北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

自衛隊潜水艦-高知県沖で商船と衝突!潜水艦そうりゅう,足摺岬南方40kmでマストなど損傷

2021-02-08 20:14:37 | 国際・政治
■商船に被害なし,潜水艦3名負傷
 本日四国沖の太平洋にて自衛隊潜水艦と商船が衝突する事故がありました。

 潜水艦そうりゅう、が本日四国足摺岬沖で商船と衝突しました。事故は本日午前中の1058時頃に発生、商船に被害はなく、潜水艦も負傷者3名はでましたが船体に浸水などはなく、負傷者も搬送必要な重傷ではなく艦内にて手当を受けているとのこと。政府は事故を受け総理大臣官邸の危機管理センターに情報連絡室を開設し情報収集に当たっているとのこと。

 商船はオーシャンアルテミスです。商船の乗組員にけがはないとしています。事故は足摺岬沖南方40kmの沖合で、浮上航行中にマストと商船が衝突したという。オーシャンアルテミスは90000tの鉄鉱石を積載した香港船籍の貨物船で中国青島を出航し岡山県に向かい航行していた途中の事故であり、オーシャンアルテミスは衝突に気づかなかったとのこと。

 オーシャンアルテミスが事故を知ったのはNHK報道を見る限り、事故について海上自衛隊からの通報を受けた海上保安庁からの通知により衝突を知った、と報じられています。そうりゅう水中排水量は4200tでオーシャンアルテミスとマストを接触したといい、船殻部分と接触しなかった事がそれほど大きな衝撃を及ぼさなかった、という可能性もあります。

 そうりゅう、呉基地の第1潜水隊群に配備されている潜水艦そうりゅう型の一番艦で海上自衛隊初の実用AIP潜水艦として2009年に就役しました。AIP機関とは水中において原子力以外の装置により大気中の酸素を用いず動力装置を作動させ推進する方式であり、これにより潜航時間が大幅に延伸される強力な潜水艦で、満載排水量は4200tとなっている。

 事故発生時、そうりゅう、は神戸の造船所での定期整備を終え、各種機材の点検へ航行中であったといい、マストが衝突している事から浮上航行中ではなく潜航開始、もしくは浮上中にオーシャンアルテミスと衝突したものと考えられます。不幸中の幸いは、そうりゅう型マストは船殻非貫通構造であり、仮に折れてしまった場合でも浸水は生じません。

 浸水被害の有無、潜水艦事故で危険なのは航行中の潜水艦は船体の大半若しくは全てが海面下にあり、浸水した場合は沈没の懸念も生じます。特に強力な潜水艦も、衝突は想定していない為に船殻部分が同程度以上の船舶と航行中に接触した場合は破損し浸水の恐れもあります。実際こうした事故は起こっていまして、マスト破損で済んだ事は僥倖でした。

 パコーチャ沈没事故。潜水艦事故は特に船舶との衝突事故では潜水艦側は水線下に船体の大半が配置されているため、船殻に損傷が及び浸水した場合、即座に沈没の危機にさらされることとなります。実際1988年8月26日に日本の遠洋マグロ漁船第8共和丸とペルー海軍潜水艦パコーチャが衝突、潜水艦側が沈没し多数の死傷者が出る事故がありました。

 事故は夜間発生し、第8共和丸は潜水艦の警笛を受け、見張り不十分のまま衝突しています。パコーチャは水中排水量2400t、第8共和丸は総トン数412t、排水量ではこのようになっていますが、沈没したのは潜水艦側でした。艦長以下8名が死亡し、脱出出来なかった乗員23名は海底に沈みましたが、30時間後に潜水艦救難艦により救助されたのは幸い。

 なだしお事故、としまして同じ1988年7月23日には自衛隊の潜水艦が遊漁船第一富士丸と衝突し、遊漁船が沈没する事故がありました。潜水艦せとしお、なだしお、護衛艦ちとせ、が横須賀基地に向け航行中、なだしお側は近接するヨットを注意していたところ、東京から新島に向かう第一富士丸が突如取り舵を取ったため、回避が間に合わず衝突した。

 なだしお事故、COLREG海上衝突予防条約では海上は右側通行が原則で、取り舵を切った遊漁船の意図は不明ですが、潜水艦の警笛を受けても進路速度を維持したため衝突、海難審判によれば、遊漁船の接近への見張り不十分、潜水艦に接近した段階で取り舵をとった操船により、双方に過失があった、海難審判では双方の責任者に有罪判決をだしています。

 今回の事故に話題を戻します。不思議なのは潜水艦がソナーで商船を発見できなかった原因です。オーシャンアルテミスは積貨重量90000tとかなり大きな貨物船です。河川河口付近では塩分濃度層が音を遮断する事もありますが、足摺岬南方40kmでは宮崎県の大淀川からも遠く、影響は考えられません。海水温度層も見逃すほど小さな商船ではありません。

 実任務増大により海上自衛隊の第一線部隊は展示訓練さえ実施できないほど艦艇稼働率が高くなっており、遠くない将来に訓練不足が重大事故の頻発に繋がる可能性がある。これは何年も前から指摘されている点です。定期整備後ですのでソナー故障も考えにくいものですし、単純な航海要員や水測要員の伝達ミスの可能性があります。再発防止をしっかりしてほしいですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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榛名防衛備忘録:新型コロナに打ち勝つ自衛隊の知見,COCOA機能不随とプログラム業務隊

2021-02-07 20:01:24 | 国際・政治
■60年代から独自デジタル人材
 海上自衛隊のプログラミング人材教育が1960年年代初頭から始まっていると説明しますと、多くの方は驚かれます。

 COCOA不具合昨年9月から。報道に驚かされたものですが、厚生労働省が昨年より国民スマートフォン用へ提供した接触確認アプリで、15分以上スマートフォン同士が接近していたことを個人情報を含まない接触情報として記録し、後日、誰か、スマートフォン所有者がCOVID-19養成となった場合、職場や食事、通勤電車や映画館で接触した方へ通知するというもの。

