北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】アイアンドーム米到着と露ハボック改良,独マンティスとJLTV機動車無人機狩り

2021-02-16 20:05:56 | 先端軍事テクノロジー
■週報:世界の防衛,最新12論点
 今回は防空やヘリコプターに小型装備等12の話題を。ミサイル防衛に当るイージス艦とCIWSやSEA-RAMのような装備をTHAADミサイルも必要としているのかもしれません。

 アメリカ陸軍はイスラエル製アイアンドーム戦術防空システム評価支援用の2基目のシステムを受領しました、評価試験用に導入されるアイアンドームはこれで完納となります。アイアンドームはカッサムロケット等短射程のロケット弾による同時飽和攻撃に強い防空能力を発揮出来、既にイスラエルでは2400回以上の迎撃任務に成功した実績があります。

 アイアンドーム戦術防空システムは今後、ホサイトサンドミサイル射撃場において徹底した評価試験を受け、巡航ミサイルや砲弾に対する防空能力を試験します。アメリカ陸軍では中距離弾道弾等からの防空を担うTHAAD終末高高度迎撃システムとの連接により、THAADの弱点とされる巡航ミサイル攻撃や砲撃などから防護する運用を構想している。

 アイアンドーム戦術防空システムについて、アメリカ陸軍での運用に特筆されるのはオシコシ社製トラックによる機動運用を期している点で、イスラエル国防軍では事実上の固定配備運用を執っているのに対しアメリカ陸軍では自走地対空ミサイルシステムとして運用するようで、評価試験後、2022年までにテキサス州フォートブリスに配備される計画です。
■CH-53Kキングスタリオン
 CH-53Kキングスタリオンは海上自衛隊が運用していましたMH-53掃海ヘリコプターの原型最新型です。

 アメリカ海軍は最新鋭のCH-53Kキングスタリオン重輸送ヘリコプター6機の低ロット生産分の契約を5億5040万ドルにてシコルスキー社との間で締結した。CH-53K重輸送ヘリコプターはアメリカ海兵隊所要の機体であり、航空調達は海軍が調達し海兵隊へ配備する調達方式を採っている。生産初期の低ロット生産分は24機分を契約する方針である。

 CH-53Kキングスタリオン重輸送ヘリコプターは海兵隊に200機が調達される方針で、現行のCH-53Eスーパースタリオン重輸送ヘリコプターを更に強化したものだ。6機で5億5040万ドルとは如何にも高額であるが、低ロット生産から本格的な量産へ移行した際には費用は低減されよう、今回の契約となった機体は2024年に海軍へ納入される計画である。
■ハボックの高地運用試験
 ハボック攻撃ヘリコプターはロシア版アパッチと呼ばれるヘリコプターです。

 ロシア軍はMi-28NMハボック攻撃ヘリコプター及びMi-26T2Vヘイロー重輸送ヘリコプターの高高度試験を12月より開始したとのこと、これはコーカサス山脈の最高峰であるエルブレス山付近において実施されている、エルブレス山山頂の標高は5642mだ。山間部での運用試験は既にシリア国内において実施されており、今回の試験は冬季運用が主眼だ。

 ハボックはロシア版アパッチとして旧式化したMi-24ハインドを置き換える機体ですが新たに出力を向上させたVK-2500Pエンジンが開発され、10月までの低地での運用試験を完了させているが、今回のコーカサスでは、その高高度冬季運用試験が行われる。ハボックはN025レーダーによる対地捜索や無人機の管制運用能力と能力向上を進めているもの。

 ヘイローことMi-26T2V重輸送ヘリコプターは20tというC-130輸送機並の輸送力を持つ世界最大のヘリコプターでNPK90-2V統合航法装置の高山部での能力試験が今回実施される。特に標高5000m級の高山地域における自動操縦での夜間輸送能力を試験する。二機種による試験は技術試験と共にコーカサス地方でのプレゼンス発揮も目的と考えられよう。
■ハインド後継にH-145
 ハインドと云えば重武装の攻撃ヘリコプターですが、ハンガリーは意外な軽量ヘリコプターを後継機に充てるようです。

