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文在寅政府の手厚い雇用・福祉政策は絵に描いた餅 財源なくして政策なし

2020-11-05 17:31:12 | 日記

文在寅政府の手厚い雇用・福祉政策は絵に描いた餅 財源なくして政策なし

2019年07月31日(水)11時50分

 

文在寅政府の手厚い雇用・福祉政策は絵に描いた餅 財源なくして政策なし

文在寅の弱者救済政策にも関わらず、格差は逆に拡大、財政赤字も膨らむ一方 Jung Yeon-je/REUTERS

<韓国の社会保障費は前年比で14.6%増で、日本の3.3%を大きく上回る。このままでは持続不可能だ>

2017年5月10日、文在寅政府が発足してから2年が過ぎた。

文在寅政府は、家計の賃金と所得を増やすことで消費を増やし、

経済成長につなげる「所得主導成長論」に基づいて労働政策と社会保障政策に力を入れており、

国民、特に低所得層の所得を改善するための多様な対策を実施している。

まず、労働政策から見ると、2017年に6470ウォンであった最低賃金は2020年には8590ウォンに引上げられた。

また、「週52時間勤務制」を柱とする改正勤労基準法(日本の労働基準法に当たる)を施行することにより、残業時間を含めた1週間の労働時間の上限を68時間から52時間に制限した。

労働者のワーク・ライフ・バランスを実現させるとともに新しい雇用を創出するための政策である。

<iframe id="RNVNKYP" width="0" height="0" frameborder="0" marginwidth="0" marginheight="0" scrolling="no" allowfullscreen=""></iframe>社会保障政策としては2018年から「健康保険の保障性強化対策」、いわゆる「文在寅ケア」が施行された。
 
文在寅ケアとは、文在寅大統領(以下、文大統領)の選挙公約の一つで、国民の医療費負担を減らし、医療に対するセーフティネットを強化するための政策である。

その具体的な内容としては、

1)健康保険が適用されていない 3大保険外診療(看病費、選択診療費、差額ベッド代)を含めた保険外診療の段階的な保険適用、

2)脆弱階層(高齢者、女性、児童、障がい者)の自己負担軽減と低所得層の自己負担上限額の引き下げ、

3)災難的医療費支出(家計の医療費支出が年間所得の 40%以上である状況)に対する支援事業の制度化及び対象者の拡大などが挙げられる。

この中でも特にポイントは国民医療費増加の主因とも言われている保険外診療(健康保険が適用されず、診療を受けたときは、患者が全額を自己負担する診療科目)を画期的に減らすことである。

文在寅ケアにより、エステや美容整形などを除くMRI検査やロボット手術など約 3,800項目の保険外診療が 2022年までに段階的に保険が適用されることになる。

また、2018年9月からは児童手当が導入された。

対象は満6歳未満の子どもを育てる所得上位10%を除外した世帯であり、子ども一人に対して月10万ウォンが支給された。

さらに今年の4月からは所得基準が廃止され、満6歳未満の子どもはすべて児童手当の対象になった。

一方、65歳以上の高齢者のうち、所得認定額が下位70%に該当する者に支給される基礎年金の最大給付額は2018年9月から月25万ウォンに引き上げられた。

韓国政府は、無年金者や低年金者を含め経済的に自立度が低い高齢者の老後所得を補完するために、2014年7月から既存の「基礎老齢年金制度」を廃止し、新しく「基礎年金制度」を導入・施行している。

財源はすべて一般会計から賄われる。

急激な政策の展開が様々な問題を起こす

 

このような政策が問題なく実施・定着されると所得格差は改善され、国民はより豊かな生活ができるだろう。

しかしながら、政策の効果がなかなか出てこない。

韓国統計庁が2018年11月22日に発表した「2018年7〜9月期家計動向調査(所得部門)」によると、世帯間の所得格差は過去最高水準に広がっている。

全世帯を所得により5段階に分けたデータを確認したところ、所得最下位20%世帯の1カ月平均名目所得は131.8万ウォンで前年同期に比べて7.0%も減少した。

名目所得が減少したのは3期連続のことである。

一方、所得最上位20%世帯の1カ月平均名目所得は前年同期に比べて8.8%増の973.6万ウォンと11期連続で増加した。

低所得層の所得が減少した反面、高所得層の所得は増加した結果、所得階層間の格差はさらに広がった。

韓国政府の狙いとは裏腹に所得格差が広がっている理由としては低所得層の勤労所得が大きく減少した点が挙げられる。

つまり、2018年7〜9月期における所得最下位20%世帯の勤労所得は47.9万ウォンと1年前に比べて22.6%も減少したことに比べて、所得最上位20%世帯の勤労所得は730.2万ウォンで11.3%も増加した。

所得最下位20%の勤労所得が20%以上減少したのは、統計庁が関連統計を作成し始めた2003年以降初めてのことである。

一方、韓国政府は少子化対策の一環として2012年からは無償保育制度、最近は児童手当制度を実施しているものの、まだその効果が表れていない。

韓国統計庁が2019年2月27日に発表した「2018年出生・死亡統計(暫定)」では、2018年の合計特殊出生率(一人の女性が一生に産む子供の平均数、以下、出生率)は、2017年の1.05を下回る0.98まで低下すると予想した。