 各省庁で海上自衛隊のプログラム業務隊のような独自のプログラミング人材を養成する必要があるのではないか、海上自衛隊のプログラム業務隊とは現在、拡大改編を経て開発隊群へ拡大されていますが、そんな独自人材の重要性を、厚生労働省のCOVID-19新型コロナウィルス接触確認アプリCOCOAの不具合を俯瞰して、考えさせられたものでした。

 厚生労働省の濃厚接触者追尾への切り札的に投入されたものです。しかし2021年2月に入って報道などにより指摘され、厚生労働相自身が確認したのは、2020年9月のアップデートを最後にAndroid版COCOAが機能していなかった、ということでした。ios版などは機能していたという事ではありますが、感染拡大期全般に渡り機能していなかった事に。

 COCOAはパーソルに三億円で下請けに出され1600万円の孫請けで開発、文字通り接触者確認以外に個人情報などに応用できない点に特化され提供されたもので、厚生労働省は運営を委託されていた構図ですが、アップデートなどについて必要な情報、要するに仕様変更要求書、こうしたものはプログラミングの最低限知識がなければ作成もできない、ここが機能不随に影響したかたち。

 プログラム業務隊、1970年に創設された海上自衛隊のプログラム専門部隊で、OJTにより人材養成も行う。厚生労働省も部局とは別に自前の必要な業務プログラムを作成する専門組織を構築する、もしくは総務省が自衛隊以外の各省庁に必要なプログラム開発を中央省庁全体で包括開発できる、組織を構築する必要はあるのかな、と。デジタル庁とは違う実務要員養成機関として。

 ターターシステム導入。海上自衛隊は1961年に当時建造が進む海上自衛隊初のミサイル護衛艦あまつかぜ、この装備化に併せ、あまつかぜ搭載のアナログ方式ターターシステムは近い将来、デジタルシステム化するために独自のプログラミング人材を養成する必要が生じます。先ずここで海上幕僚監部人事部は、アメリカ留学組を活用することとしました。

 デジタル要員教育、これは汎用半導体を用途ごとにつなぎ替えて様々な任務に対応させていた事にたいして、010101のコードを書き換えるだけで様々な用途に対応させるという、物理的なつなぎ替えではなくソースコードの書き換えで対応する、基本的な理念が、当然ではありますが1961年では普遍的な考え方ではなく、留学組はかなり苦労があったとも。

 アメリカ留学組、幹部自衛官二名が派遣されたのですがアメリカ海軍士官向けの高度プログラム教育を受ける基礎知識が無かったため、下士官基礎教育課程から開始され、なにか名物となってしまったようで、毎回講義後に行われる小テストを乗り切り、最初は打ち解けなかったものの、最後には学校側が金曜日にカレーを出してくれるほど打ち解けた、と。

 プログラム業務隊はこうした人材をもとに1970年に正式に発足しました。システム艦、ヘリコプター搭載護衛艦しらね竣工とP-3C対潜哨戒機、護衛艦はつゆき型量産時代に入りますと戦闘システムを筆頭に護衛艦や哨戒機をひとつ運用するにも戦闘システムを管理するシステムエンジニアが必須となってゆきます。もっともこの話には不思議なおまけがつく。

 イージス艦。海上自衛隊はその後にプログラム業務隊出身幹部と艦艇幹部という二つの体系が生まれ、1980年代にはイージス艦導入論とハリアー搭載護衛艦導入論という二つの論争へ展開してゆくのですが。さて閑話休題。COCOA,厚生労働省がこのCOCOAの不具合を自己検証する充分なシステムエンジニアを養成できなかった、もしくは枠組みの欠如が。

 デジタル庁が新設されることが決定していますが、こちらはデジタル人材の養成教育行政や社会基盤のデジタル化を省庁横断的に行う監督官庁であり、デジタル庁が独自にデジタル教育学校やデジタル業務局を設置してデジタル庁自身がデジタル人材を供給するわけではありません。実際のところ、省庁のデジタル人材は独自養成よりも中途採用組が多い。

 COCOA不具合、もちろん監督官庁としての厚生労働省には、海上自衛隊が護衛艦や哨戒機、潜水艦という機材の戦闘情報処理を自前で行う必要があったためのシステムエンジニア重視とは異なる価値観がある事は理解するのですが、必要な人材を全て下請けに任せ、自身で保守管理の定義を仕様書にさえ出来ない状態のままでは、合理的とはいえないでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【防衛情報】AH-X,豪州EC-665タイガー除籍とイギリスAH-64Eアパッチガーディアン到着

2021-02-06 20:20:28 | 防衛・安全保障
■特報:世界の防衛,最新論点
 陸上自衛隊ではAH-X次期戦闘ヘリコプターを本格的に検討すべき時期となっていますが、イギリスとオーストラリアの事例から参考となる点を考えてみましょう。

 陸上自衛隊のAH-64D戦闘ヘリコプターが明野駐屯地の陸上自衛隊航空学校へ配備されたのは2006年、2021年は早いもので15年を経たことを意味します。その後の陸上自衛隊戦闘ヘリコプター調達はミサイル防衛やサイバーセキュリティ能力強化、相次ぐ新防衛事業へ予算を間引かれる対象となり、当初62機の調達は13機まで削減される事となりました。

 AH-1S対戦車ヘリコプターの数的削減はしかし、耐用年数満了とともに延命改修が行われることなく縮小が続き、現在では全ての対戦車ヘリコプター隊が定数割れの状況に追い込まれると共に、政府は2019年防衛大綱改訂に際して、従来の5.5個対戦車ヘリコプター隊を廃し、中央へ集約する決定を行います。しかしAH-64Dさえ老朽化する状況は続きます。

