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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

軍用ドローンの憂鬱-消耗品としての大量需要と事前備蓄阻む素早い陳腐化(榛名防衛備忘録)

2024-05-13 07:00:48 | 先端軍事テクノロジー
■榛名防衛備忘録
 ドローンが有れば何でもできるのでキケンだ的な論調がNHKなどで示されていますがそろもそドローンと云えば掌に乗るホーネットから旅客機よりも良く単が大きなグローバルホークまでいろいろ。

 フランス軍は4月に行われた工兵訓練において無人機運用について触れ、小型無人機による将来戦闘への準備について、事前備蓄は有事が年内ではなく数年後であれば戦時における陳腐化を生むというジレンマと共に必要な大量の消耗品としての無人機を規格化して備蓄することは事実上不可能である、という厳しい認識を示しました。

 無人機といえば沿海州から東京や京都まで届くシャヘド136自爆用無人機を思い浮かべるところですが、シャヘドが使われているのはせいぜい9000発程度、現在のウクライナでは100万ちかい無人機が消耗品として使われていて、それは飛行距離がせいぜい数kmの、しかし家電量販店で数万円で入手できる民生無人機が数の上での主流です。

 ロシアウクライナ戦争において様々な無人機が投入されていまして、自衛隊でもアナフィやスカイレンジャーといった無人機が採用されていますが、1000名規模の部隊が数千機の無人機を投入しているというロシアウクライナ戦争における無人機の運用実態を見ますと、各普通科連隊が十数機を保有するという現状では全く不足しています。

 しかし、同様の問題は世界中の軍隊が抱えているもので、特に軍用無人機だけで十分な需要を満たすことは出来ないという前提があり、有事の際には民生無人機を何とかして軍用に改造する必要に見舞われているのが現状です。これはグローバルホークやリーパーといった無人機を駆使する無人機先進国であったアメリカでも数ではいまや。

 フランス軍での工兵演習では、本来ならば擲弾搭載無人機を投入する状況であるものの、擲弾搭載無人機が管制していない事から既存の無人機に機動を再現することで対応することとなりました。擲弾搭載無人機というのは、ウクライナ軍が手榴弾を粘着テープで改造民生無人機いに張り付けて相手に突入させるという現場の発想で生まれたもの。

 擲弾無人機というのは当初、なにしろ粘着テープで無理やり巻き付けた外見からアメリカ軍などは嘲笑していましたが、人間が手榴弾を投擲して1㎞先の陣地に命中させるのは不可能ですし、無人機ならば200m先にあるビルの一室に立て籠もって機銃陣地としている状況であっても、一発の無人機で制圧できますし、費用は手榴弾数発分という。

 ロシア軍では現在、民生無人機を軍用改造する際、シリアルコードの不正解除と衝突防止システムなど安全プログラムの不正削除、無線周波数帯の不正変更による長距離飛行能力の付与、緊急安全着陸機能不正削除や飛行制限高度回避プログラムの削除などを行い、組織的に安価な民生用無人機を自爆用無人機に改修する教育訓練を実施中です。

 対人地雷を無人機を用いてウクライナ軍の接近経路に散布するとか、ウクライナ軍陣地を発見するとその周辺に無人機で対人地雷を散布する、RPG対戦車擲弾を改造無人機に括り付けて大量に衝突させる、指向性散弾地雷を無人機に括り付けてウクライナ兵付近で管制起爆させるなど、消耗品として大量の無人機が用いられています。

 日本は今後無人機を重視する場合、ロシア軍が行っている不正改造の方式を踏襲するか、若しくはもっと安価な防衛用無人機を規格化したうえで民生流通させ、有事の際に接収して再プログラムする方式などを検討しなければなりません、ウクライナでは日本の5.56mm弾100発分程度の費用の無人機が、活躍しているのですからね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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