【武藤正敏】韓国紙が「文在寅」を猛烈批判…行き詰まる「反日・従北」路線に大ブーイング! 文在寅「後」の韓国を見据え始めた

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朝鮮日報が「文在寅」を批判!

文在寅政権になって韓国は変わってしまったのか。

文在寅政権の反日・従北、反企業・親市民団体姿勢が鮮明になったが、それでも韓国の国民の40%強が文在寅氏を支持している。いまの文在寅政権は日米韓が共有してきた価値観を有する国のようには思えず、日韓関係の改善をつとめてきた努力を無にする国になってしまったようである。

しかし、幸いなことに韓国の最大紙朝鮮日報がこうした文在寅政権の姿勢を批判している。この批判をもとに文在寅政権の本質、韓国のこれまでの本流といかにずれているかについて検証し、今後の韓国との付き合い方について考えて見たい。

韓国国内からも文在寅批判が出てきた photo/gettyimages

 

これまで日韓関係にたずさわってきたものとして、まずはこれまでの経緯、取り組み姿勢について概観していこう。

私の尊敬する外務省の先輩から、「日韓関係をうまくマネージできたら、他の国との外交もマネージできるだろう」と教わった。日韓関係は波乱の連続であったが、中長期的に見れば改善してきていた。

60年代に、大学で日本や日本語について学んでいる人は、そのことを親戚にも言えなかった。70年代に、国際交流の一環として日本を訪問した学生は、帰国後日本の印象を友人にも語れなかった。いずれのケースも親日批判を恐れてのことである。

最悪の「日韓関係」

80年代に、日本の教科書が日本の韓国植民地支配を歪曲しているとの批判が起きた。その頃、韓国の新聞はトップを含め紙面の4分1強が日本軍の蛮行で占められていた。当時韓国在住の日本人は、トンネル内でもタクシーから降ろされ、レストランにも入れなかった。

90年代、元慰安婦の問題が提起され、宮沢総理の訪韓時、韓国の大統領は日本の真相究明と謝罪を迫り、慰安婦への補償問題も韓国社会の中で燃え上がった。

2000年代、金大中大統領が訪日し、日本文化を韓国で紹介する道を開いた。これで日韓関係は普通の国同士の関係になったかと思ったが、次の盧武鉉大統領は日本の保守化、竹島への野心をでっち上げ、日本非難を再開した。

反日気運はいまも高まっている photo/gettyimages

 

2010年代、李明博大統領が日韓の経済交流・協力を推し進めいったん改善したが、慰安婦問題がこじれ、李明博氏の竹島上陸で再度暗転した。

朴槿恵大統領になって、慰安婦合意が成立し歴史問題が決着したかに見えたが、文在寅大統領が元徴用工問題、元慰安婦問題を持ち出し、日韓関係は最悪と言われる状態に戻ってしまった。

日本は「譲歩」してきたが…

その間、日本政府は韓国との関係を重視し、韓国の経済発展に協力した。請求権協定の資金協力に加え、70年代までは毎年有償・無償資金協力、技術協力を続けた。

そればかりでなく、浦項製鉄の設立にあたっては、世銀などが反対していたにもかかわらず、新日鉄の稲山会長は、日本は韓国に対しできる限りの協力をすべきだとして、全面的な協力に乗り出した。

日本の協力は併合への反省もあって真摯なものであったが、韓国では他国の経済協力は新聞などで報じても、日本の協力については報じなかった。

日韓間ではたびたび歴史問題や貿易問題などをめぐり対立した。多くの場合、日本は韓国の立場に配慮し譲歩を続けた。交渉の局面で韓国側から譲歩案が出てくることはまずなく、日本側が案を提示し、これに韓国側がコメントする形で交渉が進められた。韓国政府が解決案を出すことは弱腰外交の非難を浴びるためできなかったのであろう。

 

しかし、韓国側の心情としては、日本は韓国を併合したのだから、韓国には配慮すべきとの感情があった。

韓国が成長すれば、より対等な関係になるかと思ったが、むしろ韓国は成長したので日本の言いなりになる必要がないとの考えが芽生えてしまった。

こうした中、日韓関係が比較的良好だった時期は、良好な日韓関係は韓国にとってメリットとの信念を持った大統領がいた時である。

それは日本が民主主義国家になったことを認めた金大中大統領の時、第3国での日韓協力の重要性を高めた李明博大統領の時、慰安婦問題は自分が解決しなければならないと自覚した朴槿恵大統領の時である。

