に2度出くわしたことがあります。こうした数式が頭の中でできないのか、この数式を電卓で計算できないのか、いずれにせよ電卓も宝の持ち腐れ。まして、暗算など、期待する方が間違い・・・

一方、中学生の20%から30%は学校以外で週に1時間から3時間、数学の勉強を手伝ってもらっている・・・日本で言えば、学習塾や家庭教師になるのでしょうか。子どもたちの学力低下、その責任はすべて子供たちにあるとは言い切れないと思います。カリキュラムの問題もあるでしょうし、家庭での学習環境、学校の授業の進め方などにも改善の余地があるのだと思います。予備校の講師を招いて、教え方セミナーを開いた学校があると、随分前にテレビで見た記憶があります。授業料を払って通って来る子供たちにきちんと成果が現れるように教えないと、アンケートなどを通して評価が下がり、給与も下がる。解雇される恐れもある。こうした厳しい環境にある予備校の教師たちは、教え方に工夫を凝らす。そうした工夫が学校では足りない。そんな内容だったと思いますが、こうした学校で教える側の課題、これまた日仏共通なのかもしれません。

いろいろな要素、さまざまな原因があっての学力低下なのでしょうが、現実は現実。子どもたちの学力が、少なくとも相対的には低下しているる、それが日仏両国の現状です。例えば、“PISA”(Program for International Student Assessment:OECD生徒の学習到達度調査)
によると、2000年、2003年、2006年における中学生の数学リテラシー、その順位は・・・

2000年:①日本 ②韓国 ③ニュージーランド (10)フランス
2003年:①香港 ②フィンランド ③韓国 (6)日本 (16)フランス
2006年:①台湾 ②フィンランド ③香港 (10)日本 (23)フランス

わずか6年で、日仏両国とも、順位を大きく下げています。数学リテラシーが衰退している。PISAは「義務教育修了段階で身につけた知識や技能が実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを評価」(Wikipedia)しているわけですから、数学リテラシーが低いということは、実生活で数学的素養が必要になった場合、対応できないということになります。暗算はもちろん、電卓すら使えない販売員・・・これはもう立派な社会的損失だと思えてきます。

数学苦手の典型的文系人間である私が言うのもおこがましいのですが、将来の日本社会のためにも、子どもたちの数学力、改善しないといけないのではないでしょうか。フィンランドやニュージーランド、そして近隣の台湾・香港・韓国がPISAで良い結果を残しています。学ぶべきは学んで、ぜひ改善していってほしいものです。学ぶことに積極的で、また学ぶことがうまい国民性を日本は持っているのですから。変な自尊心は捨てて、謙虚に、ぜひ。
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「エア・フォース・ワン」のフランス版、「エア・サルコ・ワン」登場!

2010-11-25 20:25:59 | 政治
アメリカの大統領専用機と言えば、「エア・フォース・ワン」。ハリソン・フォード主演の映画(『エアフォース・ワン』、1997年公開)でもおなじみですが、これ実はアメリカ空軍のコールサインで、大統領が搭乗している時だけこのコールサインで呼ばれるそうです。副大統領が乗っている場合は、「エア・フォース・ツー」なんだそうです。機種は、もちろんボーイング747。

この「エア・フォース・ワン」に因んで、「エア・サルコ・ワン」と呼ばれる飛行機が、11月11日に初飛行を行いました。G20に出席するため、パリからソウルへ。サルコとは、おなじみサルコジ大統領のことで、つまり新しいフランス大統領専用機が処女飛行を行ったという訳です。しかし、そこはサルコジ大統領のことですから、ハデハデな内装、設備があるに違いない・・・新型機の話が漏れ出して以来、ここ2年ほど、さまざまな憶測が飛び交いました。どんな噂話だったのでしょうか。しかして、その実体は・・・11日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

話の発端は、2008年9月、『南仏新報』(La Dépêche du Midi)という新聞が、大統領や国防相は何とか隠し通そうとしているが、間もなく新しい大統領専用機がお目見えするようだ、と伝えたことでした。やがて、アメリカ大統領専用機に因んで、「エア・サルコ・ワン」(Air Sarko One)と呼ばれるようになった新型機。もちろん、エアバス。さまざまなメディアの、格好の餌食になってきました。

2009年3月には、25,000ユーロ(約280万円)のコーヒーメーカーが取り付けられるそうだ! 同じ頃、風刺漫画では、オバマ大統領の乗る「エア・フォース・ワン」の隣を飛行するサルコジ大統領。見栄っ張りの主を象徴するように、その機内にはジャグジーがあり、外側ではネオンが輝いている!

