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3.11東北地方太平洋沖地震/東日本大震災から六年 “私たちは知る事を恐れるべきではない”

2017-03-11 23:56:31 | 防災・災害派遣
■鎮魂:東日本大震災発災六年
 歴史地震として永く後世に残る巨大地震、私たちは六年前のあの日、目撃者であり当事者となりました。震災の犠牲となられた多くの方々へ冥福を祈ります。

 東日本大震災発災から今日で六年となりました、2011年3月11日14時46分18秒、太平洋上の広範囲を震源とするマグニチュード9.0という巨大地震が発生しました。日本周辺における観測史上最大の地震であり、マグニチュード9.0という8以上の規模の地震は我が国では歴史地震や地質学の範疇であり防災政策からは長らく想定外という規模の地震でした。

 東北地方太平洋沖地震、その震源は広大で、岩手県沖から茨城県沖までの南北約500kmと東西約200kmという実に10万㎢という広範囲全てが震源域となり、宮城県栗原市で震度7、一挙に隆起と沈降を繰り返した海底面は巨大津波を引き起こし、最大高は相馬港9.3m以上、最大遡上は綾里湾にて40.1m と戦慄すべき標高まで津波が上り詰めた事となります。

 マグニチュード9.0の巨大地震は、震災による死者行方不明者は併せて18446名、重軽傷者は6152名、そして加えて震災関連死者数は2016年9月末時点集計で3523名に上りました。津波による浸水面積は561㎢、建築物全壊半壊401885戸、宮城県を中心に330件の火災が発生し広範囲が焼失、世界銀行推計で自然災害経済損失額史上1位となりました。

 福島第一原子力発電所事故はこの巨大地震により引き起こされました、外部電源喪失と非常用発電機の破損及び原子炉冷却用海水ポンプの破損により原子炉が冷却不能となり炉心溶解、福島県を中心に広範囲に放射性物質が拡散し、国際原子力事象評価尺度で最悪のレベル7、第二次世界大戦敗戦以来の日本国家存続の危機を迎えたといって過言ではない。

 原子力緊急事態宣言は福島第二原子力発電所でも発令され、加えて津波は女川原子力発電所、東海第二原子力発電所、東通原子力発電所へも到達しました。幸いにして、本当に幸いにして、複数の原子力発電所での同時原子炉破損という状況は回避されましたが、日本国内では65年ぶりに計画停電が実行され、全国原発は政治的に順次停止、影響は巨大です。

 新幹線も今回の地震では大きな被害を受けました、東日本旅客鉄道JR東日本管内では東北新幹線が電柱や架線及び高架橋の橋脚など約1100箇所もの損傷が確認され、気仙沼線などの在来線7線区では津波により23駅が流失し線路が60kmにわたって流され、新幹線は営業列車への大きな被害や負傷者等はありませんでしたが、鉄道は完全に復旧していません。

 航空機も東日本大震災では大きな危機に曝されています、成田国際空港と東京国際空港(は地震を受け安全確認のために全ての離着陸を一時中止、東北地方全域の空港も閉鎖、航空機86機が両空港が閉鎖により着陸不能となったほか、14機は燃料不足で緊急事態を宣言、中部国際空港や関西国際空港と新千歳空港や横田基地へ代替着陸し危く難を逃れています。

 巨大地震の被害、これはごく一部の象徴的なものを提示しただけで以上の通りです。そして死者数を見ますと、巨大災害としてはスマトラ沖地震インド洋大津波や中国唐山巨大地震、日本では関東大震災、数字では異なるものの、先進国で第二次世界大戦後、戦争や内戦に自然災害を含め一日で生じた死者数としては最大の惨事だったのではないでしょうか。

 歴史地震、この世界史に刻まれるほどの地殻変動を顧みれば東日本大震災と同規模の巨大地震は869年に貞観地震として東日本一帯に刻み付けられています。安政東海地震や安政南海地震との歴史上の地震は記録も多少残りますが、684年の白鳳地震、1096年永長地震、1099年の康和地震、1586年天正地震、私たちは現代の防災をもう少し歴史に学ぶべきです。