 ハンガリー空軍は運用するエアバスH-145M軽ヘリコプターH-Force武装システム搭載型の近代化改修を行う方針です。H-145Mはハンガリー軍に20機が配備されています。H-Forceは高機能カメラ装置と操縦系統への防弾板追加、またハイドラ70ロケット12連発射装置や12.7mm機銃ポッドを搭載、軽攻撃や軽輸送に用いられる武装ヘリコプターだ。

 H-145M軽ヘリコプターは原型が川崎重工のBK-117-C2です,Mi-24ハインド重輸送ヘリコプターの後継機として導入されたもので、重厚なハインドと比較した場合、一見非力には見えますがNATO標準装備を搭載しており、対戦車ミサイルの搭載も将来的に可能です。近代化改修は既に3機に行われ、2021年にも追加の2機が近代化改修を受けるとのこと。
■アフガニスタンのMD-500
 MD-500シリーズと云えば2019年度まで自衛隊で運用されていましたOH-6シリーズそのものですね。

 アフガニスタン軍はアメリカのMDヘリコプターズ社よりMD-530Fウォリアー軽武装ヘリコプター12機を14億ドルにて運用契約する事となりました。MD-530Fは機体こそ安価なMD-500系統ではありますがディロンMCAS航空武装システム及びFNハースタル12.7mm重機関銃ポッド、M-260七連装ロケットポッド等を搭載し高度に武装されている。

 MD-530Fウォリアー軽武装ヘリコプター12機を14億ドルにて運用契約、一見非常に高価に見える契約ですが、これはMDヘリコプターズ社による運用支援及び整備支援を盛り込んだものといい、アフガニスタン軍は五年間に渡り同国での実任務に必要な支援を受ける事を意味します。現在アフガニスタンには世界有数のMD-530運用実績が積まれている。
■アメリカのJLTV統合機動車輛
 自衛隊の高機動車後継車両も機動性よりも生存性を考え、このように頑丈な車両となるのでしょうか。

 アメリカ陸軍は2021年よりハンヴィー高機動車後継のJLTV統合軽量機動車輛3230両の受領開始にあたってJLTVを製造するオシュコシ社はその生産ラインを報道公開したとのこと。陸軍と空軍が第一線での運用を想定し開発、JLTV-GP汎用型、JLTV-UTL多目的車輛、JLTV-HGC重機関銃搭載型、これらは一つの生産ラインで基本車輛が製造されます。

 JLTV統合軽量機動車輛3230両は2021年から2045年までの間に年間125両から150両を生産しハンヴィー高機動車を置き換える事としています。ただ、陸軍及び空軍はM-1114装甲ハンヴィーの全てをJLTVにより置き換えるのではなく、汎用輸送車や支援車両としてハンヴィーの運用は継続される予定で、JLTVはより危険な地域へ投入される計画です。
■JLTV,機関砲搭載で無人機狩りへ
 無人機は情報優位喪失や徘徊型弾薬など新しい脅威となっていますが、機関砲という従来型の装備がその天敵となるかもしれない。

 アメリカ海兵隊はJLTV統合軽多目的車両の一部に30mm機関砲を搭載する構想だ。JLTV統合軽多目的車両は現在アメリカ四軍で広範に運用されているハンヴィー高機動車の後継車両であり、一部は装甲防御を有するアメリカ版軽装甲機動車というべき車輛である。構想では四輪駆動型JLTVの車体上面にXM914E1/30mm機関砲を搭載するという。

 XM914E1/30mm機関砲はX-113砲弾という新型の空中炸裂弾を投射し、主として無人機やヘリコプターに対する近接防空に充てる構想だ。空中炸裂弾による無人機対処の場合、一定高度以上では破片による地上への被害を抑制できるとされ、また既存の遠隔操作銃搭RWSへ搭載する事で開発リスクを極小化できるとのこと。当面は300両への搭載を見込む。
■フィリピン軍TOW導入
 自衛隊で用途廃止となった重MATなども案外第二の使い手が在ったのかもしれませんね。

 フィリピンは11月23日、アメリカからTOW対戦車ミサイル100基など1800万ドル相当の武器をアメリカから有償供与されました。この内訳はTOWミサイル本体100発、発射装置12基、また航空機に搭載するMk.82/500ポンド爆弾24発などとなっています。フィリピン陸軍は15万名、これだけの装備が在れば一個大隊が短期間戦闘可能でしょう。