 こうした中でイギリスでは面白い動きがありました。イギリス陸軍は従来の武装ヘリコプターに代え、自衛隊がアパッチロングボウを導入した正にその頃、AH-64Dの導入を開始した事で知られます。故に機体寿命も一足早く訪れている訳ですが、アフガニスタンやリビアで、近年ではロシアの軍事圧力に対抗する観点から必須となっているAH-64です。

 イギリス軍へ配備されたAH-64Eアパッチガーディアンの整備がコロナ禍下でも順調に進められているとのこと。AH-64Eアパッチガーディアンは初号機、二号機が2020年11月26日にイギリス本土のワティシャム飛行場へ到着し、陸路によりイギリス第1航空旅団へ配備され、当面は7機が陸軍第3航空連隊へ配備され、機種転換訓練に当っています。

 アパッチガーディアンに搭載されるAN/APG-78レーダーは海上目標追尾モードとして洋上目標や小型無人機創作追尾能力が付与され,MUM-T能力として無人機の管制及びリアルタイム画像共有能力を有すると共に、アメリカ陸軍ではこの能力を活かし、従来ヘリコプターセンサーの射程外であった100km規模の射程ミサイルの搭載研究が進められています。

 AH-64Eアパッチガーディアンは1998年より67機配備され現在運用されているAH-64DアパッチロングボウことアグスタウェストランドアパッチAH-1の後継として配備されるもので、アグスタウェストランド社ではAH-64Dの整備支援能力の限界から2024年には廃止される事を受け後継機に既存機をAH-64Eへ再製造する決定を2015年に行いました。

 イラク戦争に際して、AH-64Dは"戦国自衛隊的"といえる老練な待ち伏せ攻撃などにより思わぬ苦戦を強いられ、また、錯綜地形におけるレーダー性能の限界が日本国内演習場にて判明すると共に、当初のC4I戦への対応や情報RMA作戦体型具現化への入り口との名声は、高コストの期待はずれ、陸上自衛隊の劣等生、と厳しい批判が生じるようになります。

 アパッチガーディアン。さて、本邦での批判は実のところAH-64Dを使いこなせなかっただけではないか、との視点も加えるべきかもしれません。開発国アメリカでもロングボウレーダーの識別能力限界などは既にに指摘されており、AH-64Dの充実した通信容量を受け、無人機を管制し目標を捕捉、アパッチに長射程ミサイルを搭載する改良型が生まれる。

 島嶼部防衛が叫ばれる昨今、しかし進化を続けるアパッチは上掲の通り、ミサイルの射程は年々延伸すると共に,MUM-T能力としまして無人機との連接が可能となった事で、有事における先鋒としての任務を担うには不可欠の装備として進化を続けています。実際、アパッチしかない、と結論付けた興味深い事例にオーストラリアの事例を見てみましょう。

 オーストラリア陸軍は2025年よりARH武装偵察ヘリコプターとしてAH-64Eアパッチガーディアンの取得を開始します。これはオーストラリアのホンリンダレイノルズ国防大臣が表明した将来装備計画で、オーストラリア陸軍は少なくとも29機のAH-64Eアパッチガーディアンを導入する計画です。しかし、これは非常に興味深い選択だといえましょう。

 AH-64Eアパッチガーディアンの取得、これは同時に2006年より導入を開始したエアバスヘリコプターユーロコプター社製EC-665ユーロコプタータイガーが早速除籍開始されることとなり、ユーロコプタータイガーはドイツフランス共同開発でスペイン軍などでも採用されている機体ですが、オーストラリアでの運用は極めて短期間で終わる事を示します。

 ARH武装偵察ヘリコプター計画ではAH-64Eアパッチガーディアンの他にアメリカのベル社はAH-1Zバイパー攻撃ヘリコプターを提案し、エアバスヘリコプターズ社もEC-665ユーロコプタータイガーの既存機近代化改修に合せ新規調達による増強を提案しましたが、稼働率低下や運用費高騰の問題があり、オーストラリア陸軍は継続運用を却下しました。

 自衛隊の次期戦闘ヘリコプター、勿論予算的な問題は大きく、特に防衛費についてはF-35B導入事業や費用が巨大化し続けるイージスアショアミサイル防衛システムなどの陰に隠れ、根本的な装備品の更新さえままならない状況ではあるのですが、実のところ自衛隊の任務を考えますと、情報優位と国内での広い行動力を有する点から、必須の装備体系とも思う。

 AH-1Zヴァイパー攻撃ヘリコプターやEC-665/PAH-2ユーロコプタータイガーと様々な機種が挙げられるのですが、全般的な性能としては冗長性と将来発展性という部分からAH-64を超えられる機種は、現状でAH-64に注ぎこまれる改修費用を越えるものが無い事から考えにくく、厳しい財政状況でも、英豪両国の選択には関心を持つべきとも思います。

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令和二年度二月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2021.02.06-2021.02.07)

2021-02-05 20:14:44 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 mRNAワクチンに続いて不活性化ワクチンが開発され始めているCOVID-19疾病対策の報道に心躍る今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 今週末も自衛隊関連行事は行われません。しかし防衛省自衛隊としては訓練計画は予定通り実施されているようで、伊勢湾では毎年恒例の伊勢湾機雷戦訓練が実施されています。もっとも、毎年恒例であるのは参加部隊規模とアメリカ軍の参加という部分だけで、例年のような大規模な掃海艇入港は無かった、とは現地へ進出された方のお話でした。

 伊勢湾機雷戦訓練は本年、例年のような四日市や松阪に大量の艦艇が勢ぞろい問い運方式ではなく、横須賀基地に集結した機雷戦部隊が抜錨し伊勢湾へ向かう、という、なにか揚陸作戦の前哨戦としての機雷戦のような方式となっていまして、横須賀では併せて硫黄島方面での訓練に当たる輸送艦も同日出航し、揚陸作戦前夜の様相であった、という。

