ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

DSK事件に新たな役者が・・・元愛人がDSKを語る。

2011-08-01 21:26:34 | 社会
新聞の連載小説。一度読み始めると、その展開が面白くて、毎日読まずにはいられなくなってしまいますが、その連載小説、フランス語では、“feuilleton”。新聞などの連載小説だけでなくテレビの連続ドラマもこう呼ばれています。しかし、アメリカ文化の浸透力が強いからでしょうか、“série”、つまり「シリーズ」という単語も使われています。ふたつの単語はどう違うのでしょうか・・・滞日年数の長いあるフランス人曰くは、両者には次のような違いがある。“feuilleton”は連続もの。良い所で終わってしまい、次回が待ち遠しくなるように計算されている。一方の“série”は毎回完結のシリーズもの。例えば、刑事コロンボや水戸黄門のようなものがシリーズものだそうです。

今、連続小説のように、つまり“feuilleton”のように、役者が次々と登場し、思わぬ展開に、ついつい新たな動きを追いかけてしまうのが、DSK物語。ドミニク・ストロス=カン(Dominique Strauss-Kahn)をめぐる事件です。

被害者と言われるホテルの客室係がついにマスコミに登場。ナフィサトゥ・ディアロ(Nafissatou Diallo)という女性で、ギニア出身の32歳。突然マスコミの前に登場し、涙ながらに現在の境遇を語っています。

その前に、フランスでは、2003年の取材時にDSKから危うく性的暴行を受けそうになったと、作家・ジャーナリストのトリスタヌ・バノン(Tristane Banon)が訴え出ました。しかも、来年の大統領選へ向けて、世論調査でトップを走るフランソワ・オランド(François Hollande)に相談したと証言したため、彼は事件をもみ消したのではないかと社会党前第一書記にも嫌疑が向けられています。

そこへ、DSKのかつての愛人と称する女性が登場。DSKの人となりについてメディアのインタビューに答えています。新たな登場人物は、誰で、どのようなことを語っているのでしょうか・・・7月31日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

DSK事件は、日々新たな展開を見せている。7月31日には、世界的な話題を呼んでいる、どこまでも続くこの連載小説に、新たな人物が登場した。DSKのかつての愛人と称するマリー=ヴィクトリヌ・M(Marie-Victorine M.)という女性で、週刊紙“le Journal du Dimanche”(JDD)のインタビューに答え、またスイスの週刊誌“L’Illustré”との長いインタビューに応じている。

パリ生まれで38歳になるこの女性は、アメリカに暮らしていたが、メディアの追求から逃れるため最近スイスに移ったと語っている。母親はスペイン人で、父親はコンゴ人(メディアに掲載された写真によれば、アフリカ系の容姿)。ソルボンヌで教育を受けた法律の専門家で、ジュネーブの国連オフィスに勤務し、その後ハーグ(La Haye)の国際刑事裁判所(la Cour pénale internationale)で働き、2009年からロサンジェルスで暮らしていたそうだ。

JDD紙とのインタビューで、彼女はDSKとの関係は1997年に1年間あったと語っているが、この件でナフィサトゥ・ディアロの弁護を担当しているケネス・トンプソン(Kenneth Thompson)弁護士から連絡を受けたそうで、失礼な質問を受けたと不平を述べている。

「ケネス・トンプソンは私を1週間も追い続けた。毎日メッセージを受け取ったので、不安を覚え、顧問弁護士を雇うことにしたほどだ。7月18日にトンプソン弁護士と電話で35分ほど話したが、私はすこぶる冷淡に答えた。なぜなら、彼が個人的な事柄に対する不躾でずうずうしい、まるで警察の尋問のような質問を浴びせてきたからだ」と、彼女は憤っている。

“L’Illustré”誌とのインタビューでも、彼女はすでにトンプソン弁護士のみだらで傷口をえぐるような不躾な質問を非難していた。また彼女は、「自分が追いかけられることになったのは、DSKとの関係を告白した、パリ北郊のSarcellesに住んでいる父宛の手紙をトンプソンの事務所が入手したからだろう」と説明している。トンプソン弁護士の動きに対抗し、先手を打つために“L’Illustré”誌とのインタビューに応じたのだと、JDDとのインタビューで語っている。

彼女のロサンジェルスの弁護士(Gloria Allred)がニューヨークの検察当局とコンタクトを取ったと彼女はJDDに語っている。また、彼女の証言はDSKを非難するよりは擁護するものになるだろうと“L’Illustré”誌に述べている。

“L’Illustré”誌で彼女は1997年2月の出会いに始まる、DSKとの身を焦がすような熱愛と、1年付き合った彼の気質についても語っている。

すでに評判を地に落とした男をさらに攻撃したくはないとことわったうえで、彼女は「DSKはセックス・アピールがあり、人の心をとらえることに長けた男性だが、決して力づくで女性をものにするような人物ではない。男が女性を壁に押し付けて抱きしめ、キスをしたからと言って、それが暴力だろうか。確かに、性的暴力というものはある。しかし、私にとっては、壁に押し付けられてキスされることは、暴行ではない。DSKは決して私に対して力づくで迫りはしなかった。身体的であろうと、コトバであろうと。」 スイス誌に対し、彼女はこのように説明している。

「ドミニクは時々痛いくらいに強く抱きしめることはあったが、それは情熱のなさるわざであり、乱暴だったわけじゃない。彼は力づくで何かをやるような人ではない。彼はセックスが好きで、性欲が強く、女性が大好きで、だから結果としてちょっとやり過ぎることがあるのだと思う」と、DSKへの想いを含んだ言葉で語っている。

・・・というわけで、新たに登場したのは、元愛人。1997年ですから、もう14年前ですね。1年だけの付き合い。しかし、その付き合いは今振り返っても、身を焦がすほどの愛だったとか。いい思い出になっているのでしょうね。だからこそ、擁護する立場でマスコミのインタビューに答えているのだと思われます。

ただ、世の中には、利用できるものなら何でも利用して這い上がろう、有名になろうという人もいます。そうした人にとって、マスコミはまさに格好のスピーカー役を務めてくれます。マリー=ヴィクトリヌ・Mがそうだと決めつけるつもりはまったくありません。その根拠もありません。しかし一般的に、インタビューが掲載され、写真が表紙を飾り、話題を集めれば、そのうち、本の出版の話が来る(ゴーストライター付き)、あるいは写真集が出る・・・おっと、これは日本での一般論でしたね。失礼。

終わりの見えないDSK物語。次はどのような役者が登場するのでしょうか。楽しみです。