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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

中国空母部隊演習!東南アジア諸国を恫喝,ミスチーフ礁軍事基地完成とスカボロー礁基地化

2018-04-09 20:01:08 | 国際・政治
■現実化する南シナ海閉塞化
 日本は海洋国家として、海洋の自由と平和の上に国家の繁栄が成り立っています。しかし、現在進む中国による南シナ海閉塞化が継続した場合、重大な判断を迫られるでしょう。

 中国海軍は航空母艦を中心とした空母機動部隊を編成し、南シナ海方面での大規模な艦隊訓練を三月下旬に実施、今後この規模の演習を南シナ海において一ヶ月に一回程度の間隔で実施するとの方針を表明しました。実施海域は中国が造成した人工島周辺であり、東南アジア諸国は対応する海軍力を有さず、周辺国への軍事圧力が着実に増大しています。

 フィリピンから1990年代に不法奪取したミスチーフ礁は当初は中国漁船避難施設として扱われていましたが、2010年代半ばより新型浚渫船を大量動員し、地対空ミサイルと戦闘機部隊を置く不沈空母へと改造され、続いてフィリピン中枢を攻撃範囲に含むスカボロー礁へも同様の軍事基地化が進められており、南シナ海全域海洋閉塞化が進みつつあります。

 南シナ海において中国が武力奪取したヴェトナムやフィリピン環礁の人工島化、この建設について、もともと中国には軍事的野心は無く人工島の軍事施設への転換の予定もない海洋観測施設である、として海洋観測施設に戦闘機部隊の配備、長距離地対空ミサイルや東南アジア諸国を監視可能な超水平線レーダー建設を実施しました。実質反故にされている。

 アメリカ海軍は航行の自由作戦として、中国が一方的に領海宣言を行った人工島近海において海軍艦艇による航行を実施、これは1986年にリビアが公海に当たるシドラ湾全域を領海宣言した事へのレーガン政権による空母任務群三個の展開とは比較にならない程規模は小さいものの、駆逐艦を数か月に一回派遣し、中国への抑制を呼び掛ける目的で行われた。

 しかし、実質数か月に一回の派遣では、アメリカが過去に犯した失敗、ヴェトナム戦争において住民宣撫と民心安定を常続的ではなく、定期的に行った事で米軍が去った後のポテンシャルの空白が結局、敵対勢力の跳梁跋扈を黙認する構図となり、失敗した。航行の自由作戦も、米軍が航行しない期間が圧倒的に長く、ポテンシャルを維持できていません。

 中国海軍の空母打撃群が三月下旬より南シナ海の海南島沖で大規模な軍事演習を展開中である、この一報はロイター通信が写真解析などから報じました。中国海軍が保有する航空母艦、ソ連が冷戦時代に建造しソ連崩壊後ウクライナにて放置されていた中古空母を取得し完成させたもので、艦載機の運用能力はアメリカ海軍空母よりも極めて限られています。

 しかし中国海軍は順次国産空母の建造を進めており、その一番艦は本年中にも公試開始、竣工へと進む見通しです。東シナ海地域においては海上自衛隊のポテンシャル、そしてアメリカ海軍基地も置かれており、中国海軍は盛んに航行を行うものの、その優勢を誇示できる見通しは全くありません。しかし、東南アジア諸国には外洋海軍を有さない国も多い。

 シンガポール等はステルスフリゲイトや中型揚陸艦と潜水艦を保有し、確たる海軍力を構築していますが、規模は限られ、アメリカ海軍にセレター軍港を改修し米軍基地化する検討を2000年代に実施したものの、支援設備などでは在日米軍基地に劣り、また米軍再編として日英等の戦略拠点を除き、主力を本土駐留とする指針を示した為、実現していません。

 タイ海軍には軽空母が1990年代より配備されていますが、アジア通貨危機後艦載機が老朽化しヘリコプター母艦となっており、マレーシア海軍やヴェトナム海軍、インドネシア海軍は海外製コルベットの調達、フィリピン海軍では中古水上戦闘艦無償譲渡の模索等、一応の努力を行う国もありますが、海上自衛隊の沿岸任務二桁護衛隊以下の海軍力が多い。

 日本から見れば中東から続くシーレーンはマラッカ海峡を隔てて南シナ海を経由し日本へ到達します。ただ、厳密には豪州大陸北部を太平洋へ迂回し四日程度の航路延伸で南シナ海を迂回する事は不可能ではありません。これを以て、南シナ海のシーパワーが海洋航行自由原則を共有する日米アジア諸国から中国の海洋閉塞へ転換を是認できる見方もある。

 しかし、多国間国際分業体制として日本はじめ多国籍企業による知的集約財の製造には、東南アジア全体で部品調達と部品集約を経て最終組立を行う、自動車やハイテク製品等の事例が多く、東南アジア域内移動へ太平洋やベンガル湾沿岸からの陸上移動を使う事は恰も東京から大阪へ移動する際にソウル経由で羽田と伊丹へ赴くようで全く成り立ちません。

 経済活動という国家の頸動脈を閉められる事は東南アジア諸国には日本以上に遥かに死活的問題であり、場合によっては間接的に日本の平和主義を孤立化させる危険性をも孕んでいます。この点について、例えば中国がかつて沖ノ鳥島に対し実施したような行動を逆に我が国が実施するなど、地道な手段で南シナ海の安定へ責任を持つ行動を迫られる時期は遠くないのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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8 コメント

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Unknown (はやしお)
2018-04-09 20:11:42
潜水艦だけでも東南アジア諸国と訓練名目で派遣し、中国を糺すべき

中国は昔の日本の過ちを辿っており、糺すのは民主国家先進国の義務だ
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Unknown (流線形)
2018-04-14 09:13:58
東部時間の4/13に、第六艦隊が超音速対艦ミサイル迎撃を含む実弾射撃訓練を実施したようですね。
4/11からは、独ヘッセンとも訓練していたという事で、ロシアに対する牽制ですね。
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Unknown (Unknown)
2018-04-15 23:56:45
シリア情勢で孤立するロシアと南シナ海で孤立する中国が双方の係争地域で合同したら、厄介ですね
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Unknown (人民の目)
2018-04-17 11:56:33
一方的に中国を悪者であるかのように扱い、貶めるのはよくないです。
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Unknown (流線形)
2018-04-17 23:11:10
ただ、脅威と認識しているというだけだよ。
悪く言っているわけでは無いと思う。
そう、早とちりせんでもいいと思うが。
何か心当りでもあるんかね…。
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Unknown (Unknown)
2018-04-18 13:50:57
侵略が悪い事なので、侵略を行う中国が悪く言われるのは当然だ、南シナ海の侵略を止めれば丸く収まる
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Unknown (コムサム)
2018-04-19 15:35:30
日本は平和主義ではなく傍観主義、これでは平和は実現出来ない

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Unknown (流線形)
2018-04-25 00:42:26
第六艦隊が欧州戦域に入ったこと自体が大きく取り上げられていますね。
Navy Times(米海軍のOfficial News)でも連日取り上げてます。
”check out Russian"と書いているんで、ロシア牽制が目的であることは確かなんですが、”Theater”に入ったことが牽制になっているという理由が今一つ判ってません。
誰か解説頂けませんでしょうか?
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