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2020年11月09日
米大統領選で米国メディアによる「バイデン勝利」報道を受け、民主党バイデン候補が「勝利宣言」を出した。
バイデン氏は、米上院で長らく外交委員長を務め、オバマ大統領時代は副大統領経験者だ。
いわば、外交の専門家であるだけに、韓国にとっては厳しい交渉相手になりそうだ。
文大統領は、米韓相互防衛条約を結びながら、中国と二股外交を行っている。
米国は、韓国に対して「浮気者」という認識を持っているが、バイデン時代はそれを許さないと見られる。
また、日韓関係についても破綻同然の現状打開に向けて、韓国へ圧力が掛かるだろうという予想が増えている。
北朝鮮問題は、文氏の持論である「終戦宣言」について、バイデン氏は否定的である。
要するに、文政権での外交戦略はことごとく修正を迫られるだろうと観測されている。
『韓国経済新聞』(11月9日付)は、「金正恩委員長を『悪党』と呼んだバイデン氏…『終戦宣言』の韓国と摩擦も」と題する記事を掲載した。
米大統領選挙で勝利したジョー・バイデン氏は「米国優先主義」を前面に出したドナルド・トランプ政権とは違い、同盟国との連携を強調しながら多者主義的外交政策を展開すると予想される。
ただ、トランプ政権の対中国圧力政策はそのまま継承するか、むしろ強まる可能性が高いと、専門家らはみている。
(1)「韓国政府はその間、対立が深まる米中の間で「綱渡り外交」をしてきた。
しかし「同盟強化」「対中牽制」を外交・安保政策の基本とするバイデン政権に入れば、「戦略的あいまい性」基調をこれ以上は維持するのが難しくなるという見方が出ている。
どちらか一方を選択するしかないということだ。
対北朝鮮政策に関しても「非核化が前提になってこそ北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に会うことができる」と話してきたバイデン氏と隔たりが生じる可能性が高い」
バイデン流外交は、韓国に対して対中の「二股外交」を認めない、「白黒論」で迫ってくると見られる。
同盟重視というバイデン氏の立場から言えば、米韓同盟を結びながら、中国へ媚びる韓国は異常な相手というべきである。
それを放置しておいて、「同盟強化」は不可能である。
韓国が、米中双方から「プラスだけ引き出す」戦術は、あまりにも露骨で品に欠ける行為なのだ。
(2)「バイデン氏が、今回の大統領選挙の過程でトランプ大統領との違いを出そうと努力したことの一つが同盟政策だ。
バイデン氏は9月、米軍事専門紙の星条旗新聞のインタビューで「私が当選すれば、真っ先にすべきことは(同盟国の)首脳らに電話をかけて『米国が帰ってきた。
私たちを信頼してもよい』と伝えることだ」と述べた。
こうした同盟政策は対中国牽制政策とも密接な関係がある。
バイデン氏は先月の大統領選テレビ討論で「トランプ大統領が北朝鮮と中国主席(習近平主席)のような悪党を包容し、指で我々の友人と同盟の目を刺している」と述べ、韓米連合軍事訓練など安保協力を通じて中国に圧力を加える考えを表した」
バイデン外交は、同盟強化が基本である以上、米国も同盟の義務を果たす。
一方、韓国も義務を果たせと迫られれば、中国との曖昧戦術は継続不可能であろう。
簡単に言えば、「夫の義務を果たすから、妻の義務も果たせ」という話であろう。
(3)「韓国政府はその間、「韓米同盟は我々の外交・安保の根幹」としながらも、中国を意識してクアッド(quad=日米豪印戦略対話)拡大など米国の対中強硬策に微温的な態度を見せてきた。
韓東大の朴元坤(パク・ウォンゴン)教授は、「米国の対中牽制政策はトランプ政権以前から続いてきた」とし「伝統的な同盟外交を好むバイデン氏は韓国などに『反中連合戦線』に参加すべきだと圧力をはるかに強める可能性がある」という見方を示した。
米国の対中圧力政策が強化され、韓国に対する支持・参加要求も強まるということだ」
バイデン外交は、韓国に「反中連合戦線」への参加を求めると見ている。
(4)「韓国国家戦略研究院の申範チョル(シン・ボムチョル)外交安保センター長は、
「米中のうち一方を選択しなければいけない時期が近づいている」とし「留保的な立場に固執すれば、対米関係の悪化のほか、中国とも遠ざかる危険がある」と警告した」
米中対立の長期化という背景を考えれば、「米韓相互防衛条約」の性格から、韓国は「反中連合」に参加せざるを得ない。
それを拒否するならば、米韓同盟を破棄することである。
(5)「バイデン氏は与党・共に民主党と政府が推進中の「韓半島終戦宣言」に対しても、トランプ大統領に比べて懐疑的な立場を見せている。
朴元坤教授は「文在寅政権が『先に終戦宣言、後に非核化』を主張できたのは、トランプ大統領が終戦宣言に関心があったため」とし
「非核化に進展がない状態で終戦宣言ばかり主張すれば、バイデン政権と摩擦が生じることも考えられる」と指摘した」
米国が、米朝交渉の長い過程から得た教訓は、北朝鮮が不誠実であることだ。
非核化の前に「終戦宣言」したならば、非核化の棚上げに賛成するようなもの。バイデン外交が受入れるはずがないであろう。文氏は、ここでも路線修正である。