ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

左翼の風が吹けば、柔道家がポストを得る。

2011-09-30 21:22:44 | 政治
「風が吹けば、桶屋が儲かる」・・・強い風が吹くと土ぼこりが舞い、それが目に入って視力を失う人が出る。昔の盲人の職といえば、三味線弾き。三味線の胴の素材は、猫の皮。従って盲人が増えれば、猫の数が減る。すると増えるのが、ネズミ。ネズミは桶などをかじる。そこで、桶の注文が増え、桶屋が儲かる・・・十返舎一九の『東海道中膝栗毛』などに登場した際には、「桶」でなく「箱」だったようですが、昔から使われる諺ですね。

まるでこの日本の諺のように大臣のポストを手に入れた人が、フランスにいます。もちろん、フランスですから、日本の諺のようには言わず、“l’effet papillon”とでも言うべきなのでしょうか。もとは英語の“butterfly effect”(バタフライ効果)。「ブラジルでの蝶の羽ばたきが、テキサスでトルネードを引き起こす」に由来しています。無視できるような小さな差が、やがては大きな差となる・・・カオス理論としてよく引用されます。日本の風吹けばとは、意味するところがちょっと違うような気もしますが、「カオス」ということで、細かい点は気にせず、フランス版「風吹けば」とさせてもらいましょう。

さて、25日の上院選挙で左派が第五共和制になって初めて多数派を占めました。しかし、接戦。10月1日に投票が行われる上院議長選挙では、中道を巻き込んだ合従連衡の結果次第では、右派が議長のポストを死守する可能性も残されています。そこで、上院選に当選した現職大臣が、さっそく辞任し、議長選で1票を投じることになりました。

大臣と国会議員の兼職が、三権分立の立場から禁止されているフランスでは、国会議員に当選した大臣は、辞任して議員職に専念するか、大臣のポストに留まり、議員にはならないか、判断することになります(ただし、国会議員と地方議員との兼職は認められており、例えば下院議員と地方議会議長、あるいは下院議員と市長などを兼任している国会議員は多くいます)。1票でも右派票が欲しい与党上院議員団としては、大臣職を投げ出して、一日も早く上院議員になってほしい。そうした上院の願いを聞き届けた大臣が、さっそく一人出ました。

その大臣のポストは当然、補充される。そこで、お鉢が回ってきた幸運な人は、ダヴィッド・ドゥイエ(David Douillet)。さて、ドゥイエとは誰で、その就任の背景は・・・26日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

26日、上院議員に当選後、辞任を申し出たシャンタル・ジュアノ(Chantal Jouanno)の後任として、在外フランス人担当大臣だったダヴィッド・ドゥイエがスポーツ大臣に任命された。同じく上院議員に当選した国防大臣のジェラール・ロンゲ(Gérard Longuet)は、大臣職に留まり、また、上院選で敗れた都市大臣のモーリス・ルロワ(Maurice Leroy)も大臣のポストに留まる。なお、ダヴィッド・ドゥイエが占めていたポストの後任は今後決めることになる。このように、大統領府が発表した。

「首相からの申し出に従い、大統領はシャンタル・ジュアノをスポーツ大臣の職から解くことにした。大統領は、その後任にダヴィッド・ドゥイエを指名した」というのが、大統領府が公表した短いコミュニケの内容だ。26日朝、フィヨン(François Fillon)首相と会談した後、2010年11月からスポーツ大臣の職にあったシャンタル・ジュアノは、上院と選挙区であるパリに全力を傾けるため大臣職を辞すると述べていた。一方、ロレーヌ地域圏ムーズ県(la Meuse)から上院議員に当選したジェラール・ロンゲは、内閣に残りたいという気持ちを繰り返し述べている。

二度のオリンピック・チャンピオン(1996年のアトランタと2000年のシドニー)、四度の世界王者(93年、95年、97年。95年は95kgc超級と無差別級で優勝)という輝かしい経歴の柔道家、ダヴィッド・ドゥイエは、2009年にイヴリヌ県(Yvelines)から下院議員に当選し(与党・UMP所属)、今年6月に在外フランス人担当大臣として入閣を果たした。ルーアン出身、42歳のドゥイエの政界における出世は異例に早い。何しろ、UMPの執行部に加わったのは、わずか2年前でしかないのだから。オリンピックで2個の金メダルを取って引退したドゥイエは、(テレビ局Canal+のスポーツ・コンサルティングなど)メディアでの活躍で人気を博した。パリ市議選への立候補を依頼されたが、2001年、2008年ともに辞退し、代わりにユネスコの親善大使となった。

しかし、ドゥイエは頻繁に論争の的にもなった。2000年に出版した自伝“l’âme du conquérant”(勝者の魂)の中に書いたいくつかの表現、特に「私は女性を蔑視していると言われるが、男はみんなそうだ、オカマを除いては」(On dit que je suis misogyne. Mais tous les homes le sont. Sauf les tapettes.)という文章が、大スキャンダルとなった。

ドゥイエはまた、裁判での敗北も経験している。2000年、彼が大株主だった旅行代理店の倒産に関し、取り調べを受けた。この事件では、2002年、ジャック・シラクが大統領に再選された際の恩赦で助けられた。スポーツ界にもその恩恵が広げられたからだ。2008年には、彼が税金逃れをしていると非難した情報サイトを名誉棄損で訴えたが、その申請は却下されてしまった。

25日の上院議員選挙の結果、左派が177議席を占め、過半数を2議席上回った(定数が348議席なので、多数派になるには175議席必要になります)。大統領選挙まであと7カ月、この上院での敗北はサルコジ陣営に厳粛な警鐘となって響いた。26日朝、農相のブリューノ・ルメール(Bruno Le Maire)は、与党にとって真摯に受け止めるべき警告だと語った。

10月1日に上院議長選挙が行われることになっているが、議員の多数派は左派になったとはいえ、議長選の帰趨はまだ定まっていない。接戦になると言われる議長選に向けて、現職議長のジェラール・ラルシェール(Gérard Larcher)は、上院選に立候補した3人の閣僚(上記の、シャンタル・ジュアノ、ジェラール・ロンゲ、モーリス・ルロワ)に、もし当選したなら、議長選に投票するため、閣僚を辞職するよう依頼していたほどだ。

・・・ということで、接戦の上院議長戦を制するために、上院議員に当選した閣僚に間髪をいれず辞任をし、投票に加わるよう頼んでいた与党・UMPの上院議員団。それだけ、左派の勢いに押されているということなのでしょう。下院(国民議会)の議決が優先するので、政局にすぐに大きな影響が出ることはないだろうと言われていますが、上院の議長まで左派に握られてしまえば、政策決定が遅れたりといった影響も出てくることでしょう。そして、何よりも、大統領選への心理的影響が大きそうです。

こうした状況のお陰とも言えるように、柔道の元世界チャンピオンが大臣の椅子に座ることになりました。しかし、スポーツ大臣ですから、適任と言えば、適任ですね。しかも、このドゥイエ氏、2000年シドニー・オリンピックの100kg超級決勝では疑惑の判定で日本の篠原選手を下して優勝しています。何かを持っているのでしょうね。

そう言えば、日本でもスポーツ庁が平成25年度に新設される予定になっているようです。誰が長官に就任するのでしょうか。設立時の政権与党がどこになるかにもよりますが、オリンピックに出場した元アスリートなら、民主党では柔道の谷亮子、自民党にはスケートの橋本聖子、レスリングの馳浩、そしてクレー射撃の麻生太郎がいます。民主党には、プロゴルファーの父親もいますが・・・儲ける桶屋は誰になるのでしょうか。しかし、その前に、スポーツ庁が本当に設立されるのかどうか、これはブックメーカーの賭けの対象になってしまうような気がしなくもないのですが。さて、どうなりますか。

女性大統領誕生の夢が、また遠ざかる・・・社会党予備選。

2011-09-29 21:54:13 | 政治
イスラムの戒律に厳格なワッハーブ派が強い影響力を持つサウジアラビアでは、女性は運転してもいけない、外出には男性の同伴か許可が必要。違反しようものなら、むち打ちの刑。運転した咎で、実際にむち打ち10回の刑に処されそうになった女性は、将来的な女性参政権を認めた現国王の計らいで、恩赦になったようですが、他国の女性から見ればやりきれない現状にあるようです。

しかし、他方に目を転ずれば、政界トップに女性が就く国も多くなって来ています。ドイツのメルケル首相、オーストラリアのギラード首相、アルゼンチンのキルチネル大統領、スロバキアのラジチョヴァー首相、アイスランドのシグルザルドッティル首相など、国の舵取りをしている女性も多くなってきています。

日本では、優男の国というイメージがすっかり出来上がっているフランスですが、実際には、“machisme”(男性優位主義)がそこここに顔を出しますし、中には“misogyne”(女性蔑視的)としか言いようがない態度の人もいたりします。従ってというか、女性の大統領はまだ誕生していません。女性首相は、一人。日本人を「黄色いアリ」(fourmis jaunes)呼ばわりした、かの有名なクレソン女史(Edith Cresson)です。『ニューズウィーク』誌との対談では、「黄色いチビ」と呼んでいました。しかし、その人種差別的発言は、イギリス人にも向けられ、「イギリス男は、ゲイだ」と語ったとか。フランス中華思想に凝り固まった人なのでしょうね。

