北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:戦車300&火砲300時代① 本土から戦車は本当に消えるのか

2014-04-26 22:54:52 | 防衛・安全保障

◆消えるという話が消えるのは割と多い
 新防衛大綱において戦車は300両へ、特科火砲は300門へ、と重装備が大きく縮小されることとなりました。
Phimg_0055  防衛省では本土から戦車を西方の方面隊直轄部隊や富士の教育部隊を除き北海道へ集約する方針を示し、105mm砲を搭載する機動戦闘車を本土の師団や旅団へ200両配備し、戦車を置き換える方針を示しています。これは訓練環境が広大な演習場環境により確保されている北海道への戦車の集約を期している、との視点も含まれているようです。また、特科火砲についても、本土からかなりの部分を北海道に集約する、という指針も示されています。しかし自衛隊に在って、消えるという話が消えるのは割と多い。
Phimg_0209  新防衛大綱に基づく師団と旅団改編はかつてない規模で進みます。本土師団及び本土旅団には、戦車を置き換える機動戦闘車、特科火砲を置き換える重迫撃砲、以上を重視し、装輪装甲車の充実による機動連隊を基本とした部隊の運用が目指され、自衛隊は動的防衛力を目指した統合機動力整備へ進みます。これは、防衛力を管区に縛られない運用へ大胆に転換し、軽量装備を迅速に展開させるという部分に特化し、有事の際には全国の部隊が素早く集合分散し遊兵を生まない効率的な防衛力を目指している、とのこと。
Phimg_0354  しかし、機動戦闘車は防御力の面で戦車を完全に置き換えられるものでは無く、装輪車両であるため路上速力は大きく戦車輸送車による輸送支援を受けずとも長距離を展開できる戦略機動力が高い反面、不整地突破能力には車輪の接地面積による限界があるとともに瓦礫や砲弾片により容易に車輪が破損するため、完全に代替する事は出来ません。火砲と重迫撃砲についても火力支援は出来ても持続射撃能力に迫撃砲は根本から劣ると共に対砲兵戦闘に迫撃砲は適していないため敵砲兵に直面すれば回避の一手しか残りません。
Phimg_0443  そこで、北大路機関では、方面隊の空中機動力を全て一部師団を改編した軽装甲車主体の軽装備旅団に付与する緊急展開部隊としての航空機動旅団、残る師団を旅団化し少数の戦車と火砲を集中的に装備し機動打撃力を発揮する機動打撃部隊としての装甲機動旅団へ改編し、一部の旅団連隊を独立運用させ水陸両用任務に充てる小型の両用機動旅団/両用機動混成団、という、機動運用を基本としつつも基盤的な防衛力の整備を提案しました。航空と装甲の機動旅団二つを以て師団を編成すれば世界のどこと比較しても遜色ない師団です。
Phimg_0946  ですが、消えるという話が消えるのは陸上自衛隊ではよくあります。東部方面隊が陸上総隊へ置き換えられ消えるという話も立ち消えに、第1師団を首都防衛集団へ改編するべく発展的に解消するという話も消極的に解消し立ち消えとなりました。戦車と火砲が本土から消える、という話、前述の通り戦車の代用装備は機動戦闘車では能力不足ですし、火砲の大隊は砲兵戦闘を部分的にしか担うことが出来ない重迫撃砲では能力不足、今回の話も定数300という話のみのこり、立ち消えとなるのではないでしょうか。
Phimg_1256  ならば、戦車300と火砲300という数字の下で実際に防衛力を維持できるのか、全国の師団と旅団に充分な戦車と火砲を付与できるのか、という視点から物事を考えてみたいところです。新防衛大綱には戦車を集中運用する機甲師団の維持が明記されていますので、300両という戦車定数の下で機甲師団と全国の師団への戦車配置を行わねばなりませんし、師団と旅団は一部が機動師団や機動旅団へ改編されるという施策は盛り込まれつつも、師団数と旅団数は変化なく、配備しなければなりません。
Phimg_1759  戦車300ですが、まず全国の師団へまわす前の第7師団、機甲師団について。機甲師団は3個戦車連隊を基幹としていますが、最盛期の戦車定数は286両、この数字を維持したならば戦車300両体制の下ではとてもではないが他の師団へまわす事は出来ないでしょう。しかし、現時点d根は戦車連隊定数が見直され、約200両の戦車を基幹としています。ここで、戦車中隊を戦車小隊に中隊本部を加えた14両編成という現行編制を、戦車連隊では戦車中隊は独立運用せず連隊の一部として運用するとして先任小隊長と協同する体制に転換し12両編成とすればどうでしょうか。
Phimg_1896  第7師団の戦車連隊を隷下中隊が12両とし、戦車中隊五個編成を一個中隊縮小した場合、四個中隊で所要は48両となります。ここに連隊本部車両として2両を加えても50両で一個戦車連隊を編成できますので、師団を構成する3個戦車連隊を150両の戦車で編成可能です。更に戦車を装備する偵察隊の戦車を全て近接戦闘車偵察型に置き換えたならば、150両の戦車に必要な装甲車と火砲を付与し機甲師団と出来るでしょう。若干減りましたが陸上自衛隊の戦車半数を運用するわけですので、戦略予備としての役割は担えること間違いなし。
Phimg_2586  150両の戦車で機甲師団とするので、残る150両の戦車を全国で分け合う事となります。14両編成の中隊として11個中隊弱、どうか。現在北海道の第2師団は戦車連隊を持ち6個中隊を基幹としていまして、他に北海道の戦車部隊として第5旅団と第11旅団が各2個戦車中隊を基幹とする編成、ここで10個中隊となりますので、現状のままとしますと西部方面隊に一個中隊か、第2戦車連隊から2個中隊程度抽出して西部方面隊に3個中隊基幹の部隊を置けば、此処で完結となるでしょう。陸上自衛隊の想定もこうしたものが考えられていると推測するところです。
Phimg_2768  しかし、現在、全国の師団戦車大隊は二個戦車中隊30両への戦車定数削減が急速に進み、戦車中隊一個を普通科連隊支援へ小隊ごとに派遣し連隊戦闘団へ編入、もう1個戦車中隊を師団長直轄としています。この運用体制を見直し、師団長直轄の戦車中隊のみを維持したうえでもう一個中隊の連隊戦闘団編入中隊を機動戦闘車に置き換えた場合、師団戦車所要は1個中隊へ削減可能とともに機動戦闘車と共に大隊編制を維持可能です。この場合で旅団の戦車中隊については機動戦闘車中隊へ置き換えればよい。こう考える次第です。

