北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】オーストラリア国防強化,ハンター級フリゲイト導入計画見直しとMQ-28 ゴーストバット無人戦闘航空団

2024-05-20 20:23:02 | 国際・政治
■防衛フォーラム
 今回はホバート級イージス艦の写真と共にオーストラリアの最近の国防強化政策の概要を見てみましょう。

 オーストラリア海軍はハンター級フリゲイトの導入計画を半減させ水上戦闘艦計画を再編する構想を発表しました。ハンター級フリゲイトはイギリス海軍が導入する26型フリゲイトのオーストラリア海軍仕様で、2018年にBAE社やナバンティア社とフィンカンティエリ社案を比較し決定、アンザック級フリゲイトの後継として9隻を導入する計画でした。

 26型フリゲイトは現在イギリス海軍の主力を構成している23型フリゲイトの後継艦と位置づけられていますが、満載排水量は4200tから長期航海に対応すべく8000tへと大幅に増大するため相応に建造費も大きくなります。オーストラリア海軍は2020年の見積もりで9隻を建造した場合の費用を460隻と見積もっていましたが、問題は9隻という数です。

 ハンター級フリゲイトを11隻まで建造数を増強する検討が為されましたが、予算上の問題から断念されています。しかし、増大する中国海軍の海洋進出頻度を前に9隻のハンター級では対応できるかが難しく、この為にハンター級を11隻増強検討から逆に半減させ、6隻を導入し、浮いた費用を別の水上戦闘艦艇建造に振り分ける方針を示したかたちです。■

 オーストラリア海軍はハンター級補完用に護衛艦もがみ型などを検討しているという、これはアルバニージー政権が、増大する中国海軍の圧力を背景にアンザック級フリゲイト後継艦をハンター級を加えた20隻程度の水上戦闘艦で置換える海軍再編構想を発表しました。新しい艦艇には汎用フリゲイト、そして有人運用可能である大型無人艦等も整備する。

 もがみ型護衛艦、韓国の大邱級フリゲイト、ドイツのMEKO-A200型汎用フリゲイト、スペインのALFA3000型フリゲイト、オーストラリア海軍汎用フリゲイトにはこうした艦が候補として挙げられています。もがみ型護衛艦は建造費の安さと共に日豪防衛協力の前進と自衛隊での運用実績という利点がありますが、そうりゅう型潜水艦の失敗事例がある。

 汎用フリゲイト案のほかに、ドイツのMEKO-A200型汎用フリゲイト案は今回退役するアンザック級フリゲイトがもともとMEKOシリーズであるために合理的な案といえる。そしてスペインのALFA3000型フリゲイトはオーストラリア海軍がホバート級イージス艦を建造した同じナバンティア社製という利点、大邱級は小型で最も安価という利点があります。■

 オーストラリア空軍は2024年に武装無人機配備を開始すると発表しました。オーストラリア政府は武装無人機配備を発表していますが、現時点でその立地については情報管理の対象としており、国内の何処か配備基地や導入機種については非開示としており、また導入や配備が開始された場合でも情報開示を行うかについても明確な情報を示していません。

 無人戦闘航空団、ただ概要を大まかに示すものとしてオーストラリア政府は今後4億ドルを投じて無人戦闘航空団を創設するとしていて、ボーイングと共にロイヤルウイングマン無人僚機として開発を進めていたMQ-28 ゴーストバットを配備するとされ、この機体は1 億 1500 万オーストラリアドルで 6 機が製造されるため、部隊規模が有る程度推測可能だ。

 MQ-28 ゴーストバットについて、オーストラリア国防省はF-35戦闘機など第五世代戦闘機1機をもととしてMQ-28 ゴーストバットを加える事で飛行中隊に匹敵する部隊運用が可能となるとしています。無人機は長時間滞空型の装備が長らく整備されてきましたが、オーストラリアは高速飛行可能の無人僚機開発に6億オーストラリアドルを投じました。■

