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【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【22】自衛隊とアメリカ軍マルチドメイン戦略(1)(2012-10-08)

2024-05-12 20:24:59 | 海上自衛隊 催事
■日米同盟と米中対立
 今回から自衛隊観艦式の写真と共に本来であれば独立した特集記事とする予定でしたマルチドメインドクトリンへの一視点を文章として掲載します、解説を書くのがしんどくなったとかではない、多分ね。

 アメリカの認識は大丈夫なのか、台湾有事に関する図上演習を行った際に日米は最終的には勝利するがアメリカは航空母艦2隻を失い日本も護衛艦11隻程度を失う、こうした研究結果が2023年に発表されまして詳細は非開示ながら日本の研究者を驚かせました。

 図上演習、ただ当時は詳細が非開示であり、軍関係者と保守系シンクタンクなどが専門分析を行ったことがだけが示唆されていたものの、なんとか勝てるのか、という安堵と、恐らく造船能力を考えると中国のほうが艦隊の建て直しは早い、という危惧などなど。

 日本からは笹川平和財団など参加者があったのですが、あれからまもなく一年というところで徐々に情報が出始めていまして、その詳細は少なくとも両国は全面戦争に達せず、限定戦争の方式をとり台湾海峡有事に日米中が衝突していたという点が示されている。

 戦場の霧、といういま実際に最前線では何が起こっているのかということが指揮官にはわかりにくい部分がなにしろ図上、一目瞭然となっていたことが日本側からみますと、現実として可能なのかという疑問符を投げかけるものではあったという。

 オシントにシギントにコミント、情報収集能力も実際には戦闘を左右するのですがあまりこの点は、アメリカの情報収集能力への自身の現れかのかもしれませんが、日本の視点から見ればその能力を過大評価していないかという疑問符などもついていて。

 短期決戦として一定以上の損失が中国側に積み重なれば中国側が断念するという想定でもあり、いやこれ図上演習ですので年単位の長期戦を想定しないこととしなければ関係者が帰宅することもできませんので仕方ないようにみえますが、違和感のひとつ。

 限定戦争であるためにアメリカは中国本土の基地や施設を叩くことはなく、逆にグアムや沖縄や九州の基地施設を中国が叩かない、報復により全面戦争に展開することを互いが回避するであろうという認識だそうですが、空母いぶき漫画ではあるまいし。

 戦場の霧については、アメリカの視点からしますとロシアウクライナ戦争やハマスイスラエル攻撃とモスクワテロ事件にイランイスラエル本土攻撃を的中させたという自信の現れなのでしょう。けれども情報を実際に活かせたのはイランの例だけにみえます。

 オシントにシギントにコミントについては、これも実際にどこまで実践で機能するのかは、電子戦技術いついて中国は2000年代と2020年代を比較すると西側でいうならば1980年代と2030年代くらいの開きを実現していますので安易に優位を自負できるのか。

 短期決戦については、重要でロシアがなぜ大損害を被っているにも係わらずウクライナから撤退しないのかという点と重なり、民意ではなく権威主義国家の政策決定とそこで失策を認めた場合の政権、というよりも頂点の一人が有する権力基盤への響き。

 長期戦となっているのは、民主主義国家では政権は選挙により倒れるが権威主義国家では政権はある日突然倒れる、それは離反や造反により物理的に倒れることを意味していますので、一回軍事的な失敗を冒せば政変にさえつながりかねない事への理解です。

 限定戦争についても、結局その線引きは曖昧であり、いやだからこそ日本はミサイル防衛に、従来の防衛力を事実上瓦解させるに等しい巨費を投じてまで、整備してきたことを忘れてはなりません、本土は安泰というのは余りに楽観的要素ではないのか。

 マルチドメインドクトリンというアメリカ自身の陸軍などの変革をみますと既に中国本土を叩くことを事実上ドクトリンに内部化していますので、するとこちらも叩かれる想定が必要で、特に基地など補給施設を使えるかどうかが、無視できない不確定要素だ。

 想像力という視点をもう少し日米は腹を割って話し合うべきではないかと思うのです、アメリカは合理主義の国ですので合理的よりも世俗と文化の要素が多い選択肢を選ぶ権力者や国家と、場合によってはその国の世論さえも、分析に失敗していないか。

 太平洋戦争などは日米共通の話題となるところでしょうし、前のトランプ大統領が、真珠湾を忘れない、と公言した半年後には護衛艦かが表敬訪問という時代となっていますので、かが艦名は真珠湾を叩いた空母加賀、遺恨を越えた研究はもっと可能だろうと。

 軍事的に対抗できない国が軍事行動のような自殺行為を起こすはずがないという合理的な解釈は、自暴自棄になった国が何を起こすかまでの想像力が及ばなかったことといえるわけでして、この点でよみに大きく失敗していたのでした。

 沖縄戦の米軍死者数はバルジ大作戦ともよばれるアルデンヌ冬季攻勢での米軍死者数を上回り、しかし沖縄戦に参加した米軍師団は6個ですがアルデンヌ冬季攻勢の参加師団は33個という、追い込まれた軍隊の死闘を予見できなかったのもアメリカだ。

 石油禁輸という、実質的に日米開戦の直接要因になった施策についてもアメリカ政府は日本でガソリン車保有者が人口の4%であることから日本国民を敵に回さない経済制裁として慎重に選んだ結果として石油を対象としたのですが。

 石油禁輸で国民の財産という認識があった海軍の艦隊が稼働できなくなるかもしれないという危機感が太平洋戦争に向かわせる世論の支持に大きく影響するところまでは、やはりここでもアメリカは予測できなかったのです。今回の図上演習とにている点が。

 コメの自由化、いやアメリカに関しては1990年代まで日本の農業政策を相当誤解していまして、石高など日本にとり麦や大豆とは比較にならない一種の信仰とさえいえるコメの部分で日本にアメリカが最大限譲歩していればとまで考えることができなかった。

 コメでアメリカが日本のこだわった完全自給率100%を支持し唯一の例外としていたならば、なにしろコメがあればあとは副食とさえ考える価値観があり、そのほかの分野で、自動車や牛肉や半導体などで大幅な譲歩を引き出せたかもしれないというのに、とね。

 中国とアメリカの軍事面での緊張を考えますと、もうすこし哲学的な意味で中国といいますか、いやアジアを理解するならば日本的な感覚を理解することによってだけでも、ちょっと考え方の違う国というか文化圏があるのだ、と理解の一助となるような。

 日本と中国は防衛戦略でも絶対国防圏という認識と接近巨費領域阻止という概念はかなり共通性がありますし、台湾問題については段階を独立に進まねば、これも中華民こくという独立国なのだからおかしな話ですが、建前と本音を分けられる可能性は、ある。

 太平洋をハワイで中国とアメリカで分割しようという案を中国から突きつけられ、海洋自由原則でそもそもアメリカのものではないという認識のアメリカを困惑させたのが10年ほどまえですが、このあたりのすり合わせも、もう少し精力的に行うべきなのでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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