北大路機関:はるな

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2 コメント

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>消えるという話が消える (専ら読む側)
2014-04-27 00:59:04
>消えるという話が消える
同感ですな
力み返った「防衛大綱」など浮いた話の寄せ集め
と言う傾向が顕著な昨今だけに(可成り怒々)
余談乍ら雨後の筍の如き誘導武器が陳腐化し去
った後に戦闘車輛が戻れる体制は堅持すべきこと
と痛感
返信する
12車案で、4両X3小隊ですが?概ね50両で大隊・連隊を... (香港からの客人)
2014-04-27 03:35:52
12車案で、4両X3小隊ですが?概ね50両で大隊・連隊を編成しなければ成らないまでは理解出来るが、中隊で妥協するのは定石ではないですね?

中隊本部が無いなら、中隊長は1小隊の小隊長兼任に成ります。これで、中隊指揮に集中できないし、1小隊の面倒を見なければならない為、指揮監視の所も自由に設置出来無い。

連隊と言っても、規模的には既に大隊クラスに成った上に、中隊は独立行動出来無いと言うなら、事実上大隊以下に成ります。例え連隊を一個単位として使おうでも(日本の地形ではこれも困難ですが)、独立行動出来るの中隊が無いなら、連隊で先鋒を作ろうでも難しく成り、自分のSecurityすら自力で確保出来なく成り、独立性は損ないます。

ここは普通先ず中隊を10両(3x3+1)にさせるのは定石では?
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