そのクレソン女史と同じ社会党から、ついに女性初のフランス大統領が誕生するかもしれない、という期待が盛り上がっていました。サルコジ大統領の支持率が低迷し、代わりに社会党支持率が増えている。その社会党第一書記は、女性のマルティーヌ・オブリ(Martine Aubry)。また、党の公認候補を選ぶ予備選への立候補を早々と表明したのは、前回、2007年の大統領選挙を社会党公認候補として戦ったセゴレーヌ・ロワイヤル(Ségolène Loyal)。2人の女性の戦いか・・・しかし、“machisme”の国の現実は、そう甘くはありません。

10月9日の予備選へ向けて、トップを走っているのは、党の第一書記としてマルティーヌ・オブリの前任者、かつ、セゴレーヌ・ロワイヤルとの間に4人の子供を儲けた前のパートナー、という立場のフランソワ・オランド(François Hollande)。9月下旬の世論調査でも、トップのフランソワ・オランドと2位以下との差はいっそう広がったそうです。その調査結果を、28日の『ル・モンド』が詳しく伝えています。

トップを走るフランソワ・オランドはマルティーヌ・オブリとの差をさらに広げた。3位のセゴレーヌ・ロワイヤルはアルノー・モントゥブール(Arnaud Montebourg)にその差を詰められている。5位のマヌエル・ヴァル(Emanuel Valles)は下から2位に変わりはないが、上位を追いあげている。最下位のジャン=ミシェル・バイレ(Jean-Michel Baylet)は立ち往生したままだ。2012年の大統領選へ向けて、社会党(PS)と左翼急進党(PRG)、両党共通の公認候補を選ぶ予備選まであと10日。“Le Monde”、“France Télévision”、“Radio France”の依頼により、調査会社Ipsos-Logica Business Consultingが行った調査は、上記のような概略を示している。実査は、電話による聞き取り調査で、21日から26日に行われ、対象者は4,742人。年齢・性別など、有権者数に比例した配分になっている。

8月下旬に行われた前回の調査では、予備選に投票すると答えた対象者のうち42%がフランソワ・オランド支持を表明し、31%がマルティーヌ・オブリへの支持を明らかにしていた。それから1カ月、オランドは2ポイント伸ばし44%、一方、オブリは4ポイント減らし27%の支持率となっている。

この変化はとてつもなく大きいわけではなく、オランドが支持率を伸ばし、オブリが支持を減らしたというだけのことだが、それでもやはりある一定の傾向は示しており、定性的な指標がそのことを物語っている。

1か月前、すでにオランドは大統領にふさわしい政治家はという問いに関して、オブリを上回っていた。今回も、次回の大統領選で勝てそうなのは誰かという質問に対し、予備選への投票予定者の55%がオランドと答え、オブリと答えたのは22%だった。オランドは勝てる候補者という点を常に強調していたが、それが功を奏したようだ。前回から7ポイント伸ばし、オブリは6ポイント減らしている。

マルティーヌ・オブリは、選挙戦のはじめから、二つの点に狙いを定めていた。それは、公約内容に見られる。彼女の案がオランド案よりも詳細まで詰めた内容であること、そしていっそう左翼の価値観に根を張った内容となっていること、という2点だ。しかし、世論調査によれば、この戦略は功を奏していない。1か月前と比べて、公約に関する評価で、彼女の提案はポイントを下げている。オランドよりも9ポイント後塵を拝しているのだ。左翼の価値観を実現してくれそうなのは誰かという質問では、今回もオランドを上回ったが、その差は縮まっている。

3位争いに関しては、3位のセゴレーヌ・ロワイヤルと4位のアルノー・モントゥブールの差が縮まっている。2人の発言内容はかなり似ている。経済面に関しては非常に左翼的だが、社会面では非常に共和的だ。1カ月前は、支持率でロワイヤルが13ポイント上回っていたが、今ではわずか3ポイントの差になっている。

予備選の候補者6人の中で、モントゥブールが最も支持率を伸ばした。逆にロワイヤルが最も評価を下げている。2人の3位争いは、上位2名による決選投票に大きな影響を及ぼすものと考えられる。ロワイヤルの伸び悩みは、オブリにとって良いニュースではなく、逆にモントゥブールの支持率アップはオランドの不安を少なくしてくれる。というのも、ロワイヤル支持者の半数が決選投票ではオブリに投票すると述べており、オランドへ投票するのは三分の一に過ぎず、一方、モントゥブール支持者ではオランドへの投票意向が半数で、オブリへの投票は三分の一に過ぎないという調査結果が出ているからだ。

マニュエル・ヴァルは、1カ月で支持率を倍増させたとはいえ、今でも下から2番目であることに変わりはない。5%以上の票を集めたのは、候補者のイメージについての質問だ。最下位のジャン=ミシェル・バイレも、1カ月前よりもイメージの上では良いスコアを得ている。下位3候補への共感は増えた一方、上位3候補へは増えてはいない。

8月末、予備選に投票すると答えた対象者のうち48%が投票する候補者を決めていると答えていたが、今回は54%だった。投票先はまだ最終的に決まってはいない層が半数近くいるということだ。予備選の広報活動については、満足いく結果が出た。投票意向者の77%が投票日を承知しており、64%が投票場所を知っている。

投票まで10日になっても、まだ半数の投票意向者が世論調査で答えた支持者から投票先を変える可能性がある。投票先がまだ最終的に決めた候補者ではないという回答者は、オランドへの支持者よりもロワイヤルやオブリへの支持者の間により多く見られる。選挙戦の最後10日でどう転ぶのか。

この点から、28日と10月5日に予定されているラジオやテレビを通しの候補者討論会がとても重要になってくる。しかし、500万人の視聴者をテレビの前に集めた9月15日の討論会ほどには盛り上がらないのではないだろうか。

・・・ということで、フランソワ・オランドが社会党と左翼急進党の統一公認候補となりそうな趨勢です。しかも、2位以下との差を着実に広げてきている。因みに、2位と3位の候補者が、女性。男女という性差を強調する必要はないのでしょうし、性による違いよりも候補者像によってたまたまこうした順位になっただけなのでしょうが、来年の大統領選挙、今のまま行けば、左派陣営が勝利するだろうと言われているだけに、女性大統領に二の足を踏む有権者もいるのではないかと、勝手に想像を膨らませてしまうわけです。

シモーヌ・ド・ボーヴォワール(Simone de Beauvoir)が『第二の性』(Le Deuxième Sexe)の中で、“On ne naît pas femme, on le devient.”(人は女に生まれるのではない、女になるのだ)と語って62年、フランスにまだ女性大統領は生まれないようです。誕生する日は来るのでしょうか。女性のアメリカ大統領は、そして、日本の女性首相は、はたして・・・

フランスが、ねじれてしまった・・・上院議員選挙。

2011-09-27 21:07:17 | 政治
別に、性格がねじれてしまったというわけではありません。ジャパングリッシュではない、本来の意味でのナイーブ(naive、仏語ではnaïf)、つまり「世間知らずな、うぶな」と海外で言われる日本人から見ると、ちょっとねじれている、屈折しているのではないかと思えることもあるフランス人ですが、今日の話題はそうした性格、国民性ではなく、政治。二院制議会において、それぞれの多数派が異なる、いわゆる「ねじれ国会」、日本では毎日のように耳にするコトバですが、この政界のねじれ現象が、フランスにも現れたという話です。

大統領と首相が左右の対立政党から出ていることは、今までもありました。“cohabitation”(コアビタシオン)・・・第五共和制下で、三度ありました。

① 1986-1988 社会党のミッテラン大統領(Francois Mitterrand)と右派(RPR)のシラク首相(Jacques Chirac)
② 1993-1995 社会党のミッテラン大統領と右派(UDF)のバラデュール首相(Edouard Balladur)
③ 1997-2002 右派のシラク大統領と社会党のリオネル・ジョスパン首相(Lionel Jospin)

しかし、25日に投開票が行われた上院議員選挙の結果、1958年からの第五共和制下で初めて左派が上院の過半数を占めることになりました。下院(国民議会)は大統領と同じで右派が多数派ですので、下院が右派、上院が左派というカタチでは、初めてのねじれ国会になります。

定数348議席、任期6年のフランス上院。3年ごとに選挙が行われ、今回は170が改選議席数。ちょうど半数でないあたりが、いかにもフランスらしいのですが、その上院議員選挙は、国民の直接選挙ではなく、下院議員や地方議員が投票権を持つ間接選挙。従って、民意が明確に示されたとは言えませんが、地方議員には無所属も多く、かなり国民の声が反映されていると言えるのではないでしょうか。大統領選を来春に控えた、この時期での選挙で左派が勝利した。その意味するところは、また、各党の反応は・・・25日の『ル・モンド』(電子版)が速報として伝えています。

9月25日の上院選挙での左派の勝利は、政治情勢を一変させてしまうことになる。実際の影響は、まだ具体的には見えてこないが、左派は多数を占める上院を利用して、サルコジ政権に対する反対姿勢を鮮明にし、自ら法案を提出することもでき、また、最終的には下院の決定が優先されるにせよ、政府提出の法案を修正させたりすることも、やろうと思えばできるようになる。しかも、上院議長は司法官最高評議会(Conseil supérieur de la magistrature:CSM)や憲法評議会(Conseil constitutionnel)の人事権を持ち、また、大統領に次ぐ第二位の序列で公式行事に出席することになる。