 COVID-19政府緊急事態宣言延長、本来であれば今週末に解除の予定であった政府緊急事態宣言の解除は一ヶ月延長されることとなりました。一応数字の上では感染者数判明の件数は低下していまして、緊急事態宣言に先んじての勝負の二週間や覚悟の二週間という期間を挟んでの感染対策や自粛が効をそうした、とは数字では言いうる事なのですけれど。

 保健所の業務限界が極まり、死者数局限化に重点が置かれたことで濃厚接触者追跡とクラスター追尾という、2020年春の第一波を乗り切ることができました日本型の感染対策が機能できない状況に追いやられており、保健所の機能を遙かに越える感染で、市中感染の全容を把握できない、感染拡大は次の段階に悪化してしまったといえるのかもしれません。

 公衆衛生能力を拡充させる必要は感じるのですが、保健所運営は都道府県単位であり、都道府県財政の悪化が保健所運営能力を統廃合で低下させた一方、一人保健師や職員を採用した場合には退職までの数寿年間の人件費を継続的に捻出できる見通しがない、という非正規公務員依存の自治体財政の問題があり、いわば竹槍主義しか残っていない状況です。

 国家中心の衛生対策を、と主張したいところではありますが、財政は無制限ではない事は承知の通りでして、なによりも公務員の大規模な拡充を支持しない世論が行政への支持として出力された結果としての現状がありますので、橋本内閣時代から連綿と続いた公務員縮小、合理化の流れを一新させる事へのもう少し理解と周知を望みたいところです。

 イギリス変異株。さて、実のところ全く楽観要素が無いのが、この拡大です。実はこの懸念、ポルトガルでの医療崩壊を望見し改めて認識しました。ポルトガルは欧州でも感染対策と経済運営の両立に成功していた事で知られますが、イギリス変異株が流入すると、従来の感染対策を継続しただけでは大規模な流行を防げず、一日一万の感染者が続く。

 ポルトガルの人口は1000万、既に死者数は突沸のように1万1000名と爆発し、今週からドイツ衛生軍がEU要請により派遣されるという事態に進んでいます。社会的距離と自粛主体、日本のような感染対策では現在既に静かに市中感染が始まる状況であり、ポルトガルと同様の事態に展開する懸念があり、楽観要素は全くないとの認識が必要でしょう。

 ワクチンEU輸出管理決定。EU欧州連合は欧州域内でのワクチン不足を鑑み、欧州域内で生産され世界へ供給されるワクチンについて、その輸出をEUによる許可制とする旨を発表しました。これは気持ちは分からないではないのですが、世界規模でのワクチン争奪戦を激化させる懸念があるとともに、日本国内への供給についても影響が及ぶ懸念があります。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・今週末の行事なし

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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【京都幕間旅情】勝竜寺城,細川藤孝城塞は明智光秀最後の城郭に視る決戦”天王山の戦い”の謎

2021-02-04 20:17:45 | 写真
■戦国の謎”本能寺の変”その後
 京都にはいくつかの美しい城郭が在りますが、それ以上に数多の日本史の謎を湛えています。こうしたところを歩み進めますと何かみえてくるのかもしれない。

 勝竜寺城。京都府長岡京市勝竜寺、ここは東海道線長岡京駅から少し南に下った位置に遺構のある城跡公園です。1992年までは単なる史跡のみでしたが徐々に遺構の上に模擬櫓や掘割等が再現され、意外と広大な城址公園と歴史博物館等が並ぶ一角となっています。

 東海道線を時折、新快速や特急がごおっと通過する気風に今も昔も交通の要衝と感じます。明智光秀。ここ勝竜寺城は織田信長を叛逆で亡き者とした明智光秀が、中国大返しとして毛利攻めから全速で戻った羽柴秀吉と天王山の戦いに際し戦った根拠地としたものである。

 明智軍は今日的な視点から見た場合に、驚くほど稚拙な配置から大敗を喫した光秀が落ちのびるまで束の間逃げ込んだ城郭でもありました。この謎については面白いので後述しますが、細川忠興と細川御玉ことガラシャの城郭。勝竜寺城は元々細川氏城郭でありました。

 細川忠興が明智光秀の娘玉子と婚儀を経てキリスト教に帰依しガラシャと改めた後に過ごした城郭でした。それ故にこの界隈の寺院はキリスト教徒の打壊しにあった歴史もあるのですが、細川忠興は盟友細川藤孝の嫡男で娘婿の城、なんて所に逃げ込むのだ光秀、と。

 今月いっぱいでNHK大河ドラマ”麒麟がくる”最終回というのは、一種驚きではあるのですが、ドラマである為に創作と独自解釈は溢れるものの、天王山の戦いにおける明智軍の謎の動きがどう説明されるかには興味あるところです。本能寺の変、どう描かれるか。

 日本史における最大の叛逆である事は疑問の余地はありませんが、その背景は永遠の謎に包まれています。明智軍は羽柴軍と戦うつもりは無かった、という展開ではないか。これは一つの視点なのですが、明智光秀は羽柴秀吉と事を構えるつもりは無かった可能性が。

 本能寺の変にて織田信長へ叛乱のうえで殺害に追い込んだ明智光秀の行動、特に中国大返しにて反撃に向かった羽柴軍を迎え撃った天王山の戦いは、不思議です。天王山の戦いでは、明智軍は勝竜寺城付近に布陣、隘路や河川という地形を全く活かさない布陣ですね。

 鳥羽伏見の戦い。似た構図は、幕末に在りました大坂から天皇への親書を携えて上京に向かう幕府軍を薩長軍が一方的に待ち伏せ攻撃を行い、幕府軍は親書を届けるのが任務であり、戦闘を元々想定していません。闘う意思の有無は文字通り結果に直結するものでして。