2010年2月には、ピザの焼窯まで備えられているようだ! その後にも、バスタブが設置されるそうだ! そして初飛行直前ですら、風刺漫画で、カーラ夫人に鏡の間、暖炉、飾られた大きな毛皮、核兵器の使用ボタンを押す機器の入ったヴィトン社製アタッシェケースを自慢げに見せるサルコジ大統領が登場! もちろん、背景にはピザの焼窯!!

こうしたメディアの報道ぶりを、与党・UMPは全否定。いい加減な推測に基づく報道をやめるよう、強硬に主張。既存メディアは少々おとなしくなるものの、相変わらず実体を公開しないため、噂に尾ひれ・胸ひれが付いた情報がネット上を駆け巡りました。

もちろん、野党も攻撃の材料に。社会党は、2009年11月、軍備増強の必要性、財政赤字が増え続けていること、貧困問題が深刻になっていること、こうした指摘が出されている折に、1億8,700万ユーロ(約210億円)もの巨額な予算を専用機のために使ってよいものか、と詰問。今年7月にも、今度は前の大統領選候補、セゴレーヌ・ロワイヤル女史が、国民が経済危機の影響で苦しんでいる最中、贅沢な飛行機は諦めるべきだと主張しました。

こうした批判、揶揄、からかいなどにまみれながら、ついに初飛行。それに伴い、実体も見えてきました。与党の発表によると・・・まず価格ですが、1億7,600万ユーロ(約200億円)で、社会党の指摘より、ほんの少し安くなっています。内訳は、機体が6,000万ユーロ、改装費が9,150万ユーロ、通信機器の保安上のコストが2,050万ユーロ、そして400万ユーロが機器の使用料などに。なお機体は新品ではなく、10年物の中古機! 予算削減に努めているところを見せたいのでしょうね。

また、購入したA330型機は以前のA319型機よりも航続距離が長いため、韓国など遠方へのフライトでも給油のための寄港がなくて済み、しかもA318型機2機分よりも大気汚染が少ないそうです。環境にも配慮していると言いたいのでしょうね。

設備に関しては、確かにダブルベッドのある寝室が1部屋あるが、シャワーは簡単なもので(ジャグジーなどあるわけがない!)、フランス国内に残る閣僚たちとのコンタクトをつねに保つ最新鋭の通信機器、ミサイルに対する防衛機器などが装備され、また医務室、60人分の仕事用シートが備えられている。

ということで、「エア・サルコ・ワン」は思われていたほどハデハデ(bling bling)ではないようです。実際、親しい者が搭乗したという社会党議員は、過度な贅沢という印象は受けなかったようだ、と与党の発表を裏付けています。しかし、この2年に及ぶ騒ぎについて社会党は、コミュニケーションに問題があった、あまりに多くのことを秘密にしたため、余計な憶測が流れることになってしまったのだと、与党の情報公開のまずさを指弾。マスコミに機内を公開するよう要請しました・・・

因みに、日本の政府専用機はエアバスではなく、対米協調路線でボーイング747。“Japanese Air Force One”とも呼ばれているそうです、知りませんでした。機内は、貴賓室、夫人室、秘書官室、会議室、事務室、随行員室、一般客室に分けられているそうです。どのような設備・備品があるのでしょうか。畳に布団の部屋なんかがあったりするのでしょうか。そこに湯船? まさか、これでは『ティファニーで朝食を』のユニオシ氏(ミッキー・ルーニー)になってしまいます。

・・・情報公開を怠ると、無用な噂に悩まされることになる。かといって何でも公開してしまっていては、危機が迫る場合もある。情報公開、難しい舵取りになっています。特に、ネットの普及と相まって。
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国境なき医師団の母国が、医師問題に悩む。

2010-11-24 22:14:43 | 社会
紛争、自然災害、伝染病、飢餓などに苦しむ人々に、国境を越えて医療支援の手を差し伸べている「国境なき医師団」(Médecins sans frontières)。1999年にノーベル平和賞を受賞したこのNGOは、1960年代末、内戦に苦しむナイジェリアのビアフラに赤十字から派遣されたフランス人医師たちを中心として、1971年に創設されました。その主要メンバーの一人が、先の内閣改造まで外相を務めていたベルナール・クシュネル(Bernard Kouchner)。「国境なき医師団」は、例えば2006年には、1,361人の医師を中心としたスタッフを被災地に派遣しています。