社会党のフランソワ・オランド(François Hollande:元第一書記)と緑の党のジャン=ヴァンサン・プラッセ(Jean-Vincent Placé)は、さっそく、「今夜、すでに選挙結果に基づく犠牲が出た。黄金律がそれだ」と述べている(黄金律:la règle d’or、つまり、財政赤字の解消へ向け、予算案に財政均衡化目標を盛り込むべきことを憲法に明文化すること)。この黄金律は、サルコジ大統領が議会で採決しようとしていたものだが、可決するには五分の三の賛成票が必要であり、上院で可決することはもはや手の届かないところへ行ってしまった。

社会党はまた、多数を占める上院の力を用いることにより、今話題の「カラチ事件」のような行政側に打撃となる事件の調査委員会活動を有利に運び、行政への影響力を強めることもできる。社会党の上院議員団長、ジャン=ピエール・ベル(Jean-Pierre Bel)は、「政治に停滞を及ぼそうとは思わないが、我々は、上院にその政治的役割のすべてを取り戻したいと願っている」と述べている。現在、政権与党・UMPの上院議員であるジャン=ピエール・ラファラン(Jean-Pierre Raffarin)元首相(在任期間は2002-2005)は、選挙の前に次のように語っていた。「上院で左派が多数派を占めることは、来年の大統領選へ向けて危険要因となる。来春の選挙までの政権運営を容易ならざるものにするからだ」。

海外県などの開票が終わらず、まだ最終的な開票状況にはなっていないが、AFP通信によると、議席数は非改選部分も含め、UMP(国民運動連合)が127議席、社会党(PS)122議席、右翼諸派が17議席、左翼諸派が8議席、エコロジーが10議席、フランス共産党(PCF)が21議席、MRC(共和国市民運動)が1議席、新中道(Nouveau Centre)が9議席、左翼急進党(Parti radical de gauche)10議席、MoDem(民主運動)が4議席、ヴァロワ急進党(Parti radical)が4議席、中道連盟7議席、MPF(フランス運動)1議席、現代左翼(Gauche moderne)1議席となっている。左右それぞれの陣営の議席数は、中立のMoDemを除いて、左派172議席、右派166議席となっている(338議席確定時点です)。

まだ最終議席数は確定していないが、「初めて上院で多数派が交代した。左派は175議席を獲得し、過半数を占めたことになる。変化が起きている」と、ジャン=ピエール・ベルは宣言している。

時間が経つにつれ、与党にもたらされるのは厳しい結果ばかりだった。都市大臣のモーリス・ルロワ(Maurice Leroy)が落選。パリ選挙区8番目、最後の椅子も左派にとられてしまった。パリ選挙区では、UMPの公認を得られないまま立候補したピエール・シャロン(Pierre Charon)がUMPの公認候補に勝利してしまった影響が大きい。その後も、厳しい結果が次々ともたらされた。UMPの上院議員団長、ジェラール・ラルシェールのお膝元である、パリ近郊イヴリヌ(Yvelines)県では左派が1議席増やした。また、Loiret、Pas-de-Calais、Hauts-de-Seine、Val-de-Marne、Oise、Manche、Pyrénées-Orientalesなどの県では、左派が大きく議席数を伸ばした。

「左派にとっては歴史的勝利であり、UMPにとっては疑いのない制裁となった」。社会党の臨時第一書記(第一書記のマルチーヌ・オブリーが大統領選の予備選挙に立候補したことによる措置)、アルレム・デジール(Harlem Désir)は、予備選の候補者、マルチーヌ・オブリーとフランソワ・オランドに少し遅れて上院に到着し、上記のように述べている。

大統領府は、敗北を認めたが、UMPは上院議長のポストを諦めてはいない。ジェラール・ラルシェールは、引き続き上院議長のポストに就きたいと、次のように述べている。「昨日までの上院多数派は政権与党としての姿をしていなかった。今日からは、社会党の顔をするのだろうか。新たな上院を作らなければならない。上院議員は、二つのプロジェクト、二つのビジョン、二人の候補者から、どちらかを選択しなければならない」。つまり、ラルシェールは急進党や左翼諸派の議員を説得し、自分に投票させようとしているのだ。上院議長の選挙は、10月1日に予定されている。

リュクサンブール宮(上院)は、かつてない状況を呈するかもしれない。右派の議長と多数派を占める左派。社会党は、そうはさせじと、警戒を促した。「多数派は明確になった。我々の票をくすねるようなごまかしがあってはいけない。そんなことが起きたら、上院は収拾がつかなくなる」というメッセージを、社会党の選対委員、クリストフ・ボルゲル(Christophe Borgel)が発した。

UMP側からは、ジャン=フランソワ・コペ(Jean-François Copé)幹事長が、「今回の敗北にはがっかりしているが、驚きというわけではない。2004年以降、地方選で敗れてきたからだ(間接選挙である上院選の有権者、その95%が地方議員と言われています)。上院の多数派が明らかになるのは、議長選においてだ。そして、本当の戦いは、来年の大統領選と下院議員選挙だ」と語っている。フィヨン(François Fillon)首相は、野党が大きく票を伸ばしたことを認めた上で、「その一因は、与党側の分裂選挙にあり、真の国民の審判は来春下される。今夜、その戦いの火ぶたが切って落とされた」と、コミュニケを通して発表している。

ヨーロッパ・エコロジー緑の党は、4議席から10議席に大躍進した。書記長のセシル・デュフロ(Cécile Duflot)は、「第五共和制にとって歴史的瞬間だ。フランス議会において、環境党グループ(院内会派)が初めて形成される可能性がある。しかし、そのためには、上院規則を変更する必要があるが」と語っている。現行規則では、15名以上の議員がいないと、院内会派は作れない。ヨーロッパ・エコロジー緑の党は、その上限を10議席に引き下げようとしており、社会党との間では、すでに合意している。ヨーロッパ・エコロジー緑の党からの初選出組では、イル・ド・フランス地域圏議会副議長のジャン=ヴァンサン・プラッセがエソヌ(Essonne)県から当選している。

フランス共産党、共和国市民運動、左翼党が作る院内会派にとっては、選挙結果はある程度予想されたものだ。選挙前には3党合計で18議席だったが、3議席減らした。共産党はセーヌ・サン・ドニ県とエソヌ県で2議席失ったものの、モルビアン県で1議席獲得している。左翼党は現有議席を失ったが、社会党、左翼諸派と選挙協力を行った候補が当選している。

フランス共産党書記長のピエール・ロラン(Pierre Laurent)は、「右派の城塞は陥落した。現政権へ下された紛れもない制裁だ。選挙結果は、地方の民主主義へ繰り返し攻撃を行ってきた現政権に対する地方議員の怒りの表れだ」と語っている。しかし、ロラン自身は、パリ選挙区から立候補していたが、上院入りすることはできなかった。

・・・ということなのですが、日本時間27日、判明した最終結果は、『ル・モンド』によれば、左派178議席、右派170議席、テレビ局・France2によれば、左派177議席、右派148議席、中道23議席、というものでした。

少数政党が多く、しかも、中道的立場の政党も多い。左派に入れるのか、右派にカウントするのか、フランスのメディアも戸惑うようなケースがあるのでしょうね。そのため、上記2メディアの集計結果の違いになっているものと思われます。

そうした差はあるものの、左派が多数派となったことは確かなようです。しかし、議長選挙において、中間各党が左右のどちらに就くのか。それによっては、「第五共和制下、初めて左派が多数を占める上院」も、一瞬の夢で終わってしまうかもしれません。10月1日の投票結果が、待たれます。

2002年にパキスタンで起きた自爆テロ、今、フランス政界を激しく揺さぶる。

2011-09-25 22:18:14 | 政治
今、フランス政界を大きく揺さぶっている事件、「カラチ事件」(l’affaire Karachi)。2002年5月8日、パキスタンの都市・カラチ(アラビア海に面したパキスタン最大の都市、人口1,300万人ほど)で爆発事件がありました。14人が死亡したのですが、そのうち11人がフランス人。パキスタンで、なぜ? 

パキスタン当局は、自爆テロとして処理。しかし、9年以上経って、今、サルコジ大統領まで巻き込むのではないかと言われる、一大政治スキャンダルに発展しています。いったい、どのような経過を辿って、そうなったのでしょうか・・・21日の『ル・モンド』(電子版)がまとめてくれています。

ニコラ・バジール(Nicolas Bazire)とティエリ・ゴベール(Thierry Gaubert)に次いで、フランス司法当局はニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)にさらに一歩近づいたようだ。サルコジ大統領の第一の側近であるブリース・オルトフー(Brice Hortefeux:前内相)が、23日、事件に直接関わっていたことが明らかになったからだ。フランス政界の上層部を巻き込んでいる事件、その発端は2002年にカラチで起きたテロに遡る。

エドゥアール・バラデュール(Edouard Balladur)が首相だった1993年から95年にかけて、バラデュール元首相はパキスタンとサウジアラビアへの武器売却でフランスが契約を勝ち取れるよう、合法的なコミッション制度を設けた。仲介者たちは2カ国へのロビー活動の見返りに報酬を得たのだが、その仲介者の一人がレバノン人のZiad Takieddineだ。今までのところ、その活動に違法性は見つかっていない。しかし、司法当局は、仲介者たちに支払われたコミッションの一部が、1995年の大統領選におけるバラデュール陣営の選挙資金とすべく、違法にバラデュール元首相の元に還元されたのではないかと疑っている。これが今、話題の“rétrocommissions”(見返りコミッション)だ。1995年の大統領選挙で勝利したジャック・シラク(Jacques Chirac)は、就任するや、政敵であるバラデュール陣営の資金の出所を抑えるため、このコミッション制度を廃止した。