 鳥羽伏見の戦いでの幕府軍は最新式小銃などを携行する洋式軍隊でありながら射撃準備はもちろん、陣形も行軍そのもので前衛も何も接敵行軍の態勢を執らなかった事が、敗北の原因となっています。天王山の戦いでは、天王山と大阪平野を往く淀川の隘路が戦場だ。

 明智軍は史実の布陣よりも1.5km南に前進し布陣するならば、結果は変った。河川と山地に挟まれた隘路を抜けた、つまり羽柴軍の大群が一列にならざるを得ない隘路を前方にして明智軍には機動を活かせられる陣地がありましたが、現実の戦場は隘路を活用しません。

 隘路を抜けた河川の先に布陣したのは羽柴軍、明智軍はに羽柴軍が有利な地形を抑えている為に不利な敵前渡河を強いられる配置だ。戦下手にしても程があるように思えます。するともう一つの可能性として、明智軍の戦術統制になにか不安が在った可能性もあります。

 天王山の戦い、稚拙です、なにしろ天王山の麓である山崎は真横に桂川と宇治川に木津川が合流し淀川になる典型的な隘路ですので、ここを抜けた位置、つまり隘路出口に布陣すれば、羽柴軍は隘路を一列に進まざるを得ず隘路出口で各個撃破出来ただけに不思議です。

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【京都幕間旅情】勝竜寺城,南北朝時代細川頼春造営城郭は織田信長上洛後京都南方防衛の要衝

2021-02-03 20:10:55 | 写真
■天王山の戦い,明智軍謎の布陣
 明智光秀と羽柴秀吉の天王山の戦いという最大の会戦を俯瞰するには現地を見てみる必要があります。その城塞の始まりの歴史は以下の通り。

 勝竜寺城を築城したのは暦応2年こと西暦1339年ごろ、南北朝時代の細川頼春によるものと考えられており、京都防衛へ造営された城郭の一つです。長岡京市というほどで平安遷都前の首都でもあったことから、古墳を流用し造営されたのではないかともいわれる。

 細川頼春が造営した城郭ですが、何しろ時代は南北朝時代の話であり細川藤孝の時代には国盗り物語とさえ呼ばれた戦国乱世、城郭は岩成友通、三好三人衆の一人により京都防衛の要衝となっていました。大きな転機となったのは、やはりといいますか、織田信長が。

 織田信長上洛に際し、永禄11年こと西暦1568年、柴田勝家、蜂屋頼隆らにより攻撃します。室町将軍足利義昭を奉じ上洛へ向かう信長は近江守護を担う六角氏の抵抗を観音寺城の戦いにより打ち破ると遂に念願の上洛を果たします。しかし、上洛した信長に脅威が。

 畿内に一大勢力を誇ると共に六角氏の盟友でもあった三好長慶の後任、三好三人衆の圧力は信長には看過できないものがあり、隷下の武将に攻撃を命じ戦いが始まりました。信長は自らは参陣せず東福寺を宿所として落城の吉報を待った勝龍寺城の戦いが始りました。

 勝龍寺城、足軽を中心とした岩成友通は打って出るも馬廻り衆という要するに騎兵戦力により散々に攪乱され籠城に転じ、二日後に信長自身5万の兵力を率い攻城に着手し攻略、続いて信長は芥川山城、越水城、高屋城、と次々城塞を攻略し畿内平定を実現するのです。

 さて一気に話題は本能寺後だ。天王山の戦い、隘路を利用せず大軍が行動しやすい地形を羽柴軍が布陣、明智軍は相当戦術が稚拙であったか、もともと戦うつもりが無かったのではないかといわざるを得ません。迎え撃つのではなく迎い入れる為の陣形とさえいえるのですね。

 もっとも、秀吉と光秀、決戦が不可避となった際の検証はまだまだ余地があるのだが。勝竜寺城に迎い入れる為に明智軍は戦う事を想定していなかったのではないか。この仮説は大変な仮説と繋がります。要するに本能寺の変に羽柴秀吉黒幕説と同義になりますから。

 本能寺の変は明智光秀と羽柴秀吉が密通していたものを、秀吉が裏切った、という構図に他ならないのですからね。やりそうだね、とドラマを見ているとそう考えてしまうのです。しかし、ドラマだからこそ成り立つ創作であり、史実というものを考えますと中々難しい。

 時間が在りながら不利な布陣、そうするともう一つ、明智軍の稚拙な布陣には可能性が生まれてきます。明智光秀は自軍の指揮官である斎藤利三や津田信春、伊勢貞夫興や松田政近といった部下の戦術技量に不安があるか、羽柴軍に合流するという危惧が在ったのでは。

 織田信長を裏切った明智光秀が、そのまま即ち部下に裏切られる不安が在ったのではないか。戦術統制に不安が在ったということですね。勝竜寺城と布陣、面白いのは布陣が稚拙ですが明智光秀は自軍のほぼ全部を自分が本陣を置いた勝竜寺城から見える位置に置いた。

 これが一つの論拠でして、要するに、勝竜寺城から隷下部隊を見張っている。秀吉共謀説は上記の通り考えにくいものでして、この視点を秀吉の中国大返し、という視点から見てみましょう。本能寺の変、戻ってくるのが早過ぎた羽柴秀吉が、実は黒幕ではないか、と。

 秀吉は備中高松城にて毛利の大軍と対峙していましたが、主君織田信長が討たれた事を知り、天王山までの230kmを一気に転進しました。ただ、これも細部を見てゆきますと兵站の観点からはそれほど難しくない事が分ります。この点は改めて見てゆく事としましょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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日本造船業は防衛の根幹,LST&LSDを増強せよ【4】機動揚陸プラットフォームと民間船舶

2021-02-02 20:17:31 | 防衛・安全保障
■フェリー,灰色塗れば輸送船
 民間船舶でも輸送力という視点からは有用です、なにより民間船舶の輸送力こそが海軍力の目指すシーパワーが守るべきものなのですから。

