◆2020年代を担う防衛力整備基本計画
政府は本日、今後約十年間にわたる防衛計画の基本方針、防衛計画の大綱を発表しました。
防衛計画の大綱において、統合機動防衛力整備という方針を示し、このもと、年々強まる南西諸島への軍事的圧力を現実問題として扱い、平時における警戒監視能力と共に有事における絶対航空優勢及び制海権の確保を主体とした我が国主権の維持を達成する防衛力を構築する方針を明示しました。
25大綱の制定に伴い、陸上自衛隊は1962年の五方面隊制度導入以来、実に半世紀ぶりであり陸上自衛隊創設以来最大の改編が行われます。この改編は、陸上自衛隊の北部・東北・東部・中部・西部各方面隊の一部方面総監部司令部機能を再編し、陸上総隊が創設されます。
陸上防衛力は実質的に機動部隊と地域部隊への分化にあたり、これまで陸上自衛隊は全国に配置する全ての師団と旅団を地域配備とし、機甲師団と中央即応集団を機動運用部隊とする運用を採ってきましたが、新しい防衛大綱では機甲師団に加え中央即応集団を発展的に解消し、空挺団のほか、3個師団2個旅団を機動師団機動旅団へ強化することとなりました。
陸上総隊の創設は、単純に幕僚機構を移管するための東部方面総監部の改編、というような話ではなく、東部方面総監部が陸上自衛隊の機動運用部隊を一括運用し、機動軍司令部というような機能を発揮することとなり、その名称は変わりますが機能は強化されるという事です。
これに伴い今後五年間の中期防衛力整備計画では2個師団が機動師団編制へ、2個旅団が機動旅団編制へ改編されることとなります。地域配備部隊としては五個師団と二個旅団が維持され、従来の地域配備部隊八個師団六個旅団からかなりの部隊が機動運用部隊となります。
機動運用部隊は陸上総隊の直轄運用を受ける事となり、その規模は一個機甲師団、三個機動師団、四個機動旅団、一個空挺団、一個水陸機動団、一個ヘリコプター団が充当される計画で、この通り非常に大きな規模の部隊が機動運用されることとなります。なお、機動運用部隊が平時管区を有するのか、地域配備部隊が担うのか、地方協力本部が担うのかは情報を待ちましょう。
水陸両用団の創設は陸上自衛隊が本格的な両用戦部隊の創設を開始することを示し、従来の輸送ヘリコプターを補完する新装備としてティルトローター機の導入を開始する方策が示され、中期防衛力整備計画ではMV-22可動翼機、水陸両用装甲車の本格導入を開始するとのこと。
機動力強化に向け、戦車は一個機甲師団を中心とし、北海道の第2戦車連隊、第5戦車大隊、第11戦車大隊が効率化され維持されると共に西部方面戦車隊が新編されます。他方、既存戦車の合理化に置き換わる機動打撃力として、105mm砲と高度な打撃力を有する機動戦闘車の大量導入を行うとのこと。
機動戦闘車は主砲こそ74式戦車と同等のものですが、火器管制装置と行進間射撃能力が抜本的に向上しており、防御力は第二世代戦車と同様の視点の下機動力を強化していて、第9戦車大隊、第6戦車大隊、第1戦車大隊、第10戦車大隊、第3戦車大隊、第13戦車中隊、第14戦車中隊、第4戦車大隊、第8戦車大隊は機動大隊へ置き換えられる模様です。
特科火砲は、方面特科部隊より自走榴弾砲が全て多連装ロケットシステムに置き換えられるため、300門を基準とする装備体系へ移行します。この数は15個特科隊に相当する所要数となり、このほか、五個地対艦ミサイル連隊、七個高射特科群が維持されます。
高射特科群は中距離地対空誘導弾を装備する部隊ですが、現行編制と比較し一個群が縮小されます。これは一部方面隊の高射特科群への改編が行われるか、方面隊の陸上総隊への改編に伴う方面高射特科群の合理化、という背景が考えられるでしょう。
陸上自衛隊は戦車数が削減され特科火砲が縮減されますが、その分機動戦闘車が配備され火砲は重迫撃砲とロケットシステムにより近代化されます。新装備には自走榴弾砲である火力戦闘車開発による全特科部隊自走化が行われ、併せて近接戦闘車による情報優位、新装輪装甲車の開発による機動師団の装甲化も進むことになります。
他方、空中機動運用の在り方や多用途ヘリコプターの後継機選定、対戦車ヘリコプターの後継機選定という難題が山積する中、新しく可動翼機の導入を開始する指針を示しているため、陸上自衛隊は長く空中機動能力を重視してきた歴史があり、これをいかに展開するか、関心を抱かずにはいられません。
陸上自衛官定数については概ね15万9000名をめどとしており、実員は15万1000名、8000名を即応予備自衛官とする現在の実員のまま検討中であった増員は見送られたようです。海上自衛隊航空自衛隊については次回に紹介することとします。
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
別の意味で不満は、有るでしょうね(笑)
何でもっと予算を付けずに強化しないのかとね。
>第9戦車大隊、第6戦車大隊、第1戦車大隊、第10戦車大隊、第3戦車大隊、第13戦車中隊、第14戦車中隊、第4戦車大隊、第8戦車大隊は機動大隊へ置き換えられる模様