2002年5月8日、パキスタンのカラチで自爆テロが起き、フランス人11人を含む14人が犠牲となった。11人のフランス人は、フランス海軍の造船局に勤めていた。パキスタン司法当局は、テロリスト・グループによる事件として処理したが、フランス司法当局は約束されていたコミッションを受け取れなかったパキスタン上層部による復讐だったのではないかという仮説を立てている。

事件の資金面での情報を握っているのではないかと見られるZiad Takieddineが、今年9月14日、公金横領の共犯罪と横領された公金の隠匿罪で、取り調べを受けた。

今日の関心は、テロが復讐によるものだったかどうかよりも、バラデュール陣営の選挙資金を解明することに移っている。元首相は、次第に不正の影を濃くしてきている。元首相の選挙資金会計報告が当時、憲法評議会によって承認されたとはいえ、いくつもの証言が不正、特に出所が不明な巨額な現金について物語っている。この夏の盛り、選挙資金は当時の首相府によってもたらされた秘密資金だったという見解を否定する証言が飛び出した。この証言はもうひとつの可能性、つまり、選挙資金は見返りコミッションだったという仮説を裏付けることになった。

今、この事件が大きな波紋を投げかけているのは、ルノー・ファン・リュインベク(Renaud Van Ruymbeke)判事が、新たに得られた証言をもとに一連の取り調べを行うことにしたからだ。仲介者だったTakieddineがまず14日に取り調べを受け、21日には、サルコジ大統領のヌイイ市長および予算相時代の側近だったティエリ・ゴベールが横領した公金の隠匿罪で取り調べを受けた。そして翌22日には、第三の男が公金横領の疑いで取り調べられた。それが、バラデュール内閣の官房長だったニコラ・バジールだ。

事件は、大統領府へ近づいたのだが、それは、バジール、ゴベール両氏がニコラ・サルコジに近い、あるいは近かったというだけでなく、サルコジ大統領自身、当時、バラデュール首相の報道官を務めていたからだ。サルコジ大統領は疑われる闇資金について一切知らなかった、ということを信じるには無理がある。カラチでのテロ事件による被害者家族の弁護を担当しているモーリス弁護士は、「事件はニコラ・サルコジの責任の方へと向かっているのであり、彼が現在、大統領でなかったなら、必ずや取り調べを受けていただろうということは、言うまでもなく確かなことだ」と語っている。

ニコラ・バジールは現在、“LVMH”のホールディング・カンパニーの経営にあたっており、役員会に席を占めている。また彼は、ニコラ・サルコジとカーラ・ブルーニの結婚の立会人になっていた。それ以前に、ニコラ・バジールは、バラデュール内閣の官房長を務め、1995年の大統領選でバラデュール陣営を取り仕切ったことで良く知られていた。

1995年に放送されたテレビ局・France2のレポートには、ニコラ・サルコジとニコラ・バジールがバラデュール陣営の指揮をとっている様子が映っている。一方、ティエリ・ゴベールは、ニコラ・サルコジが予算相当時、その大臣副官房長を務めていた。また、ヌイイ市長当時は、腹心の一人だった。しかし、1990年代の終わり頃、ニコラ・サルコジと距離を置くようになったが、今でもブリース・オルトフーとは非常に近い関係を保っている。週刊誌“le Nouvel Obserbateur”によれば、ティエリ・ゴベールの元妻であり(離婚調停中とも言われています)、社交界の花形でもある、旧ユーゴスラビア王室に繋がるエレーヌ(princesse Hélène de Yougoslavie)は、取調官に対して、ゴベールが1994年から95年にかけて、札束がずっしりと詰まったカバンを受け取りに、仲介者のZiad Takieddineを伴ってスイスへ行ったことを語ったようだ。

バジール、ゴベール両氏の取り調べに、大統領府は素早く、そして激しい反応を示した。中傷と政治屋による駆け引きだと非難するとともに、サルコジ大統領の名前はいかなる司法資料にも登場しておらず、証人としても関係した人物としても名前を挙げられていないと強調した。しかし、どうして大統領府は司法の資料を見ることなしにそう断言できるのだろうか。大統領にしろ大統領府にしろ、損害賠償請求人ではなく、従って進行中の予審における資料を閲覧できる根拠はどこにもない。もし見ていたとしたら、三権分立の原則が問題となる。しかも、大統領府が公表したコミュニケは事実に反する事柄を含んでいる。実際には、捜査資料にサルコジ大統領の名前が登場し、その名は事件の中で幾度となく引用されている。

そして、今、新たな中心人物が登場した。ブリース・オルトフーだ。23日に『ル・モンド』が暴露した情報によれば、オルトフーは9月14日にティエリ・ゴベールに電話をかけ、彼の妻・エレーヌが、「カラチ事件」と言われる一連の出来事の予審を担当している判事に、かなり多くのことをしゃべってしまったようだと伝えた。ファン・リュインベク判事は、エレーヌの証言をできる限り長く隠しておきたかったのだが、オルトフー氏はすでに多くのことを知ってしまっている。そして、オルトフー前内相は、予審の機密保持を無視し、友人に彼の妻が取り調べを受けたことを伝えたのだった。

・・・ということで、2002年5月にカラチで起きたテロは、9年半近く経って、フランス政界を揺さぶり、司法の捜査の手は来年に大統領選挙を控えるサルコジ大統領の周辺に迫っています。

なお、見返りコミッション、つまりリベートとしてバラデュール元首相側に渡った金額は、24日の毎日新聞(電子版)によると、100万ユーロ(約1億400万円)以上になるそうです。

大統領選へ向けてトップを走っていた社会党のDSK(Dominique Strauss-Kahn)が女性問題で党の公認候補を選ぶ予備選にすら立候補できなくなりましたが、今度は、与党・UMP(国民運動連合)の候補者となる現職のサルコジ大統領周辺に金銭疑惑が・・・カネと女です。

リベートや裏工作資金の絡む事件・・・造船疑獄やロッキード事件(田中元首相が受収した金額は5億円と言われています)など、日本の政治史に連綿と続いているようですが、何も日本の専売特許ではなく、フランス政界にもあるようです。政治にはどうしてもカネがかかる。それも表に出せないカネが必要になる。人間は、カネで動く動物なのでしょうか。カネさえ包めば、票になる。買われた票で、世界は動いているのでしょうか。

フランスよ、お前もか、という気もしますが、それが現実なのでしょう。しっかり、両目を開けて、見詰めねばなりません。

OECDからフランスへ、教員給与に関する三つのレッスン。

2011-09-24 22:01:05 | 社会
「経済協力開発機構」というよりも、“OECD”(Orgaization for Economic Co-operation)の方が日本でも通りがよくなっていますね。1961年に設立された国際機関で、経済成長、開発、貿易などについて協議し、国際経済全般にわたって広く貢献することを目的としています。

設立当初は欧米+トルコの24カ国がメンバーでしたが、今日では34カ国に増えています。経済発展した国々が加盟するため、「先進国クラブ」とも呼ばれています。日本が加盟したのは、1964年。昭和39年ですから、東京オリンピックの開催された年(このへんの年代、何ら確認することなく、すぐ思い出せるのは、50代以上でしょうか。昭和は遠くなりにけり、ですね)。経済的に先進国として認められた年だったのでしょうね。その後、アジアからは、1996年に韓国が加盟しています。

このOECD、フランス語では、例によって語順が異なり、“OCDE”(Organisation de coopération et de développement économique)となります。パリに本部を置くこの国際機関は、国際経済に寄与すべく、様々な調査を行い、その結果を公表する、という活動も行っています。その調査の一つに、教員給与の国際比較があります。もちろん、国同士の比較だけでなく、時系列的な比較もできるようになっています。

小学校から高校までの教員給与。加盟34カ国の中で、どのような差があり、それぞれの国にどのような特徴があるのでしょうか。調査結果を、フランスにスポットを当てて、13日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

OCDEは、例年行っている年次報告、“Regard sur l’éducation”(教育への視点)を13日に公表したが、その中で教員給与について詳細に取り扱っている。フランスでは来年の大統領選へ向けた前哨戦で、教員給与の問題がメインテーマの一つになろうとしているというタイミングで発表されたことになる。右派にとっても、左派においても、教員給与の再評価が課題となっており、OCDEのデータはその論戦を過熱させることになる。

<OCDEからのレッスン. 1>

「フランスにおける小学校、中学校の教員給与の平均は、OCDE加盟34カ国の平均を下回っている。新任の教師の場合も、15年の経験を持つ教師の場合も、状況は同じだ。退職直前の給与だけは、OCDE平均を少し上回っている」と、OCDEのアナリストであるエリック・シャルボニエ(Eric Charbonnier)は語っている。

15年の経験を持つ教員の基本給(le salaire statutaire)、つまりボーナスや残業代を除いた給与に基づく2009年の年収は、小学校教師の場合、フランスでは24,422ユーロ(約254万円:1ユーロ=104円換算)だったのに対し、OCDE加盟国平均は28,507ユーロ(約296万円)だった。中学校教師の場合は、フランスの26,267ユーロ(約273万円)に対し、30,549ユーロ(約318万円)。高校では、フランスの教師が26,484ユーロ(約275万円)だったのに対し、加盟国平均では32,030ユーロ(約333万円)となっている。