 水陸機動作戦を実施するに当たり民間船舶の規格にあっても幾つかの有用な船舶が存在します。民間フェリーなどはその最たるものですが、併せて自動車運搬船やパージ運搬船といったものにも、水陸機動作戦に適合する設計が考えられるでしょう。もちろん民間フェリーなどは運用要員というよりも維持費の問題があり、民需に依存するべきでしょうが。

 民間フェリー、灰色に塗れば高速輸送船となり、これは傭船のかたちで既に実施しています、これをやりすぎますと、実のところ逆に民間フェリーによる自衛隊輸送という、一種の有事における転用可能な路線維持への平時の需要維持という側面を圧迫してしまいそうではあるのですが、一方で中型フェリーについては自前で確保する選択肢もあり得ます。

 自動車運搬船。あまり大型のものは、依存しますと例えば一個師団分の重装備を運搬しつつ、これが攻撃を受け喪失するようなことがあれば、第二次大戦中の陸軍戦車第二師団がフィリピンへの輸送中に少なくない重装備を喪失したような状況ともなり、例えば予備の装備品をアメリカの事前集積船に載せる運用を除き、リスクといえるかもしれません。

 しかし、複数中隊規模の輸送や、数がどれだけあっても足りない輸送車両の同時輸送には有用な選択肢といえるかもしれません。そしてもう一つ、これは伊豆大島土砂災害において再認識された問題点ですが、港湾施設を使えない状況において、これらの船舶を接岸させるための、従来は軍隊が重視していたような運用にも、資する装備は、あるのですね。

 パージ輸送船。アメリカ海軍も運用していますが、航行可能なドックというべき船舶に20程度のパージを搭載し輸送する専用船舶があります、あまり速度は出せませんし、個艦防空能力などありませんので、戦闘地域への進出は難しく、競合地域でも僚艦防空能力を持つ水上戦闘艦の護衛が必須ですが、こと設計では便利な船舶が既に民間に存在しています。

 例えばパージ輸送船。これはパージにそのままトラックなどを積載し、プッシャーパージとともに上陸用舟艇の代替とすることもできますし、パージを並べることでそのままマルベリーシステム、第二次世界大戦中のノルマンディ上陸に際しイギリスとアメリカが実施したような応急港湾設備のように輸送船から岸壁まで浮き桟橋として活用できましょう。

 アメリカ海軍ではパージ輸送船をそのままLCAC輸送船として運用しており、これに新たに機動揚陸プラットフォームというLCACと民間の自動車運搬船を海上で装備品の載せ換えを行うシーベイシングといい新しい運用が構築中です。これは従来、大規模な両用作戦を実施する際に揚陸点近くに策源地を抑える必要があったのですが、これに代わるもの。

 機動揚陸プラットフォーム。アメリカが開発中ですが日本の造船技術を応用すればそれほど難しいものではなく、逆に得意分野とさえいえるかもしれません、LCACを積載する区画と車両運搬船を海上で瀬取のように連結する区画があれば可能、さすがに車両運搬船の車両用スロープからLCACに直に載せ替えることができないために、という発想のもの。

 もちろん、留意事項としては自衛隊がどの規模までの輸送を行うか、という視点で必要な船舶量というものは変わってくるのです、具体的には単に連隊戦闘団を一個送れば事足りる島嶼部防衛だけを考えるのか、複数の師団規模で第二戦線を構成するか、で変わってきますが、後者についてはそこまで師団を送る船舶以外の兵站能力が自衛隊にはありません。

 アメリカ海軍の規模の輸送船は、こうした理由から過大といえますし、理想としては北部方面隊の総合近代化師団一個分くらいの装備品を事前集積船に載せ、呉基地や佐世保基地沖に遊弋させておけば、有事の際には南西諸島であろうとその先であろうと即座に人員と個人装備だけ、新幹線や民間のボーイング777で空輸すれば事足りるのですが難しい。

 ただ、現状の海上自衛隊輸送艦と二隻程度の政府傭船だけで充分、とは絶対いえないわけでして。中間を担わなければなりません。もっとも、予算にも限界がありますし、予算がないからといってパージ輸送船は買えないために代替に安価なプッシャパージばかりトラックを積載し、何隻も何十隻もガダルカナルの蟻輸送のように行うのも非効率ですが。

 ここで留意しておかなければならないのは、民間の輸送力に余力をもった時代とはことなり、例えば効率化に赤字削減の改革を強いられたコンパクトな能力が、医療分野で新型コロナウィルスCOVID-19の感染爆発に対応できなかったような、有事の際に民間の余力に頼るとした1990年代までの発想、もはや出来ない、という防衛当局の認識が必要でしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【防衛情報】フランスE-2D早期警戒機導入とイギリスE-7配備基地決定,E-3AWACS近代化

2021-02-01 20:15:12 | インポート
■週報:世界の防衛,最新12論点
 防衛情報、今回は各国の早期警戒機と早期警戒管制機最新情報と輸送機や戦闘機改修に関する12の話題をお伝えしましょう。

 フランス海軍は現在空母艦載機として運用するE-2C早期警戒機の後継としてE-2D早期警戒機のランビエ航空基地への配備方針を発表しました。これは11月21日にフランス海軍ニュースが発表したもので、今年七月に締結した7億ドルに上るE-2D早期警戒機3機及び予備エンジンや通信機器及び整備器材の調達計画が順調に進んでいる事を示します。

 E-2D早期警戒機3機はフランス防衛企業SIAéによりフランス軍規格の通信機材や戦闘システムの適合化が行われる方針で、これにより独自のアップデートも可能とする方針です。3機のE-2D早期警戒機はフランス海軍唯一の航空母艦、原子力空母シャルルドゴールに配備される計画で、要撃管制など一連の能力は現在のE-2Cよりも大幅に向上するようです。
■英空軍E-7早期警戒機配備基地
 日本では早期警戒管制機は当面E-767が維持されますが同じAPY-2を搭載するE-3はイギリスでは後継機が決定しています。