 オーストラリア政府は日本の反撃能力整備へのミサイル試験場の提供を示唆しました。自衛隊の反撃能力は従来の地対艦ミサイルのような射程を遥かに超え、射程は2000kmを超えるものと想定されています。このため日本国内に試験場を確保する事は出来ず、オーストラリア政府へ発射試験設備の整備や発射試験などの実施可能性を打診してきました。

 オーストラリア国内ではこれまでもJAXAが独自開発していた超音速旅客機試験用無人機の試験や、天体採取物の往還型衛星帰還などの用地を借用した実績がありまして、広大な国土と人口希薄な砂漠地域を国土に有するオーストラリアはこうした試験をおこなうさいに重要な環境を有しています。一方で、オーストラリアの安全保障政策も関係し得る。

 オーストラリア軍は2010年代に進めていた装甲車両などの増強計画をいったん中断し、中距離ミサイルを増強する構想を進めていますが、オーストラリア自身にはこうした長距離ミサイルの開発計画などはありません。このために、日本の反撃能力整備は、場合によっては日豪防衛協力や防衛装備品開発などにも影響を及ぼす可能性はあるのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-ハリコフ再侵攻ロシア軍前進速度大幅鈍化,ハリコフ市目指さすインフラ破壊

2024-05-20 07:01:45 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 今回はウクライナ軍の防空リソース枯渇が叩かれた要因となっていて今後の各国防空装備支援強化が求められるとともに、自衛隊の防空や戦闘機などの施策にも一つの参考例となる。

 東部戦線の全般概況について、ISWアメリカ戦争研究所が5月13日に公表した戦況分析によれば、ハリコフ州に侵攻したロシア軍はリプシとヴォフチャンスクで前進、対してロシア軍が前日まで攻勢を強めていたチャシブヤールではウクライナ軍が防衛線構築に成功、チャシブヤール北東においてロシア軍から陣地奪還に成功したもよう。

 チャシブヤールでの戦闘とともにフリボケでの戦闘ではロシア軍が中心部にロシア国旗を掲げたものの、村の一部ではウクライナ軍が陣地を維持し戦闘を続けている。ルキャンツイやオリインコヴェなどリプシ村周辺での戦闘も激化しており、ウクライナ軍参謀本部はロシア軍がこの方面において戦術的成功を収めたことをみとめました。

 ヴォフチャンスクでの戦闘ではロシア軍が複数の橋梁を組織的に破壊していることが確認されていて、ヴォフチャンスクでのロシア軍の前進は、掃討などをおこなわずにそのままウクライナ軍抵抗拠点のうち迂回できるところは迂回し橋梁破壊をおこなっていることから、ISWが当初分析した”緩衝地帯”確保の動きの現れと分析しています。
■防衛情報-ウクライナ戦争
 ゼレンスキー大統領は再度の大規模攻撃の懸念を表明しているところですが。しかし大規模な国境要塞を建築できないことが弱点というウクライナの状況は自衛隊にも当てはまり機械化部隊の再編などが必要となるよう思える。

 ハリコフ周辺でのロシア軍攻撃速度が低下している、これはISWアメリカ戦争研究所が5月14日の戦況報告として示したもので、過去24時間におけるロシア軍の攻撃速度が鈍化していると情勢変化を報告しています。この鈍化傾向をうけ、ISWはロシア軍の攻撃がハリコフ州での緩衝地帯構築が目的であった証左としています。

 ウクライナ軍の防衛戦闘について、ウクライナ軍事情報総局長ブダノフ中将が14日に説明したところによれば、13日から14日にかけて安定し始めているとのこと。更にハリコフ州へのウクライナ軍増援部隊も到着し始めており、第一段階としてウクライナ軍はヴォフチャンスクのロシア軍部隊への掃討作戦を開始しているとしました。

 ロシア軍はかなりの損害を被っており攻撃の鈍化は損害によるものだ、とはウクライナ軍顧問のマショヴェッツ氏の発言で、この点についてはウクライナ軍参謀総長バルヒレヴィチ将軍の発言として、ロシア軍はこの地域において第47戦車師団などの6個大隊を投入していて過去24時間で最大1740名の兵員を喪失したとしています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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