ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

フランス政界も夏休み。さて、閣僚のヴァカンス先は・・・

2011-08-02 21:20:42 | 政治
8月1日の閣議を最後に、フランス政界もヴァカンスへ。24日に閣議が再開されますので、22日間、約3週間の夏休みです。閣僚たちは、どこで、どのようにヴァカンスを過ごすのでしょうか。

今年の特徴は、国内で過ごす閣僚が多いこと。昨年のクリスマス休暇の折、「アラブの春」がチュニジアで起こっているにもかかわらず、時の外相、MAM(Michèle Alliot-Marie)がこともあろうにチュニジアで休暇を過ごし、しかも、当時の政権から厚遇を受けたり、企業家からプライヴェート・ジェットの提供を受け、さらには両親のビジネス面でも便宜を図ってもらったと言われ、大問題になりました。しかも、チュニジアに次いで政権が倒れたエジプトでクリスマス休暇を楽しんでいたのが、フィヨン首相(François Fillon)。ムバラク政権から何かと厚遇を受けたと言われ、これまた顰蹙を買いました。

そこで、サルコジ大統領は、閣僚はヴァカンス先を国内にするよう命じていましたが、さて、実際、閣僚たちは今年の夏休み、どこで過ごすのでしょうか・・・1日の『ル・フィガロ』紙が伝えています。

閣僚たちも、ヴァカンスに入った。彼らは、大統領の5年任期の最後の直線をラストスパートで一気に走る前に、エネルギーを充電しようと考えている。つまり、サルコジ大統領が望むように、休息を取るようだ。ある閣僚は、「寝る、とにかく寝ようと思っている。会合の約束やラジオの番組を気にすることもなく、床に就くことができる。明日、何の予定も入っていないと言いながら眠りに就くことは、なんと素晴らしいことだろうか」と、こっそり語ってくれたが、最後に「もちろん、本や書類も読むし、官庁の役人たちとはコンタクトを絶やさない」と付け加えた。

ヴァカンス先だが、サルコジ大統領が望んだように、大部分の閣僚たちはフランス国内でヴァカンスを過ごすようだ。海外で夏休みをと思っていたものの、サルコジ大統領が7月初旬にヴァカンスは国内で過ごすようにと念を押したため、急遽行き先を変更した閣僚もいる。しかし、多くははじめから国内での夏休みを計画していたため、変更の必要はなかった。

予算相のヴァレリー・ペクレス(Valérie Pécresse)は、例年通りコレーズ(Corrèze)県とラ・ボール(La Baule)地方で過ごす予定だ。連帯・社会的団結相のロズリーヌ・バシュロ(roselyne Bachelot)は、ビアリッツ(Biarritz)市で過ごすが、数日はブルターニュ地方のヴァンヌ(Vannes)市近郊に滞在することになっている。エコロジー相のナタリー・コシウスコ=モリゼ(Nathalie Kosciusko-Morizet)は、英仏海峡(la Manche)に突き出たコタンタン(le Cotentin)半島にあるサント・メール・エグリーズ(Sainte-Mère-l’Eglise)市の近くで過ごすことにしている。

労働・雇用・厚生相のグザヴィエ・ベルトラン(Xavier Bertrand)はいつもの夏と同じく、コルシカ(la Corse)島にある夫人の実家で15日まで過ごす予定だ。しかし、グザヴィエ・ベルトランは休息期間にも政治活動の予定を組み入れている。例えば2日、雇用をテーマにした会議と病院がテーマの会議、そしてコルシカのバスティア(Bastia)市で夜にもうひとつの会議が入っている。8月中にコルシカ北部のイル・ルス(l’île-Rousse)市、ボルドーに近いシャラント・マリティーヌ(Charente-Maritime)県、その北にあるヴァンデ(Vandée)県を訪れ、月末にはカルカソンヌ(Carcassonne)が県庁所在地であるオード(Aude)県に行くことになっている。与党・UMP(国民運動連合)の前幹事長であるグザヴィエ・ベルトランは、夏休みは国民に直接話しかける機会であり、後任のジャン=フランソワ・コペ(Jean-François Copé)が党としての遊説を止めてしまったことを残念がっている。そして、自分は個人で9か所で遊説を行うことになっていると、後任を皮肉っている。

