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【日曜特集】航空自衛隊60周年小松基地航空祭(8)緊急!対領空侵犯措置発動(2014-09-20)

2021-02-21 20:20:40 | 航空自衛隊 装備名鑑
■スクランブル!55分間の緊張
 その時。本番というものは前触れなく突然やってくる場合があります、これは防衛安全保障や危機管理ならば尚更というものなのでしょうね。

 航空祭中断、なにかこのF-15Jが突如滑走路に飛び出てきた、何か違う。うむ、アナウンスもなく牽引車に曳かれるのでもなく、いきなり滑走路にF-15が滑り出してきたのですね、何か違う、違和感の正体というものはどのあたりか、しかしなにか、ある、なんだろう。

 AAM-3,そうこのF-15JはAAM-3,それも実弾が二発搭載されている、とは。AAM-3即ち90式短距離空対空誘導弾、三菱重工と三菱電機により開発された赤外線誘導ミサイルで射程は15kmです、これを二発搭載している、そう実弾のミサイルを備えているという。

 ホットスクランブル、本番ではないか。そう考えて小松空港側で撮影している友人知人に電話してみるが、いや違うだろう、とか無線は入ってないとか、ただ、その直後に航空祭の飛行展示を一時中断します、というアナウンスが入りました。つまり、そういうこと。

 対領空侵犯措置発動、アラートハンガーから滑走路へ滑り出てゆく。飛行情報区として国際民間航空機関ICAOが割り当てた空域に沿って防空識別圏ADIZが設定されていまして、飛行計画を示さない国籍不明機を全国28カ所の防空監視所が確認しますと、発動する。

 F-15J、このころに会場アナウンスで国籍不明機が接近している通知が。ロシア機でしょうか、北朝鮮機か、中国機も近年は日本まではいってくる、もちろん紀伊半島沖も小松の管区です。入間の中部航空方面隊司令部から緊急発進が命じられ、小松に非常ベルが響く。

 緊急発進へ急上昇するF-15J,これはAAM-3を搭載した本番である。これが現実、というものでしょうか。もちろんなは空港で旅客機を待っていますと沖縄では案外緊急発進が多いのですけれども、小松で航空祭のさなかにホットスクランブル、かなり希有ではないか。

 急上昇するもう一機のF-15J戦闘機、実弾搭載の戦闘機に緊張走る。航空管制により国籍不明機へ接近し国際緊急周波数にて英語とロシア語で領空侵犯しつつあることを警告する、自衛隊法では威嚇射撃の手順も、そして刑法上の緊急避難ならばAAM-3の使用さえも。

 F-15J戦闘機二機はそのまま日本海上へと飛去っていった。緊急発進はこの数年後に一年間で1000回の大台を越えた、一日平均3回という年度さえもある。敵対行動に直面することも。防衛に関する厳しい現実というのはここにあるのですね。自衛隊は此れに備えている。

 55分後、轟音と共にF-15J戦闘機が戻ってきた、犬鷲の部隊マーク尾翼の向こうに。憲法問題、しかし国家の主権が蔑ろとされては国民の権利を守る国家そのものが破綻してしまい、憲法は平和主義を含めて自衛されなければならない、厳しい現実とは主としてここ。

 スクランブル発進と対領空侵犯措置を終えて列機の向こうに着陸の姿が。戦闘機が空戦機動を仕掛けてきている、こうした内部告発的な警鐘が鳴らされたのは、この数年後ですが、緊急発進の機体を逆に威嚇するために空戦機動を仕掛ける、これは普通にあり得る事態だ。

 ドラゴンの描かれたF-15には、今回も無事使わずに済んだAAM-3が。現実問題として小規模な小競り合いとして、例えばこの航空祭の少し後にはトルコ空軍がロシア空軍機を撃墜しましたが、緊急発進の延長上にミサイルを使用する小競り合いの蓋然性は、あります。

 F-15J戦闘機もう一機もAAM-3を使わずに無事任務を終えて着陸へ。航空祭というものは防衛への理解と自衛隊への理解、というもの、広報は主目的なのですけれども、自衛隊の現実の任務、ということをもっと我々は現実へ関心を寄せるべき、と改めて思いました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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