ベルナール・クシュネルはその後、活動方針の対立からこの組織を離れ、1980年に「世界の医師団」(Médecins du monde)を設立。また、1985年に設立された「国境なき記者団」(Reporters sans frontières)の創設者、ロベール・メナール(Robert Ménard)とも親交があり、その活動にも影響を与えているようです。

前置きが長くなりましたが、世界各地で医療支援を行っているフランスの医師たち。その祖国、フランスで、医師に関するいろいろな問題が指摘されています。医師の高齢化、医師の地域的偏り(都市部への集中)、自由診療を行う開業医の減少、パートタイム医師の増加・・・23日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

国立医師会評議会(CNOM:Conseil national de l’Ordre des médecins)が23日、“Atlas de la démographie médicale en France”(フランスにおける医師人口図解)という資料を公表。それによると、2010年1月1日時点で、フランスにおける医師資格保有者は261,378人。このうち、216,450人が実際に医療行為に携わっている。ここ30年では、医師数は人口の伸びよりも大きな割合で増加している。人口10万人当たりの医師数は、全国平均で308.8人。多いのは、プロヴァンス・アルプ・コートダジュール地方で374人、パリ近郊のイル・ド・フランス地方が370人。一方最も少ないのは、ピカルディ地方で239人。

しかし、人口10万人当たりの医師数は、地域的偏りはあるものの、少なすぎるわけではない。問題は、その裏に隠されている、医師の高齢化であり、ベビーブーマー世代を中心に、近い将来多くの医師が現役を退くものと思われることだ。実際この1年で、医師としての活動を引退した人は6.6%増え、一方医師の仲間入りをした人は1.8%しか増えていない。現在活躍中の医師の平均年齢はほぼ50歳で、医師全体の41.7%が50歳代だ。60歳以上も16.1%に上る。

CNOMは、引退しようという医師には、まだ医師の職業にとどまるよう勧めるべきだ、と言っている。社会保障費を増やさないためという理由もあるが、それ以上に、後は若い医師に任せればそれでよいという状況になっていないという理由が大きい。なぜなら、若い医師は自由診療に関心を示していない。80年代には半数が自由診療医になっていたものだが、今では8.6%しかいない。

若い医師は、自由診療医としてより多くの給与、より恵まれた物質的幸せをめざすよりも、たとえ別荘や南の島でのヴァカンスが無理でも、自由な時間が多く、束縛のない人生、学校が休みの水曜日に子どもの世話ができるような生活を望んでいる。その結果、保険診療医が多くなり、自由診療医が不足する事態になっている。

フランスの医療制度は、病院と地域の開業医からなっており、開業医の多くは自由診療医だ。自由診療医が減れば、開業医の後任が見つけられなくなってしまう。大病院のない地方で特に大きな問題になっている。

しかも、若い医師は地方に行きたがらず、医師不足を地方自治体は外国人医師の誘致で補おうとしている。外国人医師は現在、10,165人に上っており、特に多いのがルーマニア人医師だ。しかし、外国人医師たちは、一定の期間が過ぎると、収入の良い自由診療を諦めてまで地方の診療所から逃げ出し、大都市の勤務医になってしまう。CNOMは、外国人医師のリクルートを行っているエージェンシーの実態に注意することを喚起している。

心配な現象、もう一つは、パートタイム医師の増加だ。現在1万人ほどおり、ここ30年で754%も増加。平均年齢は38.5歳で、女性に多く、半数は週3日すら働いていない・・・

このように、いろいろ問題はあっても、それでもフランスの現状は日本より良いのではないでしょうか。日本の医師数は、2008年12月31日現在で、286,699人。人口10万人当たり224.5人。フランスで最も医師数の少ないピカルディ地方よりも少ない! しかも、日本の医師数は医師資格保有者数で、すでに引退した人なども含まれており、実数はさらに少ないものと思われます。年齢的には、日本の場合、平均年齢が2006年時点で、48.1歳。勤務医で42.4歳。開業医は58.0歳だそうです。日本でも医師の高齢化は進んでいるようです。