出生率が1を下回ることは関連統計を発表してから初めてだ。

 

「韓国の苦悩は、日本の近未来」

2020-11-05 16:34:51 | 日記

「韓国の苦悩は、日本の近未来」

 

韓国社会の現在

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韓国に関して、日本では慰安婦、領土問題や、北朝鮮との関係に絡んで報じられることが多いが、本書『韓国社会の現在――超少子化、貧困・孤立化、デジタル化』(中公新書)は、韓国社会に内在する構造的な問題にスポットを当て、様々な角度からわかりやすく解説している。

「格差」を軸に冷静に分析しており、隣国に対する理解がいちだんと進む。

日本でも起きていることや、これから起きる可能性があることなども含まれ、他人事ではない。

「ヘル朝鮮」の嘆き

著者の春木育美さんは1967年生まれ。

韓国延世大学校大学院修士課程修了。

同志社大学大学院社会学研究科博士課程修了(博士・社会学)。

東洋英和女学院大学准教授、東京大学非常勤講師、米国アメリカン大学客員研究員などを経て、早稲田大学韓国学研究所招聘研究員。

日韓文化交流基金執行理事。

著書に『現代韓国と女性』(新幹社、2006年)、編著に『韓国の少子高齢化と格差社会』(慶應義塾大学出版会、2011年)、共著『知りたくなる韓国』(有斐閣、2019年)など。

日本では「嫌韓本」というジャンルがあり、書店に行くと、その種の本が目に付く。

本書も帯に「自ら『ヘル朝鮮』と嘆く現実」というキャッチコピーが大きく記されている。

しかしながら、内容はデータに基づいた客観的なもの。

著者自身のスタンスは、ニュートラルだと感じた。

実際、著者が調査で韓国の中央官庁に行ったとき、日本の関連文献の翻訳を頼まれたりしたこともあると書いている。

韓国の現状を、日本の実情も念頭に置きながら的確に分析している研究者として韓国側からも評価されている人ではないだろうか。

さらに帯に目を凝らすと、「隣国の苦悩は、日本の近未来だ」というキャッチも記されている。

急激に進む少子高齢化

著者による韓国の最近の歩みと現況は以下の通り。

「1960年代にアジア最貧国の一つだった韓国は、猛烈なスピードで経済発展を成し遂げ、先進国の階段を駆け上った。

IMFによる2018年の国内総生産(GDP)の国別ランキングで世界第10位にランキングされるまでに成長した。

だが、『先成長・後分配』を掲げ、短期間にハイスピードで経済開発を推し進めた歪みがいま、あちこちで噴出している」

「1996年に経済協力開発機構(OECD)に加盟した韓国は、出生率や若者の就業率がOECD加盟国で最低水準である一方、私教育費(学校外教育費)や大学進学率、男女の賃金格差、高齢者の貧困率と自殺率は、最高水準を記録し続けている」

とりわけ深刻なのが「少子高齢化」だという。

2020年の時点で人口に占める65歳以上の高齢者の割合は、

日本は28.9%、韓国は15.7%だが、韓国では日本以上の猛スピードで高齢化が進み、

65年には人口のほぼ半分が高齢者になると見込まれている。すなわち「世界でもっとも老いた国」になる。

20代女性の7割が「子どもを産むつもりがない」

その理由は、出生率の低下。

日本では2019年に1.36だが、韓国は0.92まで落ちている。

原因は未婚者の増加と晩婚化だ。

18年の初婚年齢は男性が33.2歳、女性が30.4歳で日本より1歳ほど高い。

男性の未婚率は、「就職できない」「安定した職に就けない」ことを理由に上昇を続けている。

韓国人口保健福祉協会の19年の調査によると、20代女性も57%に結婚の意思がない。

「子どもを産むつもりがない」は、なんと71.2%に達している。

かなり驚きの数字だ。

韓国でも共働きが増えているが、家事・育児の責任は女性に偏っており、仕事か結婚・育児かの二者択一の選択で、仕事を選ぶ女性が増えているのだという。

背景には1997年のアジア通貨危機で韓国経済が大打撃を受け、夫がリストラされた家庭が多かったことが影響しているという。

専業主婦たちの苦い経験が、その後、女性の大学進学率を上げ、社会進出を加速させた。

韓国では2010年代に、20代女性の7割以上が大卒者になり、女子の大学進学率は男子を上回っている。

娘に教育投資をした家は、学歴に見合う仕事やキャリアを娘に期待する。

大企業の正社員になれば男女の賃金格差もほぼなくなる。

女性の経済的な自立につながり、結婚の必然性も薄れているというわけだ。

『82年生まれ、キム・ジヨン』がミリオン

韓国ではすでに2001年に女性省が設けられ、さまざまな女性支援策が制度化されているが、依然として封建的・儒教的な社会も残り、女性にとっては息苦しさが付きまとうようだ。