朴大統領時代の慰安婦合意の画期的なことは、日本の一方的な譲歩ではなく、日韓がお互いに譲歩して成し遂げた合意だということである。

朴槿恵時代には日韓関係は改善したが… photo/gettyimages

 

史上最悪の「対韓感情」

日韓の歴史をめぐる政治問題では依然として対立は解消しておらず、韓国が歴史問題にこだわり日韓関係をないがしろにしていることに対し、日本人の対韓感情は史上最悪と言われる。

しかし、国民交流の拡大は著しい。

日本の韓流ブーム、韓国における日本の生活および文化へのあこがれ。日常生活において韓国人の反日を意識する必要がないほどになったことは、これまでの日韓関係への取り組みの成果と言えよう。

反面、文在寅大統領が歴史問題について「日本が謙虚になれ」というなど一方的に峨を通すことは、これまで日本が韓国の要求に譲歩してきた副作用であろう。

こうした歴史的経緯の中で文政権の反日が起きているのである。これにどう取り組むべきか。

「反日」から「克日」「用日」へ

反日・従北の民族主義が大韓民国を脅かす――。

これは、朝鮮日報への寄稿のタイトルだ。若干のポイントを抜粋する。

まず、「反日感情の縦糸と従北情緒の横糸が韓国民族主義を歪曲している。北朝鮮が日本植民地時代の残滓をなくし、民族史的正当性でリードしてきたという偽りの歴史観が民族主義を汚染している。感傷的な民族主義は、厳しい国際政治に対する冷徹な認識を妨げる」と述べている。

さらに、米中の覇権争いの中で、「民主主義と市場経済を共有した冷徹な韓日間の相互協力は、『帝国中国』の無限なる膨張から韓国の主権を守る合従連衡の国家戦略資源だ。即物的な反日感情を抑え、冷徹な克日と用日が新たな韓国民族主義のキーワードにならなければならない」と論じている。

現在の韓国の置かれた位置を物語っている。文在寅政権はこうした韓国の現状を無視している。

北朝鮮寄りの文在寅氏を朝鮮日報は痛烈に批判した photo/gettyimages

 

さらにいまの北朝鮮については、「金日成民族」だと指摘。さらに、北朝鮮の核ミサイル開発、軍備増強に直面しても、「空虚な終戦宣言に執着する文政権の従北民族主義は、国を害する妄想だ」と断じているのだ。

そして反日・従北主義は、国と市民的自由を脅かす。光復(終戦)75周年に実体もつかめない親日派という言葉を持ち出すのは、自由と正義の共和制の敵に過ぎない。「文在寅政権は金正恩委員長のリップサービスに一喜一憂する…『まさか北朝鮮が核で同民族を攻撃することがあろうか』といった願望志向が、金正恩委員長の統一戦略を見事なまでに覆い隠している」と指摘しているのである。

これはわたくしが見る韓国の置かれた現状とほぼ同じ見方である。

地政学的に考える人なら、共通する見方でもあろう。しかし、今の韓国においてそのような見方が普遍的になるのか、あるいは保守層の誤った見方と映るのか気がかりである。

案の定、北朝鮮は、文在寅氏が菅総理に就任を祝う書簡を送ったことに対し、「親日屈従的態度は保守政権と変わらないことを示している」と批判し、韓国の反日・従北姿勢を徹底することを促している。

これは北朝鮮が良く使う離間政策である。ただ、文在寅政権がこうした北朝鮮の意図を正しく理解するか疑問である。

文在寅政権の韓国が北朝鮮と連携して反日政策を繰り広げてくるか。そうなれば今後の日韓関係を根本から覆すことになりかねない。

 

韓国は主敵は北朝鮮から企業に変わった…?