さらに、地方偏在は日本でも大きな問題になっています。しかも、新医師臨床研修制度の導入以降、若い医師の都市部への集中がさらに増えたと報道されています。その結果、地方都市の公立病院など、診療休止に追いやられるところも出てきています。銚子市民病院などの例が、記憶に新しいですね。最新の医療設備の整った大病院には経験の不足する若手医師しかいない。逆に開業医には経験があっても設備・機器がない。こうした問題も一般化しつつあるようです。

また、診療科により需給不均衡も見られます。救急、内科、外科、小児科、産科など、勤務医の場合、36時間連続勤務などかなりのハードワークであり、しかもその勤務実態に見合うほどの給与になっていません。確か公立病院の院長クラスでさえ年収1,500万円ほどが平均だったと思います。難関の医学部に入り、国家試験に合格し、36時間連続で働き、それで1,500万円ではやってられない、と思う医師がいても決して非難できません。

こうした現状に、日本でも、医学部の定員増、外国人医師の招致、出産・子育てなどで家庭に入った女医の現場復帰、コメディカル(医師の業務の一部を看護師や検査技師に委譲すること)などで解決しようとしています。ぜひ、よい方向に向かってほしいものです。

という訳で、日本とフランスの医師を巡る問題、共通項が多いようです。もちろん2カ国だけで世界を語るのは危険かもしれませんが、世界共通の課題も多いのではないでしょうか。グローバル化。同じ問題を抱えているなら、協力して問題解決に当たることもできるはずです。一方、各国独自の問題は、それぞれの国で解決する。グローバルとローカル。グローカリゼーション。医療だけでなく、環境とか、多くの問題で必要なのかもしれませんね。
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フランスには、犯罪大通りがいっぱい。

2010-11-23 20:50:45 | 社会
覚えていますか、マルセル・カルネ監督の『天井桟敷の人々』(Les enfants du Paradis)。ドイツ軍占領下で制作され、1945年の公開。主演は、アルレッティと希代の名優ジャン=ルイ・バロー。脚本は、シャンソン『枯葉』(Les Feuilles mortes)の作詞でもおなじみのジャック・プレヴェール。映画史上に燦然と輝くこの名画は2幕構成。その第1幕が、「犯罪大通り」(Le Boulevard du Crime)です。犯罪大通りで繰り広げられる犯罪と恋愛。人生のショーケース・・・

その犯罪、それも暴力行為が今フランスで増えているという調査結果が公表されました。発表したのは、ONDRP(l’Observatoire national de la délinquance et des réponses pénales:国立軽罪処罰監視機構)。概略を21日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

INSEE(l’Institut national de la statistique et des études économiques:国立統計経済研究所)と共に2009年に、14歳以上の男女、16,500人を対象に調査を行い、その結果からフランス全土でどれくらいの犯罪被害者がいるかを推定しています。

対象者の20.5%が治安に不安を感じており、2008年より1ポイント増。2007年から急に増加している。(治安が国民の間では大きな関心事、解決すべき課題になっているようです。)

盗難およびその未遂の被害者が470万人、身体的暴行・性的暴行の被害者が120万人近くに達している。(フランスの人口は6,500万人ですから、盗みの被害にあった、あいそうになったという人は7.2%、14人に1人の割合。暴行の被害者は1.8%で、54人に1人! すごい確率ですね。)

こうした数字は、政府が発表するものよりもはるかに多い。盗難及びその未遂被害に関しては、政府発表は警察への届け出に基づいており、150万人と発表されているが、今回の調査結果からの推計はその3倍に達している。身体への暴行や性的暴行の被害者は、政府発表では20万から25万人で、ONDRPの発表はその4~5倍になる。

ONDRPは、自らの調査結果は政府発表の数字を補完するものであり、どちらが正しいか比較することに意味はない。それよりも、ふたつの統計数字が、同じトレンドを示していることに注目すべきだと述べている。数年前から盗難は減少している一方、暴力行為が増加している、という傾向だ。(閉塞感、イライラ、そのような気分がフランス人の間にも広がっているのでしょうか。)

2009年におよそ350万人が何らかの破壊行為の被害に遭っており、そのうち210万人が乗用車に対する被害だ。(大都市の郊外を中心に、毎晩かなりのクルマが放火され、炎上しています。また最近では、高速道路での渋滞中に、ドア越しにバッグなどを強奪していく犯罪が急増しています。)また、脅迫の被害にあっているのは、170万人。