 イギリス空軍はE-3セントリー早期警戒管制機の後継機として導入するE-7ウェッジテイル早期警戒機の運用拠点をロシーマス基地とする方針を決定しました。E-7はボーイン737 AEW&Cとして開発され、オーストラリア空軍やトルコ空軍、韓国空軍が運用している機体でロシーマス基地はイギリスがP-8Aポセイドン哨戒機を配備している基地です。

 E-7ウェッジテイル早期警戒機はボーイング737-700を原型とした早期警戒管制機で、航続距離は5200km、カヌー型のMESA多機能電子走査アレイレーダーを搭載、180機を同時追尾し24機を迎撃管制可能となっています。最大探知距離は850kmに上り、370kmの距離で中高度を飛行する戦闘機等を捕捉可能で能力向上により性能は向上させられます。

 イギリス空軍は2019年にE-7ウェッジテイルを5機総額19億6000万ドルで発注しました。今回配備されるロシーマス基地はイギリス北部に在ると共に前述の通りP-8Aポセイドン哨戒機が配備されている基地です。E-7もP-8Aもともに原型機はボーイング737であることから、イギリス空軍は保有するボーイング737系統の集約を図っているのでしょう。
■E-3早期警戒管制機能力向上
 原型となるKC-135/ボーイング707の老朽化は進むもののE-3早期警戒管制機そのものは今後も能力向上が進みます。

 ノースロップグラマン社はE-3早期警戒管制機の搭載するAPY-2レーダーの能力維持性能向上改修について1億6365万0543ドルの契約を結びました。これは2028年までに渡る長期契約で、メリーランド州リンシカムハイツのノースロップグラマン工場で実施、これによりE-3早期警戒管制機は2030年代以降も第一線での運用が継続される事となります。

 E-3早期警戒管制機のなかでも今回の改修はRSIP近代化改修対応機に対し実施され、E-3ではアメリカ空軍に33機とNATO共同運用機17機及びイギリス空軍に7機とフランス空軍4機がその対象となっています、このRSIP改修は2005年までに第一段階の改修は完了、E-3ではありませんが、この他に航空自衛隊運用のE-767のAPY-2にも施されています。
■B-1爆撃機JASSM搭載試験
 日本でもスタンドオフ兵器として長射程のミサイル導入が開始されますが、さて本場アメリカでは。

 アメリカ空軍は2020年11月よりB-1B戦略爆撃機によるAGM-158JASSMミサイル機外搭載試験を開始しました。これはエドワーズ空軍基地の空軍第419飛行開発実験飛行隊が実施しました。B-1B爆撃機は爆弾倉にAGM-158JASSMまたはAGM-158C長距離対艦ミサイルを24発搭載可能で、ステルス性を有するB-1Bは機外搭載を必須としません。

 B-1B爆撃機は現在新しくAN / AAQ-33スナイパー照準ポッドの搭載を開始しており、AGM-158JASSMを搭載するのは、将来的に爆弾倉に収まらない規模の大型である極超音速滑空兵器搭載への実証実験といえる可能性があります。アメリカ空軍はロシアや中国がすでに実用段階としている極超音速滑空兵器へ対抗可能な新型装備の開発を急いでいます。
■ハンガリーKC390正式契約
 KC390はC-130輸送機を双発ジェット化したようなブラジル設計の最新型輸送機です。

 ハンガリー政府は11月17日、ブラジル製エンブラエルKC-390戦術輸送機2機の調達について契約が成立した。KC-390は双発ジェット輸送機であるが、その名の通り空中給油機としても機能する多機能輸送機である。欧州ではスウェーデンがJAS-39グリペン戦闘機のブラジル採用をバーターとしてKC-390を採用しており、欧州で二番目の採用国である。

 ハンガリー空軍へのKC-390納入は2023年から2024年にかけて実施される計画で、ハンガリー空軍では戦闘機としてJAS-39を採用しており、エンブラエル社では自国空軍がJAS-39を採用した事を受け、その相互運用性能を重視していることから、ハンガリー軍への採用へ好影響を及ぼした事が推察される。契約金額等については明らかにされていない。

 KC-390は27tの貨物を搭載可能、人員80名やハンヴィークラスの戦術車輛3両、若しくはLAV-3クラスの装甲車1両空輸可能、13tの貨物を搭載した場合の航続距離は4815kmであり最大の27tを搭載した場合でも2593kmの飛行が可能、巡航速度はマッハ0.8に達し、これは国際航空路線において旅客機や旅客機派生の貨物機用航空航路を飛行可能だ。
■ブラジルKC-390四号機取得
 KC-390は日本のC-2輸送機と開発時期が重なりよく比較されたものですが、旅客機程順調ではないのかもしれません。

 ブラジル空軍は同国のエンブラエル社が製造するKC-390輸送機の四号機を12月に受領しました、ブラジル空軍は28機のKC-390を導入する計画で、四号機は1stGTT第一輸送航空群へ配備されます。KC-390はアメリカのC-130戦術輸送機と同程度の輸送能力を有していますが、ジェット輸送機として旅客機並の巡航速度を有すると共に空中給油が可能だ。

 KC-390はブラジル空軍の次期戦闘機へのスウェーデン製JAS-39戦闘機採用へのバーターとしてスウェーデン空軍へも配備され、またハンガリー空軍への採用も決定しています。KCと有る通り、空中給油機への転用が可能であり、またブラジル空軍は現在ブラジル国内に蔓延する新型コロナウィルスCOVID-19への医療資材輸送にもKC-390を運用中です。
■ベルギーA-400M取得
 エアバスA-400M輸送機は輸送能力と初飛行の次期が日本のC-2とよく比較されたものです。