大韓民国の主敵は企業に変わったのか――。

これも朝鮮日報のコラムのタイトルである。要点を抜粋する。

「4月の総選挙後、民主党議員が提案した企業規制法案は300本に迫る。致命的なポイズン条項を含む法案があまりにも多く、大韓民国の主敵が北朝鮮から企業に変わったかのように錯覚するほどだ」……。

支持率40%の「本当の意味」

さらに、要点を抜粋しよう。

「企業と労働者、大株主と少数株主、大企業と中小下請け業者、大企業と消費者を対立させ、少数勢力を崖ぷちに追い込む内容を盛り込んでいる……大企業の利益を下請け企業に強制的に配分する利益共有性、1か月働いただけの労働者にも退職金を支払う制度、大型商業施設と従来型商店の距離を1キロメートルから20キロメートルに拡大する法案もすべて票集めのための少数たたきだ……」

「少数を狙った一連の反企業、反市場政策で多くの人が失業と所得減少で苦しんでいるにもかかわらず、政府は動じない。かえって少数をもっと締め付け、税金を無分別にばらまき、多数を権力側に引き込もうと動いている……それが総選挙における与党圧勝につながった」……というのである。

こうして見ると、文在寅氏に対する支持率が40%台を維持している背景は、少数派叩き、それによる多数派への利益配分、財政による国民へのばら撒きであって、それは長い目で見た場合、韓国社会をむしばむ要素になりかねないということが見えてくる。

 

一部の文在寅氏擁護派の人々は、文在寅氏の支持率が40%を維持していることを尊重しなければならないという。一般論からするとその通りである。いまの文在寅政権が正しい政策で支持を集めているのなら、40%台の支持率は評価できるだろう。

しかし、文在寅氏の社会主義的思考に基づくばらまき、ご機嫌取り政策で支持を集めているならば、韓国の将来にとって禍根を残すものとなろう。

韓国社会の健全な発展を「阻害」している

反面、市民団体(公益法人)に対する姿勢はどうか。

慰安婦団体の会計不正問題に対して正義連は「我々は大変な仕事をしている。会計なんて直せばいいのに、どうしてうるさいことを言うのか」と食って掛かるという。その人々は「公益法人にどうして企業のような水準の会計を要求するのか」と言うそうである。

会計専門家の見解は逆である。「公益法人は大衆から寄付金を募集することができ、政府からは税金の免除を受ける。したがって、寄付金が目的通りに使われているか会計公示を通じ透明性を確保することは当然のこと」という。

しかし、会計問題で問い詰めると、「親日保守勢力の謀略」と主張する人がいる。このようにずさんな会計に対し親日派という言い逃れで、寄付金を流用にして私的に使っていたのが正義連、特に尹美香氏である。それでも文政権は尹氏に対する追及には消極的である。

文政権は公益法人に寄り添う政権である。公益法人が多くの場合市民社会にとって有益な活動を行っていることは紛れもない事実である。しかし、その活動で不正が行われ、私的利益のため用いられ場合には厳正に対処することが重要である。そうして信頼を得ることが、公益法人の発展にもつながるだろう。

 

文政権は自身に近い公益法人を善悪の区別なく擁護している。これはむしろ公益法人への不信感を招くことになるだろう。

このように文政権は韓国社会の健全な発展を阻害している。

反日・従北政策でこれまでの友人であった日本や米国を遠ざけ、北朝鮮の統一戦略に丸め込まれている。北朝鮮の核ミサイルが実戦配備されれば、韓国は北朝鮮からこれまでの成長の果実を吸い取られるだろう。そしてそれは北朝鮮の軍事力を一層高め、日本への脅威を増していくことになりかねない。

文在寅「後」の韓国

また、今の韓国では、悪いことをしても文在寅政権に近ければとがめられない。

善悪は文政権に近いか遠いかで決まってしまう。日本は歴史問題で謙虚にならなければ善とはならないであろう。

 

韓国政府は、日本の報復を恐れ徴用工に関連した日本企業の資産の現金化に韓国は慎重になっているが、いずれは現金化されるであろう。日本はそれを防ごうと韓国に譲歩することは、将来的な日韓関係という文脈で考えた場合適切ではない。韓国はごり押しすれば日本が譲歩すると誤解するだろう。

日韓関係を考える場合、文政権に対しては一切譲歩せず、文政権後にどのような韓国になるかで考えていかざるをえないのが残念である。

しかし、今の文政権の姿が本来の韓国の姿だとは思っていない。早く以前の韓国の姿を取り戻してほしい。