一方、家庭内の暴力では、18歳から75歳までの女性、30万5,000人がその被害にあっている。家庭内暴力は、被害者も多く、しかもなかなか解決しない問題になっている。ONDRP関係者は、多くのフランス国民が抱いている治安への不安の一因は、経済危機かもしれないが、このことについては精査する必要がある、と述べている・・・

こうした記事を読んでいて思い出すのは、「日本人は水と安全はタダだと思っている」。確か、『日本人とユダヤ人』の中で山本七平氏が言っていたと思いますが、確かに、安全はタダではない。国家間はもちろんですが、個人の問題でもそうです。一歩海外に出れば、ボーっとしていると貴重品まで盗まれてしまう。私は、自慢ではありませんが、クレジット・カードとデジカメを盗まれたことがあります。それ以来、余分なバッグ等は手に持たず、財布はズボンの前ポケットに入れています。

そして、この記事にあるように、フランスも例外ではない。ないどころか、観光地ゆえ、スリは非常に多い。特にエスカレーター付近や、メトロの乗降口付近。二人組のスリが多く、一人がカモの前で突然しゃがみこみ、狙われた観光客があれ何をしているのだろうと下を向いている間に、もう一人が後ろからポケットやカバンの品物を盗み取る。

また、一般家庭への空き巣も多い。特にヴァカンスなどで多くの家庭が留守にするシーズンは、空き巣の稼ぎ時。二日以上留守にする際は、必ず鎧戸を占めていくようにと、大家さんにしっかり忠告されたことを思い出します。

花の都、パリは、実は犯罪大通りでもある! そうしたことも一因となり、パリに住み始めて、がっかりした、パリがこんな街だとは思わなかったと、失望の日々を送ることになる日本人も多いようです。あるフランス人女性が言っていました。日本人はみんなフランスが地上の楽園のように思って来るみたいね。でも、住み始めれば、嫌なところも見えてくるでしょ。それでがっかりしてしまうのでしょうけれど、どうして地上の天国だなんて思いこんで来るのかしら・・・

確かに、不便なところがたくさんあります。深夜電力利用の給湯器なので、シャワーの途中で水になってしまうこともある。トイレのパイプが詰まってしまうこともある。しかも、修理を依頼しても、4日も5日もかかったりする。人種差別に合うこともある。あの雑誌で見たパリジェンヌの優雅な生活はどこへ行ってしまったの? テレビで見たパリのおしゃれな暮らしはどこにあるの? 

フランスには、犯罪大通り(Le Boulevard du Crime)がいっぱい。間違っても、地上の楽園(un paradis terrestre)ではない。“Paradis”と言うなら、天井桟敷(le paradis)から芝居を見る程度にとどめておいた方がよいようです。もちろん、良い所もたくさんありますが。
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EU内で台頭する、反ヨーロッパ主義。

2010-11-22 21:04:49 | 政治
21日、財政危機に瀕しているアイルランドのカウエン首相は、EU、IMFからの説得を受け入れ、900億ユーロ(約10兆3,000億円)の財政支援を要請する決定をしました。5月にギリシャが1,100億ユーロの財政支援を求めたのに続くユーロ危機第2弾。EUはここで何とか食い止めようとしていますが、後にポルトガルやスペインが続くのではないかという憶測もあり、予断を許さない状況にあるようです。

EUが経済危機から崩れ去っていく・・・こういう見方ができるのではないかと思いますが、否、実は政治から崩れていく危険性をはらんでいるという声が上がっています。18日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

『ル・モンド』のインタビューに答えるのは、国際関係戦略研究所(l’Institut de recherches internationales et stratégiques:IRIS)ヨーロッパ問題担当ディレクターのリベルティ(Fabio Liberti)氏です。

氏曰く・・・ユーロ圏の危機は、EU内に反ヨーロッパ主義を顕在化させるとともに、国際舞台でのEUの存在感を希薄にする。ヨーロッパの国々は、経済危機を何とか乗り越えようとしているが、同時に国内の政治問題を考慮に入れねばならず、状況は一層困難だ。例えば、ドイツ。ユーロ圏の危機を解決するために主要な役割を演じているが、経済問題と政治的圧力のはざまで引き裂かれんばかりだ。