 ベルギー空軍は導入計画が進むA-400M輸送機の2020年代初号機納入が無事果たされた事を発表しました。二号機引渡は2021年です。ベルギー空軍への納入はスペインセビリアのA-400M最終組立工場にて引渡を受け、ベルギー空軍メルスブローク空軍基地へ到着、ベルギー・ルクセンブルク共同運用部隊である第15輸送飛行隊での運用が開始されました。

 A-400M納入はCOVID-19感染拡大により遅れていました。A-400Mのベルギー空軍における運用は変則的です、第15輸送飛行隊の定数は8機ですが、ベルギー空軍の導入予定は7機、そしてルクセンブルク空軍の導入予定は1機です。これは小国であるルクセンブルクが共同運用へ参画というかたちでのNATO全体への協力を企図するものといえましょう。
■米XQ-58開発へ業界再編
 XQ-58無人機の開発へファントム無人機化を手がけた防衛企業が参加することとなるもよう。

 XQ-58無人航空機という次世代ステルス無人機について大きな業界再編が行われその実現性が大きく前進しました。XQ-58は自律離着陸が可能な滞空型ステルス無人航空機で、極めて高い実用性を秘めながら取得費用を400万ドル前後という極めて安価な水準に収めている、巡航ミサイルの延長線上にあるようなゲームチェンジャーとなりうる機体です。

 XQ-58はカリフォルニア州サンディエゴにある無人機大手のクレイトスディフェンス社にが開発している機体で無人僚機としても単独での任務にも対応可能です。今回クレイトスディフェンス社は無人機用システム開発に20年以上の経験を有する5-D社を買収し経営統合、同社は退役F-4戦闘機のQF-4無人標的機への改造実績等を持つ経験豊富な企業です。
■米老朽F-15E,中古主翼へ換装
 F-15戦闘機は使い勝手の良い戦闘機で兎に角搭載量が大きいだけに運用し続けたいものですが、老朽化の問題もあります。

 アメリカ空軍は老朽化したF-15E戦闘爆撃機の主翼をサウジアラビアF-15S戦闘爆撃機のものと換装することで合意しました。これはサウジアラビア空軍のF-15S戦闘爆撃機のF-15SA戦闘爆撃機への能力向上により不要となる旧型の主翼が未だ耐用年数を残している事が判明した為でありサウジアラビア政府と合意の上で廃棄予定の主翼を再生しました。

 F-15についてアメリカ空軍では退役したF-15A戦闘機を交換部品として備蓄しており、F-15Eについても当初はF-15A主翼を再利用する方針でしたが、制空戦闘機型のF-15Aと戦闘爆撃型のF-15Eでは主翼構造が大きく異なり、F-15A主翼再利用の場合は大きな設計変更と多額の費用が見込まれていただけにF-15S主翼転用は、大きな朗報と云えました。
■F-35,B-61核爆弾運用能力
 B-61核爆弾、これは冷戦時代の自由主義圏における標準的な自由落下式戦術核兵器です。

 アメリカ空軍は11月23日、F-35A戦闘機からのB-61核爆弾運用試験を完了しました。B-61はアメリカ空軍の標準的戦術核爆弾で可変装置により爆発威力を設定可能で、今回試験されたのは最新型のB-16-12核爆弾の核爆発能力を省いた不活性型です。試験はネバダ州トノバー試験場にて実施され、超音速飛行中に高度3000m以上から投下したとのこと。

 F-35AにはB-61核爆弾運用能力が求められていましたが超音速飛行時の投下試験は今回が初めて、B-61は設計こそ1966年と旧式ですが改良が続けられており可変装置により0.3ktから最大340ktまで爆発を調整可能、F-35戦闘機はステルス戦闘機で今回の試験は兵装庫から投下している事から、F-35の潜在的能力を改めて誇示する実験ともいえるでしょう。
■ロシア,Su-35S取得
 Su-35,F-15戦闘機を大きく意識して開発されたSu-27の改良に改良を重ねた最新型です。

 Su-35S戦闘機50機がロステック社系列のスホーイ社よりロシア空軍へ納入を完了したとのこと。コムソモリスクオンアムール航空工場にて3機のSu-35Sが完成し、この機体の納入を受けてロシア空軍への第4.5世代戦闘機後期型と位置づけられる機体の納入事業が一段落したとしています。第4.5世代戦闘機後期型とは第四世代機Su-27最新型です。

 Su-35S戦闘機50機の導入計画はロシア軍の2011年から2020年に掛けての長期国防整備計画での一環であり、第五世代戦闘機のSu-57量産遅れを補完、2008年に発生したグルジア紛争を契機として防衛力の旧式化が痛感された事を受けてのものです。今回納入された最後の3機はコムソモリスクオンアムール飛行場の第23戦闘飛行聯隊に所属するもよう。
■ウクライナ,MiG-29MU1改修
 MiG-29はF-16を意識して開発された機体ですが、こちらも戦術戦闘機として盛んに輸出が行われ量産数が多い分改修が各国で行われています。

 ウクライナ空軍は12月初旬にMiG-29戦闘機近代化改修型MiG-29MU1の受領を開始したとのこと。これはウクライナ国防相が発表したもので改良型はMiG-29MU1は空軍第40戦術航空団へ配備されるとのこと。改修部分はレーダー及びセントラルコンピュータであり、これにはウクライナ企業と共にイスラエルのエルビット社が技術提供を行ったようだ。

 MiG-29MU1の改修へエルビット社はN019-19レーダーや電子妨害システムの提供を行っており、これはウクライナ空軍に先に納入されているMiG-29MU2よりも能力が強化されているともされる。ロシアとの緊張が続くウクライナではロシア軍の先進的な防空システムに対処能力のある戦闘機を必要としており、エルビット社の提供システムは此れに当る。

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