 95年福島岩沼沖巨大地震、歴史地震の分析により地質学と津波堆積物の分布などから巨大地震として今から2000年近く前、貞観地震や東北地方太平洋沖地震を超える規模の東北太平洋沿岸津波が発生した可能性が最近判明しつつあり、更なる解析は必要ですが、千年に一度の規模の地震とした東日本大震災は、より長い期間でみれば最大規模には至りません。

 千年に一度、二千年に一度、災厄は人類史の規模からすれば西暦にして僅か二千年と十七年を積み重ねたに過ぎず、歴史学は勿論、考古学の範疇から地震防災を発掘するにしても、数千年に一度の規模の地震被害を伝承するには少々無理があります。一方で、現代に生きる我々はその生涯と数千年に一度の瞬間が重なった場合を如何にすべきなのでしょうか。

 日本の地形を見ますと、環太平洋大陸外縁弧状列島という立地から、定期的に発生するものは巨大地震だけではなく、巨大火山という災害があります。巨大火山災害は、火山爆発指数8以上という、仮に発生すれば都道府県単位で火砕流に包まれ致命的損害が広範囲に広がると共に世界規模で大規模な気候変動を招き、世界的寒冷化を引き起こすものもある。

 万年に一度の火山噴火等の被害は、地質学上の火山性堆積物分布を視れば九州だけでも阿蘇や姶良に加久藤と鬼界という巨大火山一つ噴火するだけで世界史を書き換える被害を、引き起こすものがあります。世界史を書き換えるとは大袈裟に思われるかもしれませんが、何故ならば世界史が歩み始めてからこの規模の噴火災害が発生していない為、なのです。

 トバカタストロフ理論、という興味深い理論があります。これは75000年ほど前、インドネシアスマトラ島のトバ火山が巨大噴火を引き起こし、世界規模の寒冷化により人類が数千名規模まで激減した可能性があり、これは人類が人口70億を超える中で遺伝子の多様性が限られている、これが人類を発展させたのですが、この徴候からも読み取れるものです。

 巨大災害も想定を超えてしまう範疇に上限を加えなければ防災政策として具体性を持てませんので、必ずしもトバカタストロフ理論の再来を念頭とした防災対策を行うべき、とは提案できません、そういいますのも、シェルターへの退避体制や長期の食糧備蓄等、必要となる準備が、例えば東西冷戦米ソ全面核戦争水爆戦よりも大きくなる為に他なりません。

 95年福島岩沼沖巨大地震のような東日本大震災を超える巨大地震等、数千年単位で生じる巨大災害、ただ、打つ手なしのまま放置するべきでもありません。故に現実ばなれした被害対策は却って防災政策全般を停滞させるものではありますが、私たちは私たちの暮らす大地が巨大災害、数千の水爆をも超える破壊力を内蔵している事を深く知るべきでしょう。

 広域避難、我が国に内包される様々な規格外の若しくは想定外という規模の巨大災害に対しては、迅速な避難と広域避難を可能とする体制を構築する以外、防波堤などが想定する以上の巨大津波に対しては無力ですし、耐震構造も地形崩壊の前には無力です。しかし、極めて巨大な災害が発生し得ることを地質学や歴史地震から知り、防災には限界があるという視点も必要ではないでしょうか。

 防災、即ち人類には限界がある、という視点、その上で避難のみが有効な防災策となる場合もある点の理解、知る事は一つの防災となるようにも考えます。巨大災害は地球が活動している以上、確実に地震と津波は発生しますし、火山災害も起こるかおこらないかではなく、いつ発生するか、という視点が重要です。最後になりましたが、東日本大震災にて犠牲となられました方々へご冥福を祈りつつ。

北大路機関:はるな くらま
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