まず、ドイツがアイルランドをどうしても救おうとしているのは、自国の銀行のアイルランドへのエクスポージャーが非常に大きいためだ。またドイツ経済の好調さはEU域内の経済成長とユーロ高に負うところが大であり、ドイツと他のEU諸国は切っても切れない関係となっている。一方で、ドイツ国民は、反ヨーロッパ的になってきている。自らが支払った税金が、いい加減な国家運営を行い、金融財政を放任してきた他国の救済に使われることに反対している。ギリシャ支援を遅らせたのも、こうしたドイツ国民の感情だった。しかし、金融市場を安心させるためには、スピーディな金融支援が当初思われていた以上に大切なことがはっきりしている。

一方、アイルランド経済は外国資本を呼び込みやすい法人税率の低さ(12.5%)に頼っている。しかし、EUやIMFからの支援を受け入れれば、他の国々との協調の意味からも税率を上げざるを得なくなるため、アイルランドは支援要請を拒んできた。しかし、ようやく支援を受け入れることになった。

ところで、経済危機がEU内の力関係にどのような影響を及ぼしているかだが、今までEUはフランスとドイツという二つのエンジンで前へ進んできた。それが今回の危機により、ドイツの力が突出してきた。緊縮財政を受け入れるよう他の国々に圧力をかけたのもドイツであり、先のG20で、アメリカがアイルランド危機を解決するよう呼びかけたのもドイツに対してだった。

しかし、ドイツはこうしたヨーロッパのリーダーとしての地位に居心地の悪さを感じているようだ。ひとつには第二次大戦という過去の問題のためであり、ドイツが指導的地位にいるヨーロッパという考えを受け入れたくないようだ。

経済問題によるEUの瓦解が現実的ではないとしても、逆に中期的には政治問題による崩壊の危機が考えられる。ユーロ危機は反ヨーロッパ的感情を広め、結果としてポピュリズムや衆愚政治を生み出している。オランダや、ハンガリー、スウェーデン、イタリアなどで見られるように、国内問題をEUのせいにする保守派や極右が台頭している。また短期的には、国際政治の場面で、EUの存在を希薄化し、EUへの信頼を損なうことになる。その結果、アメリカと中国による二極化が一層鮮明になるだろう。

EU加盟各国の利害を一致させるためには、例えばEU経済相の創設などにより、各国の国内予算へのEUの介入を容易にすることが必要だ。今日、共通の単一通貨を持っていながら、経済政策は一様ではない。ユーロ圏として、各国の国内経済の成長を促す方法を講じなければならない。またアメリカや中国と対等の立場に立てるよう、EUとしての統一された意見を発信すべきだ。

そのためには、各国の指導者たちが勇気を持って自国の国民にヨーロッパ各国同士の助け合いがいかに大切かを説明することが必要だ。ユーロ防衛基金の創設はその第一歩となる。各国の負債の一部をEUの負債とすることもできるかもしれない・・・

共産主義が20世紀の大いなる実験だったとすれば、地域統合・単一市場の形成・共通通貨の創設が21世紀の壮大な実験になるのではと思っていたのですが、その先駆的存在であるEUとユーロが大きな困難に直面している。それもグローバル化というアメリカ発の波に翻弄されて、難破しそうになっている。何とか持ちこたえてほしいものです。EUとユーロをいかに維持するのか・・・ヨーロッパの知恵、伝統の知恵が試されているのではないでしょうか。アメリカと中国、いずれとも異なるアイデアが、世界をより豊かにするのではないかと思います。頑張れ、ヨーロッパ!
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サルコジ政治は死んだ・・・野党から一斉口撃。

2010-11-21 20:01:03 | 政治
○○は死んだ・・・神は死んだ、ならニーチェ。女房は死んだ、はボードレール(Baudelaire)。TBSは死んだ、と言えば筑紫哲也。ハチのムサシは死んだ、なら平田隆夫とセルスターズ。そして、今フランスで言われているのが、サルコジ主義(le sarkozysme)は死んだ・・・誰がどうして言っているのか、16日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

第三次フィヨン内閣が成立したのを受けて、先週、サルコジ大統領は、テレビ局、TF1、France2のインタビューを受けました。その模様は、両局の夜8時のニュースでライブ放送されました。その会見を観た野党政治家からは、一斉に非難のメッセージが発せられました。口撃です。