OCDEの調査では含まれていないが、より正確を期すには、基本給にボーナスと残業料を付け加える必要がある。ボーナスは、基本給のおよそ10%程度になるのが一般的だ。

<OCDEからのレッスン.2>

「1995年以降、OCDE加盟34カ国のうち、3分の2ほどの国々では教員給与が上昇しているが、フランスではそうなっていない」と、エリック・シャルボニエは説明している。最も大きく上昇したのは、エストニア、チェコ、トルコの3カ国だ。その上昇率は50%を超えている。上昇傾向を示さなかった国々は、オーストラリア、フランス、日本、スイスなどだ。

2005年の給与を基準値として100とした場合、インフレ分を調整した教員給与は、フランスにおいては減少していることが分かる。小学校教師の場合、1995年の指標は107だったが、2005年の100をはさんで、2009年に95と、減少を続けていることが分かる。同じように、中学校教師では、109(1995年)、100(2005年、)95(2009年)。高校教師では、108(1995年)、100(2005年)、95(2009年)と、いずれも減少している。一方、OCDE加盟国平均では、小学校、中学校、高校ともに、2005年の100に対し、2009年では107と上昇している。

OCDEのデータは、2011年秋の新学年からリュック・シャテル(Luc Chatel)国民教育相が導入した教員初期給与の改定が反映されていない。しかし、給与改定と言っても、改善されるのは採用後8年間だけで、その後はベースアップも急激に縮小される。データに含まれないもう1点、残業代だが、フランスの全教員合計で15億ユーロ(約1,560億円)に達している。しかし、教員間で、非常なアンバランスが見られる。残業を強いられている教師もいれば、残業がしたくてもない教師もいる。こうした勘案されていないデータ・状況があるとはいえ、OCDEの調査結果が無効だというわけではない。

<OCDEからのレッスン.3>

OCDE加盟のほとんどの国で、国民一人当たりのGDP(le PIB par habitant)に占める教育費の割合は、2000年から2009年にかけて減少している。最も大きく減少した国々は、オーストラリア、韓国、フランス、日本、スイスだ。しかし、これらの国々のうち、オーストラリアとフランス以外は、それでも額としてはOECD全加盟国平均を上回っている。逆に、増加した国は、デンマーク、ポルトガル、チェコの3カ国だ。

・・・ということで、フランスでは、教員給与が減少。今年、若干のテコ入れをしたものの、他の先進国に比べると、低いレベルに留まっているようです。小・中学校だけでなく、アグレガシオン(agrégation:1級教員資格、あるいは教授資格とも訳されています)など、難関な資格を得て高校の教壇に立っても、給与面で報われることは少ない。これで、教師の質は保たれるのでしょうか。

フランスより少しはましとは言え、日本も同じ問題を抱えているようです。「人は城、人は石垣」・・・武田信玄が言ったとも伝えられていますが、基本は、人間。特に天然資源に恵まれていない日本では、人的資源が国の礎とも言われていました。しかし、今日では、どうでしょう。業種によっては、人件費どころか、生産コストとして計算されている給与もあります。

また、教員を取り囲む環境も、荒れる学校、モンスター・ペアレントと、困難さを増しています。子供たちの教育という、国の将来を左右しかねない事業を担う教員の質を上げる一要素として、その給与を考えることも必要なのではないでしょうか。ただし、日本の場合、さまざまな残業が多く、その内容の検討は必要かもしれないですが。

トロイ・デービスを知っていますか・・・フランス人が大きな関心を寄せたアメリカ人。

2011-09-23 21:17:57 | 社会
アメリカ南部において、今なお色濃く残る黒人への人種差別。古くは、1967年製作の映画、『夜の大捜査線』(“In the Heart of the Night”:第40回アカデミー賞の作品賞、主演男優賞(ロッド・スタイガー)、脚本賞など5部門を受賞)にも、差別の実態が描かれています。シドニー・ポワチエ(Sydney Poitier)の演技が今でも脳裏に蘇ります。警察や司法の場でさえ、差別が優先されてしまう。正義や平等など、存在しないに等しい。

その伝統が、21世紀の今も息づいている。そう思わずにいられない死刑執行がディープ・サウス、ジョージア州で行われました。

その死刑囚の名は、トロイ・デービス(Troy Davis)。1989年8月、ファースト・フード店の駐車場で、非番だった白人警官を射殺した疑いで逮捕され、本人は一貫して無罪を主張していましたが、死刑判決を受けてしまいました。物的証拠もなく、あいまいな証言に基づく判決に、アムネスティ・インターナショナル(100万を超える署名を集めました。うち日本支部からは1,959人分の署名)をはじめ多くの団体が、そして世界中の人々が助命嘆願を行ったにもかかわらず、アメリカは死刑執行を認めました。執行されたのは、アメリカ東部時間、21日深夜のことでした。

人権の本場・フランスでは、刑の停止請求などの段階から、大きな関心を集め、21日には、パリで死刑執行に対する反対集会も開かれました。その刑の執行を、22日の『ル・モンド』(電子版)は、次のように伝えています。

多くの反対運動にもかかわらず、トニー・デービスに奇跡は起きなかった。彼がアメリカ東部時間23時8分に、薬物注射により死刑執行されたと、ジョージア州ジャクソンの刑務所が発表した。

刑の執行直前、この42歳のアフリカ系アメリカ人は、1991年に有罪判決を受けた白人警官殺害に自分は全く関わっていないと繰り返し述べた。刑の執行に、犠牲者の家族と共に立ち会った現地のジャーナリストによると、「自分の犯した犯罪ではない。自分は武器を持っていなかったのだから」と、トロイ・デービスは語ったそうだ。「自分の命を奪おうとしている人々に、神のご加護を」と、デービスは付け加えた。ジャクソン市にある刑務所の周辺に集まったデモ参加者たちは、刑の執行停止を願っていた。

デモ参加者たちは、「お願いだから、トロイ・デービスを死なせないで」とか、「私がトロイ・デービスだ」などと口々に叫んだ。デモは21日の午後早くから始まったが、周囲を多くの警官に取り囲まれ、少なくとも2人が逮捕された。

当初は19時とされていた刑の執行は、連邦最高裁の最終決定が出るのを待って4時間延期されたが、最終的に執行の許可が出された。刑の執行開始から15分ほどでデービスの死が確認された。刑務所前に詰めかけた数百人のデモ参加者は、司法の最高機関による執行停止という、ありえそうもない決定に一縷の望みをつないでいただけに、刑が執行されたという知らせにすっかり意気消沈してしまった。

フランス政府は、すぐさま遺憾の意を表明した。「寛大な処分を求めた多くの声が聞き届けられなかったことを非常に残念に思う」というコミュニケを外務省が発表した。

1989年にサバナの駐車場で警官、マーク・マクフェイル(Mark MacPhail)が銃で殺された事件で死刑の判決を受けたトロイ・デービスは、その有罪判決に疑いをはさむ司法関係の働きかけにより、すでに3度、刑の執行を延期されてきた。公判では、9人の目撃者が発砲したのはトロイ・デービスだと証言したが、犯行に使われた凶器は発見されず、いかなる指紋やDNA(仏語ではADN)も採取されなかった。しかもその後、9人のうち7人の証人が自らの証言を取り消し、数人は警察によってデービスを犯人にするよう強制されたと語っている。

トロイ・デービスの弁護人は、デービスの無罪を証明する新たな証拠があるとして、刑の執行を延期するよう嘆願していたが、その最後の努力に連邦最高裁はあっさりとけりをつけた。ブライアン・ケイマー(Brian Kammer)弁護士が21日朝に提出した請願書は、殺された警官の検視を行った監察医の報告に誤りがあると訴えていた。しかし、この請願は、郡裁判所、次いでジョージア州最高裁、そして連邦最高裁で却下されてしまった。前夜、ジョージア州の恩赦仮釈放委員会(le Commité des grâces de Géorgie)が嘆願を棄却しており、刑の執行への道筋はすでに付けられていた。その決定の後、トロイ・デービスは20年来過ごしてきた刑務所内から支援者に向けて、彼の死によって正義の戦いが終わるわけではない、というメッセージを発した。

オバマ大統領は、21日夕方、介入する意図のないことを表明した。ホワイト・ハウスのカーニー(Jay Carney)報道官は、今回のような特有な事件に大統領が関与することはないと、語っている。CNNのインタビューに、殺された警官の母親は、息子の死以来、味わってきた地獄の苦しみの後で、トロイ・デービスの刑の執行が安堵と安寧をもたらすよう願っていると答えた。

トロイ・デービスへはジミー・カーター元大統領(ジョージア州出身)やベネディクト16世(Benoît XVI)、女優のスーザン・サランドン(Susan Sarandon)などからの支援が寄せられ、また数百の支援デモが世界各地で行われた。『ニューヨーク・タイムズ』は、デービス事件における調書や証拠には多くの誤りがあると批判するとともに、今回の件によって死刑の残酷さが改めて示されると指摘していた。

トロイ・デービスの死刑執行の数時間前、人種差別による殺人罪で死刑判決を受けていたクー・クラックス・クラン(Ku Klux Klan:KKK:白人至上主義の秘密結社)のメンバー、44歳のローレンス・ブリュワー(Lawrence Brewer)の刑がテキサス州で執行された。アメリカでは2010年、年間で46件の死刑が執行されている。

・・・ということで、アメリカ国内はもちろん、世界の多くの国々から寄せられた批判、嘆願にもかかわらず、トロイ・デービスは死刑に処されてしまいました。事件自体は、殺されたのが白人の警官、容疑者は黒人、場所はディープ・サウスのジョージア。どうしても、黒人の誰かを死刑にしないと気が済まない・・・

