北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

自衛隊潜水艦-高知県沖で商船と衝突!潜水艦そうりゅう,足摺岬南方40kmでマストなど損傷

2021-02-08 20:14:37 | 国際・政治
■商船に被害なし,潜水艦3名負傷
 本日四国沖の太平洋にて自衛隊潜水艦と商船が衝突する事故がありました。

 潜水艦そうりゅう、が本日四国足摺岬沖で商船と衝突しました。事故は本日午前中の1058時頃に発生、商船に被害はなく、潜水艦も負傷者3名はでましたが船体に浸水などはなく、負傷者も搬送必要な重傷ではなく艦内にて手当を受けているとのこと。政府は事故を受け総理大臣官邸の危機管理センターに情報連絡室を開設し情報収集に当たっているとのこと。

 商船はオーシャンアルテミスです。商船の乗組員にけがはないとしています。事故は足摺岬沖南方40kmの沖合で、浮上航行中にマストと商船が衝突したという。オーシャンアルテミスは90000tの鉄鉱石を積載した香港船籍の貨物船で中国青島を出航し岡山県に向かい航行していた途中の事故であり、オーシャンアルテミスは衝突に気づかなかったとのこと。

 オーシャンアルテミスが事故を知ったのはNHK報道を見る限り、事故について海上自衛隊からの通報を受けた海上保安庁からの通知により衝突を知った、と報じられています。そうりゅう水中排水量は4200tでオーシャンアルテミスとマストを接触したといい、船殻部分と接触しなかった事がそれほど大きな衝撃を及ぼさなかった、という可能性もあります。

 そうりゅう、呉基地の第1潜水隊群に配備されている潜水艦そうりゅう型の一番艦で海上自衛隊初の実用AIP潜水艦として2009年に就役しました。AIP機関とは水中において原子力以外の装置により大気中の酸素を用いず動力装置を作動させ推進する方式であり、これにより潜航時間が大幅に延伸される強力な潜水艦で、満載排水量は4200tとなっている。

 事故発生時、そうりゅう、は神戸の造船所での定期整備を終え、各種機材の点検へ航行中であったといい、マストが衝突している事から浮上航行中ではなく潜航開始、もしくは浮上中にオーシャンアルテミスと衝突したものと考えられます。不幸中の幸いは、そうりゅう型マストは船殻非貫通構造であり、仮に折れてしまった場合でも浸水は生じません。

 浸水被害の有無、潜水艦事故で危険なのは航行中の潜水艦は船体の大半若しくは全てが海面下にあり、浸水した場合は沈没の懸念も生じます。特に強力な潜水艦も、衝突は想定していない為に船殻部分が同程度以上の船舶と航行中に接触した場合は破損し浸水の恐れもあります。実際こうした事故は起こっていまして、マスト破損で済んだ事は僥倖でした。

 パコーチャ沈没事故。潜水艦事故は特に船舶との衝突事故では潜水艦側は水線下に船体の大半が配置されているため、船殻に損傷が及び浸水した場合、即座に沈没の危機にさらされることとなります。実際1988年8月26日に日本の遠洋マグロ漁船第8共和丸とペルー海軍潜水艦パコーチャが衝突、潜水艦側が沈没し多数の死傷者が出る事故がありました。

 事故は夜間発生し、第8共和丸は潜水艦の警笛を受け、見張り不十分のまま衝突しています。パコーチャは水中排水量2400t、第8共和丸は総トン数412t、排水量ではこのようになっていますが、沈没したのは潜水艦側でした。艦長以下8名が死亡し、脱出出来なかった乗員23名は海底に沈みましたが、30時間後に潜水艦救難艦により救助されたのは幸い。

 なだしお事故、としまして同じ1988年7月23日には自衛隊の潜水艦が遊漁船第一富士丸と衝突し、遊漁船が沈没する事故がありました。潜水艦せとしお、なだしお、護衛艦ちとせ、が横須賀基地に向け航行中、なだしお側は近接するヨットを注意していたところ、東京から新島に向かう第一富士丸が突如取り舵を取ったため、回避が間に合わず衝突した。

 なだしお事故、COLREG海上衝突予防条約では海上は右側通行が原則で、取り舵を切った遊漁船の意図は不明ですが、潜水艦の警笛を受けても進路速度を維持したため衝突、海難審判によれば、遊漁船の接近への見張り不十分、潜水艦に接近した段階で取り舵をとった操船により、双方に過失があった、海難審判では双方の責任者に有罪判決をだしています。

 今回の事故に話題を戻します。不思議なのは潜水艦がソナーで商船を発見できなかった原因です。オーシャンアルテミスは積貨重量90000tとかなり大きな貨物船です。河川河口付近では塩分濃度層が音を遮断する事もありますが、足摺岬南方40kmでは宮崎県の大淀川からも遠く、影響は考えられません。海水温度層も見逃すほど小さな商船ではありません。

 実任務増大により海上自衛隊の第一線部隊は展示訓練さえ実施できないほど艦艇稼働率が高くなっており、遠くない将来に訓練不足が重大事故の頻発に繋がる可能性がある。これは何年も前から指摘されている点です。定期整備後ですのでソナー故障も考えにくいものですし、単純な航海要員や水測要員の伝達ミスの可能性があります。再発防止をしっかりしてほしいですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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