今日、サルコジ主義は死んだ。勝利したのは、シラク主義(le chiraquisme:シラク前大統領に近い閣僚が増えました)。何ら新たなビジョンも解決策も示されなかった。フランスに取り入れようとしているグローバリゼーションに屈服させられたかのようだ。こう糾弾したのは、極右・国民戦線(le Front national)のマリヌ・ルペン(Marine Le Pen)副代表。

野党第一党、社会党(PS)のマルチーヌ・オブリー(Martine Aubry)第一書記は、サルコジ大統領は、どこに向かうべきかが分からず、ためらい、途方に暮れているように見えた、と印象を語ったうえで、国の現状を分かっていないし、国民の窮状も全く分かっていない。サルコジ大統領も認めているように、今フランスは問題山積だ。それにもかかわらず、何ら変化を起こそうとはしていない。首相は再任。同じ政策を継続すると述べている。今夜もいつもながら、サルコジ大統領の自己正当化を目の当たりにしたわけだが、その自己弁護も今回は特に混乱していた、と総括。

同じ社会党で、前回、2007年の大統領候補、セゴレーヌ・ロワイヤル(Ségolène Royal)も同じように、フランス国民は再び、怒り、うんざりするきっかけを与えられた。サルコジ大統領は、今までの失敗でその力も衰え、しかも、度重なる嘘で信用すら失っている。就任3年半、選挙公約とは相反する政策ばかりを行っている。フランスの価値、国際社会におけるフランスの偉大さ、購買力、年金制度、公共サービス・・・フランスからすべてを失わせてしまった、と全否定。

左翼党(le Parti de gauche)のジャン=リュック・メランション(Jean-Luc Mélenchon)党首は、サルコジ大統領はその混乱した長いおしゃべりの中に、自らの方針を隠そうとした。政策を継続するために、内閣改造を行っただけであり、安定を優先するために主要閣僚は代えなかったわけだ、とからかい気味に批判している。

サルコジ大統領とは同じ右派ながら、大統領の椅子を水面下で争った、いわば仇敵のドミニク・ド・ヴィルパン(Dominique de Villepin)は、さらに過激に非難している。大統領のインタビューを聞いた後、とてつもなく悲しい気分になってしまった。ここ6カ月というもの、フランス国民の心配事に対応できないみじめな政治、お粗末な民主主義を見せつけられてきたのだから。

中道政党・モデム(MODEM:le Mouvement démocrate)のバイルー(François Bayrou)党首は、教育に関しても、環境についても一言もなかった。また生産基地をフランス国内に戻すための確かな戦力も示されなかった。フランス国民が面している困難、それに対する解決策も語られることはほとんどなかった、と指摘。

労組・CFDT(la Confédération française démocratique du travail:フランス民主労働連盟)のシェレク(François Chérèque)書記長は、大統領は社会・経済の現状から何も学んでいない。最小サービス(le service minimum:ストなどの際、社会生活を営む最低限のサービスを維持すること)もあるにはあるが、効率的ではない、と批判。

ということで、非難の大合唱。批判しているのは、野党や労組、同じ右派でも不倶戴天の敵ですから、当然と言えば当然なのですが、3年半前のあの公約は何だったのだ、約束が違うじゃないか・・・国民の多くもそう思っているようで、サルコジ大統領の支持率は30%を切っています。

政権に就く前の約束はただの空手形。権力の座に就いてやっていることと、選挙時に言っていたことが大きく異なるのは、どうも国を問わないようです。それだけ政策を実行するには困難が多いということなのでしょうが、それを実行するのが政治家の力量。それだけに、政権や指導者が交代する時に国民が抱く期待が大きければ大きいほど、その後の失望も大きい。フランス、アメリカ、そしてわれらが日本・・・程度の差こそあれ、国境を超えて今、同じ政治状況が見られるようです。
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エールフランスも、LCCの逆風の中に。

2010-11-19 20:06:27 | 経済・ビジネス
LCC、ロー・コスト・キャリア(Low-Cost Carrier)。ここ数年、特に民主党政権になって以来、よく耳にしますね。以前は格安航空会社とか言われていましたが、今ではLCCで通ります。フランス語でも“le low cost”と英語がそのまま使われていたりします。