同じ日に、KKKのメンバーが人種差別による殺人罪で死刑になったという話題が、アメリカの良心を少しは語っているようです。しかし、それでも、隠しようのないほどの人種差別の意識。インディアンやインディオなどいわゆる先住民を大量に虐殺し、不足した労働力を補うべく、アフリカから労働力を奴隷として輸入した歴史。その歴史そのままに今日でも人種による蔑視を改めようとしない人々。皮膚の色が違うことだけで、差別してしまう・・・

トロイ・デービスへの支援を表明していたフランス人とフランスのメディア。しかし、彼の死から1日と経っていない22日・・・

 パリ近郊モーの警察裁判所で22日、顔全体を覆う服装で市役所を訪れて検挙されたイスラム系女性2人に対する公判が行われ、被告にそれぞれ120ユーロ(約1万2300円)と80ユーロの罰金刑が言い渡された。仏メディアが伝えた。
 フランスで4月、公共の場所で全身を覆う衣装の着用を禁じる法律が欧州の国レベルで初めて施行されて以降、裁判で判決が言い渡されたのは初めて。2人は判決を不服として控訴する意向を示している。 
(9月23日:時事)

宗教、習慣の違いを、法律で取り締まろうとするフランス。死刑と罰金では話が違う、という意見もあるかもしれませんが、根っこは同じ。異なるものへの、不寛容。

他国の問題ははっきり見えるのに、自国の課題は見えにくい・・・「他国」を「他人」に、「自国」を「自分」に置き換えれば・・・自戒です。

フランス国民、豹変す・・・これ以上のギリシャ支援にはNON!

2011-09-22 20:19:17 | 社会
ヨーロッパの財政危機、特にギリシャ問題は世界に、そして歴史的円高や新興国の成長鈍化による輸出減少というカタチで、日本にも大きな影を落としています。

ギリシャをどのように救うのか・・・欧州金融安定ファシリティ(EFSF=European Financial Stability Facility:仏語ではFESF=Fonds européen de stabilité financière)の拡充が必要だと言われていますが、ドイツ国民が反対。これ以上、自分たちの税金をギリシャ支援に回してほしくない!

分かるような気がします。ギリシャ国債のデフォルト(債務不履行)が危惧されている背景の一つに、ギリシャの徴税の非効率さ、つまり、脱税の多さがあります。以前、ドキュメンタリー番組で観ましたが、開業医や法律事務所を経営している弁護士が非課税扱い! 農家も、東欧からの出稼ぎ労働者を安く雇って、自分たちは日がな一日カフェでコーヒーやワインを飲んでは世間話。それでいて、これまた非課税。そして、インタビューに答えて曰く、自分たちギリシャ人は頭が良いから、このように楽して良い暮らしができるのだ!!  もちろん、公務員の数の多さと言ったら、改めて言うまでもありません。

こうした国、国民を救うために、自分たちが額に汗して働き、納めた税金を使うのは止めてくれ! ドイツ国民の気持は、良く分かります。エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)による家族型の分類(『世界の多様性』・“La Diversité du monde”、日本社会とドイツ社会は同じ直系家族・la famille soucheに分類されています)を持ち出すまでもなく、ドイツ人と日本人には近い所があるのですから。例えば、サッカー。どんなに日本人選手がスペインやイタリアのサッカーに憧れようと、日本人選手のよさを評価してくれているのはドイツ人監督たち。典型的なのが、現VfLヴォルフスブルク監督のフェリックス・マガト。長谷部を育て、シャルケ04では内田を積極的に使いました。日本人選手の良さは、そのテクニック、走力、そしてなかんずくその規律性だそうです。

納税逃れをする他国民のつけを、同じ通貨圏だからとはいえ、自分たちが尻拭いする。しかも、最も重い負担になる・・・これでは、黙っていられませんね。しかも、ギリシャの次には、同じような南欧の国々、イタリア、スペイン、ポルトガルが続いているわけですから。

因みに、欧州金融安定ファシリティへの国別保証負担額(2010年11月現在)は、
ドイツ :27.13%
フランス:20.38%
イタリア:17.91%
スペイン:11.90%
オランダ: 5.71%
などとなっています。

これ以上のギリシャへの支援は止めてほしい・・・こうした声が、ドイツ以外からも聞こえています。例えば、フィンランド政府は、ギリシャ政府に担保を求めましたが、その背景にはフィンランド国民の声があったのではないかと思われます。

そして、ギリシャ第2次支援に反対する声が、フランスでも上がっています。どのような声で、どのような大きさなのでしょうか・・・17日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

フランス人の多く(68%)は、ギリシャ支援としてフランスが150億ユーロ(約1兆5,600万円:ユーロ圏全体では公的支援も含め総額1,590億ユーロ)の追加支援を行うことに反対している。地域日刊紙“Ouest-France”の依頼に基づき、調査会社“Ifop”が行った調査(9月13日から15日に、ネット上で、18歳以上を対象に実施。1,009人が回答)がそういう結果を示している。

絶対反対と答えたのが30%、どちらかというと反対が38%だったのに対し、どちらかといえば賛成は32%、絶対賛成はわずか5%だった。左派支持者にはギリシャ第2次支援を容認する層が42%いるが、右派支持者では30%。一方、極右政党・国民戦線(Front national:FN)支持者では、90%が反対している。

しかし、ギリシャ危機の影響については、圧倒的多数(84%)が、ギリシャ国債への支援がなければ、ユーロ圏の問題は危機的なレベルにまで達するだろう、と予想している。また、87%の人たちが、ギリシャへ支援したとしても、その額は決して戻ってこないだろうと考えている。

Ifopは、2010年5月には3分の2のフランス人がギリシャ危機に備えて、ヨーロッパの連帯を表すためにフランスが支援することに賛成だと述べていたことと比較し、フランス世論の急変ぶりを指摘している。2010年12月には、69%のフランス人がギリシャとアイルランドへの支援を支持していた。そして今年の6月でも、59%がギリシャ支援に賛同をしていたのだが・・・

・・・ということで、今年の6月頃までは、ギリシャ支援に好意的だったフランス国民が、豹変。今では、68%が反対を表明しています。同じ調査会社・Ifopの調査による変化だそうですから、調査手法による変動幅はそれほど大きくないものと思われます。

では、どうしてこうも急変したのでしょうか。思うに、ギリシャのデフォルトの可能性が高くなり、支援した額がギリシャから戻ってこないだろうという見解が大勢を占めるようになったことが背景にあるのではないでしょうか。ギリシャ支援に際し、サルコジ大統領は以前、確か、ギリシャへ支援をするが、その支援額には利息が付いて帰ってくる。投資するようなものだ、と言って、国民を納得させていたと思います。それが、元本さえ償還されない支援になりそうだ!

お金にはシビアなフランス人のことですから、このことがターニング・ポイントになったと考えることはあながち誤りではないのではないかと思っています。投資だっていうから賛成したのに、何、元本さえ戻って来ないだ・・・絶対、反対だ!

しかし、そのフランスもギリシャ危機の影響を受け始めています。ギリシャへのエクスポージャーが大きいとして、フランスの銀行、特に3行の格付けが見直されそうになっていますし、ドイツのシーメンスはその3行の中の1行から預金を引き出し、欧州中央銀行(ECB)に預け替えしたと言われています。

戻って来ないなら、支援などお断りだ。しかし、支援しないと、その「つけ」がブーメランのように戻って来て、自国の銀行が危ない。しかも、その影響は、銀行だけにとどまらないはず。さあ、どうする、フランス。知恵の見せ所だ!

しかし、対岸の火事と面白がってはいられないのが、国際金融の時代。どこまで進展するのか、円高。産業の空洞化は、大丈夫か。日本の知恵も、試されています。

ルーマニア出身の未成年犯罪者を本国に送り返せ・・・内相、叫ぶ。

2011-09-18 21:43:16 | 政治
移動生活を続けるロマの人々。もともとはインド北部の出身と言われていますが、今日では、ルーマニアやブルガリア、ハンガリーなどを中心に、1,000万人~1,200万人が欧州に暮らしています。

フランスにもロマの人々はおり、特に東欧諸国のEU加盟(ハンガリーが2004年、ルーマニアとブルガリアは2007年)以降は増えているようです。パリなどの観光スポットでも、多くのロマの人々を見かけることがあります。

例えば、シャンゼリゼ。凱旋門の近くでは、物乞いをするロマの一団を目にすることがよくあります。それも女性が多く、外国人観光客と見るや、“Do you speak English ?”と言って近づいてきます。フランス語で答えると、がっかりしたような顔をして、それ以上は追いかけてきませんが、英語でまともに答えると付きまとわれてしまうようです。

また、エッフェル塔とシャイヨー宮の間では、土産物を売りつける男たち。必ずしもロマの人たちとは限らないのですが、ロマの男たちも混じっています。土産物を高く売りつけられるのは、観光地ならよくあることですが、ここではスリが多いと注意が喚起されています。

決して、ロマ=犯罪者ではないのですが、移動を繰り返し、コミュニティに溶け込まないためなのでしょうか、何かと差別され、事あるごとに、批判の矢面に立たされています。また、国民の政府への不満が高じると、政治家が国民の目先を変えるべく、ロマの人々をスケープゴートとして迫害することも。