 TOW対戦車ミサイル等を必要とする背景には、フィリピンでは中国により自国環礁を不法占拠され緊張関係が続くとともに、フィリピン国内にもイスラム武装勢力による脅威が現在進行形で顕在化しており、機銃拠点等に対する有効な打撃手段として対戦車ミサイルは有用であり、また空軍の軽攻撃機や高等練習機攻撃型は500ポンド爆弾を搭載可能です。
■ドイツのマンティス機関砲
 自衛隊でもおなじみのエリコン社は現在ラインメタル社の傘下に在ります。

 ドイツ連邦軍は現在試験中のマンティス高射機関砲システムの連続射撃耐久試験を実施しました。マンティス高射機関砲システムは35mm無人砲塔システム6基と射撃管制装置2基から構成され、各機関砲は毎分1000発の速度で射撃が可能となっており、主としてアフガニスタンでの無人機攻撃やロケット弾のテロ攻撃を迎撃する運用が想定されています。

 連続耐久試験では22000発が発射され少なくとも複数回に渡り4000発を連続射撃する試験が行われましたが、これにより3本の銃身が限界に達したとのこと。マンティスはエリコン35mmの改良型、35mm砲弾には各152個の3.3gタングステン弾体を内蔵します。近年高射機関砲は近年脅威となる無人機や徘徊式弾薬に対しても有用と考えられています。
■スウェーデンのペトリオット
 スウェーデン軍も広域防空から弾道ミサイルへも対処できるアメリカ製ペトリオットミサイルを採用しました。

 スウェーデン国防装備庁は12月、スウェーデン軍が新たに導入するアメリカ製ペトリオットミサイルシステムの試験用、最初の納入を受けました。スウェーデン軍では次期地対空ミサイルとしてペトリオットミサイルとフランスのユーロSAM社製アスター30/SAMP/T地対空ミサイルを比較した上で、ペトリオットミサイル採用を決定しています。

 ペトリオットミサイルは設計が古く、例えば垂直発射に対応していない為に射撃陣地の制約がある等、アスター30/SAMP/Tに対し陳腐化している点はありますが、長期的な運用を経ているペトリオットミサイルには信頼性があり、スウェーデン軍に採用されたというもの。スウェーデン軍はペトリオットPAC-3を4個射撃中隊とミサイル400発を導入します。
■インドネシアのベル412EPI
 インドネシアも自衛隊のUH-1Jと同じ後継機を選んだ模様です。

 インドネシア陸軍は2020年12月末にベル412EPI多用途ヘリコプターの初号機を受領しました。これはベルヘリコプターテキストロン社との間で2016年に成約した契約に基づきPTDIインドネシア国営航空宇宙公社によりノックダウン生産される9機の内の初号機で、PTDIでの組み立ては24カ月間という長期間を要し完成の後、飛行試験を行いました。

 ベル412EPIはインドネシア軍で既に運用中であるベル412EPの改良型であり、エンジン出力強化とアヴィオニクスの近代化が行われています。インドネシア軍では最新鋭のAH-64Eアパッチガーディアンを取得しましたが、その数は充分ではなく、ベル412EPIへはディロンエアロスペース社製多銃身機銃を搭載しガンシップとする構想もあります。
■NATO,トルコへミサイルの提言
 アメリカ製や欧州製ミサイル以外にNATOというかアメリカのシステムと適合するミサイルには日本製も薦めたいところ。

 NATOのストルテンバーグ事務局長はトルコ政府に対してトルコ軍がNATOの一員としてロシア製S-400ミサイルシステムを運用する事はNATO航空機を危険にさらすと改めて表明しました。S-400はデータリンクに際してNATO防空システムにロシア製バックドアの危険が及ぼす可能性があり、また要撃管制網や敵味方識別機能への影響も未知数です。

 S-400はNATOと軍事対立下の時代に開発されておりNATOシステムへの適合を念頭に開発されていません。トルコは既にアメリカCAATSA敵対制裁法に基づく軍事調達局4名への制裁措置を実施しています。こうした中ストルテンバーグ事務局長はトルコ政府に対し、NATO装備体系に適合するアメリカ製ペトリオット、ユーロサムSAMP/Tを提唱しました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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コメント (2)
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