このLCC、歴史は40年ほどもあるそうで、1971年に誕生したエア・フロリダ、81年に産声を上げたピープル・エキスプレス航空(共にアメリカ)がパイオニアだと言われています。雨後の筍と言ってもいいほど多くのLCCが翼を広げ始めたのは、1990年代後半から2000年代初頭。それが今では、例えば、EU域内では20%以上、イギリスでは50%のシェアを握るまでに成長しています。

身近なアジア・オセアニアでも、マレーシアのエアアジア、シンガポールのタイガー・エアウェイズ、韓国の済州航空、中国の春秋航空、オーストラリアのジェットスター・アジアなどが、国内から域内、さらには遠距離へと路線の拡大を進めています。そのお蔭で、利用者にとっては空の旅がより身近になる。マレーシア4日3万円代といったパッケージツアーもお目見えしていますね。

こうした新しいトレンドの影響を受けているのは、既存の航空会社。JAL、ANA共に格安航空ビジネスに参入すると言っていますが、どうなりますか。完全別会社にするのか、あるいは多くの国のフラッグキャリアがやっているように、子会社を設立することになるのか。特にJALは、経営再建と時を同じくしてLCCからの挑戦を受けねばならず、大変な乱気流に突入しているようです。

LCCへの対応が迫られているのは、エールフランス-KLMも同じようです。一度発表した対応策を凍結させたり・・・悩めるエールフランスについて、15日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

エールフランス-KLMは厳しい挑戦にさらされている。国内ではTGV。スピードでは負けないものの、運賃や利便性で手ごわい競争相手になっている。国外では、イギリスのイージー・ジェットやアイルランドのライアンエアといったLCC。その運賃の安さは大きな脅威になっている。

エールフランス-KLMは、すでにオランダのLCC、トランサヴィア(Transavia)と国際的な提携関係を築いているが、国内線をカバーするLCCを子会社として誕生させると9月に発表した。名前は、エールフランス・エクスプレス(Air France Express)。2011年中には初飛行を行うことになっていたが、突然、計画の凍結が発表された。

エールフランス-KLMはLCCを子会社として傘下に持つよりも、既存組織の改編を優先させることにしたようだ。目的は言うまでもなく、コストの削減と中近距離フライトでの競争力向上。名付けて“plan Bases”(複数ベース・プラン)。その詳細が10月13日に発表された。マルセイユ、ニース、トゥールーズ、ボルドーの4都市をベース(基地)として、パイロットや乗員などを再編成する。実施に移される際には、パリ・オルリー空港も、もう一つのベースになることだろう。

それぞれの都市の空港をベースとするパイロットや客室乗務員たちは、1日6時間の乗務を行うことになる。つまり4~5フライトだ。そして夜にはそれぞれのベースの都市にある自宅に戻る。つまり、フライト先で宿泊することはなくなる。飛行機は1日12時間飛ばすことにしているので、2チームが引き継いで乗務することになる。

1日6時間乗務を月に15日行い、残りの15日は休暇になる。しかし、実質乗務時間は、月間で今までの569時間から740時間に増える。それに対し、会社側は5%の賃上げを提案している。こうした再編計画案は、今月末ないし12月初めまでには社員の同意を得たいということだが、もしベースを置く4都市への配転を受け入れる社員が少ない場合は、新たに4都市で社員を募集することになる・・・

ということで、乗務時間は伸びる、収入はスズメの涙ほどのアップ、住みなれたパリを離れ他の都市への異動。受け入れない社員も多いのではないでしょうか。何しろ、既得権は絶対に手放さない労働者が多いフランス。しかも、組合が非常に強い。繰り返されるストやデモでおなじみですね。拒否された場合、どうするのでしょうか。

4か所のベースで新たに採用される社員は、まったく別の賃金体系での採用になるのかもしれないですね。現在の社員は、別の部門への配転でしょうか。彼らが定年で辞めていくのを待つ。当然それまで新規の採用は減りますね。若年層の失業率への影響も考えられます。

JALでも、予定の早期退職者数に達しないため、整理解雇まで行われようとしています。憧れの職種、花形だった航空業界も、規制緩和、激化する競争、コスト削減といった乱気流に翻弄されているようです。しかし、ビジネスも大切ですが、それ以上に安全が大切。ぜひとも安全運航には、細心の注意を払ってほしいものです。落ちたイメージは回復することもできますが、機体が落ちては、失われた人命は戻ってこないのですから。
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