フランスではここ数年、ロマを中心に、不法滞在外国人の国外追放が強化されています。昨年には・・・

 「国内を放浪するロマ族や『非定住者』の違法キャンプの撤去や、移民出身の犯罪者に対する『国籍はく奪』などの政策を打ち出したフランスのサルコジ政権に対し、国内外から『外国人や移民の排斥だ』との強い批判が出ている。国連の差別撤廃委員会では『ナチスまがいの政策』との異例の強い意見が出た。」(8月16日:毎日新聞)
 ということで、ご存知のように、「治安の安定」を錦の御旗に、特定の少数民族や非定住者の排除を始めたサルコジ政権。不法キャンプ300か所の撤去を開始するとともに、19日には、国外退去の第一弾として、不法滞在のロマの人々93人を故国・ルーマニアへ送還しました。翌日には124人。
 以前から移民への強硬措置が目立っていたサルコジ政権ですが、非定住者、特にロマへの対応は今まで以上に強硬ですね。国連や人権団体、各国メディアの批判など、どこ吹く風。「人権宣言」の国とはとても思えない対応です。
(以上、弊ブログ、2010年8月22日)

ということがありました。今年は、新しく就任したクロード・ゲアン(Claude Guéant)内相が、不法滞在外国人の国外退去を、目標数値を上方修正して達成しようと張り切っており、フランスの対応はいっそう厳しくなっています。

そのゲアン内相が、ルーマニア出身の犯罪者は、未成年者であろうとも、本国に送り返せ、と声高に叫んでいるようです。詳しくは、どのように語っているのでしょうか・・・12日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

「ルーマニア人の犯罪者は、我々が戦わなければならない現実となっている」と、8月末、テレビ局・BFM-TVの番組でゲアン内相は語っていた。そして今月12日、日刊紙“Parisien-Aujourd’hui en France”とのインタビューでは、ルーマニア出身の不法移民による犯罪に対する戦いは最優先されるべき課題だと述べている。ただし、内相は、昨年、グルノーブルで行ったスピーチで、ルーマニア出身者とロマの人々とを混同し、間違いを指摘されたが、相変わらず混同したままのようだ。

「ルーマニア出身者の関わる犯罪グループは、マフィアのボスをトップに、非常によく組織化されている。彼らの関係する事件は最近、パリやイル・ド・フランス地方で非常に増加し、またマルセイユやリヨンでもパリほどではないが増えている」と、内相は優先課題にすべき背景を説明している。「今年の1月から7月までに、パリで職務質問を受け、召喚されたルーマニア人のケースが4,800件あったが、昨年の同時期には2,500件だった。ということは、90%以上も増加しているということだ」と、言葉を続けた。内相によれば、パリで告訴された人の10%がルーマニア出身者だという。「しかも、警察の取り調べを受けたルーマニア出身者の半数近くが青少年であり、中には12歳や13歳というケースもある」と、詳細を語っている。

主要な対策は、未成年犯罪者を本国に送り返すことだ。「数週間以内に、ルーマニア当局と連携した司法機関をパリに設置することになっているが、それにより未成年者の本国送還がうまく行えるようになるだろう。もしフランス国内に親がいる場合は、本国送還の前に親に引き渡されるが、親がフランスにいない場合は、ルーマニアの子供たちへの支援組織にいったん預けられることになる」と、内相はインタビューで語っている。その支援組織は、フランスではあまり知られていないが、国際スタンダードに合致すべく、最近ようやく誕生した組織だ。

内相はまた、入国地点、つまり空港、列車、国際路線バスなどで、ルーマニアの司法や捜査当局といっそう緊密な連絡を取り、監視を強化すると述べている。「特にマフィアのボスたちが犯罪によって得た財産を取り締まるため」だそうだ。そして、インタビューの最後に、シャンゼリゼでの物乞いを禁止する条例に間もなく署名すると語っている。

こうした内相の発言に、困難にある外国人未成年者を救う“l’association Hors la rue”という団体の会長を務めるエドゥアール・ドネリー(Edouard Donnely)は、「内相の発言は、子どもの権利に関する国際的状況に鑑みても、法的に議論の余地があり、モラルの面からは、ひたすらショッキングな内容だ」と憤っている。社会支援を専門的に行っている人たちも、内相の発言は政治的策略、そしてスケープゴートを見つけたいという意思によってもたらされたものだと見做している。そして、憲法評議会(le Conseil constitutionnel)が2010年11月に、親のいない未成年者を本国に送還するというフランスとルーマニアとの協定の実施を批判したことを引き合いに出している。

・・・ということで、ゲアン内相は、ルーマニア人未成年者の場合、犯罪行為が見つかれば、本国送還に処するという方針を持っているようです。しかし、未成年者の人権をめぐって、国際法的にも検討する余地があるようです。さらに、記事のはじめに語られているように、ロマ=ルーマニア人とは限らないという問題もあります。

来年の大統領選へ向けて、極右の票も掘り起こし、獲得したいという、与党・UMP、つまりサルコジ大統領陣営の思惑から、外国人に対して、強硬な措置が取られやすい状況になっています。フランスのアイデンティティ論争、ニカブやブルカなど全身を覆うスカーフの公共の場での着用禁止・・・

外国人嫌い(xénophobe)・・・国際化の進展に伴い、外国人と接することは珍しいことではなくなっています。それだけ、多くの機会に、多くの外国人と接すれば、良いところだけではなく、嫌なところも見えてきてしまいます。地上に楽園がないように、完全なる聖人君子もいません。しかし、だからと言って価値観や習慣、宗教の異なる外国人を排除してしまってよいものでしょうか。異なるから、おもしろい。そう思えないものでしょうか。

あの国の人は嫌いだ、と言っても、実際に会えば良い人だっています。あの国は大好きだ、と言っても、嫌な人はいます。合う人、合わない人・・・個人差があります。集団ですべてをひとくくりにするのは、危険なのではないかと思います。

違うから、面白い。そう思えれば、国際化の時代も、個人的には、気楽に生きて行けるのではないでしょうか。しかし、国際化の時代は、国際大競争の時代。国や会社は、そうご気楽にはしていられないのでしょうが・・・

ヨーロッパ人の三人に一人が神経を病んでいる、という事実。

2011-09-17 21:05:25 | 社会
ここ数年、インタビューなどを聞いていてよく耳にするコトバ・・・癒されました。パワーをもらいました。それほどまでに、今の日本人は、疲れているということなのでしょうか。

疲れているとしたら、その原因は・・・労働時間が増えているのでしょうか。サービス残業が問題になったことはありますが、それほどまでに長時間労働が一般化しているのでしょうか。それとも、別の原因、例えば、閉塞感からくるストレスとかなのでしょうか。

明日は今日より良い社会になる。そうはっきりと明るい未来が見えていれば、人はあまりストレスを感じずに済むのではないでしょうか。それが、右肩下がりの未来しか思い描けなければ、鬱屈した想いから、ストレスをため込み、元気がなくなって行く。そうした状況ゆえ、一時的であれ、ストレスを軽減してくれる、例えば、スポーツ、芸術やその他さまざまな分野ですごいことを成し遂げた人などから、パワーや元気をもらったと思うのかもしれません。

東京オリンピックや大阪万博のあった時代、高度成長期がバラ色をまとって蘇って来ます。思い出は、本来セピア色をしているものなのでしょうが、明日よりも、今よりも、昔が輝いてしまっている。そんな時代なのかもしれません。

時代ですから、日本だけではなく、多くの国で、共通の思いを抱いている人が多いのではないかと思います。そうした状況の反映でしょうか、ヨーロッパでも、ストレスなどから精神的に病んでしまっている人が多くなっているそうです。

どのくらいの人が、どのように病んでいるのでしょうか・・・6日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

EU(仏語表記では、UE)諸国の人口の三分の一以上(38.2%)が神経の問題や病気に悩んでおり、その症状は不眠症から心神喪失までさまざまだ、という研究成果が5日、欧州神経精神薬理学研究機関(le Collège européen de neuropsychopharmacologie:ECNP)によって発表された。

ECNPの発行する学術誌“European Neuropsychopharmacology”(欧州神経精神薬学理)に発表されたこの研究結果は、EU加盟国にスイス、アイスランド、ノルウェーを加えた30カ国を対象としたもので、30カ国の人口は5億1,400万人に達する。研究対象は精神あるいは神経の問題や病気を訴える人々を、その症状の程度や年齢にかかわらず、網羅したものだ。

良く見られる症状は、不安(14%)、不眠(7%)、鬱状態(6.9%)、心理的な面が影響する体調不良(6.3%)、アルコールまたは薬物依存(4%)、落ち着きのなさからくる注意不足(若者の中で5%)、心神喪失(85歳以上では30%)などだ。

しかも、ECNPによると、卒中による後遺症、脳の外傷性障害、パーキンソン病、多発性硬化症といった神経系の病気で数百万の人々が苦しんでいる。

2005年に行った前回の調査結果と比較して、全体としては症状のある人の割合は増えてはいないが、高齢化の進展に伴い心神喪失の人は増えている。ECNPはまた、症状を訴える人のわずか三分の一しか治療を受けていない、しかも脳の病気が神経・精神系の病気の26.6%に達していると述べている。

「計画的な対策をすべてのレベルにおいて優先的に行うことが必要であり、公衆衛生の場合と同じように、基礎研究や臨床研究への予算を十分に増額することが特に求められる」と、ECNPの論文は結論として述べている。

ECNPは、神経科学の研究を進展させるために、1987年に創設された汎ヨーロッパの研究機関だ。

・・・ということで、ヨーロッパ人も悩んでいるようです。

♪♪ソ、ソ、ソクラテスかプラトンか、
  ニ、ニ、ニーチェかサルトルか、
  み~んな悩んで大きくなった!

