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【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【15】むらさめ型護衛艦に続く第三世代汎用護衛艦(2012-10-08)

2023-08-06 20:02:46 | 海上自衛隊 催事
■次の護衛艦を考える
 観艦式の写真と共にいろいろ海上自衛隊関連の話題を掲載する特集となっている日曜特集です。

 むらさめ型護衛艦後継艦がどのようになるのか、一番艦むらさめ竣工が1996年ですので既に一番艦艦齢は27年、イージス艦こんごう艦齢に至っては30年でもありますから、真剣にその後継艦を計画しなければなりませんが、特にその運用環境が変化した。

 汎用護衛艦は、求められる運用性能に1990年代の設計当時は、アフリカ方面での長期作戦運用などは考えられなかったでしょう、しかしソマリア沖海賊対処任務によりその任務は恒常化しており、また護衛艦を取り巻く国際情勢も大きく変化しています。

 反撃能力という新しい防衛力整備を考えるならば、例えばアメリカのスプルーアンス級駆逐艦のようにMk41VLSを61セル搭載し、汎用護衛艦を水上からの打撃力に用いるという選択肢は当然考えられます、しかし同時に脅威の変化も留意する必要がある。

 対艦ミサイルの射程延伸が続いていますし、何より無人水上艇による攻撃という新しい脅威が顕在化しており、これは従来の対水上戦闘の概念をおおきく変えうるものとなるのかもしれません。無人艇は行動圏内が限られる一方、運用に柔軟性があります。

 搭載センサーをどのように考えるか、無人艇の脅威を直視すればマストに設置する対水上レーダーでは無人艇による飽和攻撃を直前まで把握できない可能性がありますので、無人ヘリコプターや小型無人機を上空に待機、対水上警戒を行う必要が出てきます。

 はるな型ヘリコプター搭載護衛艦のような航空機格納庫容積に余裕を持たせることで無人ヘリコプターや無人航空機を十分に搭載させるという選択肢はでてくるでしょう。船体設計では、はるな型の基本設計の延長線上に、むらさめ型護衛艦が位置するのですし。

 哨戒艦、汎用護衛艦の将来における不確定要素に12隻という纏まった数を量産する海上自衛隊哨戒艦というものがあります。これは基準排水量1920tで速力は20ノット、乗員30名で派手な武装は無く30mm機関砲と飛行甲板や多目的格納庫を有するという。

 観艦式に参加するならば一隻当たり300名は乗れそうだ、乗員が少ないので地本要員やほかの地方隊と陸上自衛隊などからも安全員として支援要員が必要になるか、という視点はさておき、この哨戒艦が護衛艦を平時の警戒監視任務から解放する可能性がある。

 平時における警戒監視任務は護衛艦でなくとも可能であり、実際近年は護衛艦の訓練時間を圧迫することから警戒監視任務に掃海艇や多用途支援艦まで動員、補給艦が当たったという事例も散見されます。しかしこれらの艦艇にも任務があることは変わりない。

 1920tの船体に乗員30名であれば、これは全員が個室を与えられ、つまり一か月二ヶ月の長期航海に対応する可能性があります、3交代制をとるならば1直あたり艦長や船務長を除けば9名で運用する必要がありますが、警戒監視と記録だけならば可能でしょう。

 油槽船1号型、4900t型油槽船として2022年に2隻が揃って竣工した海上自衛隊期待の大型支援船ですが、全員が個室という自衛隊の艦船として油槽船1号型は初の実績を積みました。油槽船1号型で全員個室が実現したのだから哨戒艦でも十分あり得ます。

 ひびき型音響測定艦、情報収集艦であり艦内が全く公開されないために詳細は不明なのですが、こちらについても長期間の航海を行うとともに運用を自動化しているため、ほぼ全員が個室という話がありまして、しかも運用上その連続航行日数も数か月に及ぶ。

 SURTASS船という、長大なAN/UQQ-2監視用曳航アレイソナーを運用する音響測定艦は基準排水量2850tに対し乗員40名、この為トレーニングルームや自習室と艦内での野菜栽培装置などを搭載しているといい、1991年竣工ながら居住性の理解があった。

 警戒監視任務、12隻の哨戒艦といいますと護衛艦の48隻と比較し四分の一ではないか、という反論が来るかもしれませんが、一人当たりの居住区画容積を護衛艦よりも余裕を持ち、一回当たりの航海日数が多ければ護衛艦30隻分の警戒監視任務も可能となる。

 むらさめ型護衛艦後継艦は、こうした観点から任務を第一とできる余地が生まれます。ただ、護衛艦は30年間にわたり運用し、特に次の汎用護衛艦は20隻に上る第三世代型汎用護衛艦の鏑矢となるため、毎年一隻を建造した場合でも20年間の整備期間へ。

 第三世代汎用護衛艦は、いや、第一世代汎用護衛艦の20隻は、はつゆき、うみぎり、に至るまで一定の同等性能を基に整備されていますが、第二世代汎用護衛艦は最初の一隻、むらさめ、最後の第二世代汎用護衛艦しらぬい、比べますとかなり変容がある。

 ロシアウクライナ戦争の戦訓を反映するならば、極論として政治が北大西洋方面へ護衛艦隊を展開させ睨みを利かせる運用を要求する可能性も皆無ではありません、実際、1990年代と2020年代の日本安全保障政策は周辺情勢に併せてものすごく大きく変化した。

 自爆型無人機、2024年にもシャヘド136ロシア仕様無人機工場がロシア国内に完成しますと安価な無人機が毎年数千機製造される事となる、シャヘド136の射程いや航続距離は1800㎞から2500㎞ですので沿海州から東京は勿論、福岡にさえ届くのです。

 反撃能力で反撃すれば抑止力になる、こう思われるかもしれませんが、策源地攻撃を行うとして大袈裟な発射装置が不要でピックアップトラック荷台からさえも発射しうる自爆型無人機を完全制圧するには、現実的にはすべての車両を叩くなど現実的に不可能だ。

 ウクライナ軍は無人航空機による反撃をモスクワに重点的に展開していますが、これは民主主義国家ではなく明確に格差を容認している権威主義国家に対しては策源地攻撃は、ウクライナの視点でモスクワやサンクトペテルブルクに行う必要があるという認識で。

 反撃能力、直接侵攻は無くともイエメン内戦におけるサウジアラビアやアラブ首長国連邦へのシャヘド136攻撃に見られるような、例えば日本の原発や石油貯蔵施設と空港や人口密集地に対して、日本人そのものが大量破壊兵器だとして攻撃する可能性はある。

 極論だといわれるかもしれませんが、ブチャの虐殺やオデッサの穀物倉庫への攻撃は、こうした意識がある故と考えなければならない、ロシアから見て同胞であるウクライナへこの仕打ちと考えるならば、ロシアから見て日本は同胞以上の存在なのか、と。

 汎用護衛艦に反撃能力を搭載し北大西洋に展開し、各国領空を経由せずバルト海側から反撃を行うという選択肢は、岸田政権のドクトリンにおいて考えなければなりませんし、すると汎用護衛艦の行動半径についても、こうした見直しを含める必要が出てくる。

 逆に食料自給率と再生可能エネルギーや水素動力と原子力に重点化、鎖国で専守防衛を貫ける国家へ転換する可能性も皆無ではない。護衛艦はこうした国家の施策を先読みし設計する必要があるため、第三世代汎用護衛艦は今から一つの関心事ともなるのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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