農業・漁業相のブリュノ・ル・メール(Bruno Le Maire)は、例年通り、バスク地方のサン・ペ・シュール・ニヴェル(Saint-Pée-sur-Nivelle)市に滞在するが、この機会に、漁業従事者や農業従事者と会うことになっている。住宅担当大臣のブノワ・アパリュ(Benoist Apparu)は、パリから離れる予定はなく、2週間、パイロットとしての訓練を受けることになっている。

6月の内閣改造により、新たに閣内に入った大臣たちにとっては、勉強の夏となり、ヴァカンスが短く感じられることだろう。退役軍人担当大臣のマルク・ラフィヌール(Marc Laffineur)は、今年もシャモニー(Chamonix)に行くことになっているが、早めにパリに戻ってくると語っている。公務員相のフランソワ・ソヴァデ(Francois Sauvadet)は、短い夏休みしか取らないと述べている。2週間のヴァカンスを予定しているが、実際には、数日、コート・ダジュール(la Côte d’Azur)へ行くだけで、コート・ドール(Côte-d’Or:ブルゴーニュ地方)県議会議長を兼ねるフランソワ・ソヴァデは残りの日々をブルゴーニュ(la Bourgogne)地方にある自宅で過ごすことにしている。

このように、国内で過ごす閣僚が多いが、全員と言うわけではない。数人の閣僚は、海外へ出かける。しかし、地の果てまで行くというわけではない。高等教育相のロラン・ヴォキエ(Laurent Wauquiez)は、ベルギーに行くことにしているが、そこは母方の出身地であり、そこで11月に出版予定の新しい自著、中産階級向けの本なのだが、その校正刷りを読み直すことにしている。職業訓練担当大臣のナディーヌ・モラノ(Nadine Morano)は、北イタリア、マジョーレ湖の近くで過ごす予定だ。イタリアにルーツを持つナディーヌ・モラノお気に入りの場所だと、側近が語っている。

フィヨン首相はイタリアのトスカーナ地方で過ごすことになっている。産業・エネルギー担当大臣のエリック・ベソン(Eric Besson)は、夫人の出身地であるチュニジアに行くのだろうか。たぶん、そうなるのだろうが、エリック・ベソン自身は夏休みに関して何も語っていない。同じように公表していないのが、外相のアラン・ジュペ(Alain Juppé)だ。外相の側近は、「外相は行きたいところへ、自分のお金で行く。ヴァカンスはプライヴェートなことであり、何事も公開しなくてはいけないという考えとは意見を異にしている」と語っている。しかし、プライヴェートなヴァカンスで前任者のミシェル・アリオ=マリ前外相はつまずき、その結果アラン・ジュペが外相になったのだが。

・・・ということで、一部海外へ行く閣僚もいますが、多くはサルコジ大統領の意向に沿って、国内でヴァカンスを過ごすようです。

さて、そのサルコジ大統領自身は、どこで過ごすのでしょうか。『ル・フィガロ』の記事は何も伝えていませんが、1日のFrance2夜8時のニュースによれば、2008年にカーラ・ブルーニと結婚して以来、毎夏を過ごしている南仏・コート・ダジュールの別荘、と言ってもカーラ夫人の実家(Bruni Tedeschi家)が所有する別荘(le Château Faraghi)ですが、そこで今年のヴァカンスも過ごすそうです。黒塗りの車数台で到着した様子が映像で流されました。

大統領が滞在中は周辺が立ち入り禁止となるこの別荘で(zone interdite temporaire)、いかに国民の支持を回復させ、来年の選挙で再選を果たすべきか、頭を悩ませることでしょう。支持率は一時よりは回復しつつあるとは言うものの、まだ社会党候補(フランソワ・オランドまたはマルティーヌ・オブリー)の後塵を拝しているだけに、練り上げられた戦略が必要です。何しろあと10カ月ないわけですから、第二のDSK事件でもない限り、かなり厳しい状況になっています。カーラ夫人は妊娠中と伝えられていますが、子どもの名前を考えるよりも、再選の準備が優先、といった状況になっているのかもしれません。

日本の夏2011は、言うまでもなく、迷走する政局の夏となっていますが、フランス政界では、閣内に入ったばかりの大臣は、勉強に大忙しですし、作家家業を兼ねている閣僚は執筆や校正に忙しく、国民との対話に務める閣僚もおり、そして大統領は再選へ向けての対策。ヴァカンスと言っても、文字通りの空っぽになれる閣僚は実は多くないのかもしれません。