韓国でミリオンセラーになり、世界18か国で翻訳出版され、日本でも15万部を売り上げた『82年生まれ、キム・ジヨン』も、韓国における女性差別をテーマにしている。

小説がベストセラーになって、韓国の女性議員たちは新たに女性差別の是正や出産・育児でキャリアが断絶した女性の再就職を支援する新法や男女雇用平等法の改正を国会に発議したという。

こうした中で女性以上に、鬱屈しているのが韓国の20代の男性だという。

女性支援に力を入れているとされる文在寅政権に対する支持率は、2018年のリアルメーターの調査によると、20代男性では29.4%にとどまる。同女性の63.5%と大差があった。

この世代の男性は就職難にあえぐ。

しかも兵役まであるが、見返りがない。

兵役を終えた者に公務員試験などで加点される「軍加算制度」は1999年、女性運動団体の反対を受けて廃止されてしまった。

本書は映画「パラサイト――半地下の家族」にも触れている。韓国では約36万世帯が半地下に住んでいるそうだ。

春木さんも留学時代に、家賃が安いということで住んでいたが、水害に遭って引っ越したという。

国際的に高い評価を得た映画「パラサイト」だが、韓国人の反応は複雑らしい。

格差是正に積極的に取り組んでいる自治体のことも紹介されている。ソウル市では失業中の若者に現金を支給しているそうだ。

世界一の「電子政府」

本書は以下の構成。

第一章 世界で突出する少子化――0.92ショックはなぜ
第二章 貧困化、孤立化、ひとりの時代の到来
第三章 デジタル先進国の明暗――最先端の試行錯誤
第四章 国民総高学歴社会の憂鬱――「ヘル朝鮮」の実情
第五章 韓国女性のいま――男尊女卑は変わるか
終章 絶望的な格差と社会――若者の活路は

韓国はデジタル先進国。

第三章でその詳細が記されている。

キャッシュレス社会なので国税庁のウエブサイトで住民登録番号を入力すれば、自分の過去一年間の買い物履歴が確認できる。

個人の疾病情報データなど、様々な個人情報が住民登録番号とひもづけされている。

「国家による個人情報管理」と「電子政府」は日本のはるか先を進んでいる。

2010年には、国連による電子政府ランキングで世界一位になっている。

日本でも「デジタル庁」とか「ハンコ廃止」が話題になっているが、おそらく韓国の先例に学ぶことになるのだろう。

韓国は新型コロナで感染者が発生するたびに、感染者の詳細な移動経路まで分単位で公開したそうだ。

携帯端末の位置情報や監視カメラ、クレジットカードの利用履歴などから完璧に個人情報が把握されている。

第四章で登場する「ヘル朝鮮」とは、韓国の20代が、今の自分たちが置かれている境遇を自嘲する言葉だという。

ヘルとは地獄。日々直面している韓国社会の現実が辛くて地獄のようだということだ。

2015年ごろからネット上で「ヘル朝鮮」というコミュニティサイトが開設され、就職難、失業、政府批判などが書きこまれている。

現代の韓国は、身分が固定していた朝鮮の時代のように、生まれによって人生が決まる、という怨嗟が投影されているという。

 著者はこうした韓国の現状を報告しつつ、「韓国の若者は本当に大変だ」「可哀そうだ」と眺めていられる余裕が日本にあるのだろうかとも問いかけている。

 本書には慰安婦像も徴用工問題も、領土問題も登場しないが、等身大の韓国の実像を、著者自身の長年の体験と、細部にわたるデータをもとに知ることができる。

読んでいると、自分自身が韓国国民になったかのような切実感がある。韓国で翻訳出版してもらいたい本だ。

 BOOKウォッチでは関連で

『脱北者たち』(駒草出版)、

『韓国 古い町の路地を歩く』(三一書房)、

『君は韓国のことを知っていますか?――もう一つの韓国論』(春秋社)、

『韓国大統領はなぜ悲惨な末路をたどるのか?』(宝島社)、

『だれが日韓「対立」をつくったのか――徴用工、「慰安婦」、そしてメディア』(大月書店)など多数紹介している。

『日本近現代史講義――成功と失敗の歴史に学ぶ』 (中公新書)は、韓国経済の日本依存度が、かつてに比べて大幅に低下していることが日韓関係のこじれに関係していることを指摘している。

韓国経済における日本の重要性は「かつての5分の1以下」になった。

1970年代前半には韓国貿易における日本のシェアは40%を超えていたが、2010年代に入ると10%を割り込む。

60~80年代に韓国を政治的・経済的に支配したエリート層は、過去の日本統治時代を巡る紛争が持ち上がると、その激化を防ごうとしてきたが、現在は「日本の影響力は昔と同じではない」(2012年の李明博大統領の発言)というわけだ。

直近の数字では、輸出先としては中国の5分の1程度しかなく、いつのまにか「日韓」よりも「中韓」関係が、貿易面ではるかに緊密になっていることは日本人として知っておく必要がありそうだ。