北大路機関

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【G7X撮影速報】平成三〇年度伊勢湾機雷戦訓練,四日市港へ掃海艦艇入港(2019.02.09)

2019-02-11 20:14:07 | 陸海空自衛隊関連行事詳報
■機雷戦艦艇四日市港集合
 掃海母艦うらが、ぶんご、幻想的な風景です。建国記念日の三連休は北大路機関広報でも紹介しました伊勢湾機雷戦訓練参加艦艇撮影へ三重県に行ってきました。

 四日市港へ続々と入港する機雷戦艦艇、海上自衛隊が誇る掃海艇が数隻づつ入港します。毎年二月と云えば節分、一部の方には舞鶴艦これ砲雷撃戦よーい同人誌イベント、ワンフェス、というところなのでしょうが当方にとっては伊勢湾機雷戦訓練の季節という印象だ。

 伊勢湾機雷戦訓練、海上自衛隊が毎年この季節に実施される掃海部隊による実動演習です。機雷とは、海の地雷と簡単に説明されますが、重要航路へ敷設したならば海峡そのものを封鎖し得ますし、基地湾口へ敷設したならば航空母艦を含む大型目標をも大破させます。

 掃海艇は機雷を掃討し掃海する任務に当たる海上自衛隊主力艦艇の一つ。機雷を海中から追い出し処分、巧妙に海中に潜む機雷を機雷戦ソナーで穿り出し機雷処分器具が小型爆雷で直接攻撃し爆破する。この機雷探知の訓練を終えた掃海艇を、四日市港から撮影する。

 四日市港千歳地区第二埠頭、港湾合同庁舎から伊勢湾を東へ“E”字型に南の松阪側の第1埠頭と中央の第2埠頭に北側の名古屋を望む第3埠頭、中央部の第二埠頭は日中の時間帯では立入りが出来る地区があり釣り人達が釣果競う憩いの場ですが、この日は撮影位置だ。

 改正ソーラス条約により国際船舶-港湾保安法が2004年に制定され、第一埠頭はテロ対策の観点から立ち入り禁止となっています。朝行くと釣り人が気にせず立ち入っていますが、上記法整備により埠頭保安規定に反する行為となり刑事告発の対象となり、考えものといえます。

 国際船舶-港湾保安法、立ち入り禁止が明確になった事は、しかし港湾の何処までが立ち入り禁止区画であるのかの曖昧な線引きが、この国際船舶-港湾保安法に基づく禁止線に立ち入らなければ、法的に問題ない、との明確な規定を可視化したといえ、個人的には有難い。

 AIS,船舶位置情報、最近はスマートフォンにて大型船の位置情報が配信されています。撮影位置が大きく制限された改正ソーラス条約ですが、テロ対策の観点から大型船位置情報の共有としてAISの普及励行も盛り込まれまして、艦船愛好家にはこの点は有難いと思う。

 霞地区、数年前までは四日市港ポートビルが名古屋名駅摩天楼から鈴鹿山脈までの壮大な風景を俯瞰に収める霞地区へ大量の掃海艇が一カ所に並んでいました。現在は千歳地区に分散接岸しますが霞地区に並んだ掃海艇の多さに率直に感心したものです、多いなあ、と。

 海上自衛隊は第二次世界大戦中、主要航路と港湾湾口や内海航路を機雷封鎖された事で飢餓状態直前へ陥り、結果的に日本は敗北へと追い込まれる大きな要素となりました。この反省から、海上自衛隊は創隊以来機雷戦対処能力を重視し掃海艇を多数配備してきました。

 機雷掃海は第二次世界大戦後、連合軍は航空機や潜水艦などから敷設した大量の機雷とともにわが軍が防御機雷原として敷設した大量の機雷を処分する必要があり、ここで海上保安庁、1954年以降は海上自衛隊が機雷処分任務を引き継いでいます。機雷と御縁は深い。

 朝鮮戦争では海上自衛隊の前身にあたる海上保安庁航路啓拓部隊が北朝鮮の敷設した機雷原へ掃海任務へと派遣されていまして、殉職者、正確には戦死者が出ています。朝鮮戦争の停戦協定前の戦闘であり、海上自衛隊掃海部隊は創隊前に既に実戦を経験している、と。