はどのようなソースでしょうか?機動戦闘車ですが、中期防には「機動師団・機動旅団に、..機動戦闘車を導入し、各種事態に即応する即応機動連隊を新編」とあります。
・地域配備部隊(5個師団+2個旅団)に機動戦闘車を配備するとは書いてありませんので(しないとも書いていませんが)、これら部隊が「戦車も、機動戦闘車もない部隊」になるとすれば、大変興味深いです。ちなみに、諸外国ではそう言う部隊はごく普通で、陸自のようにほぼ全部隊に戦車を配する方が実は珍しい。
・本州部隊は、特科も方面隊隷下に集約されるようですから、少なくとも本州の地域配備部隊は、かなり警備中心の歩兵部隊になるようです。(別ブログネタで済みませんが、数多さんと議論していた、「警備部隊」と「野戦部隊」の分割が、実際に行われるのかもしれないと感じています)
・「即応機動連隊」が新編される場合、これらの戦車大隊は即応機動連隊に吸収されるのではないでしょうか?なお、第4、8戦車大隊は、西部方面戦車隊に吸収される訳ですが、第2戦車大隊や、第5、第11の戦車隊がどうなるのか、興味津々です。
・水陸機動旅団は、部隊編成としては純増に見えるので、西部方面普通科連隊に、中央即応連隊を合体させて作るのでしょうか。定員は増えませんので。。。
最後に不満点について。
・定員が現状と変わっていないにもかかわらず、正面部隊の数は減っていない(むしろ増えている)ので、兵站の強化はなされていない点が不満 --> 師団を2-3こ旅団にすべきだったと考えます。(その分、兵站部隊を増やす)
・師団普通科連隊と旅団普通科「連隊」(実態は大隊)の共存が残っている点が不満。--> いつまでこの不合理を続けるのか。
・上記と絡むのですが、特に本州の部隊は、戦車部隊もなく、特科も方面隷下に移されるわけで、「師団」といいつつ5-6000名の部隊になりそうです。「師団」の名にふさわしくないので、旅団に統一して欲しかった(例えば地域部隊は、師団も旅団も、4個普通科大隊基幹の「旅団」に編成を統一する) --> (実質)旅団を、(本来軍団を指揮する)中将が指揮する軍隊を持つことの恥ずかしさが増大。。。(いつものこだわりで済みません:笑)
まだまだ情報が足りませんので、続報に期待したい所です。
>>今回の防衛大綱に反対する市民は多くいます
多くいる?
多くいるなら、そもそも選挙で勝てるはずだけど?
選挙で勝てなかった時点で、お前のいう市民なんてのは『少数』なんだよ、間抜け
>>国民的議論を得ないで安部の思い上がりで決められた事は残念です
政府与党が選挙前に掲げたマニフェストに沿って行動したら、思い上がり?
民主主義政府が理解できないバカは、コメントするな
なんで国民じゃなくて「市民」なの?
ああ、お前ら国民じゃないもんなw
陸についても旧来の貼り付け型から脱却し機動野戦軍への転換は遅きに失した感もありますが当然です。
また階級バランス、年齢構成の見直しもようやく。
はるな様もご指摘のように基幹部隊編成の異なる師団、旅団の混在は解消されない。
師団、旅団有っても良いですが、基幹の大隊、連隊編成は共通化すべきでしょう。
しかし問題は陸だけではありませんが、お題目に基づく調達が足りない、発表では一見増強のようなイメージですが、結局は更新数確保できず、総数減もしくは、耐用年数延長で対応。
オスプレイにしてもCH-47JA調達6機なので、CH-47J減勢の置き換えにも不足。
OH/AHは発表項目に無いので判りませんが消滅放置?
UH-Xはまだ国産諦めていないのか?
>多くいる?
そりゃあ多いでしょう。戦車300両はまだともかく、クラスター弾頭無しで特科火砲300門は……
大規模着上陸の蓋然性が低く、それに比べれば小規模な武力衝突への対応をとなるのは当然ですが、これだけの火砲で足りるのかということには不安が……
機動力を向上させて実効火力を上昇させるのはわかりますが、面積あたりの火力を手に入れるにはやっぱり数が必要ではないでしょうか。
多いに不満ですよ?w
今回の大綱は内閣の専権決定事事項です。
「国民的議論」少数反対派が、自己を正当化して決定を遅らせる常套手段です。一部マスコミもよく使います。
国民的議論は、代議的民主制の選挙を通してなされるものです。人民主権、直接民主制の胡散臭さは憲法が忌避しています。
大綱については、島嶼防衛も、制空権確保が前提で
中国の最新戦闘機に対抗するにはF35が少ないと思います。
又、マスコミ報道によりますと、アメリカの沿岸戦闘艦 一隻600億円とのことですが、これを配備するのでしょうか。予算厳しさから実現可能性に疑問があります。
新防衛大綱発表から十二時間を経ずして意見が集約できるとは、物凄い集約力ですね!
それとも瞬時に意見を集約出来るほど人数が少ないのでしょうか?
機動運用部隊が管区を持たない、という方針なのか、現状のように第1空挺団は千葉を、第7師団は道央を、と持たせるのか、災害派遣の初動という意味で気にはなりますね