と、野坂昭如氏が歌っているくらいだから、ヨーロッパ人が悩むのは当然だ、などと冗談が言えるような状況ではないようです(昔懐かしいウィスキーのCM。あの頃はよかった・・・完全に、老人の懐古趣味です。そして、あの頃、君は、若かった・・・)

世界同時不況が、ギリシャの財政危機を契機にまことしやかに語られるようになっていますが、すでに、「心」は世界同時不安に陥っているかのようです。先が見えない閉塞感、明日への漠とした不安・・・芥川龍之介を死へと追いやった、「僕の将来に対する唯ぼんやりした不安」、巷間言われるところの「漠とした不安」が、今再び、世界を覆いつつあるのかもしれません。

不安が嵩じて、自暴自棄となり、いつか来た道を辿ることにならないよう、ぜひとも、少しでも豊かな明日、少しでも明るい未来を思い描きたいものです。その将来像は、誰かが描いてくれるものではなく(諦めも含めて)、一人一人が小さな明日を描くことから始まるのかもしれません。

失業者の子は学校の食堂を利用するな・・・フランスの学校。

2011-09-16 20:51:59 | 社会
数年前から、日本では、給食費の滞納がモンスター・ペアレント問題と共に指摘されています。リーマン・ショックなどによる経済危機により、払いたくても払えない親が増えているのも事実ですが、同時に、「払えるのに払わない親」も増えているそうです。

 学校給食費の滞納問題で、文部科学省は24日、初の全国調査結果を公表し、2005年度の小中学校の滞納総額が22億円超にのぼることを明らかにした。
 児童・生徒数で見ると、100人に1人が滞納していた計算だ。滞納があった学校の6割は、「保護者の責任感や規範意識が原因」としており、経済的に払えるのに払わない保護者の存在が改めて浮き彫りになった。文科省は同日、「滞納が目立つ市町村や学校があり、給食の運営に支障が生じる可能性がある」として、問題の解消に取り組むよう各自治体に通知した。
 (略)
各学校に滞納の主な原因をたずねたところ、「保護者としての責任感や規範意識」をあげた学校が60.0%、「保護者の経済的な問題」をあげた学校は33.1%だった。
 滞納が「増えた」と感じている学校は49.0%で、「変わらない」(39.2%)、「減った」(11.8%)を上回った。
(2007年1月25日 読売新聞)

教育の現場ではかなり前から問題になっていたようです。その対応策として、電話や文書での説明・督促、家庭訪問などを行っているものの、その効果はまだ一部に留まっているとか。そこで、例えば、3カ月以上滞納した場合には、その家庭の子供への給食を停止するなどの対応を検討している自治体もあるそうです。そして、さらには・・・

 厚生労働省は8日、10月~来年1月分の子ども手当(来年2月支給)から導入される保育料や給食費の天引きについて、過去の滞納分すべての天引きを認める方針を示した。ただし親の同意を条件とする。地方自治体の担当者を集めた会議で明らかにした。
(略)
 また、滞納額が多い場合に、滞納している子どもの兄弟・姉妹分の手当からも天引きできるか、という自治体側の質問に対し、厚労省側は、親の同意があれば徴収を認める方向で検討する考えを示した。
(2011年9月8日:朝日)

と、国を挙げて給食費滞納問題に取り組むことになったようです。この学校給食、日本でのルーツは、1889年、山形県(今の)鶴岡市、私立忠愛小学校が貧困家庭の子供におにぎり・焼き魚・漬物を昼食として提供したのが始まりだとか。給食と聞いて脱脂粉乳を思い出す世代もあるでしょうが、これは1949年にユニセフから贈られたのが始まりだそうです(『ウィキペディア』参照)。

一方、世界のルーツは、フランスだという説があります。1720年に私立学校で始まり、1849年には法制化。1925年にはフランス全土で実施されていたとか(川崎市・『世界科見学』参照)。

そのフランスの学校給食ですが、今日では、一律ではなく、学校の食堂で給食を食べるか、家に帰って親と共に昼食を取るか(親の送迎が必要)、選択できるようになっています。学校で食べる給食の中身はと言えば、そこは「美食大国」、前菜・メイン・チーズ・デザートが付いているそうです。充実していますよね。そういえば、学生支援機関“CROUS”が運営している学食(レストU)でも、前菜・メイン・デザートにパンで3ユーロほど(3年ほど前の料金。今ではもう少し値上がりしているかもしれません)。テーブルや食器など、雰囲気に目をつぶれば、十分、美味です。

さて、前置きが長くなりましたが、フランスの学校給食で、親が失業している子どもは、食堂で給食を取ってはいけない、という決まりを作っているところがあり、問題になっているようです。どうして、そのような規則があるのでしょう、社会の反応は・・・13日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

「学校の食堂は、その自治体に住む、両親ともに働いている家庭の子供に優先的に使わせる」という一文が、教育現場の規則の中に見られる。しかし、こうした両親の就業状況や居住エリアに基づいて子供の食堂での給食に制限を加えることは法の精神からは差別と見做される。自治体によるそうした決定は、地方行政裁判所(les tribunaux administratifs)から公共サービスにおける平等の原則に反していると厳しい反論が加えられている。

ネット上で急ぎ調べたところ、多くの学校で座席数が十分でないことを理由に食堂の利用に制限を加えていることが分かった。“L’Humanité”(『リュマニテ』、左派系新聞、かつてはフランス共産党の機関紙)は、そうした決まりを持つ学校70校を特定したと発表している。

例えばボルドーでは、ボルドー学校給食内部規則に、次のような食堂利用の制限が記載されている。「市のサービス活動である学校給食は、両親ともに就業している家庭の子供に優先的に供される」。

食堂利用に関する規則や条件をより詳細に見てみると、親の失業をはっきりと指摘しているものもある。オート・サヴォワ県(Haute-Savoie:スイスとの国境沿い)にあるトノン・レ・バン市(Thonon-les-Bains:人口3万人余)は、親が求職中の子供に認める食堂利用を週に数回に制限することを規則化する書類を準備するよう提案している。しかも、親が職を失ってから「1カ月だけにその利用を制限する」と言う。一方、セーヌ・エ・マルヌ県(Seine-et-Marne:パリの東郊)のカンシー・ヴォワザン町(Quincy-Voisins:人口5,000人ほど)では、求職中の人は就業者と同じ立場と判断することにしている。

しかし、多くの場合は、食堂はすべての子供に開かれているのが原則とは言うものの、席が十分でないような場合には、家庭状況によって優先順位を決めている。そして実際、両親ともに働いている家庭の子供に優先権が与えられている。その理由づけとして、失業中の親のいる子どもは、家に帰って昼食を取ることがそう困難ではないということが語られている。

PTA連盟(la Fédération des conseils de parents d’élèves:FCPE)会長のジャン=ジャック・アザン(Jean-Jacques Hazan)は、『ル・モンド』からの問い合わせに、地方行政裁判所の非難内容を法律にも反映させるよう議会に働きかけていると述べた。FCPEはそうした内容を12日に要望書として発表した。

FCPEはまた、地方行政裁判所では常に勝訴していることも述べている。そして、違法であることを承知しながら、件の規則が市町村議会で可決されるに任せている県知事たちの不作為を嘆いている。

ジュラ県(Jura:スイスと国境を接する)、ロン・ル・ソニエ市(Lons-le-Saunier:人口2万人弱)の市長で、全国市長村長会会長(l’Association des Maires de France:AMF)のジャック・ペリサール(Jacques Pélissard:与党・UMP所属)は、そこまで過激な発言は控えている。「誰かを排除するような法律は、必ずや失敗に終わることだろう。より建設的な方法を取るべきだ」と述べ、問題の規則を実施している学校食堂の数を明らかにし、解決策を見出すために、現状の入念なチェックを行うと語っている。

FCPEのジャン=ジャック・アザン会長によれば、座席数が足りないと言うのは理由にならない。利用制限が排除されれば、席の問題はなくなり、すべての子供に利用してもらえるようになるそうだ。

考え得る解決策の中で、全国市長村長会のジャック・ペリサール会長は、住んでいる自治体の食堂だけでなく、他の自治体の食堂も利用できるようにする拡大策の提案を考えている。市町村長会のワーキング・グループが想像力を発揮し、平等の原則とリアリティの原則を共に満たす解決策を見出すことができるだろう、と自信を持って語っている。

・・・ということで、学校食堂の座席数が十分でないという理由で、両親、あるいは片親が働いていない家庭の子供の給食利用を制限しているフランスの学校。少なくとも、片親が家にいれば、家に帰って親と一緒に食事できるはずだというのも、理由の一つになっています。確かに、両親が共に働いている家庭では、それはできない相談ですからね。ただし、子どもができても働き続ける女性が多いフランス。共働きだからと言って、受け取る給与が低いわけではありません。それどころか、働きたくとも働く場所がない親のいる家庭の方が可処分所得は当然、少なくなっています。どちらの家庭の子供を、学校給食において優先させるべきなのか・・・

失業が多いのは、移民や移民にルーツを持つ家系の人たち。そうした家庭の子どもに学校給食を制限する。どこか、差別的な匂いがします。給食だけに、差別的な味がする、と言うべきでしょうか。これも、内向き、右傾化するフランス社会の象徴的な一断面なのかもしれません。