 神戸港でも拡張工事の都度に毎年のように機雷が発見されます。阪神基地から掃海艇が出動し、爆破処理しています。掃海艇は決して小型ではないのですが処理の爆破、その水柱は掃海艇よりも遥かに高く、150m、京都タワーより高い水柱が海面下を瞬時に沸上がる。

 名古屋と中京地区の重要港湾が並ぶ伊勢湾、伊勢湾機雷戦訓練は掃海母艦が模擬機雷を実際に敷設し、掃海艇がS-10機雷処分器具やPAP-104機雷処分器具に機雷戦探知装置を駆使し機雷を探索するという、実機雷以外は全て実物を投入する、実任務に即した訓練です。

 日向灘機雷戦訓練や錦江湾機雷戦訓練に陸奥湾機雷戦訓練、海上自衛隊掃海部隊は伊勢湾以外にも年間数回、模擬機雷を重要港湾付近に敷設し機雷掃討を行う訓練を実施しています。海域は広く掃海艇は限られている、勿論、模擬機雷を海中に捜索する為の制限時間も。

 硫黄島機雷戦訓練は、実機雷と実爆処分を伴う仕上げの訓練となっています。実は硫黄島近海は鮫が多く、海中の水中処分員へも寄ってくるとも。鮫は恐くないが実機雷の硫酸アンプルの籠った突起を齧り爆発を誘発する事が怖い、という。鮫以上に危険な任務という。

 機雷は意地悪が設計している、とは掃海隊司令の方のお話し。機雷は係維機雷という触れると爆発する機雷、磁気機雷という船舶船体を感知、音響機雷という船舶の音を感知するもの、など。等というのは魚雷を抱いて寄ってくる機雷や映像を感知するものもあるため。

 掃海は、係維機雷を水中に大型刃物というべき掃海器を曳航し水中から海面に追い出して機関砲で吹き飛ばす伝統的な掃海、音響掃海器具を曳航して疑似音を発し音響機雷を処分する方法、磁気発生装置を曳航して欺瞞し爆破させる方法、は第二次大戦中に完成した。

 機雷掃討、という昨今の主流はこちら。海上自衛隊も現在全ての掃海艇は区分では掃海艇のままですが、機雷掃討艇という様式となっています。艇の後ろの機雷を処分するのが掃海艇、艇よりも前の機雷を狙うのが機雷掃討、航行前に機雷を狙うには理由があります。

 磁気機雷対策として船体に微弱電流を流し欺瞞する方法が1980年代末に欧州で開発されましたが、微弱電流を発する船舶こそが軍艦という重要目標ということで、十年ほどで微弱電流検知を重視し掃海艇を狙う機雷が開発される。対策あれば対対策あり、正にこの流れ。

 機雷には掃海艇が最大の標的という変なものも、ある種正攻法か。具体的には掃海艇の最大の武器である機雷処分器具を専門に狙うという。もちろん、掃海艇は、機雷へ発見されないように徹底して磁気を発せず、万一の際にも機雷に沈められぬ設計となっている。

 すがしま型、ひらしま掃海艇、木造船体を採用しています。木造ですと鋼製船体と違い磁気を発生しません。また、万一機雷に触雷してしまった場合にも弾性の強い木材は衝撃を吸収し、最悪船体が大破した場合でも全体が粉々にならなければ木製船体は水には、浮く。

 ひらしま型掃海艇で木製船体掃海艇は終了しました。木製は素晴らしい、のですが海水で腐食します。これは言い換えれば船体需要が短くなりますので、短期間で用途廃止となる。この為に、海上自衛隊は1970年代よりFRP製や軽合金製船体の研究を行ってきました。

 えのしま型掃海艇は海上自衛隊が初めて採用したFRP製船体を有する掃海艇です。機雷の威力は大きく、何しろアメリカ海軍が第二次世界大戦後戦闘で大破した大型水上戦闘艦は全て機雷に破壊されたほど、湾岸戦争でも強襲揚陸艦が機雷にやられている。大丈夫か。

 FRP製船体の採用は、慎重論があったものの造船技術の継承への限界や木造船体資源の枯渇、耐用年数の低い掃海艇を毎年建造する財政上の限界、FRP船体技術の向上により実用化へ踏み切りました。管制式機関砲を採用し、限定的な哨戒艇としての任務も担うという。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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