ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

セックス・スキャンダルの次は、金銭スキャンダルか・・・フランス人IMF専務理事。

2011-08-05 21:51:52 | 政治
5月に性的暴行などの疑いで逮捕され、IMF専務理事の座を去ったDSK(Dominique Strauss-Kahn)。その後任となったのが、クリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)。同じフランス人ですが、今度は女性だから、女性問題に巻き込まれる心配はない、と思っていたところ、もうひとつのよくある問題、そう金銭スキャンダルに巻き込まれることになってしまったようです。

もちろん、7月に就任したばかりのIMF専務理事としてではなく、フランス財務相当時の対応が問われることになりました。「金」と「女」には注意しろ、とは昔から政界などでよく言われることですが、フランスの政治家二人が、見事に巻き込まれてしまいました。

クリスティーヌ・ラガルドの関わったと言われる事件は、どのようなもので、その影響は・・・4日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています(日本など外国メディアの報道とは若干異なっています)。

8月4日、共和国法院(la Cour de justice de la République:閣僚在任中の犯罪を扱う機関)はIMF専務理事のクリスティーヌ・ラガルドに対し、彼女が財務相当時にタピ=クレディ・リヨネ事件(l’affaire Tapie-Crédit Lyonnais)に関して演じた役割について捜査を開始することを決定した。

破棄院(la Cour de cassation:日本の最高裁に相当)の検事長は、次のように詳細を語っている。「共和国法院は公金横領と文書偽造の共犯として捜査することになるだろう。IMF専務理事に対する捜査を開始する論告は数日以内に行われる。」 論告に続いて、共和国法院の3人の判事が予審を担当することになるが、結審するまでに数年かかると思われる。クリスティーヌ・ラガルドが訴訟の対象になるかならないかをその予審の結果が示すことになる。

決定された捜査内容は意外なものとなった。共和国法院は5月に検察当局から審議を付託されたのだが、当時、検察はクリスティーヌ・ラガルドの職権乱用を調べる捜査を始めるのが望ましいと考えていた。しかし、共和国法院が考えている疑惑はより重大だ。職権乱用罪なら禁錮5年および75,000ユーロ(約840万円)の罰金になるが、公金横領・文書偽造の共犯で有罪になれば禁錮10年と15万ユーロ(約1,680万円)の罰金が科される。

7月中旬にIMFの専務理事に指名されたクリスティーヌ・ラガルドは、1993年のアディダス社売却に関する係争(実業家のベルナール・タピと一時国有化されていた銀行・クレディ・リヨネとの間の争い。「1992年にタピは自身が株式の過半数を所持していたアディダス株を売却する際、クレディ・リヨネがアディダスを安値でタピから買い上げた後に、タピに融資金の返済を要求し破産させたことが不正であるとして、1995年に同銀行およびその債務整理機構を訴えた」(ウィキペディア)事件)において2007年にその法的手続きを止めさせたことが問題視されている。また、2008年、その係争の民事調停でベルナール・タピ(Bernard Tapie:実業家・歌手・政治家、サッカー・チーム、オリンピック・リヨネ元会長)に2億8,500万ユーロ(約320億円)を支払うという決定が出されたが、そのことに異議申し立てを行わなかったことも、問題視されている。

文書偽造共犯事件の箇条は明らかになっている。というのも、ベルナール・タピとクレディ・リヨネ(Le Crédit lyonnais:LCL、1863年にリヨンで設立され、今でも本店はリヨン。BNPパリバ、ソシエテ・ジェネラルとともに三大銀行といわれるが、現在は、クレディ・アグリコル・グループの傘下)との間の係争を解決すべき調停のある段階において示談契約書が書き換えられたのだが、その契約によりタピ夫妻に精神的損害への補償としてだけで4,500万ユーロ(約50億円)の支払いが命じられたのであり、その額は偽造を証拠立てるに十分なほどの異常さだと、司法関係者は指摘している。

クリスティーヌ・ラガルドの弁護士は、すぐさま告訴箇条に異議を申し立てた。「実際は、調停の示談の中で個人的損害という言葉を精神的損害と書き換えたのだが、クリスティ・ラガルドはそのことをまったく知らなかった。それなのに、どうしてこのようなことの共犯だなどと言えるのだろうか。しかも、そもそも文書偽造でもない。予定が途中で変更されただけでは、偽造とは呼べない。文書偽造とは、文書の信憑性を失わせるように書き換えることなのだ」と、前財務相の弁護を担当しているイヴ・ルピケ(Yves Repiquet)は反論している。

公金横領の共犯説に関しては、ルピケ弁護士は共和国法院の審理部の判断をまったく狂気の沙汰だと見做し、「あきれはててしまう。これでは、調停を有効だとしたすべての判断が怪しいものになってしまう」と述べ、争訟部(le Conseil d’Etat:国務院、参事院とも訳される、行政裁判の最高裁に当たる)への上訴も辞さずとほのめかしている。

また、ルピケ弁護士は、捜査はクリスティーヌ・ラガルドのIMF専務理事としての立場になんら影響しないと考えており、「こうした事情を十分に承知したうえで6月28日に後任専務理事の指名が行えるよう、彼女はIMF理事会に起こりうる状況について事前に十分に説明しておいた」とも述べている。そして、捜査の結果は公訴棄却の決定となるだろうと自信を見せている。

ルピケ弁護士は、また次のようにも語っている。最初の予審で起訴の棄却が決定されるわけではなく、また共和国法院の捜査開始決定は申し立てられた嫌疑が検証可能なことを意味しているにすぎない。しかもこの予審には我々サイドにとって明らかな利点がある。一握りの国会議員がクリスティーヌ・ラガルドに対して提起した不当な疑いが間違いなく解消されるだろう。

一方、IMFは、フランス国内での捜査が開始されようと、ラガルド専務理事に対する理事会メンバーの信頼に揺るぎはなく、彼女が専務理事としての職務を十分に果たすことに絶大なる信を置いているという声明を出している。また、こうした捜査の可能性については彼女を指名する前に十分議論しており、フランス司法当局が捜査中の件についてはこれ以上コメントすることはないと述べている。

・・・ということで多くのメディアが伝えている職権乱用より罪の重い公金横領・文書偽造の共犯として嫌疑をかけられているようです。

ベルナール・タピはサルコジ大統領支持者としても有名で、彼が受け取った巨額な賠償金はどこへ行ったのでしょう。納税額も大きかったようですが、それにしても大金。様々な仮定が建てられることと思います。何しろ、政治絡み。「カネ」との関係が切っても切れないのは、国を問わないようです。

政治とカネ。政治家とスキャンダル・・・解消の手立てはあるのでしょうか。政治家は、私腹を肥やしているのでしょうか。それとも、有権者の票をお金で買っているのでしょうか。もしそうだとすると、政治家からお金をもらって、喜んでいる有権者が多いということになってしまいます。

元から断たなきゃだめ、というコマーシャルがありました。元は、誰だ・・・